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 2007年02月 

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Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その11) 

経過はコチラにて。


喜望峰~1943年12月20日-1944年2月13日(黒猫暦:1938年3月15日

ルアージュのパルチザンの鎮圧を見届けたぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、いまいましげに呻いた。
「この抵抗勢力どもめはどうにかならんのかな」
側近のゴルビ犬は首を横に振りつつ答えた。
「原則的に沸いては叩く以外にないようですな。しかし多少なりとも暴動発生率を軽減させる方法はありますが」
「なんだ」
「『消費財』の割り当てを増やすのです」
「ふん。バラ撒き政策で民衆どもの歓心を買えということか」
「欲満たすもの眼前にあらば、人は拳を開くものです」
「愚衆どもめ。…しかしあれだ、フランスあたりの暴動なら近辺の治安部隊でどうにでもなるが、僻地で蜂起されると対処に往生する。もう田舎者どもめはさっさと独立させて自治に預ける方がよかろうて」
「その策もひとつではありますが、国民不満度が高まりましょう」
「25%のラインを超えねば問題はない」
「は。…してどこを?」
「オマーン、イエメン、あとはキプロスだな。手配してくれんか」
「かしこまりました。…ところで閣下、アフリカ南部侵攻作戦はどうなってるのでしょう?」
「もう発動してるよ」
その言葉に呼応するかのように、ぎ印作戦参謀本部から一報が届いた。それはぎ印侵攻軍の第一波が、南アフリカ共和国の海岸都市を急襲したことを知らせるものだった。

1943年12月20日11:00 : 第9軍団がダーバンで上陸を完了


「はじまったようだな」
Guicho Zurdoはモニターに向かい、素早くカーソルをアフリカ大陸南部に向け戦況を確認すると、やがて満足げに頷いた。
「思った通り南アの兵力は乏しかったな。駐留のイギリス軍めが鬱陶しいが、わしらの北部方面からの詰めで分断されとる。あとは時間の問題だな」
「空挺の姿が見えませんが?」
「案ずるな。待機させておる。それも精鋭をな。ディートルのとこだ」
やがて総統閣下お気に入りの部隊の朗報が届いた。

1943年12月28日16:00 : 第72軍団がポートエリザベスに到着


総統閣下はそのつぶらな瞳をマップの北へと向けた。
「北部からの連中も間もなく現れよう」
駐留するイギリス軍を蹴散らし、陸路から南下した軍団が要所プレトリアに到達するのは、年が明けて1週間後のことであった。

1944年1月7日6:00 : 第9軍団がプレトリアに到着


偉大なる指導者、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは両の手の指を重ね合わせ、唇の端を歪めてにやついた。
「クックック。圧倒的じゃないかわが軍は」
空から海から、そして陸から蹂躙される南アフリカ共和国の惨状を見つめながら、ゴルビ犬は尋ねた。
「閣下、コンゴ方面の戦況は?」
「宗主国ベルギーはもはや死んだ」
冷徹に言い放った総統閣下のその言葉は、後の参謀本部からの続報で裏付けられることになった。

1944年1月12日4:00 : 第3軍団がエリザベトヴィルに到着


同日13:00、ベルギーはぎ印ドイツ帝国に併合され、地上から消滅する。

ぎ印ドイツ勢の攻撃の手はまったく緩まず、南ア侵攻第二波、三波の動向を知らせる参謀本部からの報は慌しく続いていた。

1944年1月13日12:00 : 第12軍がケープタウンで上陸を完了
1944年1月13日12:00 : 第6艦隊がケープタウンに到着
1944年1月13日12:00 : 第2軍団がケープタウンで上陸を完了
1944年1月13日12:00 : 第113軍団がケープタウンで上陸を完了
1944年1月14日2:00 : 第5軍がケープタウンで上陸を完了
1944年1月14日2:00 : 第7艦隊がケープタウンに到着
1944年1月14日2:00 : 第41軍団がケープタウンで上陸を完了
1944年1月14日2:00 : 第3艦隊がケープタウンに到着


「他愛ないものですな」
灰色に染められていく南アフリカを眺めながら、ゴルビ犬は静かに言った。総統閣下は腕組みしたまま無言で頷いた。
それからしばらくの間、ふたりはモニターの向こうで展開する作戦行動に注視していたが、やがて総統閣下が尋ねるともなく言った。
「猫めは今どのあたりなのか」
「…アンシュルス(オーストリア併合)のイベントは終わりましたな。それと前段に彼奴は満州の日本軍関係者と協議してます。同地へユダヤ人を受け入れさせるための交渉のようですが、詳細結果は確認されておりません。恐らく今後、彼奴の課題の中心はズデーテンラントの件にシフトしていくと思われます」
ゴルビ犬のその淀みない答えに、Guicho Zurdoは片眉を吊り上げ、モニターから犬へと視線を移した。
「やけに詳しいな」
ゴルビ犬はモニターに目を向けたままにやりとした。
「閣下、われらのスリーパーは今や完全に目覚めて情報収集に勤しんでおります。保険は打って然るべきですな。こんなこともあろうかと、わが手の者を早い段階であちらの世界に送り込んでおいたのです」
「ほほ、犬は賢い。で、その者はゲシュタポかね?」
「所属はSDです。…どうされます?閣下直々に指揮ないし命令されますか?」
「いや、しばらくはお前がやってくれ。ただしわしには些細な情報も回せ。得たものすべてをだ」
「かしこまりました」
総統閣下は再びモニターに視線を戻し、身体を社長椅子の背もたれに預けた。油気の抜けた椅子のパイプがそれに応えてギイと鳴った。
「ふん、猫め。思ったより上手く立ち回っとるわい」
総統閣下が腹立たしげにつぶやいたその時、参謀本部から新たなる報が届いた。

1944年2月8日3:00 : 我が軍がヨハネスブルクで敵軍と交戦


南ア最終決戦だ。総統閣下とその忠実なる側近は、身を乗り出してモニターを食い入るように見つめるのだった。


―――もうひとつのベルリン

ハイドリヒ、伊達に長い顔はしてなかったのだな。
スターリンを陥れ、赤軍将校の大粛清の暴挙に走らせる元になったラインハルト・ハイドリヒ謹製の偽文書を読み終えた黒猫ポンセ、今は総統補佐官カール・ポテンテを名乗るその猫は静かにファイルを閉じた。腰が疲れてるな。ポテンテは貧乏椅子から立ち上がると大きく伸びをし、タバコに火をつけ、窓辺へと向かった。そこからは夜の帳の降りた総統官邸の中庭が見下ろせた。ふたつの照明がクロスし、庭の中心にある噴水を照らし出している。アルベルト・シュペーアの小洒落た演出にポテンテはにやりとした。
春になったとはいえ、外はまだ寒いのだろうな。夜風に踊らされる噴水の波打ちを眺めながら、ポテンテはいつしか常夏のトロピコ島に思いを馳せていた。青い空、白い雲、ラテンのリズム…。かつての日々を思い浮かべながら、ポテンテは自然と微笑んでいた。パイナップルとラム酒、砂浜と椰子の実…。不正選挙にクーデター、暴徒化した民衆に焼き討ちされるマラカニアン宮殿、そして手漕ぎボート…。ハッ、いかんいかん。ポテンテは首をぶるぶると振った。中空を漂う紫煙が大きく揺らめき、数多の渦を描いた。

窓から離れたポテンテはデスクの灰皿にタバコの灰を落とした。ふと脇を見ると、空のコーヒーカップがそのまま置かれ、乾いた茶色い環がカップの底を汚していた。当番め、俺のコーヒー・タイムはもう覚えてもよかろうに…。眉をしかめながらポテンテは受話器を取り上げ、ダイヤルした。
「当番、コーヒーを私の元へ」
ポテンテはデスクに戻るとモニターに向かい、軍事の研究・開発画面と格闘をはじめた。政治もそうだが、軍事もおろそかにはできん。世界に戦雲が立ち込めつつあるのだ。ポテンテはすぐに没頭した。

しばらくするとノックと共に背後の扉が開き、誰かが入ってくるのがわかった。当番め、遅いじゃないか。心の中で毒づいたポテンテは、室温が急に上昇したことにふと違和感を覚えた。さらにポテンテの鋭い嗅覚は芳醇なコーヒーの香りと共に、仄かな色香を嗅ぎ取った。そしてその敏感な耳は、「ぐつぐつこぽこぽ」という怪しい音を捉えるのだった。
何事かと振り向いたポテンテの目に、ぐつぐつ激しく煮立つコーヒーが飛び込んだ。そのもうもうたる湯気の向こうに現れたのは、総統官邸付秘書官ニナ兎の姿だった。
「君は…」
ニナ兎はにっこりと微笑んだ。
「覚えていらっしゃいますか?ニナ兎です。ニーナ・兎・ゲーレン」
ポテンテは驚きつつうんうん頷いた。
「覚えてるよ。ニュルンベルクの私の就任演説の後だったか。確かラインラントの出と」
「モンテネグロですわ、補佐官」
「そうだったか。だがあの時のコーヒーはよく覚えてるよ」
熱くてな。
ニナ兎の微笑みはさらに広がった。
「ええ、補佐官に喜んでいただけたのがうれしくて。ですからいつかまたコーヒーをお運びしようとずっと…」
ポテンテは地獄の池さながらにぐつぐつと煮え立つコーヒーを改めて見やった。
「…それはどうも。ところで私には当番がいてね…」
当番!当番!!早く来てくれ。適温のコーヒーを早く!
ニナ兎は無邪気に微笑みながらポテンテの望みを打ち砕いた。
「詰所の大柄なSSですよね。側頭部への一撃で昏倒していますわ。あたし、肘には自信がありますの」
当番!当…。ポテンテの魂の叫びは灰燼に帰した。
その時、電話が鳴った。おお、救いの神とはこのことだ。ポテンテは電光石火で受話器を取り、いかに時間稼ぎして今そこにある危機、今そこにあるコーヒーを冷ますかを素早く巡らせた。
「カール・ポテンテ」
その電話の主はポテンテの救いの神ではなかった。
「オレだよ!オレオレ!!」
カール・ポテンテは思った。この世に沸騰コーヒーより悪質なものが存在するとすれば、それはオレオレ詐欺を騙るGuicho Zurdoにほかならないと。
「オレだよ!オレオレ!!」
「…」
「オレだよ!オレオレ!!」
「…閣下、何の用です?」
電話の主はあっさりと認めた。
「よくわかったな」
「わかりますよ!」
「クックック。お前は言いたいんだろ?私は『パパは何でも知っている』のパパよりも何でも知っているから電話の主の正体がわしだとわかったのだと。な?そう言いたいんだろ?え?どうだ?ん?」
ニナ兎のコーヒーと同様、ポテンテの体内も沸騰状態であった。
「用件はなんです!」
ポテンテの怒りなどまるで意に介さず、総統閣下はのんびり続けた。
「お前はわしが今世紀最後の預言者と呼ばれてることを知ってるかな?」
「知りませんよ」
「その偉大なる預言者が今ここでお前の未来を教えてやろうとういうのじゃ。ありがたいと思え。おーわしには見える。わしには見えるぞ。よく聞け、お前はこれからズデーテンラント、ひいてはチェコの命運を定めるべく欧州列強が集う会議に出席することになるのじゃ。その会議はミュンヘンで開かれよう。おーわしには見える。わしにはそれが見えるのじゃ。ポンセよ、なぜわしがそこまで預言できるのか教えてやろう。それはだな、わしが何でも知ってるからじゃ。わしは『パパは何でも知っている』のパパよりも何でも知って…」
ガチャ。
ポテンテの選択はGuicho Zurdoのたわ言ではなく、沸騰コーヒーであった。
総統補佐官カール・ポテンテは意を決してニナ兎の方に向き直った。ニナ兎は婉然たる微笑と共に、未だぐつぐつ鳴り止まぬ沸騰コーヒーをポテンテに捧げた。ニナ兎の仄かなオー・ド・トワレの香りについて、それを考える心の余裕は今のポテンテにはなかった。

そのカール・ポテンテの押し殺したような悲鳴は、詰所でのびるSS隊員の耳には届かなかったという。


1944年2月13日、南アフリカ共和国が降伏した。

つづく。

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Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その10) 

経過はコチラにて。

※同時進行の戦線が複数ありますので、時間軸が多少前後する場合があります。


逆襲の黒猫ポンセ~1943年8月1日(1936年1月1日 ※黒猫暦

ぎ印ドイツ帝国がスイスを併合してしばらくの後、帝国総統Guicho Zurdoはふとあることに気がついた。イタリアめがやけに元気なのである。
史実であらば既に逝く先々でこてんぱんにやられ、もはやバンザイ寸前な頃合のはずだ。ところが今そこにあるイタリアはブルガリア侵略こそ失敗に終わったものの、それ以外はさしたる失点もなくのうのうと存在しているのである。ムッソリーニめも健在で今なお国家元首の地位に留まっている。これはいったいどういうことなのだろう。Guicho Zurdoはローマ周辺からエチオピア方面にカーソルを移動しつつしばし沈思した。

…そうか。そういうことか。偉大なる総統閣下はすべてを悟った。もはや歴史は大きく変わりつつあったのである。ぎ印ドイツ帝国が欧州を席捲し、イギリスの本陣を潰してしまった結果、イタリアを叩く相手がいなくなってしまったのだ。だからイタリアは拡大した領土をひとつも失うことなく、この戦乱の世を他人事のように謳歌しているのである。

ぬう、イタリアめ。Guicho Zurdoはいまいましげに呟いた。しかしその腹立たしさはすぐ解消した。待てよ、ということはだ…。

Guicho Zurdoはアフリカ大陸から東方へとカーソルを這わせた。中東を越え、ぎ印ドイツ帝国軍がじわじわと進軍するインド戦線へ。その最前線であるラングーンとその周辺プロヴィンスには未だブラッドレー率いるアメリカ軍が孤軍奮闘しているのだが、その反対側から迫りつつあるは日本、満州、シャム(現タイ)の極東枢軸軍勢であった。アメリカ軍は両勢力に挟まれまさに孤立状態にあった。総統閣下はそれを確認するとにんまりと微笑み、さらにマウスを東へと移動させた。インドネシアには宗主国であり、欧州の本陣を失ったオランダが風前の灯の如く残されたわずかなプロヴィンスで細々と存在していた。その周囲には極東枢軸軍の駐留部隊が展開し、その気になればいつでもオランダの息の根を止められる状態にあった。さらに東方の諸島群はことごとく日本の支配下にあり、その先端はニュージーランドに迫らんとする勢いであった。そして北に目を向ければ、フィリピンも着実に包囲されつつあり、マッカーサーの「I shall return」の屈辱声明は時間の問題であった。

確かに時間の問題ではあるが、陥落の引き換えに伴う犠牲は看過できんな。Guicho Zurdoはビルマ、フィリピンで奮闘するアメリカの名将の写真を改めて眺めやった。楽には勝たせてくれんわな。どうしたものか…。やがて総統閣下はひとつの結論を導き出すと、今度はマウスを中国大陸へと這わせた。かの地は毛沢東の共産党、蒋介石の国民党はもちろんのこと、シーベイサンマ、ユンナン、広西軍閥、シンチヤンといった軍閥が跋扈するアフガニスタン状態であった。そしてそれらが各所で大日本帝国の進軍を食い止めんと抵抗を続けているのである。国共合作のイベントは発生していないのだろうか。戦略マップを見る限り、共産党と国民党の勢力圏は分断され、彼らは各個での抵抗を余儀なくされているように見受けられるのだが。
釈然としないまま、Guicho Zurdoは視点をさらに北へと移した。かつてソビエト連邦だった東部1/3の地域が大日本帝国の領土となっている。

世界はこうも変わるものか…。総統閣下は感慨深げにつぶやいた。あるいは日本はアジアの覇者になれるのかも知れんな。

その時、執務室の扉が開き、息を切らせたゴルビ犬が飛び込んできた。いったい何事かと訝る総統閣下の視線に犬は威儀を正し、報告した。
「ノックもせずに申し訳ございません、閣下。危急のご報告がございまして」
「どうした」
「カール・ポテンテが総統補佐官に就任いたしました」
「そんな奴は知らねえ」
「黒猫ポンセの変名です。ブラジルに移民したドイツ猫の子孫という設定でそれっぽい名にしたようです。彼奴はヒトラーの軍事担当補佐官としてドイツの歴史を塗り替えんとしています」
Guicho Zurdoは思わず立ち上がっていた。その振動でモニターの上に飾ってあったザクのミニチュアが倒れ、構えたバズーカが虚しく天井を向いた。
「猫めはソ連でプレイするのではなかったのか!」
「遺憾ながらドイツであります、閣下」
「ええい、すぐに猫めをひっ捕えい!」
「もう間に合いません。既に彼奴の総統補佐官就任演説がはじまっています」
Guicho Zurdoはあわててラジオのスイッチをひねった。雑音の彼方から黒猫ポンセ、今はカール・ポテンテを名乗る猫の声が流れた。

…り、この国が立ち上がり、すべてのドイツ民族が幸せに暮らせる国ができる日がいつか来るという夢なのだ。
私には夢がある。ヴェルサイユ宮殿の鏡の間で、かつての敗戦国民とかつての敗戦国民に隷属を強いた者が対等に同じテーブルにつく日が来るという夢が。
私には夢がある。搾取と抑圧の熱がうずまくラインラントでさえ、自由と正義のオアシスに生まれ変わり得る日が来るという夢が。
私には夢がある。ダンツィヒに暮らす子ども達が、話す言葉ではなく内なる人格で評価される世界に住める日がいつか来るという夢が。
私には今夢がある!人種差別主義者や州知事が中央政府の干渉排除主義を唱え、ドイツ系住民を弾圧しているズデーテンラントにさえ、将来いつか幼いドイツの子ど…


ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは突然ラジオを床に叩きつけた。裏蓋が吹き飛び、中の乾電池が跳ね踊って恐怖に震えるゴルビ犬の足元に転がった。
憤怒の総統閣下は沈黙したラジオに向かって吼えた。

「何を言うか!わしに干されて逃げ出した負け猫が、何を言うのか!」


―――もうひとつのドイツ~ニュルンベルク・ナチ党大会会場

割れんばかりの拍手と地鳴りをも引き起こさんとする大歓声に包まれ、就任演説を終えたカール・ポテンテ、かつては黒猫ポンセと呼ばれた猫は改めて10万にも及ぼうかという大観衆を見やった。大いなる喝采と熱狂が渦巻く中、ポテンテは“カリスマ”とはいったい何かをその肌で感じ取るのだった。同時に、己が内側から湧き上がるような気持ちの高ぶりを覚えた。これが自己陶酔ってやつか。ポテンテは、自分に酔いしれている自身に驚いていた。
「大衆の扇動」、これも“政治力”のひとつなのだろうな。カール・ポテンテは内なる興奮を巧みに覆い隠しながら階段をゆっくりと降りた。まだ膝が震えているのに気付き、彼は苦笑した。

舞台裏に回り、いくらか落ち着きを取り戻した頃、ひとりの兎がぐつぐつ煮立つコーヒーを手にポテンテの元に歩み寄った。
「ポテンテ補佐官、見事な演説でした。さぞお疲れでしょう。喉を潤されてはいかがです?」
猫舌のポテンテは激しく湯気立つコーヒーに一瞬たじろぐが、美兎からのコーヒーの申し出を断る理由はない。彼は意を決し、熱湯コーヒーを口にした。
涙と悲鳴を力の限り堪え、ポテンテは兎にやさしく微笑んだ。
「ありがとう。君は?」
「ニナ兎(うさぎ)と申します。総統官邸付の秘書官をしています」
「訛りがあるな。どこの出身かね。オーストリアか」
「モンテネグロですわ、補佐官」
「そうか。覚えておこう」
「それよりも補佐官、言伝があるのですが。折り返し連絡が欲しいという」
「誰からだろう?」
答える代わりに、秘書官ニナ兎は一枚の紙片を渡した。
「これを読めばわかると。ご存知ですか?」
その紙にはこう書かれていた。

「鳴かぬなら 鳴くまで脅そう ホトトギス」


うんざりしたような表情で補佐官はうなずいた。
「よく知ってるよ。夢の代わりに野望だけは豊富な男だ。コーヒーありがとう。失礼する」

ポテンテは控え室に戻ると、ぎ印ドイツ帝国総統、かつては自分が仕えていた独裁者の元にダイヤルした。ほどなくして耳慣れたがなり声が電話口に出た。
「どこの馬の骨だ?」
ポテンテは暗澹たる思いになった。俺はこんな男の御側にいたのか…。彼は気を取り直し、Guicho Zurdoに話しかけた。
「お久しぶりです、閣下。ポテンテです。カール・ポテンテ」
「そんな奴は知らねえ」
ポテンテは辛抱強く返答した。
「黒猫ポンセです、閣下」
「ふん、戦力外通告された自由契約猫が今さらわしに何の用か」
やはりこの男は我慢ならん。ポテンテは先ほどの興奮とコーヒーとはまた違う熱い何かが身体を巡るのを感じた。
「何の用かって、連絡をよこせと言ったのはあなたでしょ!」
総統閣下の挑発は止まなかった。
「うわっはっはっは。それがいかんのじゃ。そういう短気が身を滅ぼす元になるんじゃ。カッカするとだな、周りが見えにくくなるんじゃ。冷静な判断力が失われるんじゃ。そして敵はその心の間隙を衝いてくるんじゃ。国政を司る者、大きな心と器を持たんといかんな君」
イライラを抑えつつポテンテは答えた。
「あなたに言われたくないですね。嫌がらせが目的ならもう切ります」
「まあまあ怒るでない。本題に入ろう。お前の就任演説の件について」
「なんです?」
「あれはパクリだな。キング牧師の演説のパクリだ。それもほぼすべてがだ。お前はわしの耳をごまかせるとでも思ったのか」
「私もパクリだってちゃんと明記してるでしょ!言いたいことはそれだけですか?」
「まだある。お前はわしに倣ってスペインとの同盟を画策しておるな。さらにはトルコとの同盟も目論んでるはずだ。そうだ、わしは何でも知ってるのだ。わしは『パパは何でも知っている』のパパよりも何でも知っ…」
ガチャ。ポテンテは受話器を戻した。聞くに値せぬ。

カール・ポテンテの高揚感はいつの間にか胡散霧消していた。


戦略大作戦~1943年9月2日-16日

9月初旬、アフリカ戦線ではカサブランカ発のアフリカ南部侵攻軍が海路伝いにリベリアを急襲。2週間後、首都モンロビアで同国軍は壊滅し、リベリアは降伏した。連合国の一翼がまた崩れたのである。
ぎ印ドイツ帝国軍の次なる侵攻目標は宗主国ベルギーが欧州を追われて逃げ込んだコンゴ地域、そして南アフリカだった。

アフリカもそうだが、こっちもどうにかせにゃならん。そう言いながらGuicho Zurdoは戦略マップを開き、ビルマ周辺を指差した。その一帯はまだブラッドレーのアメリカ軍が頑強に抵抗を続け、ぎ印ドイツ帝国軍は一進一退の苦戦を強いられていた。
総統閣下は今度はカーソルをやや東に移動させ、シャムとベトナムをズーム・アップさせた。そこには相当数の日本軍、満州軍、並びにシャム軍の軍勢が駐留している。
「彼らの協力を仰ぐ時が来たようだ」
ゴルビ犬は総統閣下が言わんとするところをすぐに解した。
「…つまり、日本と正式に軍事同盟を結ぼうと」
「うむ。ラングーンのアメリカ軍めを崩すにわれらの侵攻軍だけではやはり困難。日本の軍事協力は不可欠だ。ついでに満州とシャムのもな。東西両雄総がかりで攻めればさしものブラッドレーも耐えられまい」
「ラングーンが陥落すればビルマ一帯は抑えたも同然。反対側からは極東枢軸軍がベトナムまでを抑えている。よってこれで東南アジア地域は制覇、と」
「そういうことだ」
「しかし閣下、日本との軍事同盟はメリットだけでは収まりますまい」
「中国の件か」
「はい。新たなる敵が増えることもそうですが、対ソ戦に負けず劣らずの広大な戦線を前にすることになります」
「しかし中国の軍閥どもはソ連ほどの軍事力を持ってるわけではない。…国民党あたりはわからんがな。あれのバックにはアメリカめが付いておろうて」
「共産党も侮れない存在かと。日本軍も攻めあぐねているようですが」
「もはや弱体化したソ連の支援はなかろう。しかし裏で何かつまらん真似してるようであらば、…それはそれでいい口実になる」
抜かりないゴルビ犬は再び総統閣下の言わんとするところを解した。
「あるいは日本との軍事同盟の真意はそこにありましたか」
総統閣下は犬の賢さににやりとした。
「その暁には二大巨頭による壮大な挟撃作戦になろうて。だがわしは休戦協定はちゃんと守るよ。寝首を掻くようなことはせん。だが協定の期限が切れた後はその限りではない」
ゴルビ犬は中央アジア地域に目を向けた。ゴルビスタン帝国建設の夢もさほど遠い先ではなさそうだ…。
そんな犬の夢は総統閣下の声で現実に引き戻された。
「もうひとつ、見てもらいたいものがある」
そう言うとGuicho Zurdoは技術開発の画面を開いた。
ゴルビ犬はその画面にしばらく目を凝らし、やがて気付いた。
「閣下、これは…」
総統閣下は再びにやりとした。
「遅ればせながらわが帝国にもおひとつ、というやつだ。まだ時間はかかろうが」
「間に合いますかね?」
「戦争が終わるまでにはな」
総統閣下はそう言いながら、ハイゼンベルグとフォン・ブラウンの両博士が急ピッチで進めている研究分野に目を向けた。このふたつの科学の粋がひとつになった時、ぎ印ドイツ帝国は真の神の雷を手に入れることになろう。

総統閣下はモニターに腹黒い微笑みを投げかけるのだった。


やっぱイタリア抜きでやろうぜ!~1943年10月12日-12月10日

1943年10月12日、ぎ印ドイツ帝国と大日本帝国の間で軍事同盟が正式に締結された。東西の二大帝国が正式に手を結んだ瞬間である。日本のお付きの満州、シャムもそこに加わった。
軍事同盟の締結と同時に、ぎ印ドイツ帝国は中国大陸の各軍閥に宣戦布告し、インド、ビルマ北部に駐留していたぎ印軍団は一斉に中国領内に侵攻を開始した。
ここに、新たなるカオスが生まれたのだった。1943年10月13日現在、ぎ印ドイツ帝国を取り巻く情勢は以下の通り↓

ぎ印枢軸国:ぎ印ドイツ、スペイン、ハンガリー、ルーマニア、アイスランド、ノルウェー、アイルランド、エストニア、リトアニア、ポーランド、ロシア、グルジア、ベラルーシ、日本、満州、シャム
連合国:イギリス、フランス、オランダ、ベルギー、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、フィリピン、コロンビア
その他交戦国(組織):中国(国民党、共産党)、シーベイサンマ、ユンナン、シンチヤン、広西軍閥


戦いの業火がさらなる拡大を見せる中、ぎ印ドイツ帝国の技術・研究開発セクションは11月10日、そして12月10日に理論的大躍進を遂げた。

「秘密兵器」の扉が開いた瞬間であった。

つづく。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その9) 

経過はコチラにて。

※同時進行の戦線が複数ありますので、時間軸が多少前後する場合があります。


ソ連邦解体とぎ印連邦構築~1942年11月6日

対ソ戦勝利の祝賀会の余韻も醒めやらぬその翌日、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、戦勝によって得たソ連領(東部地域1/3)の独立とその属国化に着手した。旧ソ連領内で新興国家を乱立させてその連邦解体を目に見えた形にする、というかそれっぽく見せたいというのが総統閣下の目論見であったが、それは政治的理念や戦略的観点といったものは皆無であり、要するに長らくの対ソ戦で煮え湯を飲まされ続けたことに対する総統閣下の超個人的な復讐心からであった。このまるで大義なき政略に対し、参謀である黒猫ポンセは激しく拒絶を示したのだった。そのため、実行にあたっては先ごろよりめきめきと頭角を現してきた新たなる腹心、ゴルビ犬が担うことになった。
総統閣下の忠実なる番犬ゴルビ犬は抜かりなく命令を遂行し、 結果ポーランド、ロシア、ベラルーシ、グルジアが即日独立を果たすと同時に、ぎ印ドイツ帝国の軍門に下り、連合諸国に宣戦を布告するのである。

東欧地域のマップは今や大きく変貌を遂げた。ぎ印ドイツ帝国とその衛星国家の並びは、さながらぎ印連邦の様相を呈していた。


ダルラン提督の選択~1942年11月6日-15日

ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoが何ら生産性のない政治的謀略を振りかざす中、大英帝国の凋落を受けて事実上の連合国盟主となっていたアンクル・サムは、極めて生産的な政治的謀略を行使した。11月6日、アメリカは密かにヴィシー・フランス政府の要人であるフランソワ・ダルラン提督と交渉し、その篭絡に成功したのである。
ヴィシー・フランスはその政府中枢をヴィシーに置いたことからそう呼ばれる。大戦における立ち位置は原則中立としながらも、ヴィシー政権が生まれたのはぎ印ドイツ帝国による蹂躙から“フランス”という存在を護るがため、フランスの名を冠した軍と植民地と本陣を何とか残さんがため、という経緯があった。つまり、ド・ゴールはロンドンでごにょごにょ言っているが、今後フランスはヴィシー以南でおとなしくするから国家解体だけは勘弁してくれ、パリとかシェルブールなんかはくれてやるから軍と植民地だけは取らんでくれ、という泣きの交渉でどうにか生かされた政権なのである。ゆえにその実態としては親ぎ独政権に等しいものであった。というかそうならざるを得ないのである。ぎ印ドイツ帝国に対しわずかでも不穏な動きを見せれば、Guicho Zurdoは躊躇なくヴィシー・フランスを粉砕する心づもりであった。フランス側から最大限の譲歩を引き出し、コンピエーニュの森の交渉列車から傀儡総統アドルフ・ヒトラーがニコニコ顔で出て来たその裏で、ぎ印総統Guicho Zurdoは妙な真似したら即殺すからなと、哀れな老ペタン元帥を震え上がらせていたのである。事実、チャドやニジェールをはじめとするアフリカのフランスの植民地群がド・ゴール率いる自由フランスに寝返った折、Guicho Zurdoは真剣に腰抜けヴィシー叩くべしを検討したのである。それを抑えたのは参謀の黒猫ポンセであり、彼はもはや形骸化した国家を叩くにいったい何の意味があるのかと、肉球で激しくデスクを叩きつつ総統閣下を押し止めたのだった。
そして今、フィリップ・ペタンと共にヴィシー政権建立の中核を成したフランソワ・ダルランが、ヴィシー政府を脱しアメリカへの亡命を果たすと同時に、手土産としてその統治下にあったアルジェリアとチュニジア、そしてモロッコをヴィシー・フランスから切り離し、同地の支配権をアメリカに引き渡したのである。
その報を受けた総統閣下は開口一番こう言ったという。

「つーかダルランって誰よ?」

ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoが知るヴィシー政権の要人は、老ペタン元帥ただひとりなのであった。


傘ブランコ~1942年11月15日-1943年2月27日

ダルラン提督が何者であれ、アフリカ大陸のマップにアメリカの領土を意味する青が新たな色として加わったことに、Guicho Zurdoは最大限の不快感を表明した。わしは青が嫌いだ、青は医者に止められている、と。もちろんそれはポーズに過ぎず、内心はアフリカ大陸北西部獲得の口実ができたことをほくそ笑んでいたのである。既に大陸北東部の侵攻軍はエジプト・リビア地域を制圧しつつあり、ここでモロッコやアルジェリアが手に入れば北東部の侵攻軍は南進に専念することができる。また西部攻略の橋頭堡としてもおいしい。「カフェ・アメリカン」の主はわしが相応しい、Guicho Zurdoはこの機を最大限に利用することにした。
11月15日、総統閣下とぎ印ドイツ帝国は、政府要人の亡命と己が領土をアメリカに奪われたヴィシー・フランス政府を激しく非難すると同時に、この問題への直接介入を表明し、「アルジェリアとチュニジアを直接支配する。ついでにモロッコもな」と厳かに宣言したのであった。ペタンとヴィシー政府にこの要求に抗する術はなく、応諾以外の途はなかった。
同日、対ソ戦の終結を受けてベルリンへの帰途にあった軍勢、本来であればインド・パキスタン戦線への増軍として予定されていたハルダーを長とする軍団が、アルジェリア・チュニジア、ついでにモロッコ奪還の命を受けた。彼らはベルリンに戻り次第、直ちにロストクから海路ジブラルタルへと向かい、そこでカサブランカ侵攻の時を待つことになった。

カサブランカ攻略作戦は、翌年の1月15日に発動される。半ば孤立状態の北西アフリカ地域を落とすに苦労はなしと楽観視していたGuicho Zurdoであったが、最初の上陸作戦はあえなく失敗に終わる。のんびりカサブランカへのピクニック気分だったぎ印軍団の前に立ちはだかったのは、猛将ジョージ・パットンであった。パットン大戦車軍団をはじめとするアメリカの駐留軍は、カサブランカに上陸せんとするぎ印軍団をこてんぱんに叩きのめし、その地を踏ませなかったのである。各隊の全滅こそ免れたものの、首の皮一枚状態のぎ印侵攻軍はほうほうの態でジブラルタルへと逃げ帰るのだった。猛将パットン恐るべし。作戦失敗の報を受け、Guicho Zurdoは思わず手にしたメガネを取り落としたという。

Guicho Zurdoは作戦の全面的な見直しを余儀なくされた。パットンめを相手に真正面から挑んでは勝機はないと踏み、空挺部隊との共闘はもちろんのこと、兵糧攻めの策も採った。当該地域が孤立気味な分、唯一残ったレーダーのぎ印海軍を動員して周辺海域を制圧し、補給路を断とうというわけである。
この戦術が多少は功を奏したのか、1ヵ月後の第二次カサブランカ侵攻作戦では苦戦しながらもどうにか同地の陥落に成功する。ぎ印侵攻軍はパットン軍団を南へ南へと追い立てながら北西アフリカ地域をじわじわと制圧して逝った。
支援もなく、補給路を断たれて追い詰められたパットンの軍団はやがてアガディールで崩壊するのだった。

敗軍の猛将パットンはアフリカの地から放逐された。その時彼が「I shall return」と言ったかどうかは定かではない。


またアメリカか!~1942年11月16日-1943年4月21日

インド・パキスタン戦線におけるイギリス・フランス軍は、アフリカ戦線同様にまだ数こそそれなりに残ってはいるものの、本陣を落とされたおかげで軍事の研究・開発もままならず、もはや旧弊としか言えないような装備で戦わざるを得ない状態であった。彼らは数と最新鋭の装備で圧すぎ印ドイツ帝国軍の前に敗走に次ぐ敗走を余儀なくされ、結果的にデリー、ボンベイ、カーンプル、インドールと、次々とプロヴィンスを失って逝った。共闘のネパール、ブータン軍の存在も焼け石に水以下の役立たずであり、したがってぎ印ドイツ軍の主たる敵は、オマール・ブラッドレー率いるアメリカ軍となった。同戦線のぎ印ドイツ帝国軍の快進撃を止め、カルカッタ制圧を阻止したのは彼らである。

「またアメリカか!」

総統Gicho Zurdoは憤怒の表情でデスクを叩いた。しかし拳をデスクに振り下ろしたところで事態が好転するわけではなかった。彼は拳の痛みとともに、今やアメリカが最大の敵であることをひしひしと感じるのであった。


黒猫ポンセの野望~1943年2月8日-8月1日

黒猫ポンセがシュプレー川でのボート漕ぎの訓練をやめ、そして総統閣下からの召喚が途絶えてから既に半年以上が経過していた。その間、ぎ印ドイツ帝国はアフリカとインド方面で悪路に足を取られつつも、着実に制圧地域を拡大していた。2月8日にネパールを併合し、5月16日にはブータンも手中に収めたのである。何のメリットもないが。
4月19日、アフリカ戦線で指揮を執っていたクルト・フォン・ハマーシュタインが事故死する。史実と1週間も違わないこの訃報にGuicho Zurdoは恐怖する。次はいったい誰なのか。
世界もまた動いていた。コロンビアはなぜか日本に喧嘩を売り、やがて連合に与し、ぎ印枢軸同盟に宣戦を布告した。アメリカは山本五十六の暗殺に成功し、ぎ印ドイツ帝国の衛星国家ポーランドでは民主化クーデターが起きた。そんなポーランドの処遇は如何しましょうかとゴルビ犬は問うたが、総統閣下はわしらに刃向かわなければそれでよい、内輪揉めは捨て置けと命じた。Guicho Zurdoにとって今はポーランドなんぞにかかずらってる場合ではなかったのである。彼の頭の中はスイスのことでいっぱいなのであった。

総統閣下からの呼び出しがなくなったことについて、ポンセは特に気にしていなかった。彼はそれどこではなかったのだ。「Hearts of Iron・Ⅱ」を手にして以降、彼はそのゲームシステムを学ぶに余念がなかったのである。ポンセは政治体制と外交を学び、技術開発と軍事ドクトリンのフローチャートを読み込み、ICと生産の因果関係を覚えた。そして補給線と移動経路の効率を研究し、天候と地形がもたらす影響を計算し、戦略と戦術の相違に開眼したのである。
チュートリアルでの戦闘、それも応用編をすんなりクリアできるようになった今、黒猫ポンセはついに己が手による新たな歴史の構築に取り掛かろうとしていた。どの国でプレイするかはもう決まっている。彼はメニュー画面に戻り、プレイする国家をクリックしようとした。
まさにその時、電話が鳴った。
「ちと話がある。来い」
総統閣下からであった。

黒猫ポンセが執務室に入るなり、これまでの不在などまるで意に介した様子もなく総統閣下は切り出した。
「わしはスイスを攻めようと考えている」
また犬が余計な入れ知恵をしやがったのか、ポンセは苦々しくゴルビ犬を見やった。犬は何食わぬ顔をして窓外を眺めている。
ポンセが何か言おうとするのを、総統閣下は制した。
「お前が言わんとすることはわかるぞ。スイスを攻める根拠がない、あそこは中立国です、とでも言いたいんだろ」
「それもそうですが、そもそもなぜスイスが中立国として存在するようになったかご存知なんですか?」
「要するに山ばっかで戦略的価値がなかったから列強の蹂躙対象にならず、結果中立国の道を歩むことになった。それもわしは知っている」
「ならばなぜそんな所を攻めようなどと?」
総統閣下は答える代わりにゴルビ犬に話しかけた。
「ゴルビ犬よ、わしの腕に似合う時計とは何だろうか?」
ゴルビ犬は恭しく答えた。
「それはもちろんロレックスの腕時計でございます、閣下」
総統閣下はゴルビ犬の返事に満足し、再びポンセの方を向いた。
「うむ。そういうことなのだポンセよ。わしはロレックスの時計が欲しいのだ。だからこそわしはスイスを手にせねばならぬのだ」
早くも黒猫ポンセは爆発した。
「あなたカシオのG-Shockで充分満足してるでしょ!無理矢理なこじつけはおやめなさい!」
総統閣下は譲らなかった。
「ついでにスイス銀行に預金したいのだ」
「『スイス銀行』なんてものは存在しないんですよ!」
「お前は『ゴルゴ13』は虚構の世界とでも言うのか。デューク東郷が愛用する『スイス銀行』はこの世に存在せんと」
「スイスの数あるプライベート・バンクの総称としてそう呼ばれてるだけです。『スイス銀行』そのものは存在しないと言ってるんです。というかあなたそうやって何が何でもスイスを攻めようというおつもりですか?だったら私を呼ぶ意味はないでしょ。私が何を言っても変えるつもりはないんだから。早いとこそこの犬と一緒に意味のないスイス侵攻作戦でも練られたらどうです?価値のない山々がいっぱい手に入るといいですね」
黒猫ポンセの批判に総統閣下は動じなかった。それどころかニヤニヤしてゴルビ犬と視線を交わしている。
「さすがわしに代わって新たな歴史の構築を目論む猫は言うことが違う」
ポンセは怪訝な表情を浮かべた。
「なんです?」
総統閣下はポンセに向き直り、指を突きつけた。
「わしはゲシュタポに命じて、ずっとお前の行動を監視していたのだ」
「それで?」
「わしは知ってるぞ。お前は密かに『Hearts of Iron・Ⅱ』を手に入れて、己が新たな歴史を築かんとしているな。わしは何でも知っているのだ。わしは『パパは何でも知っている』のパパよりも何でも知っているのだ」
「別に秘密でもなんでもないでしょ!私も参戦するって前に言ったじゃないですか!」
「そういえば『パパは何でも知っている』でママ役をやったジェーン・ワイアットが10月下旬にお亡くなりになられた」
「話をごまかさないでくださいよ」
「彼女の魂が安らかに眠らんことを。ラーメン」
「ジェーン・ワイアットの魂に失礼ですよ」
「彼女の魂が安らかに眠らんことを。焼きそば」
「そういう読み手を験すようなギャグはやめたらどうですか」
総統閣下はついに声を張り上げた。
「今日お前を呼んだのはだ、ゲームシステムもマスターしたしそろそろプレイしようかなという頃合のお前に一言言ってやるためじゃ!よく聞けポンセ、お前はこのゲームに勝てん!勝てるわけがない!勝てる余地など微塵もない!お前は負け猫ポンセじゃ!わしを出し抜こうなど100年早いんじゃ!」
黒猫ポンセは冷ややかに流した。
「私が勝てないという根拠は?」
「それはわしが何でも知ってるからじゃ。わしは『パパは何でも知っている』のパパよりも…コラ!待たんか!」
聞くに値せぬ。ポンセはくるりと踵を返すと部屋を出ようとした。背後から総統閣下の罵声が飛ぶ。
「ポンセ、お前がなぜ勝てぬか教えてやろう。お前には政治力がないのじゃ!言っておくがわしはトロピコで散々政治力というものを学んで…」
総統閣下の声は扉が閉まると同時にかき消された。

もはや定見なき独裁者に構ってる暇はない。黒猫ポンセは足早に自宅へと向かった。ポンセはもうぎ印ドイツ帝国の命運には興味がなかった。彼には彼のための新しい歴史が待っているのである。

7月17日、ベルリンに温存していた部隊を総動員してスイスへとなだれ込んだぎ印ドイツ帝国軍は、2週間のうちに同国を陥落、そして併合した。

ぎ印ドイツ帝国軍がスイスへ攻め入った同じ日、黒猫ポンセの歴史は1936年の半ばを迎えつつあった。彼の戦いは既にはじまっていたのである。

つづく。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その8) 

経過はコチラにて。

※同時進行の戦線が複数ありますので、時間軸が多少前後する場合があります。


バルトの失楽園~1942年2月4日-13日

イギリス海峡西部におけるアメリカ海軍との戦いの敗北がもたらしたその暗雲は、ぎ印ドイツ帝国軍全体に暗い影を落とすのであった。
海戦と直接的な因果関係はないにせよ、その2月4日、ファイユーム攻略の指揮を執っていたヴァルター・フォン・ライヘナウ死亡の報がベルリンを襲ったのである。しかもその死は戦闘によるものではなく、史実通り不慮の事故によるものであった。このライヘナウの命運を知ったぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、もし将軍たちの命運がライヘナウのように史実通りに向かうのであらば、いずれテオドール・アイケやエドアルト・ディートルもその歴史の必然に身を預けることになるのかと暗澹たる思いになるのだった。数多の戦いを経て、両将官とも今や戦闘には欠かせない人物と成長していたのだ。それを失うことになるとすれば痛い。かなり痛い。
戦線もまたどんよりとした暗雲に覆われていた。東部戦線は二度目の冬将軍を迎えており、戦いには勝てどその進軍速度は目に見えて低下した。そして雪こそないものの、アフリカ・中東戦線では悪路にその行く手を阻まれていた。各戦線のぎ印ドイツ帝国軍は結果的に前進はしているわけだが、過去の電撃侵攻に比べればそれは膠着に等しい遅々とした歩みであった。
悪いことは重なるものである。2月12日、トゥール、ノヴゴロド、ヤロスラヴリ、ソルタヴァラ、コストロマ、ノヴォウゼンスク、ヴォロネジ、スヴォボダ、サランスクでパルチザンどもが一斉蜂起。その叛乱の火の手は瞬く間に隣接プロヴィンスに拡がり、さながら反ぎ独フェスティバルの様相を呈していた。その鎮火には治安維持のために残されていたハイスマイヤーの部隊が奔走することになったが、追っては叩き、沸いては叩きのしらみつぶし作戦を展開するハメとなった。

今やぎ印ドイツ帝国のすべての動きが鈍化したのである。

そんな中、ベルリンの総統官邸の執務室では、黒猫ポンセが総統Guicho Zurdoと向き合っていた。総統の傍らにはポンセと同じく参謀のゴルビ犬が控えている。
ポンセは先ほどの総統閣下の命令の意味を問うた。
「閣下、私にはエストニアとリトアニアを独立させる理由が解せません。今なぜそれが必要なんです?目的はいったい何です?」
総統Guicho Zurdoはその問いに淀みなく答えた。
「わしらの領土は確かに拡大してるが、あまり肥大化しすぎても手に余るでな。国土の膨張はすなわち統制の低下を意味する。統制の低下はレジスタンスの活発化を誘発する。現にそれは起きているではないか。しかも新たな敵が増え戦線が拡大の一途を辿る中、さして戦略的に重要でもない地域に兵を割いて駐屯させておくのは実にもったいない話じゃ。自治さえ与えればおとなしくするというならわしはそうする。属国に甘んじるとはいえ、独立は独立だしな。それで満足するなら奴らの好きにさせてやろうということじゃ」
「もっともらしい説明ですが、何か腑に落ちませんね。なぜそれをエストニアとリトアニアという微妙な国に与えるんです?ポーランドには?デンマークは?」
総統閣下は慈しみの微笑をポンセに向けた。
「お前もわからん男だなポンセよ。もちろん国力を鑑みればポーランドあたりを独立させた方がはるかにお得なのはわしも知っている。だがお前はかねてからリトアニアは心の故郷と公言してはばからないではないか。だからわしはあえてリトアニアを選んだ。お前のためにわしはリトアニアを選択したのだよ。ついでにエストニアも独立させてやれば、これでバルト三国が甦るではないか。お前の大好きなバルトの楽園再びじゃ。すべてはわしの親心じゃ。わしは部下思いのやさしい独裁者なんじゃ」
ポンセは総統閣下の優しい微笑を無表情で撥ね返した。
「失礼ですが閣下、あなたにそんな侠気はないはずだ」
総統閣下はそれでも微笑みを絶やさなかった。
「これはちょっと早めのクリスマス・プレゼントなんだな、うん」
「閣下、本当の理由を」
総統閣下の微笑が消えた。
「よく聞けポンセ。すべてはグルジアの筆髭親父がいけないんじゃ。レニングラード、スターリングラード、果てはモスクワが陥落してなお万歳しないグルジア野郎がいけないんじゃ。わしらの兵がまたもや冬将軍に悩まされているのは奴のせいじゃ。ソ連が無駄に広いのも奴のせいじゃ。戦線がのびのびになったのも奴のせいじゃ。ここにきてパルチザンどもがポコポコ出てきたのもすべては奴のせいなんじゃ。だからわしは個人的にスターリンめに嫌がらせをしてやることにした。もはや戦略云々ではない。わしは超個人的に筆髭親父に嫌がらせをしてやるんじゃ。奴が手にした領土をわしが奪ってわしが独立させてわしの手下にしてしまうんじゃ。奴が一番恐れる連邦解体をわしの手で実行してやるんじゃ。その手はじめがリトアニアとエストニアじゃ。民族自決権なんぞ知らんわい。わしはわしが満足するためにバルトを独立させるんじゃ。そしてスターリンめはその崩壊のプロセスを遠巻きに見ながらなーんも手が出せんというわけじゃ。うわーっはっはっは」
ポンセは激昂した。
「つまらぬ私情で一国の命運を弄ぶとはいったい何事ですか!」
「何を言うか。これは私情ではない。私怨じゃ。わしはわしの恨みを晴らすためにそうする。スターリンめを困らせたいんじゃ。ヒイヒイ言わせてやりたいんじゃ」
「帝国千年の計を成さんとする人間がそんな狭い了見とは情けない!」
「ふん、わしは既に6年余を統治しているわい」
「1%にも達してないでしょうが!」
総統閣下はふかふかソファーの背もたれに身を預け、傍らのゴルビ犬の方を振り向き、尋ねた。
「さてゴルビ犬よ、お前はわしの処断をどう思うか」
ゴルビ犬は恭しく総統閣下に頭を垂れ、言った。
「閣下が愛読されている『ゴッドファーザー』において、マイケル・コルレオーネはこのような趣旨のことを言っています。『すべての営みは私的なものであり、すべての行為は私的な動機に基づく』と。閣下はそのコルレオーネ・ドクトリンを見事実践されたのです。頂点に立つ者が頂点に立つ者の言を実現化されたのです。これを偉大と言わずしてなんとしましょうか」
ゴルビ犬の賞賛の言葉に、総統閣下はいたく感動するのだった。
「うむ。犬はわしのことをよくわかっとる。やはり犬は人間の最良の友じゃ。猫とは大違いじゃ」
黒猫ポンセがゴルビ犬を睨みつけながら言った。
「閣下、いい加減目を覚まされたらどうです?その犬の甘言に弄され、われわれはひとつの艦隊を失い、ひとつの潜水艦隊に致命的な打撃を受けたのですぞ」
総統閣下は聞く耳を持たなかった。
「黙れ。それと引き換えに敵の重巡を3隻も轟沈せしめたではないか」
「代償が大き過ぎるでしょうが!」
「いいからさっさとリトアニアとエストニアと独立させんか。わしはこれから犬の散歩じゃ」

その日の午後、シュプレー川で手漕ぎボートの訓練に勤しむ黒猫ポンセのオールを漕ぐ手は、いつになく力が入っていたという。

2月13日、リトアニアとエストニアは独立と同時にぎ印軍事同盟の軍門に下り、その旗の下、連合をはじめとする数多の国々に宣戦を布告するのだった。


World War~1942年4月30日-5月8日

ぎ印ドイツ帝国のポーランド侵攻から端を発したこの戦争は、今や全世界を巻き込んだ一大カオスと化していた。

ぎ印枢軸国:ぎ印ドイツ、スペイン、ハンガリー、ルーマニア、アイスランド、ノルウェー、アイルランド、エストニア、リトアニア
連合国:イギリス、フランス、オランダ、ベルギー、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、リベリア、ペルシャ、イラク、イエメン、オマーン、ネパール、ブータン、フィリピン
共産国:ソビエト連邦、モンゴル、タンヌ・トゥヴァ
その他交戦国:メキシコ、パナマ



そしてそのカオスは時として思わぬ国の思わぬ行動を誘発する。4月30日、失った領土を取り戻さんとしたのか、あるいは冬戦争の復讐か、はたまたぎ印ドイツ帝国に蹂躙されたソ連に明日はなしと踏んだのか、フィンランドが突如ソ連に宣戦を布告するのである。それをフィンランドのぎ印軍事同盟加入の意思表示と考えたGuicho Zurdoは満面の笑みで北欧からの使者を待つのだが、それは一向に現れることはなかった。業を煮やした総統閣下はならばと逆に使者を派遣し、ぎ印同盟への加入を持ちかけるのだが、それはあえなく断られてしまう。フィンランドはこの冬戦争ならぬ春戦争を、自分たちの戦争と見なしていたのだった。負けが込んでいるとはいえ、大国ソ連に噛み付くその根性、さらには火事場泥棒的な図々しさ、中堅以下ながらフィンランド侮り難しとGuicho Zurdoは考えた。いずれどうにかせねばならぬ日が来るのかも知れない、と。
侮り難いのはフィンランドだけではなかった。今やぎ印同盟軍のみならずフィンランドも相手にしなければならなくなったはずのソ連が、5月8日、なんと日本に宣戦布告するのである。
これだけ圧されてなお新たな敵と戦う余力を残すソ連、Guicho Zurdoはその底力に驚愕すると同時に、東部戦線の終わりはまだまだ遠いことを悟るのであった。しかもその終幕を勝利で飾れる保障はどこにもないのだ。


Forword, go! go! go!~1942年4月12日-6月2日

アフリカ、中東方面に展開するぎ印軍団は、悪路に悩まされながらも、なんだかんだで進撃を続けていた。イラクはバクーからの侵攻軍とテルアビブからの侵攻軍の挟撃作戦の前に、首都バグダッドをはじめ次々と拠点を失い、4月12日、クウェートの護りに就いていたイギリス軍の全滅を受け、ついに降伏する。そして密かに立案されていたアラビア半島制圧作戦(ただしサウジアラビアを除く)が実行に移され、空挺部隊がマスカットを急襲、これを制圧する。さらにテルアビブ攻略作戦から切り離された別働隊がスエズ運河から紅海を縫ってアラビア海に抜け、海沿いに面したプロヴィンスを次々と確保して逝くのだった。
5月10日、戦争状態にありながらも実態として軍など皆無に等しいオマーンが降伏。6月2日には辛抱強く山岳地帯をクリアしたペルシャ侵攻軍が、ついに同国を陥落させたのだった。
ペルシャの降伏を見届けた侵攻軍はその後二手に分かれ、一方は南方からソ連領の中央アジア地域を詰め、一方はカラチに落ち延びたイギリス政府を叩くべくそのまま東方への進軍を続けた。それは事実上の「インド・パキスタン攻略作戦」の幕開けであった。

この果てしなく拡大の一途を辿る戦線に危惧し、黒猫ポンセは総統閣下に進言するのであった。後でも成せることを今急ぐことはない、戦線の延びに対しての防衛力が脆弱であり、これ以上の東進は敵の侵入を容易にさせる危険を孕む、と。しかしGuicho Zurdoはたゆまぬ攻撃こそ最大の防御、今叩かぬは後の敵の回復を意味する、インドがわしを呼んでいる、と言って聞かなかった。黒猫ポンセは、そんな総統閣下の主張の影に犬の存在を敏感に嗅ぎ取るのであった。ゴルビ犬が総統閣下にまた余計な進言をしたのは間違いなかった。
もはや自分の話を何ひとつとして聞かなくなってしまった総統閣下にポンセは失望していた。しかしその失望の一方で、ある考えがポンセの脳裏をよぎった。それは途方もない考えであり、大胆極まりない発想であった。一瞬でもそんなことを考えた自分自身にポンセは驚き、すぐに打ち消そうとするのだが、それはいつまでもポンセの頭にこびりついて離れないのだった。


陽はまた昇る~1942年7月18日-8月13日

7月18日、戦闘行為は結局ひとつもないまま、「元の状態への復帰」を条件にメキシコがぎ印ドイツ帝国に和平を打診した。断る理由はないとしてGuicho Zurdoはそれを承認。ぎ印ドイツ帝国はメキシコとの和平合意に至った。
その後を追うように8月8日、パナマもまたぎ印ドイツ帝国との和平を望み、今度もGuicho Zurdoはそれを受諾した。
5日後の13日にはイギリス政府の遷都先であるカラチを総力戦で陥落させ、チャーチルは再び遷都を余儀なくされた。さらに同日、イエメンが降伏した。

ここにきてぎ印ドイツ帝国はにわかに活気付いていた。Guicho Zurdoは脇にゴルビ犬を従え、並み居る将軍たちを前に戦略とは何か、政治力とは何かをとうとうと語るのである。ゴルビ犬は総統閣下の言葉を一言も聞き漏らすまいと熱心に耳を傾け、将軍たちもこの明るい兆しは本物かも知れぬと、いつになくGuicho Zurdoの辻説法に聞き入っていた。ただひとり、黒猫ポンセだけが心ここにあらずといった感じでぼんやりと窓外の風景を眺めていた。2月ほど前に頭に浮かんだあの考えが、ずっとポンセの心の片隅を支配していたのだった。
果たして私にそれが可能なのだろうか…。ポンセがその考えを実現化することを躊躇するのはそこにあった。彼はまだ自信がないのだった。
どっと笑い声が沸き起こり、黒猫ポンセは現実に引き戻された。どうやら総統閣下がお得意の独裁ジョークを言ったらしい。いつもはお追従で無理に笑う将軍連も、朗報が続く今日ばかりは本気で笑っているようだ。総統ジョークを笑いそびれるという失態を犯したのは黒猫ポンセただひとりであった。そんなポンセを抜け目ないゴルビ犬が見逃すわけがなく、ポンセはゴルビ犬が総統閣下に何やらそっと耳打ちするのを見た。それを受けて総統閣下がじろりとポンセを睨んだ。糞犬め、心の中でポンセは毒づいた。
…もしいつの日か、私が行動に移さねばならない時が来るのなら、その時必要なものとはいったい何なのだろう。ポンセは再び沈思した。…それはいくらかの勇気と、いくらかのPCスペックと、いくらかのお小遣いだ。ポンセはそう結論付けた。内ふたつの条件は既にクリアしている。私に必要なのは、そう、勇気なのだ…。

再び将軍たちの笑い声が沸き起こった。黒猫ポンセはまたもや総統ジョークを笑いそびれるのだった。


寒い国から来た特使~1942年11月5日-6日

11月5日、Guicho Zurdoとぎ印ドイツ帝国に、戦争がはじまって以来最大の朗報がもたらされた。
ぎ印ドイツ帝国のみならず、フィンランド、大日本帝国、果てはルーマニアにまで国土を蹂躙されたソ連が、残された領土だけでも守るべく、ついに条件付きでの和平を求めたのである。それはスターリンとソ連にとっては、事実上の降伏に等しい選択であった。
三度目の冬将軍を迎えることになるのかと頭を抱えていたGuicho Zurdoにとってそれは願ってもない話であり、スターリン直筆の親書を携えた使者をニコニコ顔で出迎えるのだった。総統閣下は完全征服の選択など目もくれず、講和条件を受諾する旨をスターリンの使者に伝えたのである。そしてその報は全世界を駆け巡り、大日本帝国をはじめとする他の交戦国もそれに倣い、一斉にソ連に向けた銃を下ろすのだった。
長らくの対ソ戦はここに終結した。ぎ印ドイツ帝国はソ連領の西側を、大日本帝国は東側を獲得し、ソ連本国は領土を1/3に縮小した上に、強大な両帝国に挟まれて細々と共産主義国家の運営を続けていくことになる。
Guicho Zurdoが心から憎んだ宿敵、グルジアの筆髭親父ことヨシフ・スターリンは失脚してどこぞへと消えたか、消されていた。その行方を知る者は誰もいなかった。新生ソビエト連邦の政府首班には外相のヴャチェスラフ・モロトフが収まった。

いずれにせよ、泥沼の東部戦線、悪夢の対ソ戦はぎ印ドイツ帝国の勝利をもって終結したのである。

ベルリンの総統官邸は歓喜に包まれていた。テーブルにはシャンペンとキャビアが並べられ、Guicho Zurdoはこの偉大な勝利についてフィデル・スカトロもといカストロに負けずとも劣らずな長演説をぶった。その後の祝賀会も紫煙と熱気と将軍たちの談笑で溢れ、遅れてやってきたフォン・パウルスにゲーリングが事の次第を満面の笑みで説明し、ヒムラーがハイドリヒを相手に占領地における「飴と鞭」論を冗談交じりに語っていた。そんな将軍たちの間を縫って、黒猫ポンセはようやく総統閣下の元にたどり着いた。
「おめでとうございます、閣下」
総統閣下は振り向き、頷いた。
「長く苦しい戦いだった。正直、わしは勝つ自信を失いかけておった」
「予想以上に頑強でしたからな」
「すべてはスターリンめのせいじゃ。わしはこの恨みを忘れん。なのでわしはこれから奴に壮大な復讐劇を見せつけようと考えている。そこでポンセよ、お前の出番じゃ。直ちにポーランド、ロシア、ベラルーシ、グルジアを独立させよ。ウクライナもそうしたいところなのだが、あいにくルーマニアがウクライナの独立に要するプロヴィンスをいくつか抑えてるので叶わん。無念じゃ」
ポンセは爆発しそうな思いを抑えて反撥した。
「そういう意味のない政治はもうやめませんか?あなたがソ連解体の意味を持たせて独立させたところで、ゲームのAIはそこまで解しませんよ。それにスターリンはもう失脚して表舞台から消えてるんです。いったい誰に復讐しようというんですか」
「AIがわからんでもわしがわかってればいいんじゃ。それにスターリンは消えたというだけで死んだという話は聞かん。仮に粛清されたとしても奴はわしの心の中でまだ元気に生きておる。それが我慢ならんのじゃ。わしはわしをひどい目に遭わせたスターリンめに復讐しないと気が済まんのじゃ。奴の元ソ連をバラバラにしてやりたいんじゃ」
それでもポンセは堪え、説得を試みた。
「閣下、現実的な側面からお話しましょう。どこにせよ、独立を承認する場合、必ず国民不満度が増加するんです。血と引き換えに手にした領土を手放すことを国民は歓迎しないのです。それに他の占領地におけるパルチザン濃度が飛躍的に増加します。さらにはICも労働力も資源の備蓄も低下します。それまではわれわれが占有できた財産も、独立すればその国家のものになりますから。これらの低下は軍需関係にモロに影響しますよ。あまりいいことないんですよ、独立という選択は」
「それでも構わん。やれ」
ついにポンセが爆発した。
「あなたはとことんまでわからない人だ!」
総統閣下は答える代わりに後方を振り向いた。
「ゴルビ犬、こちらに」
すぐさまゴルビ犬が総統閣下の下に駆け寄り、額づいた。
「閣下、ご命令を」
「どうやらこの黒猫君はわしの命令を聞きたくないらしい。なのでお前がやってくれんかな?さっき話した国家どもの独立の件だが」
「御意」
総統閣下は大喜びだった。
「やはり犬はいい。そうじゃ、いつかお前に中央アジアの好きなところをやろう。そこで夢の『ゴルビスタン帝国』を建設するがよい」
ゴルビ犬は感動に打ち震えた。
「は。この上なきありがたき幸せ」
総統閣下はポンセの方に向き直り、言った。
「お前にはそうだな、セントヘレナ島でもくれてやろう」
「いりませんよ!閣下、あなたの選択はすべて間違っている!!」
ポンセは荒々しく踵を返し、いったい何事かと振り向く将軍たちの視線を背に浴びながら祝賀会を後にした。

自宅へと向かう道すがら、黒猫ポンセは固く決意した。総統閣下の定見のなさにはもう我慢ならん、もう迷いはない、今こそ行動を起こす時なのだ。
自室に戻った彼は直ちにPCを起動させ、Googleの検索欄に文字を打ち込んだ。目的の品はすぐ見つかった。長らく価格を比較検討したポンセは目的の品を購入する店をようやく決定し、注文のボタンを厳かに押すのだった。
ブツの到着までは数日かかろうが…。それまでの間に、黒猫ポンセは己が手による新たな歴史の構築をいかな形で成すか、心の中でシミュレートすることに決めた。

数日後、黒猫ポンセの元に注文の品が密かに届けられた。それはスウェーデンのパラドックス・インタラクティブという会社が開発した、「Hearts of Iron・Ⅱ」という第二次世界大戦を舞台にした戦略シミュレーション・ゲームだった。

そしてその日以来、黒猫ポンセはシュプレー川に姿を現さなくなったという。

つづく。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その7) 

経過はコチラにて。


北アフリカの星~1941年10月2日-12月7日

10月2日、ぎ印ドイツ帝国との通商の裏で連合及び共産国に軍事協力という三枚舌外交の発覚により、ペルシャ(現・イラン)はぎ印帝国総統Guicho Zurdoの怒髪天を衝く怒りを買い、その大地をぎ印機甲師団のⅣ号戦車どもに蹂躙される運びとなった。同日、総統閣下が怒りに任せて同時進行で命じた北アフリカ侵攻作戦の発動を受け、ふたつの空挺部隊がそれぞれマルタ、キプロスをつつがなく制圧。その翌日、ジブラルタルからはイベリア大陸棚南部の海戦で撤退を余儀なくされた南アフリカ侵攻軍が、何事もなかったかのように「北アフリカ侵攻軍」と看板を差し替え、前回同様エーリヒ・レーダーのぎ印ドイツ海軍の護衛の下、北アフリカ方面へ向けて出航した。
空挺部隊が抑えたマルタで3日ほど鋭気を養ったぎ印侵攻軍は二手に別れ、一方はアレキサンドリア、もう一方はテルアビブを目指した。その間にあるスエズ運河の河口はぎ印ドイツ海軍が鎮座ましまし睨みを利かすという布陣を敷き、ここに本格的な北アフリカ侵攻作戦が高らかに狼煙を上げるのであった。
スエズ運河河口で構えるぎ印ドイツ海軍の網には、迂闊にも側面を晒したイギリス海軍の大艦隊が餌食となった。先のイベリア大陸棚南部での海戦で自信を付けたレーダーと麾下の艦隊は、情け容赦ない徹底した攻撃をもって敵艦隊に甚大なる損害を与えるのであった。

空母:アーガス、イラストリアス、アークロイヤル
戦艦:ロドニー、ラミリーズ、キング・ジョージ5世
巡戦:レパルス
重巡:ケント、ドーセットシャー、ホーキンス
軽巡:ディスパッチ、カーリュー
駆逐:第26駆逐隊
輸送:海軍第2兵員輸送隊、エンパイアー・スプレンダー隊



大英帝国が誇った艦どもが次々とアレキサンドリア海域の底に葬られる間、怒涛の上陸作戦を敢行したぎ印地上軍団を前に、アレキサンドリアとテルアビブの防人たるイギリス、フランス軍勢はろくろく抗戦もできぬまま敗走。スエズ両岸の要所の護りの浅さを視て取ったGuicho Zurdoは、すなわちそれは周辺地域一帯の防衛の脆弱さと結論付け、直ちに上陸部隊を展開させ、周辺プロヴィンスに分散させつつことごとくの確保を命ずるのであった。
もはやぎ印帝国千年の計などどこへやら、今そこにある怒りのみを戦略に昇華させんとするGuicho Zurdoに、東方の同盟である日出づる国の動向などまるで眼中になかった。

その日はおもむろにやってきた。

1941年12月7日、日本は同盟の満州、シャム(現タイ)と共に、アメリカ合衆国、イギリス、オランダに対して宣戦を布告したのである。ここにきてようやく大巨人アメリカが、世界規模の戦乱の渦中にその身を投じることになったのである。アメリカは直ちに貧乏な属国どもを従えてこれに立ち向かうことを高らかに表明。しかしその振り上げた拳は、大日本帝国の真珠湾攻撃によっていきなり出鼻を挫かれるのであった。

その日の午後、シュプレー川で手漕ぎボートの訓練に勤しむ黒猫ポンセの元に、日本の真珠湾攻撃の一報が届けられた。それを耳にしたポンセは、思わず手にしたオールを取り落としたという…。


Dear America~1941年12月8日-14日

―――ベルリン・総統官邸

窓際のデスクにふんぞり返ったGuicho Zurdoは、挨拶もそこそこにポンセに切り出した。
「日本がドンパチはじめおったわ。イギリス、オランダ、それとアメリカにな」
黒猫ポンセは偉そうにふんぞり返る総統閣下を見据えながら、静かに、しかし力強く主張した。
「直ちにアメリカに特使を派遣してください。今ならまだ間に合います。外相はノイラートでしょう?彼なら友好関連のスキルが高い。望みはあります。われらがアメリカと戦う意思のないことを示すのです。この期に及んで不可侵条約など叶うわけもないでしょうが、友好度を高めるなりアメリカに靡いた通商なりで戦争回避の途はまだあるはず。成り行き上戦争に突入したとしても、事前にこうした手を打っておけば早期の和平に持ち込めるでしょう。うまくいけば一戦も交えずして手打ちにできるかも知れない。さあ閣下、早くアメリカに特使を」
Guicho Zurdoはフンと鼻を鳴らし、ポンセの要請を一蹴した。
「特使の派遣は無用。アメリカが戦う相手は日本。わしらじゃない」
他人事のようなその口調に、ポンセは総統デスクを肉球で激しく叩いて抗議した。
「何をのん気なことを言ってるんですか!われわれは日本の同盟なんですよ!!」
「政治上のな。その同盟は直接的な軍事協力までは謳っておらん。そういう意味ではわしらはまだ日本とは正式に同盟締結しとらんのじゃ。だからわしらがアメリカと対峙せにゃならん義務はないのだよ。アメリカとて連合の一員として参戦するわけではない。この戦いの構図はあくまでも『日本対アメリカ、そして連合』なのだ。わしらの戦争とは別口だ」
ポンセは身を乗り出して総統閣下に詰め寄った。
「いずれアメリカは連合に参加しますよ」
「しないよ」
「なぜそう言い切れるんです?」
「お前こそなぜそう言い切れるのだ」
「それが歴史の必然だからです。あなただって史実を知らないわけではないでしょう」
「その史実で言うなら、わしらがアメリカに宣戦布告せん限り何も起きんというわけだ。千歩譲って戦争になったとしてもだ、奴らが欧州戦線に登場するまであと2年以上の猶予がある」
ポンセは激しく首を横に振った。
「そんな悠長に構えてる時間はないのです。閣下、われわれは既に連合の本陣を落としてます。イギリスとフランスはいかに失地回復を図るかに重きを置いているでしょう。そうなると対日戦を好機と見なした連中は、一刻も早いアメリカの同盟参加を打診するはずです。われらの宣戦布告に関係なく、アメリカは間違いなく参戦の途を辿ってるんですよ。そして参戦の暁には、アメリカは大西洋から欧州本土を目指すでしょう。これはわれわれにとってはニ正面作戦を意味します。それだけは断固として避けるべきです。東西両極の戦線を凌げるだけの軍事力がわれわれにありますか?西欧の拠点にいったいどれだけの戦力を残してあります?主力のほぼすべてをアフリカとロシアにぶつけてるんですよ。その状況でノルマンディーなりカーンなりから上陸せんとするアメリカ軍をいったい誰が食い止めるんですか?リストもマントイフェルも遠い彼方ですよ。しかも北アフリカ侵攻作戦を展開してる今、東部戦線と併せて鑑みれば実質三方面作戦に等しいんです。だからこそわれわれはアメリカと戦争をしてはならないんです。閣下、お願いですから特使の派遣を」
懇願するポンセを、総統閣下は冷ややかに見つめた。
「わしがアメリカの連合参加がないと言ってるのはそこにある」
「は?」
「そんなことをしたらアメリカ自身が対日本、対ぎ印ドイツのニ正面作戦を展開することになるではないか。本来の戦争相手への戦力を割いてまでわしらに挑むような無茶はすまいて。アメリカは対日戦に専念するはず。だからわしらはこれまでと何ら変わることなく、東部とアフリカを詰めてればよいのだ。これで安心、多い日も安心」
この著しく定見を欠いた総統閣下の見立てに、ポンセは再び激昂した。
「閣下、あなたは何もわかっておられない!アメリカの底力をまったくわかっておられない!!彼らはニ正面作戦を充分にこなせるだけの物量を有した国です!それができる超大国なのです!!」
「ふん、わかってないのはお前の方じゃ。本陣を失ったイギリスとフランスに与してアメリカに何の得がある。敵に加えて世話のかかる味方が増えるだけじゃ。それならピンでひとつの敵と戦った方がよほど得策だろうが。どちらが正しいかはいずれわかろう。わしはこれから『Vietcong』で遊ぶ時間じゃ。帰れ」

この総統執務室でのやりとりから3日後、アメリカは手下のフィリピン、リベリアを伴って連合軍に参加し、ぎ印軍事同盟諸国への宣戦を厳かに布告するのであった。さらに追い討ちを掛けるように14日、連合軍とは別にパナマとメキシコがぎ印ドイツ帝国に宣戦を布告した。

結局、わかってなかったのはGuicho Zurdoなのであった。


Irish Raphsody~1941年12月15日-1942年1月14日

アメリカの宣戦布告で動揺の色を隠せない将軍たちを前に、Guicho Zurdoはそれでも図々しく熱弁を振るった。アメリカの参戦は想定外ではあるが恐るるに足りぬ、連合国の一員になったのは近所付き合いの義理的なものであり、われわれとの戦争は極めて消極的な姿勢になろう、それでもあえてニ正面作戦を展開せんとするならアメリカはよくよくの馬鹿である、そしてむしろわれらの脅威はアメリカよりもパナマとメキシコである、彼らは連合に与することもなくこのぎ印ドイツ帝国に戦いを挑んだ、その命知らずな無謀さを侮ってはいけない、奴らは自分が死んだことにも気付かずわれわれを倒そうとするだろう、と。
それは総統閣下一流のジョークであったが、将軍たちはとても笑う気分にはなれなかった。しかし総統ジョークへの無反応は東部戦線逝きを意味しかねないため、彼らは仕方なしにお追従の笑みを浮かべるのだった。おっさんどもの弱々しい微笑が漂う中、ひとり黒猫ポンセだけが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
この異様な空気の御前会議が終わった後、ポンセはGuicho Zurdoに呼び出された。渾身の総統ジョークを笑わなかったことを責められるのかと思いきや、用件はまるで違うものだった。

「直ちにノルウェーとアイルランドを独立させよ。もちろんわしらの属国としてだが」
「は?この時期にですか?いったいなぜ?」
「ノルウェーはここにきて史実と同じくパルチザンが活発化してきたのでな。島送りのハンガリー人どもが鎮圧にあたってるが、情勢の不安定さは目に余るものがある。なので、どうせならこの際史実通りクヴィスリングに預けてしまってもよかろうと思うのだよ」
ポンセは頷いた。
「ヴィドクン・クヴィスリングですか。英和辞書で『売国奴』の代名詞で載ってるような男ですよ。大丈夫ですかね?」
「史実通りなら奴は『売国奴』だが、わしが創る新たなる歴史には『救国の士』としてその名が刻まれよう」
「なるほど、ノルウェーの件はわかりました。しかし、アイルランドの独立というのが解せないのですが」
ポンセのその疑問に、総統閣下は真摯な目で応えた。
「わしは小学5年以来のU2のファンでな」
「それは知ってますが、戦略とは関係ないでしょう」
「ポーグスも好きなんじゃ」
「それも関係ないでしょ」
「カースティ・マッコールも大好き」
「…本当の理由はいったい何です?」
「エンヤの『The Sun in the stream』は隠れた名曲だよ。お姉さんのモイア・ブレナンのクラナドも素晴らしいグループだった。『Theme from Harry's game』が忘れられない」
「閣下がアイルランドを独立させたい本当の理由を教えてください」
総統閣下は目をそらし、くるりと後ろを向き、背中でポンセに語りかけた。
「ポンセよ、アイルランドの独立はすなわちアイルランド島全体の独立なのだ。これが何を意味するか。つまり、旧イギリス領の北アイルランド、ベルファストもポータダウンも、ひとつのアイルランドになるのだよ。わしは彼らの積年の悲願を叶えてやりたいんじゃ」
ポンセは胡散臭そうに総統閣下の背中にを見やった。
「ついでに、独立したての脆弱な防衛力はアメリカの最初の標的としても格好と。閣下、あなたはアイルランドを捨て駒にしようとしてますね」
「人聞きの悪いことを言うな。捨て駒ではない。当て馬じゃ」
「同じですよ!閣下、それはあまり意味がないですよ。アメリカの欧州本土上陸を一時的に先延ばしにはできるでしょうが、いずれ時間の問題です。しかも占領されたアイルランド島は連合の橋頭堡に利用されますよ。意味ないどころか逆効果です。あらゆる方面の攻略を容易にさせてしまう」
「時間稼ぎができればそれでいい」
「成り行き任せの戦略はおやめください!」
Guicho Zurdoはここでようやく振り向き、ポンセに指を突きつけた。
「お前はまったくうるさい男じゃ。だからわしは犬を飼うことにした」
「は?」
突然の話にポンセはポカンとした。総統閣下は続けた。
「ヒトラーめが飼ってる犬を知ってるかね?」
「…ああ、ブロンディのことですか」
「うむ。あれを見てわしも犬が欲しくなった。それも忠実なやつがな」
「私が猫と知っててそういうことをしますか?」
「ミッキー・マウスは鼠の分際で犬を飼っとる。わしが飼ってはならん理由はどこにもない。…おい、入ってきていいぞ」
総統閣下が呼びかけると、すぐに扉が開き、白衣を着た研究者然とした犬が現れた。犬はポンセの存在をまるで無視し、総統閣下の前に駆け寄ると恭しく額づいた。その頭をなでながら、総統閣下は言った。
「紹介しよう。ゴルビ犬(いぬ)じゃ。今日からわしの参謀になる」
「参謀ですと!!」
「そう、お前と同じく参謀じゃ。ただしわしに逆らってばかりいるお前と違って、ゴルビ犬は実に忠実な参謀なんじゃ。犬はいいぞお。ご主人様の言うことは絶対に逆らわない。わしははじめから犬を参謀に登用すべきだったんだな」
「忠実なだけでは参謀の意味がないでしょうが!」
ポンセの絶句を無視し、総統閣下はゴルビ犬に問いかけた。
「なあゴルビ犬よ、わしはノルウェーとアイルランドを独立させようと思うのだが、どうだろう?」
ゴルビ犬はしきりに頷きながら言った。
「素晴らしい!非の打ちどころのない実に素晴らしいお考えであります!閣下、あなたは史上稀にみる天才戦略家です」
「おおそうか。やはりそうか。ゴルビ犬よ、わしは実によい参謀を手に入れた。おーよしよし、おーよしよし」
もはやお犬馬鹿と化した総統閣下に耐えられず、ポンセは叫んだ。
「閣下!その犬はあなたのためになりません!!」
「お前の反抗もわしの健康のためにならん。さっさとノルウェー、アイルランドを独立させい」

アイルランドを餌にアメリカを釣ろうというGuicho Zurdoの腹黒い企みは、虚しい試みに終わった。
予想よりもはるかに早く、しかも餌を華麗にスルーして翌年の1月14日、アメリカ軍の先遣隊がアイルランド島には目もくれず、一路グレートブリテン島を目指し、プリマスの守備隊を蹴散らして同地を占拠したのである。


海狼の遠吠え~1942年1月15日-2月1日

アメリカが敢行したそのぎ印ドイツ帝国軍のお株を奪うような電撃作戦は、ベルリンに大いなる衝撃を走らせた。Guicho Zurdoは激しくうろたえながらも、念のために配置していたブレストの兵を急遽プリマスへ差し向け、苦戦しながらもこれを殲滅し、同地の奪還に成功した。しかしながら、アメリカのやる気をまざまざと見せつけられたGuicho Zurdoは、やむなく戦略の見直しを余儀なくされるのであった。
作戦会議とはいってもこれといった対応策もなく、場は重苦しい空気が流れた。やがて総統閣下が口を開いた。
「今回のアメリカの強襲上陸作戦は小手調べといったとこだろう。問題は次だ。もっと大規模な編成で来よう。これに抗する案は誰かないか?」
さらなる沈黙の後、ゴルビ犬が提案した。
「閣下、メーメルで遊んでいるバルト艦隊に大西洋の哨戒にあたらせたらいかがでしょうか。規模的にレーダーの艦隊には及びますまいが、輸送船団と護衛の駆逐艦どもには充分対応できましょうぞ」
その提案をすぐさま黒猫ポンセが制した。
「その背後にはイギリス以上の大艦隊が控えてるぞ。しかも新型のな。旧弊のバルト艦隊では太刀打ちできんよ」
ゴルビ犬はさらに反撥した。
「目下の懸念はアメリカ海軍の艦隊ではなく、わが領土を奪わんとする陸戦部隊であります。奴らが上陸してからでは遅いのです。これを水際で抑えるほか最善の案はありましょうか?確かにバルト艦隊だけでは不安ではありますが、現在商船の撃沈作戦にあたっている海狼デーニッツのUボート隊を帯同させれば解消されましょう。バルトには輸送船団の攻撃のみにあたらせ、敵戦艦への対応はUボートが担うのであります。これでいかがでしょう?」
その意見に総統閣下はしきりに頷いた。
「さすが犬は賢い。うむ、それが最善の策とみた」
ポンセが叫んだ。
「閣下!アメリカの海軍力を侮ってはなりません!彼らはイギリス海軍以上の脅威です!!」
「黙れ。お前の慎重論は朝日新聞以上の脅威じゃ。さっさとバルトと海狼に指示せい」

ゴルビ犬の甘言に弄されたGuicho Zurdoの見通しもまたどこまでも甘く、その甘さは2週間後、辛い悲劇となって昇華した。
2月1日、イギリス海峡西部におけるアメリカ海軍の大艦隊との総力戦の結果、ぎ印帝国が誇る第二のティルピッツである巨大戦艦フリードリヒ・デァ・グロッセ、巡洋戦艦シュレジエンをはじめとする12隻のすべての艦が轟沈、バルト艦隊はここに消滅した。さらに支援のカール・デーニッツ率いるUボート隊も、デーニッツの旗艦を残してすべて海の藻屑と化したのである。
この海戦でアメリカ側も3隻の重巡を失ったものの、恐るべき損害を被ったぎ印勢に比べればはるかに浅いものだった。
ぎ印ドイツ帝国にとって、この海戦は大戦はじまって以来最大の敗北となったわけだが、その痛手はあまりにも大き過ぎた。ほうほうの態でゲントの基地へ逃げ帰る海狼デーニッツの唯一の艦をモニターで観ながら、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、思わず手にしたマウスを取り落としたという…。

その夜、総統閣下は失意のあまりブログへのエントリーの上梓を取りやめ、mixiへも寄らず、メッセンジャーもオフにし、果ては携帯の電源まで落として早々に布団の中へと潜り込むのであった。

つづく。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その6) 

経過はコチラにて。

※同時進行の戦線が複数ありますので、時間軸が多少前後する場合があります。


Guicho Zurdoドクトリン~1940年12月6日-1941年6月6日

日付に対する己が迷信深さを理由に、春まで待てという黒猫ポンセの正論を闇に葬り、無謀とも言える冬季大攻勢を命じたぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdo。その願いはクリスマスまでにモスクワを落とし、お正月までにレニングラードを陥落させ、節分までにスターリングラードを確保し、ひな祭りまでにバクーの占領せよというものであった。しかし、ロシアの冬将軍と赤軍の抵抗はGuicho Zurdoが考えていたほど甘っちょろいものではなかった。雪に足を取られ、敵に足を止められ、各軍の前進は牛歩の如く遅々としたものであり、隣のプロヴィンスに移動するだけで1ヶ月以上も費やすという始末であった。さらに備蓄量を度外視した攻勢による物資消耗も甚大であった。
それでもなおぎ印ドイツ帝国が局地戦で勝利し続けているのは、ひとえにロンメル、モーデル、グーデリアン、マンシュタイン、ハウサーといった、きら星の将官たちの戦闘能力にほかならなかった。彼らは無茶な命令に抗することもなく、極寒の前線でひたすら戦い続けたのである。
結局、総統閣下の願いは何ひとつとして叶わず、モスクワが陥落したのは翌年の2月6日、レニングラードの崩壊は春を迎えた4月6日だった。こうなるともはやスターリングラードの陥落は子どもの日よりもずっと先になろうことは間違いなく、バクー陥落に至ってはいったいいつのことになるのやら皆目見えぬ状況に陥っていた。
それでも図々しいGuicho Zurdoは一向に反省の色を見せず、うつむく将軍たちを前にこう言ってはばからなかった。この前倒しの攻勢があったからこそ史実を覆し、かくも早い時期に要所陥落を成し得たのである、あえて日付にこだわったのは諸君らに対する叱咤激励および戦意高揚であり、したがって陥落予定日の遅滞もすべて想定内の事象である、要するにわしは天才戦略家なのである、と。そして彼は渋面の黒猫ポンセに向かってこうのたまうのである。
「これが『政治力』というものじゃ。わしのトロピコでの屈辱は今に贖われるのじゃ」
ポンセはGuicho Zurdoの言う“政治力”とやらは、すなわち手漕ぎボートへの道であると、密かに心の中でつぶやくのであった。

節分前に落とすはずだったスターリングラードは、6月6日にようやく陥落した。


Hungarian Raphsody~1941年4月20日-5月20日

相も変わらず全軍を首都ブタベストに集結させたまま、まるで動く素振りも見せぬミクロシュ・ホルティとその軍に対し、Guicho Zurdoは業を煮やしていた。見かねたポンセは、かつて関が原の戦いにおいて、動かぬ小早川秀秋にキレた徳川家康がその陣に鉛弾をブチ込みようやく重い腰を上げさせたという歴史に倣い、いっそのことハンガリーに攻め込んではどうかと恭しく進言した。さすがにGuicho Zurdoもその案は受け容れ難しと否定した。同盟国への発砲で大事なルーマニア様の叛意を招くわけには逝かないのである。それ以前にシステム的にその行為が叶わない。とはいえ、このままハンガリー人どもの怠惰を見過ごすわけにも逝かなかった。
その気になれば、この引き篭もり軍団を動かすのは容易ではあった。要はぎ印ドイツ帝国がハンガリー軍の統帥権を獲得しさえすればいいのである。そうすれば彼らを思いの場所へ動かし、好きな命令を下すことができる。それでもGuicho Zurdoがそうしないのは、ただ動かす駒が増えてめんどくせえ、という単純明快な理由からだった。広大な東部戦線の指揮に勤しむ中、よその国の軍隊まで動かすのはさすがに億劫なのである。
しかし、Guicho Zurdoは妙案を思いついた。

「奴らを島送りにするのじゃ」
ポンセは怪訝な顔で問い返した。
「島送り、と言いますと?」
「ハンガリー人どもをアイルランドやらグリーンランドに送るのじゃ。ああいう場所でパルチザンに蜂起されると厄介でな、いちいち戦線から軍を切り離して鎮圧に向かわせにゃならん。アイスランドも独立させたはいいが無防備に過ぎる。いつまたイギリス人どもが奪いにくるかわかったもんではない。そこでだ、奴らハンガリー人どもを防人としてかの地に常駐させるのだよ。KZの看守の任をウクライナ兵やラトビア兵に担わせたのと同じようなアレだな」
「なるほど、悪くはない案です。さっそくホルティに軍統帥権の委譲を打診します」
「島送りが終わったらさっさと統帥権は返してやる。だがその頃にはもう手遅れじゃ。ホルティの兵どもは遠く手の及ばぬ離れ島。奴らは船を持たんからどうにも手が打てんという寸法じゃ。うわっはっはっは」
こうしてハンガリーの軍統帥権を獲得したGuicho Zurdoは、4月20日、わずかな戦車隊や守備隊を除いたハンガリーの陸戦全軍を首都ブタベストから追い立て、ロストクへと向かわせたのであった。
翌月4日、わけのわからぬままロストクに到達したハンガリー軍勢は、そのまま有無を言わさず輸送船団に詰め込まれ、アイルランド、ノルウェー、グリーンランド、アイスランド、マジョルカといった、総統閣下の言うところの「僻地群」へと送られた。海軍のない内陸国ハンガリーに彼らを本土に引き戻す術はなく、それは片道切符に等しい旅路となったのである。

再びミクロシュ・ホルティの手に采配権が戻された時、ブタベストに残っていたハンガリー陸軍は、ふたつの戦車隊と守備隊、そしてひとつの騎兵隊だけであった。


遥かなる東部戦線~1941年6月27日-9月9日

6月27日、対ソ戦開始から1年を迎え、ぎ印ドイツ軍勢が到達できたのはようやくタンボフであり、ムーロムであり、ソルタヴァラまでであった。モスクワ、スターリングラード、レニングラードの三大要所を落としはしたものの、赤軍と共産党はひたすら東方への撤退と遷都を繰り返しつつ、抵抗を続けるのであった。ロシア大陸はかくも広大であり、スターリンに降伏の意思はまるで見られない。ここにきてさしものGuicho Zurdoも、この戦いが長期戦になることを認めないわけには逝かなくなっていた。
果てしなく延びる戦線マップを見ながら、黒猫ポンセは唸った。
「むう、グルジアの筆髭親父、粘りますな」
総統閣下は恨めしげにポンセを見やった。
「奴をウラル山脈の向こう側に追っ払いさえすればわしの勝ちと言ったのはお前だよな」
「『恐るるに足りぬ』と申したのです。『勝てる』などとは一言も申しておりません」
「それは勝ちと言ったのと同じだよな」
「私をスケープゴートにする気ですか!」
「手漕ぎボートよりはマシだろ」
「手漕ぎボートの方がマシです!それよりこの先どうなさるおつもりですか。このまま延々と東へ追撃なさるので?」
「戦っている限り敗北ではない」
「ウラジオストクまで行く破目になりますよ」
「ウラジオストクだろうがサハリンだろうがどこまでも逝ってやるわい。わしは銭形警部よりも執念深いんじゃ」
「サハリンはともかく、毛ガニ村の蹂躙だけはどうかご容赦を。私の故郷です」
「毛玉村か。心しておこう」
「毛ガニ村です」
「毛ジラミ村だな。それよりバクーの陥落はまだか。いい加減石油の備蓄が危ういのだ。ルーマニア様からの支援だけではもはや足りん」

バクーのようやくの陥落を見たのは9月19日であった。ひな祭りまでに落とすはずが、実に半年以上も遅れての達成である。いずれにせよ、これで総統閣下の目下の悩みのひとつは解消することとなった。バクーは潤沢な油田を擁していたのである。

その日の午後、黒猫ポンセは灰色に塗りつぶされたバクーの先を肉球で指し、総統閣下に尋ねた。
「ふむ。次はペルシャ(現・イラン)攻めということになりますか」
それは問うというよりは確認の意味だったのだが、ポンセの予想に反し、総統閣下は首を横に振った。
「ペルシャへの宣戦布告の根拠がない。わしは理由なき戦争は好かん。なのでバクーの連中には西へ向かってもらう。目指すはバグダッドじゃ」
なるほど、イラクというよりはクウェートの石油狙いか。それからエルサレムを抜けてスエズに向かい、後は定石通り北アフリカ攻略になるのだろう。ポンセはその旨を尋ねるが、しかし今度もまた総統は首を横に振るのだった。
「確かにそのルートで進軍させるが、そいつらは陽動じゃ。本隊は大西洋を南へ回り、南アフリカから詰める。ケープタウンから強襲上陸をかけ、南アを制圧。その後、ひたすらアフリカ大陸を北上じゃ」
「それはまた壮大な…」
「大陸を股に掛けた挟撃作戦じゃ。実はそのための軍勢は既に待機しておるのだ」

その南アフリカ侵攻軍は、ジブラルタルでじっと号令の時を待っていた。


海逝かば~1941年6月7日-9月20日

スターリングラードの陥落を見届けたGuicho Zurdoは、来たるアフリカ攻略作戦に向けて軍編成を開始した。東部戦線の主たる要所を陥落させたこれからは、東への追撃は残存赤軍の掃討作戦と見なし、戦線から多少の兵を割いてもよかろうと判断したのである。
こうして新たに編成された南アフリカ侵攻軍には、強襲上陸作戦には欠かせないぎ印海兵隊をはじめ、ヴァルター・ネーリングやフェリックス・シュタイナー、ゼップ・ディートリヒなどの豪腕が抜擢された。ゼップ親父を豪腕と見なすかについては意見の分かれるところかも知れないが、将官にして地図すらまともに読めず、服装規定を黙殺して金ピカづくめにし、敗北懲罰のカフタイトル剥奪にはそれを携帯便器に納めてベルリンに送り返し、負けてなお昇進を要求するこの男は豪腕に値するのである。
いずれにせよ、バクーの陥落によって石油問題が解決した今、機は熟したと見たGuicho Zurdoはついに南アフリカ侵攻命令を発動。ジブラルタル港から解き放たれた侵攻軍はエーリヒ・レーダー率いるぎ印ドイツ海軍の護衛の下、大西洋を南下しはじめたのである。
それからほどなくして、事件は起きた。
総統閣下が何よりも恐れていた、イギリス海軍の大艦隊と遭遇したのである。
その報を受けたGuicho Zurdoは口にしたコーヒーをモニターとキーボードに撒き散らしつつ、緊急回避命令を出そうとするが時既に遅く、イベリア大陸棚南部は大戦はじまって以来最大級の海戦の場と化した。
お願いだから輸送船団だけは沈めんでくれ、そこにはゼップ親父だの猛将シュタイナーだの余人には代え難い貴重な人材が搭乗しているのだと、モニターに泣きついて懇願する総統閣下であったが、システムは無情にも淡々と戦闘を経過させて逝くのであった。
そして、奇跡が起きた。
なんと、数・兵力ともに劣るぎ印ドイツ海軍が、イギリスの大艦隊に勝ってしまったのである。エーリヒ・レーダーが轟沈せしめた艦は以下の通りである。

戦艦:デューク・オブ・ヨーク
重巡:フロービシャー、カンバーランド、サフォーク
軽巡:カレドン、コロンボ、シーリーズ、カラドック、アキリーズ、カーディフ、カルカッタ、カリプソ
駆逐:第46駆逐隊、第7駆逐隊、第6駆逐隊、第21駆逐隊



もちろん、ぎ印ドイツ海軍もケルン、ライプツィヒの2隻の軽巡、ふたつの駆逐隊を失うこととなった。しかしそれを差し引いても大金星であり、しかも輸送船は無傷なのである。だが今は勝利の余韻に浸ってる場合ではない。当該海域のどこぞに増援がいるやも知れぬと、臆病な総統閣下は勝利してなお撤退命令を出し、軍勢をジブラルタルへ帰投させるのであった。奇跡が何度も続くわけはなく、仮に突破できたとしても、後に続くのは無防備に等しい物資運搬船団なのである。こんな危険な海域を何度も渡らせるわけには逝かなかった。

結局、何もせぬまま南アフリカ侵攻作戦は中止の憂き目となるのであった。

それにしても、とGuicho Zurdoは考えた。劣勢のわがぎ印海軍が勝利したのはなぜだろうか。海戦ドクトリンの研究もそうだが、勝因は何よりも巨大戦艦ティルピッツの存在であろう。ビスマルクだけであの戦いを凌ぐことはできなかった。総統閣下は生産画面のタブを開き、そこで第二のティルピッツともいうべき戦艦フリードリヒ・デァ・グロッセの建造が着々と進んでいることを確認し、満足するのであった。


国境の先~1941年10月1日

ロンメル、モーデル、ガイル・フォン・シュヴェッペンベルグらの南部方面軍勢は、やっとの思いで到達したバクーでしばしの休息を取っていた。その後彼らは西へと向かい、国境の山脈を越え、イラク領内へと突入する手筈となっていた。
テントを出たヴァルター“火消し屋”モーデルは、南の国境の先にあるペルシャをぼんやりと眺めた。カラチに逃れたイギリス政府を叩くならペルシャ領内の突破が手っ取り早いのだが、と彼は思った。しかし同時に、モーデルは総統閣下がペルシャと戦争を起こす気がないこともわかっていた。多少定見のなさは見受けられるものの、ぎ印の総統は大義なき戦争を嫌うお方だ。彼は邪神かも知れないが、悪魔ではないのだ。ペルシャとは友好度こそ低いが、ささやかながら石油取引もある。そして何よりも中立国家なのだ。戦争を仕掛ける根拠がない。…そうであるなら、わが軍の通行許可を取るべく早い段階でペルシャと交渉すべきだったのだ。モーデルはため息をついた。イギリス本土陥落から時間はいくらでもあったろうに…。
「『政治力』を標榜する割に、根回しに弱いのだな。…まあよい。どの途われらが目指すはバグダッドだ」
火消し屋はそう呟くと、テントへ戻るべく踵を返した。その時、視界の端に捉えた風景に違和感を覚え、彼は再び南を振り向き、その違和感の正体を探った。
モーデルはわが目を疑った。国境の先のペルシャ領内を闊歩しているのは、過日自分たちが蹴散らしたはずの赤軍であった。しかもイギリス軍の姿もある。さらにはフランス軍、ネパール軍らしき影までチラチラしている。
なんだなんだこれは。いったいどういうことだこれは!伝令!!伝令!!!

モーデル中将からの緊急連絡を受け、改めてペルシャの外交状況を確認したベルリンのぎ印情報部は絶句した。ペルシャは頻繁にぎ印ドイツ帝国と貿易を重ねる一方で、イギリスやフランス、果てはソ連にまで軍の通行許可を与えていたのだった。
総統Guicho Zurdoは激昂した。
「ペルシャを攻めい!今すぐじゃ!!今すぐにじゃ!!!」
「は。しかしイラクは…」
「東部戦線から手近な軍団を切り離して引っ張ればよい!海からの詰めはジブラルタルで燻っとる南アフリカ侵攻軍に預けい。…ええい、こうなったらもう連中を北アフリカ侵攻軍にしてスエズ運河を挟んで分散上陸じゃ!ルントシュテットの軍勢にはアレキサンドリアを獲らせい。ゼップ親父らはテルアビブじゃ。空挺にはマルタとキプロスを確保させい。これらすべての作戦を1時間以内に開始じゃ!さあ逝け!!」

1時間後、火消し屋モーデルはベルリンからの電文を受け取った。

「火消シハ無用。テヘランヲ火ノ海ニセイ」



今ここに、中東・アフリカを舞台にした新たなる戦いが勃発した。

つづく。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その5) 

今回より趣向を変えて物語調へ。

経過はコチラにて。


Guicho Zurdoはかく語りき~1940年12月4日

黒猫ポンセは、自分がぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoに呼び出された理由が何なのか、おおよそ察知していた。目下の懸案は対ソ戦である。恐れていた冬を迎えてしまった東部戦線をこれからどう凌ぐか、閣下はまだ決めかねているのだろう。ええい、閣下は何を迷っておられるのだ。普通に考えれば、過酷な冬将軍の真っ只中で侵攻をかけようなど愚の骨頂だ。もちろん赤軍どもの反攻はあろうが冬季はあくまで防戦に徹し、雪解けの日までじっと待つのだ。そして満を持しての春季大攻勢でモスクワを落とし、あのグルジアの筆髭オヤジをウラル山脈の向こう側に追っ払うのだ。これ以外に何があるというのか。
閣下が何をお考えなのかは知らないが、この己が論だけは譲るわけにはいかぬと、ポンセは固く心に誓うのだった。そうして彼は意を決し、かのアドルフ・ヒトラーをも傀儡として操るGuicho Zurdoの執務室に足を踏み入れたのだった。

謎の総統閣下は窓外の雪を眺めていた。ポンセの入室に彼は頷き、ソファーを指し示した。ポンセが座るのを見届けた総統は窓際から離れ、乱雑なデスクの周りをウロウロしつつ話を切り出した。
「バルトの楽園はどうだったね?」
「は。寝坊とキノコと発熱の忘れ難い旅になりました」
「何か旅の思ひ出は残したかね?」
「ええ。メーメル川のほとりでぎ印ドイツ帝国歌を斉唱してやりましたぜ。ウェーハッハッハ」
「今度その笑い方をしたら処刑する」
「は…」
「さて、君をここに呼んだ理由はほかでもない。冬を迎えた東部戦線の件だ。君がかねてから主張しているように、冬季は防戦に徹し、春季大攻勢をもって決着をつけよというその論、わしもそれは正しいと思っている」
黒猫ポンセは安堵のため息を押し殺した。緊張が解け、深々とソファーに沈む自分を感じた。
「…しかしだ、これまでわがぎ印帝国軍は常に先手必勝を旨としてきたことを思い起こすがいい。ポーランド、デンマーク、オランダ、ベルギー…。われわれは常に相手に先ずることで勝利を重ねてきたのだ」
ポンセの安堵が凍りついた。
「ちょっとお待ちください。この時期にロシアの奥深くに攻め入ることがどれだけ無謀なことか、閣下もよくおわかりのはずです。かつてあの冬将軍を前にナポレオンが敗れ、ヒトラーも屈した歴史というものを閣下も知らぬわけではありますまい。よもや同じ轍を踏もうなどと…」
「ポンセよ、わしは心配なのだ」
「もちろん赤軍の反攻はありましょう。しかし、わが軍はそれを堪えるだけの底力は有しているはずです。敵とてT-34はまだ投入できますまい。われわれは急ぐことはないのです。春の訪れまでお待ちください」
総統は歩みを止め、ポンセを正面から見据えた。
「違うのだ。わしが言ってるのは軍事のことではない」
「は?」
「君の言う冬季防戦&春季大攻勢論には私も賛成なのだ。しかしわしは迷信深い男でな。ゴッドファーザーよりも迷信深い男なのだ。だからわしは朝起きて首が痛いのはイギリスのせいだと思っているし、ポッケに入れたタバコが折れているのは南アフリカの陰謀だと考えておる。階段で足の小指を強打して涙目になったのは自由フランスの策略と信じて疑わないし、夕飯の焼き鮭の塩気がきつかったのはオマーンの仕業に違いないと決めてかかってる。わしがそう考えてしまうのは、それもこれもわしが迷信深い男だからだ」
「…はあ」
「こんな迷信深いわしだから、日付についても非常にこだわっておる。わしはカレンダーの赤口だの大安だの、そういうことはわからん。しかし迷信深いわしとしてはクリスマス前にモスクワが落ちてないのは何とも落ち着かないし、お正月前にレニングラードが陥落しないのは悪い前兆のような気がしてならん。節分前にスターリングラードが確保されないのは非常に縁起が悪いことと考えるし、ひな祭りまでにバクーが占領されないのはきっと不吉な知らせがあるに違いないと夜も眠れなくなるのだ。だからポンセよ、お前の主張は非常によくわかるのだが、ドン・コルレオーネ以上に迷信深いわしとしては、ここで前進命令を出さぬわけにはいかんのだよ」
ポンセは頭がぐらぐらしてきた。なんだこの根拠は。星占いよりタチが悪いではないか。そして追い討ちをかけるように、総統閣下は言い放った。
「ついでに言うとだなポンセよ、お前は戦争経済というものを知らんようだ」

黒猫ポンセは総統閣下の背後に、手漕ぎボートの影を見るのだった。


雪原の狐~1940年12月5日

テントの外に出たエルヴィン・ロンメルは、ハリコフの雪原を踏みしめながら考えていた。なぜ私はここにいるのだろう。本来であらば、私は“砂漠の狐”として灼熱のアフリカ戦線で英軍を震え上がらすはずなのに。それがこの極寒の地で冬を迎えようとは…。
思案顔のロンメルを、共闘する“火消し屋”ヴァルター・モーデルが見咎めた。
「浮かぬ顔してどうした。史実と違う布陣が気になるかね。しかしそれを言い出したらキリがないぞ。ルントシュテット元帥が今どこに配置されてるか知ってるか。スペインのマジョルカ島だぞ。マジョルカ島。そんな歴史があるかね。ん?」
「それはそうなのだが…」
「いずれにせよ、こうして冬が訪れた以上はしばらくのんびりできる。少なくともぎ印の閣下はチョビ髭の駄目伍長よりは定見ある方だ。よもやこの冬将軍の中を進めなどとは言うまいて。赤軍の突っつきはあろうが大したことはない。ゆっくり構えて、このハリコフでクリスマスと新年を迎え、春まで長らくの休養だ。元気出せ」
「まあな…」
その時、伝令がベルリンからの電文をロンメルに手渡した。短い電文を読んだロンメルがみるみる硬直した。その異変に気づいたモーデルが尋ねた。
「何と?」
ロンメルは引きつった笑顔で振り向いた。
「誰が定見あるお方だって?」
電文にはこうあった。

「我、『雪原ノ狐』ノ奮闘ニ期待セリ。進撃セヨ」



同日、極寒の中、東部戦線のぎ印ドイツ帝国軍は一斉に進撃を開始した。その兵士たちの悲鳴は、ベルリンのGuicho Zurdoの耳には一向に届かないのであった。

そして黒猫ポンセは、忘れかけていたボート漕ぎの勘を取り戻すべく、シュプレー川に繰り出していた。

つづく。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その4) 

経過はコチラにて。

※同時進行の戦線が複数ありますので、時間軸が多少前後する場合があります。


Romanian Rhapsody~1940年6月27日-28日

6月27日、錯乱のルーマニアの対ソ宣戦布告を受け、ルーマニアからの石油に依存するぎ印ドイツ帝国は同国を護るべく、対ソ戦へと突入した。緒戦で勝利を収め、順調に駒を東方に進めんとするぎ印ドイツ帝国であるが、その先に拡がるソ連邦の広大な大地を前に、改めてこのなし崩しの対ソ戦が正しい選択だったのかどうか思い悩むGuicho Zurdoなのであった。これってどうなのだろう、黒猫ポンセよ。今さら遅いけど。

そもそもルーマニアはなぜ戦争を選択したのか。史実であれば、同国は駄目国王カロル2世の駄目統治のせいでソ連やらハンガリーやらブルガリアやらに領土削り取られてズタボロになり、駄目国王の下野をもってようやく失地回復を賭けての枢軸参加、という流れのはずだ。ソ連の要求に銃口をもって返答するほどの性根などあろうはずもないのだが。フィンランドが冬戦争を耐え抜いた事実が彼らの励みになってしまったのだろうか。…よもやわが国の参戦を見越しての打算的な布告ではあるまいな。
まあいい。いずれにせよカロル2世はスターリンと戦うことを選択し、ルーマニアの石油に依存するぎ印ドイツ帝国としては、戦車や戦闘機の駆動を護るべくソ連を叩くほかないのである。

ぎ独ソ開戦の翌日、この戦争の発端である問題児ルーマニアは、われらぎ印軍事同盟の参加を打診。うむ。喧嘩を売ったはいいが、さすがにピンでソ連と渡り合うは困難と解したか。その国策は無謀なのか慎重なのかよくわからんが、まあよろしい。入りたまえ。…ん?ちょっと待て。このGuicho Zurdo、何だかルーマニアに踊らされてるような気がしてならないのだが。
そんな私の疑念を振り払おうとでもするように、ルーマニアはぎ印同盟加入以降、やたら石油の提供を申し出るようになった。しかも無償で。おお、これはちょっとうれしいぞルーマニアよ。お前は己が立ち位置というものをよくわかっている。そうなのだ。ソ連を叩くのは結局われらぎ印ドイツ帝国なのだ。わが帝国の敗北はすなわちルーマニアの死を意味する。だからルーマニアは力の限りわが軍を支援しなければならない。石油を出し惜しみしたその瞬間から、お前の国に明日という日はないと思え。…つーかこれは石油やるからお前ら必死こいて戦えというカルロ2世のメッセージなのだろうか。
しかしながらこのルーマニア、石油の提供のみならず行動でもぎ印同盟国としての規範を示すのだった。ルーマニアは長らくハンガリーやブルガリアと国境係争を抱えており、戦争がはじまるまではずっと国境線沿いに軍を配置していたのだが、対ソ戦がはじまるや否や国境防衛を投げ打って全軍を対ソ戦に集中さすべく北上を開始したのである。うむ、いい心がけだ。その崇高なる精神は賛美してやまないものの、悲しいかなルーマニア軍、その力量ではソ連領への侵攻は困難。国境線の防戦で手一杯となろう。だがそれでよい。いずれわれらの南方軍勢が援軍に駆けつけようて、それまでどうにか持ち堪えるのじゃ。

そんな健気なルーマニアに比べるは糞ハンガリーである。お前らいつまでどうでもいい国境付近に軍勢集結させてやがんだコラ。さっさと東方へ進軍させい。しかし私の血圧上昇なんぞ馬耳東風のホルティ閣下である。同盟の旗印に背を向け、ひたすらあらぬ方角の防衛に余念がない。

ぬぅ、覚えておれ。


イタリア発:イタロ・バルボの謎めいた死~1940年6月29日

そんな奴は知らねえ。


東部戦線異状茄子~1940年6月30日~7月30日

対ソ戦開始から1ヶ月余、ぎ印ドイツ軍はじわじわとソ連領に踏み込み旧ポーランド領(東部)の先まで駒を進めていた。軍勢は3つ。北部方面軍はメーメル周辺からラトビアの下方沿いに旧リトアニアを蹂躙しながら進軍。さすがにソ連もわが帝国との戦争を抱えながらのラトビア潰しは愚行と判断したか。その分の戦力がこちらに向かうことになるが、まあいい。
中部方面軍の当座の目標地点はミンスクである。できれば夏の終わりまでにそれを成し、冬の訪れの前にスモレンスク到達を果たしたいところだ。同地の制圧はモスクワへの王手を意味するのである。
糞地獄は南部方面軍であった。同軍勢は東方キエフを目指しつつ、同時に南下するソ連軍からルーマニアを護るという困難な任を負っている。ソ連の主力はまずは脆弱なルーマニアを潰さんと、次から次へと軍勢を北東から送り込もうとするのである。こちらもそれを見越してお馴染み韋駄天ハインツや“ヒトラーの火消し屋”ことヴァルター・モーデル、「利口なハンス(kluge Hans)」やら「ハンス・ギュンターHans Gunther)」やらと呼ばれながらも名前には一切ハンスが付かないギュンター・フォン・クールゲ、アイケ親父という愛称とは裏腹に強制収容所管理の髑髏部隊のボスとしてのし上がった強面テオドール・アイケ等々、層々たる顔ぶれを揃えて対峙させる。しかしそれでも数に勝るソ連軍に対しては苦戦を強いられ、どうにか勝てども牛歩並みの進軍を余儀なくされた。われらの到達まで、ルーマニアは持ち堪えられるのだろうか…。

むう、こうなったらアフリカや中東はしばらく忘れよう。既にジブラルタル駐留の空挺部隊を先遣に、海峡の向こう側の自由フランスの植民地の強奪作戦を開始していたのである。空挺と海兵とメノルカ奪還に携わっているルントシュテット軍団は残さにゃなるまいが、他はメーメルに引き揚げさせるほかあるまい。ソ連軍は思った以上に手強い。つーか多い。これに抗するためには可能な限りの兵力を東部戦線に投入せねばならぬ。さもなくばこの戦争、勝てん。

かくして、南欧ののびのび戦線を謳歌していたぎ印軍団の多くが、過酷な遥かなる東部戦線へと送られる羽目になった。

ジブラルタルの港を出航する最後の輸送船団から、ひとりの兵が勇気を振り絞って叫んだ。

「失礼ながらGuicho Zurdo閣下は、前線で戦う兵の気持ちがわかっておられない!」

合掌。


ホルティの糞野郎~1940年8月1日

なんだかんだでぎ印軍団は着実にソ連領を侵食していた。しかし勝ってはいるものの、それと引き換えにじわじわと拡がりつつある戦線にも不安を感じていた。戦線の拡大はすなわち兵力の分散を意味する。大丈夫なのだろうか。それに加え、われわれは国境防衛に踏ん張るルーマニア軍の元にも駆けつけねばならないのだ。そういや忘れてた。しばらく動向確認してなかったが、奴ら無事なんだろうな。国境への戦力の投入具合からして敗走ってことはないだろうが、そろそろ限界だろう。堤防決壊前に到達せねば。間に合えばよいのだが。不安な面持ちでルーマニア方面をチェック。すると…。

うわあああ!ルーマニア強えええ!!ソ連軍押してるじゃねえか!!!

なんとルーマニア、防戦どころかソ連領に突入して攻勢を掛けており、先遣がまもなくオデッサに到達しようとする勢いなのである。おお、これは…。ルーマニア軍は私が思っていたほど弱軍ではなかったのだ。素晴らしい。実に素晴らしい。もしやルーマニアのソ連への宣戦布告というのはちゃんと勝算があってのことだったのだろうか。いずれにせよ、これなら安心して南方詰めは君たちに預けられる。ドニエプロペトロフスクの資源群はわれわれも狙っていたのだが、そこは君たちが取りたまえ。ドニプロ獲得は君たちの戦勲に見合った報奨になろう。
このルーマニアの強さはうれしい誤算だ。ハンガリーよりずっと優秀ではないか。奴らの駄目行動は駄目AIたる所以かと思ったのだが、そうではなかったのだ。ただハンガリーが駄目だったというだけの話なのである。畜生、こんなことなら最初からルーマニアと組むべきだった。ホルティの智力なんぞに期待した私が馬鹿だった。

で、そのハンガリー軍の姿がまるで見えないわけだが。奴らはどこに逝ったのだ。あれほど国境にうるさいハンガリー軍がそのライン一帯から忽然と姿を消しているのである。まさかルーマニア軍と共闘してるとか。そんなバナナ。奴らにそんな侠気はない。…やっぱりいねえ。ではどこだ。もちろん東部戦線など論外だ。いるわけがない。となると…。
私が探していた連中は首都ブタベストにいた。ハンガリーは陸戦の全軍を何の脅威もない首都に集結させていたのである。これには血圧瞬間沸騰である。

ぎ独:この大事な時期に何やってんだこの野郎!

洪:首都防衛ですが何か。

ぎ独:何から防衛するんだコラ!敵なんかいねえじゃねえか!!

洪:あんたイタリアと仲悪いでしょ。ウチは国境接してるんですよ。ああいうことされると迷惑なんですよね。

ぎ独:仲悪いんじゃなくて俺が一方的にイタリアを嫌ってるだけなんだよ!戦争なんか起きねえよ馬鹿!だいたいイタリアは今ギリシャとの戦争でいっぱいいっぱいなんだよ。ハンガリーなんか攻めやしねえよ。つーかその割にはお前イタリア沿いに軍なんかひとつも置いてねえじゃねえか!全軍ことごとく首都に集結させやがってどういうつもりだ。大パレードでもやんのかコラ!

洪:パルチザンが心配でね。

ぎ独:そんなもんいねえよ!いいから早く東方に展開しろよ!!

洪:兵なら送ってるでしょ。

ぎ独:ケチな爆撃隊ばっかじゃねえか!しかも飛んでる時間より空港待機の時間の方が長いってのはどういうことだ。使えねえ飛びモノはいいから陸戦隊回せよ!こっちも必死なんだよ!!

洪:トランシルヴァニア問題が解決したらね。


ミクロシュ・ホルティよ、お前はチャーチルよりも頭にくる。


逆転のウィーン裁定~1940年9月5日

ホルティの言う“トランシルヴァニア問題”とは、第1次大戦で敗北したハンガリー(当時はオーストリア=ハンガリー帝国)がトリアノン条約によって国土を縮小の憂き目に会い、その過程でトランシルヴァニア地方がルーマニア領になってしまった件である。要するに、ホルティはそれをハンガリーに返しやがれというのである。
史実ではこれは「ウィーン裁定」と呼ばれ、ドイツの仲介というよりは圧力により、ルーマニアは泣く泣くトランシルヴァニアをハンガリーに返還、さらにはブルガリアにコンスタンツァ割譲という悲劇に見舞われる。そしてこの弱腰外交によってカルロ2世は王位を降り、息子のミハイ1世が王位に帰り咲くという流れである。史実では。

史 実 で は な 。

その裁定の日である9月5日、ぎ印ドイツ帝国は高らかにハンガリーの要求を却下。糞の役にも立たんお前らが最前線で奮闘なさってるルーマニア様のトランシルヴァニアをよこせなど、図々しいにも程がある。やらねえよ馬鹿。お前らはもういいからブタベストで誰も見ねえパレードでもやってろ。帰れ。
さあ、これでもう安心だよカルロ2世、と言いかけたところでルーマニアで軍国主義者のクーデター発生。

(゚д゚)ハァ?

どういうことだこれは。鉄兜団はいったい何が気に食わんというのだ。ウィーン裁定はルーマニア有利にしてやったんだぞ。カルロ2世がその地位を追われる根拠などないはずだ。
クーデターの理由はよくわからない。いずれにせよカルロ2世は放逐され、代わりにミハイ2世が据えられることとなった。どうなってんだよこの国は。

どうでもいいがこれをきっかけに弱軍化だけはせんでくれよ。


イタリア発:ブルガリアの要求に屈し、スコピエとスティップを譲渡~1940年9月25日

ぐわーっはっはっは。


From Russia with bullet~1940年8月13日-12月3日

8月13日、ほぼ予定の時期に北部方面軍の先遣隊がミンスクに到着。いいぞ、その調子だ。
ミンスク制圧以降、北部・中部方面軍は合流し、共にモスクワを目指すこととなった。というか、頭数揃えないと勝機が見えぬ戦いなのである。戦線の拡大による戦力の分散はやむを得んとして、分散されてなお各個それなりな兵力を持つという条件が求められるのである。
9月21日、ルーマニア軍の底力に安堵した南部方面軍がキエフ落としを敢行。28日、同地を確保。これで南部方面軍の当座の目標は達成された。次の目標地点はハリコフ、ロストフとなる。
10月5日、じわじわと進軍する北部・中部方面合同軍はスモレンスクを陥落に持ち込む。予定期間内に落とせたか。大変よろしい。問題はここからのモスクワ詰めだ。モスクワ周囲のプロヴィンスを落とし、包囲して叩くが最善なのだ。

その作戦を遂行中、突如わがぎ印軍勢の足が鈍った。何だこれは。どういうことだ?
日付を見ると、12月3日。

私が一番恐れていた「冬将軍」の到来であった…。

つづく。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その3) 

経過はこちらにて。

※同時進行の戦線が複数ありますので、時間軸が多少前後する場合があります。


シェルブールの落下傘~1940年1月1日

1940年1月1日。ぎ印ドイツ帝国は来たる大英帝国本土侵攻作戦に向け、着々と準備を開始していた。上陸予定の各隊はドーバー海峡を臨む元フランスの地、シェルブールに集結しつつあった。海峡の向こうは連合の大ボスの本陣である。フランス侵攻作戦に参加した部隊のおよそ半数が、今度はイギリスへ向けて出立することになっていた。なんせ敵の総本山に踏み込もうというのである。ここは可能な限りの兵力で臨みたいところだ。
その他の部隊は、主にマジノ戦線攻略に従事した元囮の旧オーストリア軍団であるが、旧ポーランドの国境防衛へと回される手筈となっていた。ぎ独ソ不可侵条約は有効なものの、ヨシフ・スターリンの良心を信じるほど私はお人好しではない。赤は信用せずに越したことはない。

イギリス本土上陸にあたってはひとつ大きな懸念があった。それはイギリス海軍の存在である。侵攻作戦に先立ち、海峡偵察も兼ねて飛ばしたレッドバロンの従弟ヴォルフラム・フォン・リヒトホーフェンの爆撃隊が、テムズ河口付近で恐るべき数で編成されたイギリス艦隊の姿を捉えていたのである。その数50余。たったひとつの艦隊が、わがぎ印ドイツ海軍全体が保有する艦船の倍近くの数で哨戒している。あんなのに捕まったら3分ともたぬ。冗談ではない。
恐るべき巨大艦隊との邂逅を避けるためにも、「航行時間が極力短い」、「進・退路の選択肢が多い」が出撃地点選定の条件となった。そしてその条件に合致したのがシェルブールである。
同地を起点とする場合、上陸対象地点となるのはドーバー海峡を挟んだ向こう岸のプロヴィンス3ヶ所。西から、プリマス、ポーツマス、ドーバーである。シェルブールと真ん中のポーツマスは目と鼻の先だが、そこは三方から囲まれた土地な分、袋叩きの危険性が伴う。西のプリマスには停泊中のイギリス海軍がいる。その規模はわからないが、奴らには触れぬに越したことはない。東のドーバーはシェルブールからだとやや航行距離が長くなる…。ぬう、いったいどこへ上陸するが最善なのか。私は決めかねていた。

それとは別に、大きな謎があった。上陸前に予め敵の地上兵力を消耗させんと、繰り返し本土に爆撃隊を送り込んでは慎ましく叩いているのだが、彼らが映し出す敵影を視る限り、ドーバー海峡一帯のプロヴィンスの護りが妙に手薄なのである。その先の帝都ロンドンに至っては守備隊がひとつしか確認できない。そんなバナナ。
…これは罠だろうか。だとしたらどういう類の?想像がつかん。海峡一帯のプロヴィンスに接する一歩先のブリストルで大軍勢が待ち構え、嬉々として上陸したわれらをよく来たなうわっはっはっはと内陸から叩くという作戦も考えられなくはないが、それは私の手口であって彼らの手口ではない。それとも出航地点をロッテルダムあたりと踏んで、ノリッジかシェフィールドを上陸見込地点に想定してるのか。そんな遠回りしねえよ馬鹿。お前らの巨大艦隊の餌食になるだろうが。
いずれにせよ、イギリス本土のこの静けさはどう考えてもおかしい。…そういやフランス戦線でもイギリスの陸戦部隊とは一度も遭遇しなかった。ゆえに、ダンケルクの敗走は起きなかったのである。では奴らはいったいどこにいるのだ。

その答えはスペインのフランコ先生が知っていた。

西:はっはっは。いやー今ちょうどマラガが陥落したとこ。英軍強いわ。


早く言えよ馬鹿野郎!見ればイベリア半島のイギリス領、ジブラルタルにイギリスの大部隊が集結。既に周辺の3つのプロヴィンスを落とし、本格的にスペイン詰めを開始せんとするところであった。だあああもう!奴らぎ印同盟の弱い環から崩そうって算段かよ!食い止めろフランコ!これ以上の侵食は絶対に許すな!!…ってスペインの民兵どもじゃ勝てるわけがねえええ!!!
もういい、イギリス本土攻略は後回しだ。先にスペインを護らねばならん。ポーランド国境も捨て置け。全軍、直ちにジブラルタル方面に向かえ。現地到達までどれくらいだ?機甲部隊が早くて3週間?遅いよ馬鹿野郎!旧弊のぽんこつ旧オーストリア歩兵部隊が2ヶ月半だと?戦争が終わっちまうじゃねえか!しかも敗北でだ!もっと早く逝けねえのかよ。海上輸送の方が早い?英国鮫の餌にする気か。危なくて渡れねえだろうが。陸地伝いの方がずっと安全なんだよ。だから遅い?じゃあ改良の割り当て上げてやるから移動の間に一新しろよ。そんで移動スピード上げろ。何でもいいからさっさとイギリス人どもを駆逐せい。
思いもよらぬ方向からのイギリス勢の突き上げを前に、大混乱をきたすぎ印参謀本部。その追い討ちをかけるように、外務省から一本の報が入った。

「閣下、イギリスがアイスランドを併合しました」

ぶち殺すぞチャーチルこの野郎。


ロンドン・コーリング~1940年1月11日-2月25日

わが帝国がのれん分けして自立させてやった僻地を無断で併合しやがってイギリスめ、いったいどうしてくれようか。しかし、今はスペイン防衛が最優先事項である。僻地の氷島に構ってる場合ではないのだ。われわれは今そこにある脅威から対処せねばならない。
が、ふと思った。確かにジブラルタルから湧いて拡がりつつあるイギリス勢は脅威だが、本陣の製造元さえ叩いてしまえばそれ以上の増長はないわけだ。同時に連中への物資の供給の大半を断つことにもなる。そしてその本陣は主力の大半をスペイン侵攻軍に回してしまい、わずかな守備隊しか残っていない…。
…よし、ではマンシュタインはシェルブールに戻れ。シェルナーの海兵隊もだ。空挺もここに残れ。後はヴィッツレーベンとフォン・レープの歩兵でよい。いずれも直ちにシェルブールへ向かわれたし。
さて、諸君らはこれよりイギリス本土侵攻軍として、グレートブリテン島、並びにアイルランド島の北部の各プロヴィンスの攻略の任を負ってもらう。少ない手勢での本陣崩しとなるが、懸念は無用。本土の脆弱な守備力を鑑みればこの数で充分に対処できるはず。さあ、イギリス兵どもの帰る場所をなくしてやるのじゃ。

1月11日、勢い任せのイギリス本陣侵攻作戦が発動された。

2日後、ぎ印侵攻軍はポーツマスの守備隊を蹴散らし上陸。空からは空挺部隊がプリマスの地に降り立った。ぎ印軍団はロンドンを囲うように周辺プロヴィンスを次々と攻略し、確保。

2月15日11:00、四面楚歌を地で逝く帝都ロンドンは陥落した。

ロンドン陥落を尻目に、ぎ印軍団は停止することなくリバプール、シェフィルードへと駒を進める。グレートブリテン島は蹂躙されるがまましかなかった。


スパニッシュ・ハーレム~1940年1月23日-4月21日

ジブラルタルから侵攻を開始したイギリス勢は、民兵を主軸とする脆弱なスペイン軍を圧倒。アルメリアまで到達していた。スペイン海軍はほぼ壊滅。空には連合諸国の戦闘機がぶんぶん舞っていた。…これを叩けってのかよ。

頼りないフランコ先生よりスペイン軍の軍統帥権を獲得したぎ印ドイツ帝国は、スペイン軍の再編から着手。ぽんこつが各個バラバラに挑んだって勝てるわけねだろ。厳かに統合再編を執り行い、ハエンにてぎ印ドイツ勢の援軍を待っていた。早く来い。
1月下旬、最初にハエンに到着したのは韋駄天ハインツの戦車軍団だった。その後ハウサー混成軍団も到着。アルメリアのイギリス兵どもは先行のお前らでどうにかなるだろ。さあ、さっさと奪い返すのじゃ。
長旅の休む間も与えられず、ぎ印戦車軍団は現地の駄目民兵軍団とともにアルメリア奪還作戦を開始した。突出したイギリスの先遣部隊を追い返し、つつがなく同地を奪還。防戦体制を維持しつつ、後続部隊の到着をひたすら待つ。頼むから早く来てくれ。マラガの軍勢に踏み込まれたらここはもたん。
マラガのイギリス軍は動かなかった。ぽんこつながらも数だけはあるハエンのスペイン軍勢の存在が、彼らを踏み留まらせたのだろうか。しかし数はあれど所詮はぽんこつ。こんな手勢でマラガに進むわけには逝かない。やはりここは待つしかない。
2月上旬、いくばか足の速いぎ印自動車化歩兵部隊がハエン、アルメリアに到着。まだだ。まだ足りぬ。
結局、足の遅い砲兵旅団を擁したフォン・ブラスコウヴィッツの歩兵部隊が最後に集結地点に到達したのは、3月26日のことだった。
翌日、ぎ印ドイツ遠征軍はぽんこつスペイン軍との共闘にて大反攻作戦を開始。マジノ攻略戦をも凌ぐ大軍勢を前に、マラガのイギリス勢は持ちこたえられず敗北。残存はジブラルタルの穴倉へと引っ込んだ。
マラガの奪還をGoサインに、周辺に待機していた軍勢がセヴィリヤ攻略を開始。4月13日、数に物を言わせて同地を奪還。その時既に、セヴィリヤからのイギリス軍の敗走を許さんと、マラガに進んだぎ印軍団がジブラルタルを陥落させていた。逃げ場を失ったイギリス勢は、滅びる以外の途を失った。

4月18日、スペイン防衛戦はぎ印同盟軍の勝利で幕を閉じた。同日、いつの間にか戦争をしていたイタリアがユーゴスラヴィアを併合。ふざけんなよお前ら。

イギリス軍の駆逐がすんだとあらば、こんなところに当座の用はない。遠征軍は直ちにポーランド国境防衛に転じよ。到達までどれくらいか?韋駄天ハインツで1ヶ月かかるだと?ぬう、欧州大陸の西端からの移動だからな。それは仕方ないが…。歩兵はボルドーまで北上してそこから船で運ぶほかあるまい。イギリス本土の港湾も抑えつつある。海上の脅威は多少軽減してるだろう。
移動は全軍ではない。ジブラルタルのルントシュテットは残れ。ゼヴィリヤも3軍団ほど残留して欲しい。諸君らは駄目民兵に代わって、しばらくここの防人に徹してもらいたい。そして危機が去ったと判断された暁に、新たな命令が下るであろう。

21日、スペイン軍の統帥権をフランコ先生に返却。今度は自分でどうにかせい。つーかもっとマシな軍隊作っとけ。


ノルウェーの杜~1940年4月13日-26日

私は「ヴェーゼル演習作戦」のことを忘れたわけではなかった。イギリス本土上陸を果たした後、手薄な本土防衛軍を叩くにマンシュタインと2つの軍団あらば充分と、他は欧州大陸最北端、オルボアに集結させていたのである。そこには新たに配備されたエドアルト・ディートルの空挺部隊と、はるばるアルプスからやってきた山岳歩兵どもの姿もあった。ノルウェーには山岳地帯も多いのである。

4月13日、満を持してノルウェーに宣戦布告。

同日中に空挺部隊が首都オスロを制圧。3日後にスタヴァンガーへ陸上部隊が上陸。その翌日、ベルゲン、クリスチャンサンへ向けて部隊は侵攻を開始。残った海兵隊は再び乗船し、もうひとつの要所、ナルヴィクへの強襲上陸に向けて出立した。
ノルウェー軍は逝く先々でことごとく敗北。やがてナルヴィクも海兵隊の奇襲を受け陥落。

4月26日、ノルウェーは降伏した。


ケルトの憂鬱~1940年5月1日-3日

4月下旬、グレートブリテン島の拠点をことごとく掌握したマンシュタイン軍団はリバプールへと戻り、そこからアイルランド島へ上陸。北アイルランド攻略を開始した。攻略といっても、防衛のないベルファスト、ポータダウンへの道のりは、ただの行軍であった。
そこから先は何の罪もないアイルランド共和国になるわけだが、しかしぎ印ドイツ帝国にとっては、そこがイギリス本陣に近いというだけでも罪なのである。帰る場所を失ったイギリス兵どもの宿場となっても困るのだ。恨むなよ。

5月1日、アイルランドに宣戦布告。

3日、あっという間の首都ダブリンの陥落に猛烈な勢いで戦意喪失したアイルランド政府は、同日降伏。3日戦争、ここに終結。


氷島奪還作戦~5月6日-15日

ノルウェーの陥落と同時に、同地の侵攻軍に新たな命令が下った。無断でイギリスに併合されたアイスランドの奪還命令である。ノルウェー侵攻軍は今度はアイスランド侵攻軍として、輸送船に乗り込んだ。上陸の斬り込み隊はもちろんシェルナーのぎ印海兵隊である。デンマーク、イギリス、ノルウェーと、上陸の尖兵を担った海兵隊はもはやなくてはならない存在となっていた。今度の作戦で、彼らはまたひとつ星を挙げることになるのだ。

5月6日、首都レイキャヴィク上陸を敢行。同地の護りについていたのは、なんとニュージーランド軍だった。連合も酷な配置をする。南半球の兵隊がこんなところにいてまともに戦えんのか。つーか寒くないのかお前ら。だからって容赦しないけど。
8日、レイキャヴィクを抑えたぎ印侵攻軍はそのまま隣のホプンへ進軍。11日、同地の哀れなニュージーランド軍を撃破し、3日後に同地を確保。翌15日、ぎ印侵攻軍が再び輸送船に乗船するのと同時に、アイスランドはぎ印ドイツ帝国の属国として再び独立を果たした。もう攻められんなよ。来ないだろうけど。


イタリアの存在意義~1940年5月20日-23日

5月20日、ぎ印ドイツ帝国は極東の日出る国よりやってきた使者からの申し出について検討していた。それは世界を日本、ドイツ、イタリアの三国で山分けしましょうやという、かの名高い「日独伊三国軍事同盟」である。ぎ印ドイツは迷っていた。
日本と組むのは吝かではないが、問題はイタリアである。どうしたものか。
これまでイタリア抜きで防共協定を結び、イタリアからの貿易協定の申し出はことごとく却下し、アルバニアと戦争をはじめればアルバニアを支援し、ユーゴスラヴィアと戦争をはじめればユーゴスラヴィアを支援したわが帝国である。今さら仲良くする根拠もないが、この判断を誤ると後の戦局が何らかの影響を受けることもまた解していた。いったいどちらがよいのか。
イタリアと組むことによるメリットとは何か。アフリカへの足がかりか、中東への近道か。しかしそれについてはこちらも考えはある。ではイタリアと組むことによるデメリットとは。それは同盟の環の弱い部分がもうひとつ増えることにほかならない。スペインの二の舞はごめんだ。仮にイタリアが窮地に陥ったとして、こちらは手勢を割いて支援する侠気は微塵もないが、スペインやハンガリーがそれをやりかねない。それは大変困る。

ぎ印ドイツ帝国の意思が確定した。イタリアとは組まん。締結の運びとなったのは「日ぎ独二国軍事同盟」であった。

別にイタリアをないがしろにしようということではない。君たちは今まで通り唯我独尊で暴れてればよろしい。いずれそれは連合の不興を買って宣戦布告と相成ろうが、それはそちらの戦争であってわれわれの戦争ではない。つまり連合のゴールはただひとつ、ローマである。となると自ずと侵攻ルートも限定されるので、われわれは安心して己が戦いに専念できるというものだ。そういうことだよ。うわっはっはっは。

その3日後、アメリカ合衆国は「対日石油輸出禁止措置」を発動。パールハーバーへの道へと踏み出したのであった。


血迷ったかルーマニア!~1940年6月6日~27日

懸案のポーランド国境の先では6月6日、昨年末よりはじまったソ連とフィンランドの「冬戦争」が終結。ソ連の圧倒的勝利と思いきや、なんと攻めあぐねたソ連がフィンランドに「元の状態への復帰」で和平案を提示、フィンランドが受諾という勝敗付かずの結果であった。やるじゃないかフィンランド。こちらもダメ元で密かに物資の支援をしていたわけだが、それが報われたようだ。
となると、ソ連はすぐリトアニアとラトビア獲りに総力を挙げるだろう。そして案の定、その5日後にソ連はリトアニアに宣戦布告。脆いバルト諸国に勝算はない。リトアニアは2週間もてば上等だろう。
6月22日、リトアニア敗北。早いな。次はラトビア落としか。1週間以内に宣戦布告として、2週間でラトビア崩壊として、問題はその後だ。

わ れ わ れ が 危 な い 。

いよいよソ連との戦争の準備に入らねばならん。バルトを落としたソ連は再びフィンランドと「第2次冬戦争」をはじめようが、同時にこちらにも照準を向けるはず。先手必勝を旨としているわれわれだが、真冬にソ連に挑むのは愚の骨頂。もし戦争がはじまっても冬季は防戦一本で凌ぐしかない。そして来春から大攻勢をかけるのだ。
…などと脳内プランを立案中、事件は起きた。

1940年6月27日0:00 : ソ連はベッサラビアを要求において “ベッサラビアを要求” を選択したとのことです。
1940年6月27日0:00 : ルーマニアはソヴィエト連邦のベッサラビア要求において “拒否” を選択したとのことです。
1940年6月27日0:00 : ルーマニアがソ連に対して宣戦を布告。
1940年6月27日0:00 : モンゴルはソ連の側に立ってルーマニアに宣戦を布告。
1940年6月27日0:00 : タンヌ・トゥヴァはソ連 と モンゴルの側に立ってルーマニアに宣戦を布告。
1940年6月27日0:00 : ソ連で “ベッサラビアを要求 ― ルーマニアは戦うつもりだ!” が発生。


(゚д゚)!!

何考えてんだルーマニア!勝てるわけねえだろ!お前らはわが国の石油の最大の供給源だ。負けたら困るんだよ!戦車や飛行機が止まっちまうんだよ!!
だあああもう!こうなったら宣戦布告だ宣戦布告。ソ連を攻めい!ルーマニアを護るのじゃ!!

6月27日、なし崩しのぎ独ソ戦が勃発した。

つづく。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その2) 

経過はコチラにて。

※同時進行の戦線が複数のため、時間軸が多少前後する場合があります。


進軍ラッパはいと高らかに鳴りにけり~1939年8月30日-9月6日

1939年8月30日、ポーランド領ダンツィヒの領有を巡って史実より1ヶ月余早く、ぎ印ドイツ帝国はポーランドに宣戦布告。それはポーランドの守護神、イギリスやフランスをはじめとする連合諸国との戦争も意味した。なし崩し的に世界を巻き込むことになるこの戦争は、「第2次世界大戦」として今に語られるものである。

その火ぶたが切られると同時に、西北のポーランド国境に待機していたぎ印ドイツ帝国軍は一斉にポーランド領内になだれ込んだ。不意を衝かれた形のポーランド軍はほとんど抵抗らしい抵抗もできぬまま、撤退に次ぐ撤退を余儀なくされた。怒涛のぎ印ドイツ軍勢は、懸案のダンツィヒなど目もくれず、ひたすら首都ワルシャワを目指して進軍を続けるのである。
目もくれぬとは言っても、私はダンツィヒを放置するつもりは毛頭ない。そもそもの戦争の発端はこの港町の領有権にある。ゲーム的には取らぬで済むやも知れないが、それでは私の政治的な大義名分が成り立たぬ。だからこそ、ダンツィヒは意地でも確保せねばならない。しかし、そのために手勢を削いで攻勢を殺いでというのも私の流儀ではない。ひとつのプロヴィンスに駒を進めるにはそれなりな時間も要するのである。なのでダンツィヒ確保については、本隊とは別行動のとある軍団にその任を託していた。
その軍団は今、輸送船団でワッデン海を航行中だった。任務はダンツィヒへの上陸と同地の確保である。ロストクから乗船したその軍団は、3個師団で編成された「ぎ印ドイツ帝国海兵隊」であった。そう、私はこの日のために海兵隊を創設していたのである。来たる戦争に備えて欧州マップをぼんやり眺めていた折、海岸沿いの主要なプロヴィンスにはいずれも堅牢な海岸要塞が設置されているであろうことを鑑み、そこを攻略するにあたって空挺部隊の存在は必須にしても、同時に強襲上陸に特化した部隊が後続のために道を切り拓くことの重要性も認識したのである。さっそく1937年後半から海兵の研究・開発を推し進め、翌年の晩秋にはぎ印ドイツ帝国史上初となる海兵師団の誕生を迎えた。その第1突撃海兵師団の長には、名将フェルディナント・シェルナーが就くこととなった。
この史実にない軍団はロストク出航から3日後、意気揚々とダンツィヒに上陸し、つつがなく同地を確保した。唯一の帰る場所を失ったポーランド海軍はダンツィヒ湾を右往左往し、やがて哨戒中のぎ印バルト艦隊の餌食となり、海の藻屑と消えた。

クックック。圧倒的じゃないかわが軍は。この三方面作戦は成功だ。北西から攻め込んだ主力部隊は早くも首都ワルシャワまで迫りつつある。南ではクラクフを奪取せんと、わが同盟国ハンガリーのわずかな軍勢が攻め込んでは敗走し、攻め込んでは敗走し、攻め込んでは敗走を繰り返し、…って負けてるじゃねえか馬鹿野郎!ぐあああハンガリー軍弱えええ!!つーか少ねえええええ!!!いったいどうなってんだよ。急遽脳内ホットラインでハンガリーの長、ミクロシュ・ホルティと脳内会談。

ぎ独:たかがポーランド相手に何やってんだコラ!つーかその少ない手勢はいったい何だよ。他の軍団はどこにいやがんだ。

洪:はい、わが軍の主力はルーマニアとユーゴスラビアの国境付近に展開してございますが。

ぎ独:馬鹿野郎!そっち方面はどうでもいいだろうが!

洪:そういうわけには逝きません。わが国は件の両国と領土問題を抱えているのです。今はまだ戦雲立ち込める気配はございませんが、有事には備えておかねば。

ぎ独:クラクフ攻略はどうすんだよ!お前らが北上してクラクフからルブリンまで詰めてワルシャワからの敗走軍の退路を断ってポーランドの降伏に持ち込むって算段だったんだぞ。台無しじゃねえか!

洪:オストラヴァやヴロツワフの軍団は飾りですか?クラクフが欲しくばそれでどうにかなさい。


ぬううう、この中欧のコウモリ策士め。こんなことなら奴らの軍統帥権を取っておくべきだったが、今さら遅い。ええいもういい、お前らには頼まん。クラクフ攻めなんぞわれらで充分じゃ。オストラヴァ、並びにヴロツワフ駐留の各軍は直ちにクラクフ侵攻を開始せよ。繰り返す、直ちにクラクフに侵攻せよ。弱腰のハンガリー人どもにわれらの力を見せつけてやるのじゃ。

9月6日22:00、クラクフは陥落した。


マジノ・ロワイヤル~1939年8月30日-9月6日

ぎ印ドイツ軍のポーランド侵攻と時を同じくして、アルザス・ロレーヌ方面に展開していた旧オーストリア軍を中心とする大軍勢が、ストラスブールに総攻撃を開始した。対フランス戦の幕開けである。さすがは難攻不落のマジノ要塞群第一の関門、そうやすやすとは陥落してくれない。しかし数にモノを言わせた陸空物量作戦では、さしものストラスブールも崩れはじめ、9月4日午前、ついにフランス軍はストラスブールを放棄し、撤退をはじめた。ポーランド軍が1時間で総崩れになるのに対し、ストラスブールの守備隊は実に4日も持ちこたえたのである。
ストラスブールはぎ印ドイツ帝国の手に落ちた。同地のアメル先生はまた“最後の授業”をやらねばならない。二度目の「Vive La France!(フランス万歳)」でも書いてさっさと教室から出て逝け。もはやそこは紛れもなくぎ印ドイツ帝国領なのである。

マジノ要塞群第一の関門の崩壊を受け、戦線を維持せんと続々とアルザス・ロレーヌ方面に集結をはじめたフランス軍勢。クックック。その調子だ。どんどん集まって来い。しかしながら思ったより数は多くないな。やはり対スペインの戦力は割くわけにはいかぬか。クックック…。
私がスペインとの同盟に執着した最大の理由はここにあった。東からわがぎ印ドイツ軍勢が、西からはフランコ先生率いるスペイン軍勢という挟撃作戦を展開し、フランス軍の戦力を二分させて各個の力を低下させようという狙いである。
こちらは思惑通りの展開だが、フランコ先生の方はどうだろう。再び脳内ホットラインで動向を確認。

ぎ独:わが軍は難所をひとつ切り崩しましたぞ。そちらはどうです?

西:いやーこちらは一進一退というか、二歩進んで三歩下がる状況ですな。はっはっはっは。

ぎ独:負け込んでるんじゃねえか。なんだよフランコ先生、そっちは要塞があるわけじゃあるまいに。もうちょい期待してたんだがな。

西:そうは言ってもこっちはちょっと前まで内戦やってた身でね。完全に復興せんまま戦争勃発だ。軍備も潤ってるわけじゃない。まあのんびり構えましょうや。はっはっはっは。


ぬううう。確かにスペインの参戦は時期尚早に過ぎたのやも知れぬが、今さらどうにもならん。もういい。スペインは国境付近でネガティブな365歩のマーチでも歌ってろ。フランスはわが国がどうにかしてやる。そのために準備してある作戦があるのだが、もう発動してしまうか。…いや、今はまだその機は熟していない。まだだ。まだ動いてはならぬ。焦って功を仕損じてはならぬ。

ストラスブールへと駒を進めるぎ印ドイツ軍団。ミュールズ、メスに集結するフランス軍勢との対峙と相成るが、しかし双方まだ手を出す気配はない。フランスにしてみれば、この大軍勢を叩くにまだ戦力が微妙というのがあろうし、私には私なりの攻めぬ断固とした理由がある。いずれにせよ、アルザス・ロレーヌで大軍勢同士の膠着がはじまった。そうだ、それでいい。それでいいのだ。


ワルシャワの壁~1939年9月14日-19日

9月14日19:00、ポーランドで怒涛の快進撃を続けるぎ印軍団はついに首都ワルシャワを陥落させ、15日の早朝、 先遣の第7軍団がワルシャワに到着した。
翌16日、戦意喪失のポーランドは早くも白旗を揚げ、国家の併合に同意した。ポーランド戦役(Polenfeldzug)はここに終結。史実よりも2週間以上も早い決着だった。
ぎ印ドイツ帝国が得たポーランド領は、ルブリンを境にした西部。東部は戦前の協定に基づき、ニコニコ顔のスターリン@ソ連に割譲されることとなった。血圧プチ上昇。貴様ら大した血も流さんで丸儲けしやがってこの。
私の小さな怒りを敏感に察したか、その3日後、ソ連からの使者が「モロトフ・リッベントロップ協定」遵守の再確認にやって来た。一瞬、そんなくだんねえ約束なんか誰が守るかバーカと、即座に東部ポーランド侵攻の衝動に駆られる私。しかし同時にポンセ黒猫のあの言葉も頭によぎる。

「そこは締結でokだと思いますよ」
「そこは締結でokだと思いますよ」
「そこは締結でokだと思いますよ」

ぬううううううううううううううううううう。…ここは大人しくスターリンと仲良くし、戦力を西部戦線に集結さすが吉のような気がしてきた。
ぎ印ドイツ帝国は、「モロトフ・リッベントロップ協定」の遵守を選択。これでよかったのだろうか…。
…いや、これでいいのだ。ソ連との衝突は当座回避された。ってことはポーランド国境線の守りは最低限に抑え、主力を西部戦線に回して攻略が容易になるということだ。よろしい、主力の機甲軍団は直ちに反転し、フランス国境方面に向かえ。

その日の午後、対ポーランド戦の主軸をなしたエーリヒ・フォン・マンシュタイン、ハインツ・グーデリアン、そしてパウル・ハウサーのオールスター機甲軍団は、ケルン、アーヘンを目指し、ワルシャワを後にした。


ダンマルク王国の落日~1939年9月8日-20日

9月7日、「アルトマルク号事件」が発生。イギリス軍捕虜200余名を乗せた輸送船アルトマルク号が、ノルウェー沖でイギリス軍の艦船によって抑えられ、ノルウェー海軍が傍観する中、捕虜を奪還してしまうという事件である。中立であるはずのノルウェーが、自国海域でのこうしたイギリスの行為に対し、何らアクションを起こさなかったことが何を意味するかを解したぎ印ドイツ帝国は、ノルウェーが連合に与さないうちに叩くか否かの選択を迫られる。
…叩くしかあるまいて。ここに、「ヴェーゼル演習作戦(Unternehmen Weserubung)」が発動された。
となると、ノルウェー侵攻にはまずその足掛かりとなる拠点を確保せねばなるまい。すなわち欧州大陸の北端の地、つまりはデンマークの確保である。北侵はまだ想定外で準備は何ひとつできていなかったが、対応できぬわけではない。こういう時こそ海兵隊の存在意義があるのだ。

9月8日、デンマークに宣戦布告。

急遽ダンツィヒ駐留の海兵軍団に出撃要請。バルト艦隊の庇護を受けつつ、首都コペンハーゲンへの上陸作戦である。陸地からはキールに駐留していた良識の将、エルヴィン・フォン・ヴィッツレーベン率いる軍団が国境を越え、北上を開始した。
ぎ印海兵隊の強襲上陸を受け、コペンハーゲンの守備隊は成す術なく崩壊。フォン・ヴィッツレーベンに至ってはひとつの戦闘に遭遇することもなく欧州大陸最北端、オルボアに到達した。

10日後の9月18日、デンマーク降伏。そしてぎ印ドイツ帝国の領土として併合。チョコと福祉の国、ダンマルク王国は地図から消滅した。

デンマークは北海の孤島、アイスランドをその領地としていた。ぎ印ドイツ帝国の軍門に下るを潔しとせんというのか、パルチザン濃度がやたら高い。かといって、そんな僻地に守備隊を回せるほどこちらも余裕があるわけでもない。
そんならお前らいっそのこと独立して自治でやってくか?ただしわれらの属国としてな。

9月20日、アイスランドが独立。その処断に対してぎ印ドイツ国民の不満度が4%ほど上昇したが、お前らそんなにアイスランドが欲しいのか。いらねえだろ。
同日、アイスランドはぎ印ドイツ帝国と軍事同盟を締結。これで「独西洪氷四国同盟」と相成った。必然的に連合諸国に宣戦布告を執り行う氷島。お前ら軍備ゼロじゃねえか。どうすんだよ。別にいいけど。

デンマークを巡る動きはこれで完結した。海を挟んですぐ向こうは問題のノルウェーがある。すぐにでも攻め込みたい衝動に駆られたが、しかし私にはその前にやらねばならぬことがあった。


「この帽子、ドイツんだー?」 「オランダー」~1939年9月22日-10月14日

「アハハアハハ」とあきれたぼういずの永遠のネタで笑っている場合ではない。
さて諸君。何も訊かず、黙って私の命令を遂行されたし。

9月22日、オランダに突如宣戦布告。かかれ。

同日、その命を受けてドイツ・オランダ国境付近に待機していたぎ印ドイツ軍勢が一斉にオランダ領に突入。アルンヘムとフローニンゲンのオランダ軍を速攻で粉砕、2日後にはアイントホーフェン、レーワルデンでもオランダ軍を完膚なきまでに叩く。
翌月10日にはオランダ第二の都市、ロッテルダムも陥落。敗走を重ねるオランダ軍は首都アムステルダムまで撤退するが、既に陸地は完全に包囲され、背後は海。そしてその海から現わるるは、エーリヒ・レーダー率いるぎ印ドイツ海軍に護衛された、ぎ印ドイツ海兵隊である。絵に描いたような包囲作戦で残存オランダ軍はことごとく壊滅。13日の夕刻、首都アムステルダムにぎ印突撃海兵師団が上陸を果した。

10月24日、欧州オランダは陥落した。政府は植民地インドネシアに遷都。

ふん、われらの手を逃れたつもりだろうが、お前らはいずれ起ころう大日本帝国の南進に対峙するハメとなろう。本陣を失ったお前らに勝算はない。さらばじゃ。


べ、べ、ベルギーって、う、う、うめえのか?~1939年10月16日-10月28日

食べられないが、攻められる。

ぎ独:フフフ。レオポルド3世、聞こえていたら君の立地の不幸を呪うがいい。

白:何、不幸だと!

ぎ独:そう、不幸だ!

白:ぎ、Guicho…、お前は…

ぎ独:君はいい貿易相手であったが、君の隣国がいけないのだよ。フフフ、アハハハ…。


10月16日、ベルギーに高らかに宣戦を布告。

この私のおもむろなベルギー攻めの意味するところが何かを悟ったのは、当のベルギー軍ではなく、同国に駐留するフランス軍だった。急遽後方の部隊をベルギーに赴けようとするフランス。ぎ印ドイツ勢のベルギー突破は、すなわちパリへの道を意味した…。

うわーっはっはっは。フランスめ、今さら気付いても遅いわ。アルザス・ロレーヌのわれらの大軍勢はすべて囮じゃ。いかな大軍とて旧式装備な連中に堅牢なマジノ戦線の突破など預けれるわけなかろうに。わざわざ苦労してストラスブールを崩したのはお前らを南方におびき寄せるための壮大な罠。まんまと陽動作戦に引っかかりおって馬鹿め。われらの本隊は今ベルギーで暴れてる最新装備の連中だ。そいつらは間もなくフランス国内になだれ込んで一路目指すはパリ。ん?どうする?今から首都を防衛せんとマジノから部隊を切り離すかね?おうおう、それでも構わんよ。マジノの防衛が手薄になるなら巨大囮軍団はフランス侵攻第2軍に変身してマジノ戦線突破にかかるまで。その支援のための空挺部隊も既にシュツットガルトに待機させてある。もうお前らに打つ手はないんだよ。だーっはっはっは。

ワルシャワからの長旅を終えてケルン、アーヘンに待機していたオールスター機甲軍団も最前線で奮闘している。名将揃い踏みのこの怒涛の進撃を前に、ベルギー軍及び同国に駐留するフランス軍は総崩れに。25日には首都ブリュッセルが陥落。その2日後には早くも先遣隊がベルギー国境を越え、フランス領内へと踏み込んだ。

28日、ベルギーの欧州本陣が陥落した。政府はアフリカは植民地コンゴへと激しく都落ちの憂き目となった。

このマジノ戦線迂回の北方詰めに対し、アルザス・ロレーヌ方面に展開中のフランス大軍勢には成す術がなかった。今から反転してパリ防衛に駆けつけても、恐らくは間に合わない。しかも眼前の敵は膨大に過ぎる。…フランス勢に、その眼前の敵は数こそ多いものの、実は大半がぽんこつで構成された囮部隊であることなど知る由もなかった。
首都方面に反転すれば、ぎ印ドイツ勢は間違いなくマジノ戦線突破にかかるだろう。かといってこのまま膠着では、いずれパリを落とした主力が今度は背後からマジノを詰め、挟撃作戦で崩しにかかるやも知れぬ…。
結果、マジノのフランス勢はもうひとつの選択をした。それはマジノから退き、南西部に拠点を移して防衛線を確立するというものだった。…動きからすると多分そんな感じだと思う。
ふん、リヨンあたりにでも遷都する気かね。マジノを棄てるならわれらが獲るまで。フランス侵攻第2軍、前進せよ。目標、メス、並びにミュルーズ!

巨大囮軍団が、今度は巨大侵攻軍(ただし旧式)として始動。シュツットガルトからは空挺部隊がメス上空を目指して飛び立った。

首都パリと、マジノ戦線の崩壊は時間の問題だった。


キャタピラよ、あれがパリの灯だ~1939年11月4日-12月25日

11月4日、巨大な陸戦部隊と空挺部隊の二段攻撃により、マジノ要塞群第二の関門、ミュルーズが陥落した。難攻不落を謳ったマジノ戦線はもはや形骸と化しつつあった。

8日、最初にパリに突入したのは、“韋駄天ハインツ”ことハインツ・グーデリアンの戦車部隊だった。その北方では、海沿いのプロヴィンスを海兵隊と陸戦部隊が共闘で次々と陥落させていた。彼らがシェルブールに到達したのは、その1ヵ月後のことである。そこからドーバー海峡の先に見えるは、もうひとつの敵、大英帝国だった。
しかしその前に、今そこにある敵をどうにかせねばならない。ささやかながらも、フランス軍の抵抗は続いていた。その主力は南西部にいるようだが、なんかそっちまで逝くのめんどくせえんだよな…。
どうしたものかと思案してる時、一本の報が入った。フランスの国家そのものの崩壊を避けんと、フィリップ・ペタン元帥を筆頭とするヴィシー政府から、休戦という名の降伏の申し入れがなされたのである。
私もそろそろ疲れていた。フランスの完全制覇の選択肢はあったものの、要所だけ確保できりゃもうそれでよかろうという気になっていた。私はペタンの懇願に応じることにした。

12月22日、フランスの3/5がドイツに割譲されると同時に、ヴィシーより南西部をその勢力としたペタンの親独中立政権、ヴィシー・フランスが誕生した。

対フランス戦は、史実よりも半年以上も早く幕を閉じた。クックック。圧倒的じゃないかわが軍は。ドーバー海峡の向こうで、亡命したシャルル・ド・ゴールが自由フランスだ何だと騒いでいるようだが、お前がそこで快適な亡命ライフを送られるのはそう長くもあるまい。次の戦いがはじまるのはそんな先の話ではないのだ。

ひとまず年内は大人しくしてやるが、年が明けたらそうは逝かぬ。わがぎ印枢軸同盟以外の各国におかれましては、せいぜい陰気なクリスマスを過ごされることを祈念してやまない。

そのクリスマスの日、総統命令によりマジノ要塞群が破壊され、更地となった。

ぐわーっはっはっはっはっは。

つづく。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その1) 

一部の方々から絶大なる支持を得、今なおトロピコ政界復帰への声も高きGuicho Zurdo閣下の登場であるが、あいにくながら「極端国家シリーズ」のリプレイではない。それはまたいずれ。

今回は「Hearts of Iron・Ⅱ」である。

どんなゲームなのかはこのあたりにてということで、レッツ・スタート。


ぎ印ドイツ国民に告ぐ~1936年1月1日

私はGuicho Zurdoである。ゲルマン民族でもアーリア人種でもない。ただの日本人であり、ただの政治兼軍事ヲタである。そんな私めに統治されることに対する諸君らの断固たる抗議は猛烈な勢いで退ける。ゲームを開始した今この瞬間から、第三帝国はすなわち「ぎ印ドイツ帝国」であり、私はその見えざる指導者として、諸君らは否が応でもその民として存在するのである。もはや選択の余地はない。
さて、先の大戦におけるドイツの敗北は、紛れもなくチョビひげのオーストリア人の定見のなさにほかならない。私はその見誤った過去を糾すべくこの地上に舞い降りた天使であり、歴史を動かす神である。そんな私を堕天使と呼びたくばそう呼んでもらって構わない。邪神と非難されることすら吝かではない。しかし、トロピコで培ったこの私の政治力、少しはあてにしてもらいたいものである。
では、神の見えざる屁をひねるとしよう。

まずはぎ印ドイツ帝国内閣の総検めである。国家元首は総統アドルフ・ヒトラー、政府首班は副総統ルドルフ・ヘスという輝けるキチガイコンビ。両方とも即座に首をすげ替えたいところだが、ヒンデンブルグを墓から掘り起こすわけにも逝かないのでこの男で我慢するほかない。いずれにせよ、この私を前にしてはヒトラーとてただの傀儡に過ぎぬ。だがせめてルドルフ・ヘスくらいはどうにかならんものか。つーかこの男の存在意義とはいったい何か。
外相はコンスタンチン・フォン・ノイラート。控えにはヨアヒム・フォン・リッベントロップもいるのだが、当座はこの穏健なノイラートおじさんでよかろう。
内務大臣はヴィルヘルム・フリック。ある意味ナチズムの権化ともいうべき人物である。ナチ党の一党独裁を目論んだ「全権委任法」やユダヤ人迫害の根源をなす「ニュールンベルク法」の起草人であり、ついでに右手を挙げ「Heil Hitler!(ヒトラー万歳)」とのたまうナチ式敬礼を義務化した張本人でもある。のっけから香ばしいな。なんか嫌だ。すげ替え可能な他の人材を確認したところ、いたのはクルト・ダリューゲにラインハルト・ハイドリヒ。馬鹿野郎、悪党揃いじゃねえか。と思ったら元法相のフランツ・ギュルトナーがいた。救われた気分だ。この人に決定。
軍需大臣(国防相に相当か)はヴェルナー・フォン・ブロンベルク。ナチへのご追従から「L?we des Gummis(ゴムのライオン=見掛け倒し)」と陰口を叩かれた元帥閣下である。なんか駄目そうだ。なので銀行屋のヒャルマー・シャハト先生を招聘。
参謀総長はルートヴィヒ・べック、情報大臣はヴィルヘルム・カナリス。いずれクーデター計画を企てることになろう危険なふたりを政府中枢に置くのはどうかとも考えたが、二大馬鹿を除いては割と穏健派を取り揃えてあるので、そのイベント発生の機運は高まらぬやも知れぬ。まあ私自身は激しくタカ派に国家運営してやる所存だがな。うわっはっはっは。
陸軍大臣は後の罷免を見越してヴェルナー・フォン・フリッチュからヴァルター・フォン・リュトヴィッツへ。海軍大臣のエーリヒ・レーダー、空軍大臣の太っちょへルマンことへルマン・ゲーリングはそのまま。
ってことで内閣人事はおしまい。続いては軍の再編。

真っ先に目が逝くのはミュンヘン駐留の第2軍団4個師団。その指揮を執っているのがこともあろうにハインリヒ・ヒムラーである。お前はいったい誰に断ってそこに鎮座ましましているのか。軍務経験を持たぬ親衛隊全国指導者様が4個師団も指揮できる能力がおありとは到底思えん。図々しいにも程がある。お前なんかバット振る前に戦力外通告だ。ロッカールームで生涯燻っとれ。ということで、駄目将軍の代わりにフォン・ヴィーダースハイムなる中将閣下を据える。しかし中将クラスで4個師団の指揮は持て余す。そこで1師団分離させ、エルンスト・ブッシュをあてがう。後の第16軍司令官であり、元帥にまで登り詰める人物である。しかし現段階では少将殿。今後の武勲に期待しようぞ。
まだひとつしかない戦車軍団の3個師団(ただし軽)の指揮は、エヴァルト・フォン・クライストである。戦後、対ソ戦で大暴れしたことが仇となってソ連から戦犯指定を受け、かの地の劣悪な収容所で非業の死を遂げた悲運の名将である。史実での命運はさておき、フォン・クライストほどの将官が軽戦車軍団ってのはちともったいない話だ。貴官にはもっと重要な軍団を預けたい。そこで同軍団の指揮には、「ホート親父」として兵どもから愛されたヘルマン・ホートを任命。フォン・クライスト中将よ、これは解任でない。新たなる機甲軍団創設の暁には、貴官にその軍集団指揮を委ねたいのだ。
その他空海軍は適当に統合&再編成。つーか私はドイツの陸戦兵力以外はあまりよく知らないんだよね、ってことで軍事はこれにて終了。

さて、動き始めようか。


起て!国民よ!!~1936年1月2日-12月30日

1月6日、ぎ印ドイツ国防軍はおもむろにラインラントへ進駐。何も言わぬイギリスとフランス。
そしてこれに呼応するかのように同日、ケルンに向けてゲルト・フォン・ルントシュテット率いる第1軍団3個師団が移動を開始。これが何を意味するかは10日後に明らかとなる。
その1月16日、ぎ印ドイツ帝国は突如ルクセンブルクに宣戦布告。ドイツとフランスの緩衝地だの永世中立国だのといった理屈は私には通用しない。言いたいことはただひとつ、貴国とその領土はわが国のものである。さっさとよこせコラ。
この日のためにケルンに待機していたルントシュテット軍団が電光石火でルクセンブルク国内に突入。同国軍は成す術なく3時間で降伏。3日後、ルクセンブルクはぎ印ドイツ帝国との合併吸収に同意する。かくして1936年1月19日、ルクセンブルク大公国は消滅した。当然ながらこの暴挙に対し、フランスが激怒。しかしお前らはまだ戦争の準備は整ってはいまい。せいぜい非難決議採択が関の山だろうて。
案の定、何もしないフランス。うわーっはっはっは。

4月19日、イタリアがエチオピアを併合。のやろー。無断でアフリカ大陸に手を伸ばすとはいい度胸だ。ふざけるなイタリア。そこでわが国はイタリアに対し、大規模経済制裁を発動。締結していた貿易協定をことごとく凍結である。もうお前らにエネル源はやらん。

7月18日、スペインでフランシスコ・フランコ率いる国粋派と共和派(人民戦線)が軍事衝突。スペイン内戦の勃発である。25日、ぎ印ドイツ帝国はスペイン内戦への介入を決定。われらが支援するは当然ながら国粋派のフランコ先生である。逝け、ぎ印コンドル軍団よ。
スペイン内戦介入以降、やたら国粋派からの貿易協定締結の要請が頻発するようになる。お前らこっちも軍備拡大で資源は要り用だってのにこの。しかし義勇軍を派遣している手前、泣く泣くわが身を削りながらの国粋派支援を継続。頼むぞフランコ先生。あんたらにはどうしても勝ってもらわねばならぬ理由があるのだ。

年間を通してイタリアがウザい。実にウザい。何がウザいのかと言えば、やたらめったら貿易協定を求めてくる点にある。先の取引凍結がもたらした結果なのだろうが、それにしてもしつこい。しかも毎回尋常ならざる大規模取引ばかりを持ちかけてくる。わが国のエネルギーの3/4に相当する量を平気で要求してくるのである。出せるわけねえだろ。
もちろんその見返りにイタリア側もそれなりな量の金属や物資などの提供を謳うわけだが、そんなに要らねえよ。金属はスウェーデンとの取引で間に合ってるし、石油はルーマニアを相手に事足りる。希少資源はフィンランドが窓口だ。お前らイタリアが出る幕なんかねえんだよ。エチオピアで穴でも掘って石油でも探してろ。

それでもめげずにひたすらわが国に伺いを立て続けるイタリア。ウザいにも程がある。


今度はイタリア抜きでやろうぜ!~1937年1月1日-12月30日

3月13日、「日独伊三国防共協定」にサインか否かの選択。署名はする気まんまんだが、イタリアの存在が気に入らねえ。そこでわが国はイタリア抜きで日独間だけでの締結を選択。かくして、「日独二国防共協定」という新たな歴史が生まれたのだった。
これに対する腹いせなのかイタリア、以前にも増して例の大規模貿易協定案を頻繁に提示するようになった。そんなに出せねえし要らねえって言ってるだろうが。何をそんなに必死なんだムッソリーニ。よその国とやれ。

4月8日、チェコスロヴァキアがハンガリーの要求に屈し、5つのプロヴィンスをハンガリーに譲渡。ぬうハンガリーめ、地味ながら侮れんな。この中欧の危なっかしい国の存在は心に留めておこう。

6月25日、盧溝橋事件発生。同日、日中戦争勃発。わが国としては何もしてやれんが、国民党その他の中国勢からの外交協定要請はことごとく却下するという形で対応しよう。健闘を祈る。

10月19日、懸案だったスペイン内戦は国粋派の勝利で幕を閉じる。見事な腕だフランコ先生。しかも史実より2年も早い決着だ。うむ、わが身削って支援した甲斐があったというものだ。
さっそくわがぎ印ドイツ帝国はこの新生スペインと揺るぎなき友好関係を構築せんと、足繁くマドリード詣でをはじめる。わが国の外相がノイラートであることはこういう時に役に立つ。彼は友好度や同盟締結に関してのスキルが高いのである。リッべントロップが外相ではそうは逝かない。圧力とかは強いけど。
4日後、同内戦で暴れ回ったぎ印コンドル軍団が凱旋帰国。お土産は空戦ドクトリンの研究資料2点である。よくやった。ついでにイタリアにも義勇軍団が帰国の模様。け。お前らも支援してたのかよ。糞生意気な。

この年、ぎ印ドイツ帝国はひたすら軍備の研究・開発と強化・改良に没頭する。各種生産も順調である。フォン・クライスト中将には新たに生まれたふたつの機甲師団と、第2軍司令部のポストを与えた。配置は東部ポーランドとの国境沿い。精進されよ。

イタリアが相変わらずウザい。その図々しい貿易協定案は二度と私の前に出すな。


鳴かぬなら 鳴くまで脅そう ホトトギス~1938年1月1日-12月30日

1月28日、フォン・ブロンベルクの妻に関するスキャンダルが発覚。同将軍の失脚か否かの選択を迫られるが、もともと重要なポストには就いていないので、どちらにしてもさして影響はない。しかし世代交代のことを鑑み、放逐を選択。続いてフォン・フリッチュも親衛隊(SS)の陰謀により同性愛疑惑をでっち上げられ、失脚か否か。こちらも同じく降りてもらうことにした。本当は無罪なのは知ってるが、すまぬがもう引退してくれ。
ちなみに史実では、同将軍はその後第12砲兵連隊の名誉連隊長に下野し、ポーランド侵攻の折に自殺とも取れる突撃を敢行、名誉の戦死を遂げる。

3月2日、ソ連でスターリンによる大粛清がはじまった模様。手練の将官潰して自分の首絞めてどうすんだ。別にいいけどさ。

3月29日、わが国は「アンシュルス」を高らかに発動。これにより、隣国オーストリアはぎ印ドイツ帝国の一部として併合される運びとなった。必然的にオーストリア軍もぎ印ドイツ軍の一翼を担うわけだが、その1/3以上が旧式も甚だしい装備という事実に驚愕。歩兵装備が1918年って何だよ。第1次大戦仕様じゃねえか。勘弁してくれ。しかも騎兵なんて今さらどうすんだ。これから軍のモータリゼーション化を力の限り推し進めようってのに、お前らオーストリア兵はお馬さんでパッカパカ野山を駆け巡ろうってのか。相手は弓矢のインディアンじゃねえぞ馬鹿。
このままではどうにも役立たずなため、やむを得ず軍備生産の割り当てを削り、改良に回すことになった。急降下爆撃機の生産が停滞したのはお前らのせいだ。
この貧相なオーストリア軍団の司令部にはフランツ・ハルダーを任命。あんたしか適任がいないのだ。頼む。
翌月より、オーストリア軍団の2/3はミュンヘン経由でアルザス・ロレーヌ周辺に展開。残りは東部のチェコスロバキア国境付近に集結させ、ささやかな圧力。どうでもいいが早いとこ装備改変して使える軍隊になってくれ。

9月30日、イギリスの駄目首相チェンバレンやムッソリーニらとのミュンヘン会談。わが国は己が論を強硬に主張。結果、チェコスロバキアのズデーテンラントを獲得。周辺でにらみを効かせていた各師団、一歩前へ。にわかに騒々しくなるプラハ周辺。クックック。お前らの歴史は風前の灯火じゃ。クックックック…。

そしてここからにわかに、戦雲の色が濃くなって逝く。


諸君、私は欧州の覇者になることを決意した~1939年1月1日-8月30日

1月7日、わが国の施策に対してシャハト先生が反発。その咎により彼を切るかどうかの伺いが出るが、さすがにシャハト先生を切るのは痛い。つーかスキル的に彼の代わりがいない。なので残留を選択。これがどういう影響及ぼすのかよくわからんが、この選択が間違いでなかったことを祈ろう。

3月3日、頻繁なマドリード詣でが結実し、ついにフランコ先生のスペインと軍事同盟を締結。今ここに、スペインは激動の歴史の潮流に巻き込まれる命運が確定した。沈む時はお前らも一緒じゃ。

3月15日、ぎ印ドイツ帝国の圧力の果てに、チェコスロバキアが国家そのものの終焉を迎える。その段にあたって、私にはふたつの選択肢があった。ひとつはチェコ領土獲得と傀儡ティソ政権を擁立し、属国スロバキアとして独立させる。もうひとつは同国をハンガリーと仲良く分割し、同時に軍事同盟を締結する…。
ここは迷いどころだ。しばし沈思。御しやすい属国の建設は魅力的だが、そこはポーランドと国境を接する。いずれ起ころうポーランドとの対峙の折に、にわか国家の自前の脆弱な軍隊で国境を防衛せよと言っても、それは無理な注文だ。となるとわが軍から師団をいくつか裂いてポーランド・スロバキア国境付近に展開させなければならないわけだが、こちらとて兵力が潤ってるわけでもない。これ以上の分散は極力避けたい。ならばいっそのことハンガリーとの分割でスロバキアを託し、国境沿いは潤沢なハンガリー軍に展開してもらう方が得策ではないだろうか。ポーランドとの衝突の暁には、わが軍は西と北(飛び地領土)の二方面から詰め、クラクフ以南からはハンガリー勢がなだれ込むという総計三方面作戦だ。うむ、これで逝こう。
同日、ハンガリーと軍事同盟。そしてそれに伴い、「独西洪三国同盟」が誕生するのである。歴史にない新たなる枢軸軍の勃興である。

3月24日、リトアニアへの圧力を選択。結果、メーメルを獲得。これでわが国の飛び地の領土がもうひとつ増えることになった。メーメルちっちゃいけど。
後はポーランド領ダンツィヒさえ獲得すれば、ひとつのラインでぎ印ドイツ帝国は繋がるわけだが、その獲得への道はすなわち戦争の勃発を意味しよう。
抜かりはないなわが軍勢よ。西部方面には旧オーストリア勢を主力とする総勢33個師団がアルザス・ロレーヌ地方のフランスとの国境付近に陣取り、その先のマジノ要塞群を見据えている。そこから北へベルギー、オランダ、デンマーク沿いまで、縦並びな形で3個師団づつ有事に備えて配備。アルザス・ロレーヌに大軍勢を集結させてしまった感があるが、かの地の攻略にはそれでも足りないくらいだ。
一方、東部方面には北はダンツィヒ手前から南はクラクフ手前まで、ポーランド国境沿いにおおよそ6師団づつ配備。主力はフォン・クライスト軍団をはじめとする機甲師団連だ。武装SSの名将、パウル・ハウサー中将も3個師団を擁して待機している。その実態は第2武装SS機甲師団「ダス・ライヒ(帝国)」、第3武装SS機甲師団「トーテンコープ(髑髏)」、第6機甲師団という節操のかけらもない編成なのだが、もはや史実にこだわってる場合ではない。私は私の道で逝くことにした。

3月26日、イタリアがまた私に無断でアルバニアに宣戦布告。翌11日、同国を併合。いい加減にしろよお前ら。

8月24日、独ソ不可侵とポーランドの東西分割を謳った「モロトフ・リッベントロップ協定」の締結か、部分承認か、あるいは否かの選択。
ここも迷った。ソ連と仲良くする根拠などない。しかし無理に対峙することもない。どれがいちばん最善なのだろう。判じかねてチャットで黒猫氏にそれとなく伺いを立てたところ、「そこは締結でokだと思いますよ」というその一言で締結を英断。よもや黒猫氏本人もそれでひとつの歴史が動いたなどと思いもよるまいが、これで何か不都合が生じた場合に私が責任転嫁する相手ができたということである。だーっはっはっは。

8月30日、ついにポーランドに最後通牒。「ダンツィヒをよこせ。さもなきゃ攻める」。当然ながら、「ええ、どうぞ」とくれるポーランドではない。ならば武力を以ってして征するほかあるまい。とうとうこの日がやって来たか。

今ここに、ぎ印ドイツ帝国はポーランドに対し、宣戦を布告するものである。

同時に軍事同盟を締結しているスペイン、ハンガリーもポーランドに宣戦布告。それを受け、ポーランドの守護神であるイギリス、フランスがわれらに宣戦布告。追従するカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、イエメン、オマーン、イラク、ネパール、ブータンも続々参戦。港町ダンツィヒの領有権を巡って、世界が動いたのである。

第2次世界大戦が勃発した。

つづく。

「トロピコ」で超福音国家をシムしてみよう、のリプレイ。 

さあハニー、あの鐘の音が聞こえるかい?

カンコーン。カンコーン。ホエーホエホエー。バサバサバサバサ…。



ということで、本企画の経緯

「妥協なき福音派が統治する国家。そこは天国にいちばん近い島になり得るのか」


ではではリプレイ開始。


神の国の掟(1950)

まずは何を差し置いても「禁酒法」の施行である。のっけから禁酒法である。神の国の建立にあたり、アルコールなど無用の長物なのである。が、施行にあたりふと迷った。過去の経緯から、禁酒法を施行されると人々は酒の調達のために暗黒街の闇紳士を頼り出すようになり、必然的に犯罪発生率が増加するのである。しかしまあ基本の犯罪発生率が「-45」と非常に良好な数値である。当座懸念の対象となる事案にはなるまいて。ということで高らかに施行。お前ら、ここは神の国だ。喉を潤したきゃ水を飲め。
さて、この神の国建立を敢行しようにも、先立つモノがなければお話にならない。布教するにも金は要るのだ。よって何がしかの経済基盤を確立させ、財源の確保を図らねばならない。ではそれはいったい何なのか。
禁酒法を出した以上、パブやキャバレー、ナイトクラブといった夜の歓楽に絡んだ業界がその存在意義を持たない。これは同時に観光客がチップを落とす領域も大幅に限定されることを意味する。酒の絡まぬ海水浴やら遺跡巡りといった健全な観光スポットをチップの受け皿とすることも可能ではあるが、そもそも飲酒御法度なカリブの小国に果たして観光客が殺到するだろうか。となると、そうまでして観光業を開拓する必要性が感じられない。よって却下である。むー、当地を福音派のメッカにと目論んだのだが、それは叶わぬ夢か。
神がお造りになられた環境を無闇に破壊することはまかりならん。それは木々の伐採のみならず、地面をほじくり返すこともまた然り。ということで林業も採掘業も却下。ジャングルは無駄に多いし、潤沢なボーキサイトや金の鉱脈も確認されたのだが。実に遺憾である。あ、環境で思い出した。「ゴミのポイ捨て禁止」令も発動である。お前ら聖地を汚すんじゃない。発動後、民の自由度が微妙に下がったように見えたのだが気のせいだろうか。うむ、気のせいだろう。
神の国では殺生もまた御法度である。なのでモーモーさんやメーメーさんといった畜産業も興せない。それが乳目的ならよいのだが、奴らが飼われる理由はその肉にある。現に、畜産業物件のグレードアップには燻製小屋があるのだ。生きとし生けるもの、神の国で殺生など断じて認めるわけには逝かない。それがたとえ食うためであったとしてもだ。ん?待てよ。ってことは漁業も駄目じゃねえか。うわあなんだか経済活動範囲が恐ろしく限定されてきちゃったぞ。大丈夫か神の国。
残った経済基盤はもはや農業関係しかない。しかしそれすらも栽培するネタが限定される。サトウキビはラム酒の原料になる。論外である。タバコなんぞ平然と栽培リストに鎮座ましましてやがるが、そんなものを私が植えさすとでも思っているのか。喫煙は悪しき弊害しか生まぬのだ。コーヒーにはカフェインがある。そんなものを飲むな。人体を害する刺激物はとことんまで排除されねばならん。いやーなんだかモルモンチックな国になってきたぞ。まるでユタ州の出張所である。
もはや神の国で栽培可能なのは4種に限られた。すなわちトウモロコシ、パイナップル、パパイヤ、そしてバナナである。トウモロコシは民の主食である。余剰分は輸出用に回されるだろうが、その利益に期待はさほどできまい。つまり、わが国は残った南国系フルーツ3種にその未来を託さねばならないわけだが、大丈夫かお前ら。こいつらは過去手を出さなかった品目だけに、その経済力はまるで未知数なのである。とはいえ、他に植えるものがない以上、彼らの利益に期待するしかないのだ。頼むぞ。マジで。


天国への階段。その第一歩(1950-1955)

♪Sleep comes like a drug, in god's country...

と歌ったのはU2であるが、居眠りしている暇などない。福音国家の始動である。働け貴様ら。ようしゼネコンども、さっそく教会の建立に総力をもってかかれ。おう教会が先だとも。パイナップルなんぞ後回しだ。ゼネコンの面々総がかりで神の降臨せし御所の構築である。その間、空しく横たわるパイナップル農場の建設予定地3ヶ所。そんな目で私を見るな。お前らは後だ後。
教会が完成したはいいが、そこを司る者がいない。これがリアルであらば、年末年始に巫男就任予定のローさんに変な帽子かぶせて聖書無理矢理持たせて招聘するところだが、あいにくこれはゲームである。それも叶わない。ゲーム内で解決する他ない。
聖職に就ける者は高卒レベル以上の教育を受けていないと不可なのだが、それに該当する連中はマラカニアン宮殿の警備の任に就いている。内誰かを転職させるという手もあるが、残った者がクーデターでも引き起こしやがったらひとたまりもない。なので、仕方なしに外国から人を有料招聘することとなった。そして当座の財源が底をつく。経済基盤が確立するまで続くであろう赤字財政の始まりである。しかも今回は教会から先に手をつけたから黒字転換まで時間がかかりそうだ。け。
その後パイナップル農場もぽつぽつと建立され、種蒔き刈る人とプチ赤字財源をぼんやり眺めつつ、まあのんびり構えようかねとケツをボリボリ掻きはじめた1953年初頭、突如財源が黒字に転ずる。それも大幅に。おお、これはいったいどうしたというのだ。何が起きたのだ。…そうか。そういうことか。知らなかった。知らなかったぞ私は。ポンセよ、なぜそれを早く言わぬか。

パ イ ナ ッ プ ル は 儲 か る の だ 。

伊達にカリブ海に位置してるわけではないのだ。気候を活かした特産品にはそれなりなプレミアが付くということか。うむ、そうとあらば他の南国フルーツとて金の卵だろうて。直ちにバナナ、パパイヤ農場の建設を指示である。意気揚々と資本投資である。クックックック。金がじゃんじゃん入ってくるぜ。クーックックック。…などと言ってはいけない。あくまでも神の国を建設するための経済活動なのである。崇高なる金集めなのだ。そこに不純さは微塵もない。ええ、ありませんとも。


神の御意志に背く人々(1956)

♪Sad eyes, crooked crosss, in god's country...

と歌ったのはU2であるが、曲がった十字架を嘆いている暇などない。私にはやることがあるのだ。教会も完成したし、財源も安定期に入りましたよってところで、教会の威を借りて「避妊の禁止」を高らかに発動である。人は自然の摂理に逆らってはならぬのじゃ。コンドームなど風船にして飛ばしてくれるわ。うわっはっはっは。
ところがこの聖令が知識派閥から不興を買う。どうやら原理主義的な性思想がお気に召さぬらしい。しかも奴らは返す刀でわが国に高校がないことを非難しやがった。この野郎。偉大なる神の使徒に向かって反旗を翻すとはいい度胸だ。この私に逆らうとどういうことになるか思い知らせてやらねばならない。
そこで奴らの心の拠りどころである書物をまるごと焼却処分である。焚書だ焚書。火にくべてボーボー燃してやるのだ。今甦る水晶の夜。クリスタル・ナハトの悪夢の再来である。燃えてしまえ。本など皆燃えてしまえ。燃えて燃えて燃えまくってすべて灰燼に帰すのだ。この野蛮な報復に震え上がる知識派閥。絶大なる効果である。これで当分おとなしくなるだろう。
すると今度は共産主義者たちが騒ぎ出した。マトモな住処をよこせというのだ。黙れ唯物主義者め。今わが国は大聖堂の建築に余念がないのだ。住環境対策はその完成後に手を付ける予定だというのに難癖つけやがってコラ。お前らのボスは誰だ。ほう、Edualdo Molinoというか。その名前、忘れんぞ。
そして、順番待ちでもしていたかのように軍閥から処遇に不満の声が上がる。不満の声というか、これはクーデターをちらつかせた事実上脅迫である。ぬう、貴様ら。しかし国家統制の鍵を握る軍を敵に回すわけには逝かない。むしろ福音派の防人としてがっちりガードしてもらわねばならんのだ。ということで、君たち偉大なる十字軍のお給金を上げてご機嫌伺いである。お願いします。


届かぬ民の審判(1957)

ポンセがごにょごにょ言っている。来年の選挙を求める声が上がっているのだという。ふざけるな。私に代わって神の国を建築できる者がいるとでも言うのか。猛烈な勢いで要請を却下である。
途端に民の不満増大。クックックック。計算済みだよそんなことは。いいかね、私は過去二回、大統領選拒否による国民不満がピークに達しての国家崩壊を経験しているのだ。不満増大することなどわかっているのだよ。しかし案ずるなポンセよ。私はわかっててそうしたのだ。私には秘策があるのだ。この程度の失点などどうということはない。クックックック…。


聖人大統領Guicho Zurdo(1958-1964)

晴れて大聖堂も完成し、住環境問題もアパートやら各種家屋の乱立でひとまず解消。さあ、ここから天国への階段を爆走である。福音政権の底力をとくと見るがいい。
まずは社会保障制度の確立である。これで貧乏な小僧もジジイも最低限の文化的な生活が保障されるわけだ。ありがたく思え社会的弱者ども。すると、ポンセが何かごにょごにょ言い出した。
「プレシデンテ、国民は医療不足に悩まされております」
おお、そういや医療対策が手付かずだったか。だがそんなものは教会がゴッド・パワーですべて治癒するので問題ない。…などと、いくらなんでもそこまで非科学的なことを言うつもりはない。案ずるなポンセ。医療機関は早急に建立してやる。完成の暁には海外の医者を多数招聘である。懸案はそれでカタがつくだろう。それから何だ。「食料倍増計画」の施行だっけか。おうおう、お前ら食ってりゃ幸せなのか。そうかそうかじゃあ食え。食ってブクブク肥えろ。と施行した途端に幸福度が大幅up。お前らな(笑)。
福音政権の施しはまだ終わらない。財政が潤っているので「減税」の実施である。これまた幸福度が上昇する。いやわかりやすいな君たちは。その勢いに乗じて新聞も発行してやろう。その名も「ザ・ワールド・オブ・ゴッド」紙だ。聞け、民よ。そう、神の声を。
そして施しの当座の仕上げは、「ローマ法王の訪問」。この一大イベントの効果は絶大である。民の幸福度がこれまでの失地を見事に回復したのである。
一連の怒涛の福音施策により、わが国はより神の御許に近づいたのである。…やれる。今度こそやれるぞ。天国にいちばん近い島の成就を遂げてみせようぞ。


さあ聞け、民の声を(1965)

ポンセがごにょごにょ言っている。また選挙の件についてである。猛烈な勢いで却下してやりたいところだが、世論は私を支持しているわけだし、ここで要請を撥ね退けてせっかく勢いに乗った福音旋風を落としてしまうのもちとアレだ。しかもこれは事実上の信任投票だろうて。うむ、わかった。受けて立とう。してその相手とは誰か。ほう、Valencia Parkerというか。われら福音派の仇敵、知識派閥の長だな。よろしい。かかってきたまえ。

結果:80%余の得票率。Guicho Zurdo圧勝。

クックックック。圧倒的じゃないかわが軍は。


神の雷(1966-1971)

財政は潤い、Guicho政権も安定。福音派の民も着実に増加し、幸福度も高い水準を維持している。実に素晴らしい。素晴らしい限りである。
しかし、聖人大統領Guicho Zurdoは忘れたわけではない。わが国には今なお強硬な反体制者がいることを。敵対勢力が存在することを。奴らが今そこにある危機でないことは確かであるが、かつても今もわれら福音派の敵であることには変わりはない。つまり奴らは神に背く罪人たちなのである。そんな連中をいつまでも野放しにしておくわけにはいくまいて。これは過去に対する報復と未来に対する脅威の除去である。今こそ奴らに裁きの鉄槌を下ろす時なのである!
そこで「宗教裁判」の登場ですよ。この執行により、反体制派は異端として民からの支持を失うため、暴動や反乱を画策しても民がそれに参加することが非常に困難となるのである。さしずめ福音版戒厳令である。当然、自由度は大きく下落するが、その分は既に他の面で帳尻を合わせている。そして再び「焚書」である。書物大炎上である。知識派閥よ、聞こえていたらその生まれの不幸を呪うがいい。
まだだ。まだ終わらんよ。留めは「異端者」のレッテル貼りである。これをやられると、本人はおろかその家族までもが異端として社会から蔑まされるのである。まさにダビデの星に等しい恐怖である。さあ、この悪魔のシールを貼られる者はいったい誰なのか。
当然ながら、生意気にも前回の大統領選に出馬した知識派閥の長、Valencia Parkerにである。うわーっはっはっは。思い知ったか知識馬鹿め。福音社会から蔑まれてコソコソと生きて逝くがいい。さて、芽は早めに摘み取るのがベストである。Valencia Parkerに代わって同派の頭角を現すであろうPaulina Loboにも異端のレッテル貼りである。クックックック。これで知識派閥が撲滅されるわけでもないが、指導者層を殺いでしまえばその力などどうということはない。知識派閥よ、貴様らは滅びたも同然なのだ。はっはっはっは。
おっと、これで異端者認定が終わると思ったら大間違いだ。共産主義指導者のEdualdo Molinoよ、私はその名を忘れんと言ったはずだ。今こそ積年の恨みを晴らす時が来たのだ。異端者のレッテルを背負って家族ともども社会的に葬られてしまえ。同じく指導者素養を有すると思われるJuan Pablo Encarnacionよ、貴様も同罪だ。食らえ異端シール!残ったアカどもは今からでも遅くないので転向せよ。転向してわれらが御旗に忠誠を誓うのだ。蟹工船など忘れてしまえ。
うむ。完璧だ。ポンセよ、私は勝てる。私は勝てるぞポンセよ。うわーっはっはっはっは!

いやー勝利っていいですね。祝福の一服を断行すべく階下に赴こうとしたところで、ポンセから緊急報告が入る。ハリケーンがわが国に接近してるとのことである。そうですか。…ってマジかよ!災害対策なんか何もねえじゃねえか馬鹿!どうすんだ!
そうこうしている間に、巨大な暗雲が暴風雨とともに島を通り過ぎて逝った…。雲が抜けた後に残るは瓦礫の山、山、山…。

100メガショーーーック!!

ふざけんな馬鹿野郎!主要建築物がほぼ壊滅状態じゃねえか!ここから私にどうやって立ち直れというのだ。コンビニ募金なんか糞の役にも立たねえぞコラ。茫然自失する私にポンセからまた報告が入る。今回の災害に対して国際社会から多額の義援金が来たという。むー、確かに高額だが被害に見合ってないんだよそれだけでは。しかも復旧にどれだけ時間がかかると思ってんだ。人口も激減してるじゃねえか。
しかし、幸いにも潤沢な国庫が残っている。義援金と合わせればそれなりな額だ。ふむ、それを元手に復旧に勤しむしかあるまい。
…ふと気が付いた。どうも民の様子がおかしいのだ。やたら怒りマークが目立つのである。おいおい自然災害なんだからしょうがねえだろ。私に怒りをぶつける筋合いはないぞ。…何か嫌な予感がする。慌てて生存者リストを確認する。すると、生き残った者の大半が私の敵、知識派閥と共産主義勢力であることが判明した…。

ど う し て お 前 ら ば っ か 生 き 残 っ て ん だ 。

なぜだ。いったいこれはどういうことだ。頭をフル回転させて現状に至った経緯を整理してみる。

1. 福音派住民の拡大。
2. 教会、大聖堂の乱立。
3. そもそも住民が教会に通う頻度が高い。
4. それが聖令でさらに通う頻度が増加。
5. よって教会は常時満員御礼。
6. そこにハリケーン襲来。
7. 教会・大聖堂倒壊で礼拝中の福音派住民多数死亡。
8. それと逆に、教会に逝かなかったアンチ福音派がどうにか生き残る。
9. 結果、今やアンチ福音派が大多数派に転じる。
10. これまでの弾圧で怒り鬱積。


………。
ちょっと待て諸君。じっくり話し合おうじゃないか。われわれは今ここで争っている場合ではない。共に手を取り合って国家再建に勤しまねばならんのだよ。な。いいかね、ここに一枚の写真がある。これはかつての第二次大戦の末期、エルベ河のほとりでアメリカ軍とソ連軍の兵士が仲良く…。
私の辻説法を妨げるようにポンセから報告が入る。

ク ー デ タ ー 発 生 !

勘弁してくれ。


或る一兵士の反乱(1972)

この国家存亡の危機の真っ只中で謀反を企てるとはいい度胸だ。首謀者は射殺してよろしい。迅速に始末しろ。…って始末する奴がいねえええ!!!
先のハリケーン襲来により、宮殿警備の兵はひとりを除いて死亡。で、その唯一の生き残りがクーデターを起こしたのである。誰だ貴様はこの野郎!怒髪衝天でリストを確認すると、その名をAlexei Yeltsinといい、ソ連からの移民。頑迷な共産主義者兼知識派閥シンパであることが判明。まさに抵抗勢力の鑑である。つーか何でこんな危ない奴が宮殿警備の任を務めてやがんだ!モスクワの謀略かこん畜生!
と、大統領執務室で騒いでる間にもパンパカ宮殿に銃撃を行う兵士Yeltsin。なす術なく破壊されていく福音派の牙城…。

うわあああもうだめだおしまいだあああああ!!!


最後の審判(1973年1月)

Guicho Zurdo政権、三度崩壊。
聖人大統領、手漕ぎボートにて側近ポンセと共に夕闇迫るカリブ海に脱出。


― 糸冬 了 ―


検証結果:超福音国家は天国にあらず。その寿命は23年。

狂気の大統領Guicho Zurdo:「トロピコ」で福音国家をシムしてみよう 

トロピコ大統領Guicho Zurdoは二度死んだ。

といってもその肉体が潰えたわけではない。政治的にという意味で。そう、Guicho Zurdoは一度ならず二度までも、政権の座とトロピカーナ宮殿を追われ、副官ポンセと共に手漕ぎボートで夕闇迫るカリブの海を彷徨うハメになったのである。
最初は圧政兼腐敗大統領として降臨したのだった。軍と警察を暴力装置として駆使し、レオニード・クチマが聖人に見えてしまうような狂気の圧政を敷いたものの、反政府ゲリラの破壊活動に散々悩まされた挙げ句、ついに抑圧された民衆の怒りが大爆発。宮殿に押し寄せる民衆になす術もなく、荷物まとめて国外逃亡の憂き目と相成ったのである。その最後はさながらマルコス政権の終焉を髣髴とさせるものがあった。
そしてリベンジ・マッチ。今度は完全なる共産主義者として再びトロピコの地に舞い降りたのであった。そのあくなき「赤」への追求の姿勢は、かのフィデル・スカトロもといカストロでさえピンクに見えてしまうほどの赤さであったという。しかしながらGuicho Zurdoは忘れていた。トロピコ島がアメリカ合衆国からほど遠くない場所に位置していることを。その地理的条件を勘案せず反米親ソ路線を爆走した結果、当然ながらアンクル・サムの逆鱗に触れ、3回に及ぶ無言の軍事的圧力の前に晒されることとなったのである。そしてついに、スター&ストライプスをはためかせた戦艦「バスコ・ダ・座間」のトロピコ近海鎮座に呼応するように右派軍閥が決起し、怒涛のクーデターによりGuicho Zurdoは政権の座から引きずり降ろされ、再びポンセと共にカリブ海を不毛に漂うこととなったのである。
しかし、Guicho Zurdoはあきらめたわけではなかった。じっと再起の時を待っていたのである。そう、再びトロピカーナ宮殿の主として、トロピコ大統領として政権の座に返り咲く日が来ることを夢見て。そして機は熟したと見定めた今、Guicho Zurdoは再びカリブの孤島、トロピコの大地へと舞い戻ってきたのである。聖書を手に持ち、オレンジジュースを飲みながら。そう、われらが偉大なるトロピコ大統領Guicho Zurdoは、今度は神の使徒、福音派の番人として高らかに復権を宣言するのである。

そこで今回の企画。

「妥協なき福音派が統治する国家、そこは天国にいちばん近い島になり得るのか」



カリブ海の片隅に出現したバチカンの支店。しかもそこは本店をはるかに凌ぐ強固な福音国家である。そのあくなき信仰深さと神への帰依はもはや原理主義の域に達する勢いである。危険だ。危険ではあるが、そこには政治的な右も左も存在しない。ただ神への祈りだけが存在するのである。ラーメン。
さあ、この超福音派が統治する国家の未来はいったいどうなって逝くのか。「トロピコ」で楽しく愉快にシミュレートである。

ということで、例によって舞台設定をば。

島の環境は毎度ながらすべて平均仕様。島の広さ・標高ともに中規模程度、植物・水域・鉱物・人口分布も標準設定。極端国家の行く末を測るには、やはりすべて標準仕様という形が望ましいのである。よって勝利目標も特に設定せず、下地となる環境(風土)情勢も特色なし。政治安定度・経済情勢・イベント発生頻度もすべて標準仕様。政権期間は50年。今度こそは任期満了を力の限り決意するものである。

お次は福音大統領のキャラ作り。
ご尊顔でそれっぽいのがいない。エル・サルバドルのオスカル・ロメロ大司教あたりを所望なのだが。せめてチリのホアン・フレスノ枢機卿あたりくらいは欲しいところだが、それも叶わない。となったところでパラメータに影響のない大統領のご尊顔など急にどうでもよくなった。ということで、今回はアルゼンチンのエヴィータ・ペロンをチョイス。や、別に深い意味はない。
無分別に大統領のご尊顔が決まり、しかも今回は女性なわけだが、それでもその名は“Guicho Zurdo”。要するに他の名を思いつかないのである。

さていい加減に設定したキャラの上っ面が決まったところで、ゲーム進行の鍵を握る素質(特性)やら属性といった重要な要素の設定を。

まずは大統領の出身階層。
当然ながらここは「聖書の学者」である。福音派代表として、これ以上どんなキャリアが望ましいというのか。続いて権力基盤。これも答えはただひとつ。「教会が任命」である。これ以外に考えられないだろう。いやー今回は設定考えるのが楽だわ。

続いて大統領の素質(特性)。
Guicho Zurdoは汚れなき神の代弁者である。聖書を読み、十戒を守り、夜9時に寝て朝6時に起き、オレンジジュースを飲み、うんこの時ですら神への祈りを忘れない大統領である。ということで「清廉潔白」。そしてもうひとつ。人々を神の国へと導く者として、「カリスマ的」であることは必要な要素だろう。ということでこれもチョイス。うむ、友だちにはなりたくないタイプだ。

神の使徒とて所詮は人である。人格的欠点はあって然るべきだろう。ということで居並ぶ欠点リストを点検。真っ先に目が逝くのは「熱狂的信者」である。盲信のあまり視野が狭くなるというのはこのテの御仁にはよくあることだ。ということでチョイス。
もうひとつはどうしたものか。んーそうだなあ、シェイクスピアの『ベニスの商人』に見られるように、福音派の傾向として彼らは守銭奴(強欲)であることに対して抵抗を持つ。金まみれはある種の罪であり、そのままでは天国に逝けぬという考え方である。さほど福音派ならずとも、生活環境の中で何らかの形で教会との接点を持つことが多い欧米人はこの傾向が往々にして見られる。特に金融絡みで成り上がった金持ちが後年やたら慈善事業に精を出すのもそのためである。イギリスはロンドンで地域福祉の源流ともいうべき慈善組織化運動(COS:Charity Organization Societies )が生まれた理由もそこにある。産業革命(機械化)の一方で街は失業者で溢れ返った。良識ある資本主義の権化たちは莫大な利潤を手にした一方で、貧乏人を救済すべく立ち上がったのである。かのコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルですら、スラム救済に一役買うという側面があった。彼は貧困層では人気者だったのである。アル・カポネにしてもそのテのエピソードはある。…と、超余談が続いてしまったが、要するに人格的欠点には「けち」をチョイスしたと。そういうことです。はい。

とまあこんな具合で設定終了。福音派大統領の概観は以下の通り↓

民主主義の期待度:いくぶん低い
宗教的派閥:+40
共産主義者の派閥:-10
知識人の派閥:-10
総合的な生産性:+10
犯罪発生率-45
教育:+10
建設費:-5
宗教関連施設の建築費:-25
ラジオとテレビの独断的主張:+50%
スイス銀行の禁止
いかなる労働者にも月25ドル以上は支払えません
住民は50%以上の頻度で教会を訪問します


うむ。ポンセよ、抜かりはないな。
このカリブの超福音国家は果たして天国に近づけるのか。ということで、レッツ・スタート。
適当な頃合いで、プレイ&リプレイ報告。

さあハニー、あの鐘の音が聴こえるかい?

カンコーン。カンコーン。ホエーホエホエー。バサバサバサバサ…。

「トロピコ」で共産国家をシムしてみよう、のリプレイ。  

ヨーロッパに妖怪が出没している―――共産主義という妖怪が。
ふるいヨーロッパのすべての強国は、この妖怪を退治せんと神聖なる同盟を結んでいる。
法皇とツアー、メッテルニヒとギゾー、フランス急進派とドイツ官憲…。


カール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス共著 「共産党宣言(1848)」


本企画の経緯

「もし完全なる共産主義国家の構築というものを成し得た場合、そこは果たして地上の楽園となるのだろうか」


では、リプレイをば。


Guicho政権樹立~降臨せし共産主義の使徒(1950)

トロピコに妖怪が出没している―――共産主義という妖怪が。

しかしながら妖怪とはいえ、それは無敵のフランケンシュタインではない。まずは先立つモノがなければお話にならない。ということで、まずは国家の経済基盤の確立である。
んー、どうしたものか。しばしの逡巡の後、地勢環境を鑑みタバコ、コーヒーといった農業を軸とし、いずれそれら産物をベースにした工業を展開することに決定。それぞれの売却(輸出)単価はそれなりに高いので、外貨獲得の主軸として大いに期待できよう。買えよお前ら諸外国ども。いえ買ってください。お願いします。
観光業は早々に投げた。それを発展させようという場合、必然的にパブやらキャバレーやらナイトクラブやらカジノといった夜の歓楽が付いて回る。ふざけるな。わが国は完膚なきまでの共産主義国家なのである。かような堕落した資本主義文明の持ち込みなど断じてまかりならんのである。帰れ。
さて、農業の比重がタバコとコーヒーに置かれているため、国民の主食たるトウモロコシが手薄である。わが国の将来的な展望を見据えれば、人口増加に伴う食糧危機は必至である。甦りし餓島の悪夢である。カリブ海のエチオピアという事態だけは避けたい。よって漁業も小規模ながら展開を決定。国民の糧としての役割だけでよいのだ。ついでに牧畜業も同程度に展開することにした。モーモーよ、またお前らか。再び国土の砂漠化の懸念だモー。しかし背に腹は変えられんのだモー。
そして手近な金ヅル、木々の「伐採」も外せない。ただし今回は、製材所や家具工場など、後の工業群への展開を見据えての環境破壊である。自然の破壊と引き換えに、われわれは文明社会を手に入れるのである。
うむ、経済的な盤石はこんなところだろう。


政権発足~トロピコ共産党を称えよ(1950-1955)

こんにちは、こちらはトロピコ共産党です。私たちトロピコ共産党はすべての労働者の味方、すべての人民の同志です。偉大なる同志Guicho Zurdo総書記のご指導の下、日々是階級闘争であり、日々是イデオロギー闘争なのです。さあ私たちトロピコ共産党と共に、地上の楽園に向かって前進しましょう!
完全なる共産主義社会の構築。そこに現る社会には貧富の差はなく、階級も存在せず、人々はすべてが労働者であり、事象ことごとくが平等であることが前提である。なので、まずは人民の給与格差の解消である。職業、教育レベル、事業収益如何に拘らず、すべての労働者の賃金統一である。すなわち軍人も農民も医者も港湾労働者も、その給料は総じて等しい。もちろん最低水準に合わせて。それが共産主義クオリティ。しかし途端に各派から不満の声。黙れ不満分子。これは完全なる平等社会の実現への偉大なる第一歩なのである。わが国にテクノクラートは存在しないのである。
さて、のっけから「禁酒法」の公布。飲酒などという悪しき快楽は労働、すなわち人民の生産性の妨げ以外の何者でもない。有害認定である。力の限り無用なのである。人民は水でも飲め。さもなくば乾いて死ね。と、ここで前回「禁酒法」を公布した結果、裏社会の暗躍で犯罪が激増したという経緯が思い出されるが、今回は案ずることはない。なぜなら人民すべてが幸福にある共産主義社会において、犯罪は発生しないからである。犯罪とは、腐敗した資本主義社会のみにおいて起こり得る産物なのだ。と、断固たる主張を振りかざす横で治安が猛烈な勢いで悪化。はっはっはっは。しかしそれでも私は言う。わが国に犯罪並びにそれに準ずる行為は一切存在しないのである、と。さて、警察の配置はどうしたものか。いやいや何でもありません。
ではそんなわが国の娯楽はいったい何か、などと疑問を呈する資本主義者並びに帝国主義者諸君もおろうが、それは愚問も甚だしい。完全なる共産主義社会において、そのような唾棄すべき概念は存在しないのである。生活の基本たる衣食住に加え、無料の医療や教育、非の打ちどころのない社会保障。人民の欲求すべてが充足した世界においては、“労働”こそが、というか労働のみが人民の欲求であり、心の拠りどころとなるのである。働き、汗を流すことこそが人民の最大の喜びなのである。そんなわが人民が、堕落した資本主義社会に蔓延する娯楽の類を求めようなどとは到底あり得ない話なのである。と、飛び散るフケも激しく演説している傍らで第二書記兼報道官兼政策秘書兼事務官のポンセ(仮名)が何かごにょごにょ言っている。
「草ばかり眺めていては国民は退屈します。プレシデンテ、国民に娯楽を」
黙れポンセ。東部戦線に送られたいか貴様。
第一次五ヶ年計画の達成は順調である。1953年を境に財政は赤字傾向から完全に脱却。以降は安定した黒字財政に転ずるはずである。うわっはっはっは。
ということで、高らかに入国管理局を設置。当然ながら「来る者は拒まず、去る者は去れず」な「出国禁止」設定。資本主義者や福音派の流入が気になるところであるが、ここは地上の楽園である。いずれ彼らは己が信条が愚かしいものであったことに気づくであろう。
その勢いで外務省も設置。「親ソ政策」にて、元から険悪なアンクル・サムとの関係にさらに拍車をかける。そして火に油を注ぐべく「ソ連を賛美」。厳かに揺らめく赤旗。んー、サムおじさんはかなりお怒りのご様子である。


第二次五ヵ年計画(1955-1959)

トロピコ共産党万歳。

労働者諸君。君たちはこの5年でさらなる良い生活が保障されるであろう。
今や財源の安定(外貨獲得)は確たるものとなった。ということで、労働者の給料もぽつぽつと上昇させつつ、教育、医療関連の整備に着手。社会保障も完備させ、食糧供給の倍増も遂行。公共の福祉を推進&推進である。
おお、わたしはなんてすばらしいしどうしゃなのでしょうか。
そんな自画自賛の横でまたポンセがごにょごにょ言っている。
「プレシデンテ、国民を癒すために、教会を建てられてはいかがでしょうか」
黙れポンセ。そんなにシベリアに逝きたいか貴様。われら共産主義者たる者、唯物主義こそがすべてであり、かような神だのアラーだの仏陀だのいった実態のあやふやなものを拠りどころとするなど断じてまかりならん。断固として拒否するものである。つーか福音派は労働に勤しむ人民の心に迷いをもたらす存在につき、これより弾圧対象とする所存なのでそう思え。
悲しむべきことに、資本主義者や福音派といった不遜の輩がわが国に多数存在することもまた事実である。よってこうした反体制分子の動向には目を光らせ、不穏の芽は早めに摘み取らねばならない。必然的に軍事・警察関連の強化も求められる。旧宗主国の駐屯地跡も反体制者の再教育用の強制収容所…、おっと刑務所、もとい教育施設に改装である。うん、そこは教育施設なのです。ええ。決してラーゲリなどと言ってはいけない。
そして私にはファイルがる。国民ひとりひとりの学歴・職種、家族構成や経済状況、政治思想までも把握できるゲーム・システム上のファイルが。標準仕様でKGBである。シュタージである。ゲシュタポである。STBである。トントン・マクートである。
まだポンセがうるさい。住環境をどうにかせいと言うのである。まあ確かに地上の楽園を謳いつつ、人民の住処がいつまでも掘っ立て小屋というのもよろしくない。ここはクレムリンに支援要請である。結果、アパートとマンションの建築費が半額。早速、雨後のナントカの如き勢いで各所に建設予定地。ええ、アパートの。いやいや労働者諸君、確かにそこはアパートであるが、いずれ諸君らにはさらなる良い暮らしが保障されているのである。

トロピコ共産党万歳。


トロピコに選挙はない~トロピコ共産党一党独裁(1959)

労働者諸君は選挙を求めているのだという。
何を言うか労働者諸君は。人民は、われら優良政党たるトロピコ共産党のみによって管理・運営され、はじめて生き延びることができるのである。その他の主義主張を標榜する政党の存在は一切認められないし、人民の偉大なる指導者であるこの私に代わる者など、断じて認めるわけには逝かない。ということで却下。
が、途端に民衆の不満増大。なぜだ。坊やだからさ、はともかくとして、早くも国土全体に徐々ではあるが、不穏が芽吹きつつあるように見受けられる。ジャングルに潜り、反政府ゲリラに転じる者も少数ではあるが、出始めている。
しかしまだ大丈夫だ。その不穏の一方で、国家基盤は強固なものになりつつあるのだ。うむ、まだ大丈夫だ。


♪ララララララ亜米利加(1960-1965

おおくれむりんよ、わたしのあいするくれむりんよ。あなたはなぜにそれほどあかいのか。

モスクワとの蜜月の関係を維持するためには、定期的な「ソ連賛美」が欠かせない。しかし、この断固たる第二のキューバ的立ち位置に、ついにアンクル・サムが激怒した。
トロピコ近海に戦艦が出没している―――アメリカ海軍所属という戦艦が。ふるいトロピコのすべての軍隊は、この戦艦を退治せんと神聖なる武器を持っている。棍棒とチェーン、ビール瓶と石、パイプ椅子と鉄拳…。って勝てるわけねえだろ!なんだよアレは!ポンセよ、わが海域にいるあの大きな砲を持ったお船はいったい何か。同志、あれはアメリカ海軍の戦艦、「フランシスコ・ザビ家」にございます。ってそれどこじゃねえええ!!うわあああ黒船があああ!!黒船がやってきてしまったあああ!!!
どこまでも赤い道を突き進まんとするGuicho政権に、アンクル・サムは軍事的圧力をもって対応である。ただしこれは警告的効果を狙ったものであり、武力行使を意味するものではない。戦艦はただトロピコ近海をウロウロしているだけである。しかしその圧倒的存在感は、国内の政情不安を煽るに十分な効果を持つ。戦艦の出現と同時に暴動、クーデターといった政権転覆の危険性が急上昇である。うわあ頼む。何も起きんでくれ。お願いします。
赤旗振りを少し控えたのが功を奏してか、しばらくの後、戦艦「フランシスコ・ザビ家」は本国へ帰投の運びとなった。これで安心。多い日も安心。
しかし、わが国の政治的安定度の脆さがこれで露見した。ぬう、ここらで綱紀粛正が必要か。軍事・警察関連を強化せねばなるまい。


トロピコのプロレタリアよ、団結せよ(1965-1969)

経済は安定し、右肩上がりに成長を続けている。後発の工業群も軌道に乗りつつある。
コルホーズでタバコやコーヒーが潤沢に収穫され、一部は原産品として輸出され、それなりな収益をもたらす。一部は工場に送られ、葉巻や缶詰として加工され、輸出され、大きな収益をもたらす。伐採された木々は、一部は原木として、一部は製材所で加工され、材木として輸出される。さらにその材木の一部は家具工場に送られ、家具として輸出される。これら外貨獲得の物産群は、今や揺るぎない柱としてトロピコ経済を支えている。
一方、公共の福祉群を激しく推進した結果、それらに対する国庫負担は増大の一途を辿っているが、前段の貿易収支による黒字財源がそれを補って余りある。
いずれにせよわが国は、経済面においては成功を収めつつある。経済面では。が、しかし。
人民の動向が依然として不穏なのである。Guicho政権@トロピコ共産党に対する不満が、とろ火の如くふつふつと静かに煮え立ち、看過されざる空気が国土全体を覆っているのである。今のところ、目に見えての反政府活動というものは少ない。事が起こる前にせっせと摘発しているというのもあるが。それでも不満の声が各所のあらゆる層から湧き出ているのだ。資本主義者は体制そのものを批判し、環境保護論者は開発による国土の荒廃を非難する。福音派は弾圧に抵抗し、軍閥はそのステータスの低さに文句を言う。人々は職種・教育レベル、事業収益に拘らずな一律の給与体系に疑問を呈し、総じて娯楽と自由のない現状を嘆く。ええい、お前らはいったい何が気に入らんというのか。われらトロピコの人民@プロレタリアートすべては、完全なる共産主義社会、すなわち地上の楽園の実現に向けて、一糸乱れぬ足並みで前進せねばならない。その歩みに異を唱え、規律を乱し、人心を篭絡せんとする者は敵対分子、すなわち人民の敵であり、そういう手合いは有無を言わさず逮捕・拘禁の上、再教育キャンプ逝きを命ずるものである。
綱紀粛正を高らかに叫ぶ中、ポンセがごにょごにょと言う。

「プレシデンテ、あなたの敵は増えるばかりです」


やはりトロピコには選挙がない(1969)

ま  だ  わ  か  ら  ん  の  か  。

トロピコ共産党総書記・Guicho Zurdo、つつがなく3期目を継続。
人民の幸福度、つつがなく下落。なぜだ。


動乱のトロピコ(1970-1975)

相も変わらずポンセがごにょごょ言っている。アメリカが反米親ソ香ばしいGuicho政権に圧力を掛けんと、現在わが国にアメリカ海軍の戦艦が向かっています、ってまたかよオイ!ふと近海を確認すると既に戦艦「アメリゴ・べス仏陀」の雄姿が。早いよ馬鹿野郎、もう来てるじゃねえか!ええい、こうなったらもはや帝国主義者アメリカと刺し違えるまでよ。われらトロピコ海軍の全戦力をもって、ってウチには海軍なんかねえええ!!つーかトロピコの軍事力は国防じゃなく対内の治安維持用だから対艦兵器なんかあるわけねえええ!!
とやってる傍から、「アメリゴ・べス仏陀」の出現に合わせるように反政府ゲリラが作戦行動を開始した。しかもモスクワとの窓口である外務省を襲撃。ふざけるな。しかしながら内なる敵には強いわれらトロピコ政府軍、速やかにゲリラどもを駆逐。おお素晴らしき哉。よくやった。と、喜びも束の間、今度は暴動の危機。いい加減にしろ。無知なる人民が「アメリゴ・べス仏陀」の存在に煽られて暴徒化するのは必至である。もうこれを抑える手立ては「戒厳令」しかない。ええい鎮まれ、鎮まれいと高らかに「戒厳令」を発動。
カオスの危機は去った。しかしこの伝家の宝刀により、経済が急激に悪化、元々低い自由度は今や正視に耐えぬ数字となった。
労働者諸君、私にはこうするしかなかったのだ。
すべての元凶の戦艦「アメリゴ・べス仏陀」は、いつの間にか本国へ帰投していた。


経済破綻(1975-1979)

戒厳令の発動以降、急速に冷え込むトロピコ経済。安定した経済成長を前提に推進された公共の福祉群への国庫負担が今さらながら激しくのしかかる。政府に対する人心はすっかり離反し、労働を放棄する人民が増加している。トウモロコシ農場や牧場の生産性の低下で食糧供給が停滞。人民が飢えはじめている。伐採の労働者も激減した上に流通も滞っているため、原材料が回らない余波が製材所、家具工場をマトモに直撃。空前の赤字状態である。まさにハンケチきりり(C)そい、である。
そして度重なる反政府ゲリラの攻撃。こちらとしては不毛な内戦を続けるより、反政府ゲリラとは手打ちにして経済復興に専念したいのだが、いかんせん政府と軍閥との関係が冷え切っているので恩赦もままならなん。交渉のテーブル以前の問題である。そんな中、悲劇にさらに追い討ちをかけるように交易を担う海運業界がストライキを敢行。死なすぞ貴様ら。
いかん。いかんぞこれは。今一度人民を赤旗の御許に集わせ、一致団結を誓わねば再起の機は逸しよう。
ということで、残った財源をすべて投入し、プロパガンダの波状攻撃。新聞社を設立し、党機関紙「労働新聞」を発行。ラジオ局では労働技術の向上を目的とした面白味のまったくない番組を延々と流し、TV局も立ち上げ、「あなたの政府、あなたの友」と、必死に赤いプロパガンダ。もはや事態は深刻なのである。なりふりなど構っていられないのである。
この徹底したプロパガンダ作戦で多少の効果はあろうて、戒厳令についてはひっそりと解除。お願いです。立ち直ってください。


崩壊のファンファーレ(1979)

さあ皆さん、またまた選挙の季節がやってまいりました。ってやれるわけねえだろ馬鹿。
と、力の限り退けた途端、三度、反米親ソを理由にアメリカ政府が戦艦「バスコ・ダ・座間」をトロピコ近海へ派遣。怒髪衝天、血圧急上昇。もう一度真珠湾に攻め込むぞこの野郎。何だその絶妙のタイミングは。揚陸艇で海兵隊が上陸しないだけマシだが、星条旗はためかせた戦艦がそこにいるだけで効果絶大なんだコラ。帰れ。今すぐ帰れ。お願いだから帰ってください、って帰るわけがねえええ!!ええい私とて共産党の男、無駄死にはしない!…島を、島を戦艦にぶつけてやる。180度回頭!!って島が動くわけねえええ!!!
戦艦「バスコ・ダ・座間」は何するわけでもなくトロピコ近海に鎮座ましましているのみ。しかしその存在は国内騒乱を誘発するに十分な効果を発揮する。ただでさえ治安はガタガタなのである。もはや限界である。こうなったらモスクワに助けを求めるしかない。
そこで、「ソ連との軍事同盟」を締結。飛び石のワルシャワ条約機構加盟。そしてキューバ危機を髣髴とさせるような、巨大なソ連軍駐屯基地が国内に出現。正式な軍事同盟の締結とあっては、さしものアンクル・サムも手は出せない。戦艦「バスコ・ダ・座間」は渋々とトロピコ海域を去って逝った。これで安心。多い日も安心。
労働者諸君、脅威は去った。われら共産主義の偉大なる勝利である。と、笑顔でケツをボリボリ掻き出した途端にクーデター発生。

100メガショーーーック!!!

圧倒的多数を誇る反乱将校&兵士。謀反者たちは政府側に付いたわずかな兵を迅速に始末し、満を持して私の宮殿に攻撃を開始した…。うわあああもうだめだおしまいだあああ!!!


一共産国の終焉(1980年1月)

Guicho Zurdo政権、再び崩壊。
元総書記、側近のポンセと共に手漕ぎボートで国外逃亡。


- 糸冬  了 -


検証結果:完全なる共産主義社会の構築はならず。従って地上の楽園にもなり得ず。寿命としては30年。

狂気の大統領Guicho Zurdo:「トロピコ」で共産国家をシムしてみよう 

そういえば「トロピコ」の世界って、よくよく考えると共産主義社会的な色合いがかなり濃い。医療・教育等の恩恵は無料(国庫負担)だとか、すべての労働者の給料は国家から支払われるとか。あるいは各産業が総じて“国営”であったり、そこから得る経済的収益は国庫として計上されるという点もそうだ。住宅を含むすべての建築物も国家の手によるものだ。国民が自らの意思で建てられるのは堀っ建て小屋だけである。
まあこういった部分は、ゲーム・システム上そうせざるを得ないという部分でもあって、そこを現実社会に照らし合わせて「税制」やら「自由競争」といった概念を導入してしまうと、諸々の成果がわかりにくくなる上に、システムとしてもより複雑兼難解になってしまう。それはそれで“政治シム”としてのリアリティは増すのだろうが、“ゲーム”としての面白さはむしろ低下するだろう。得る結果や数字が直接的なものでなく、間接的なものになってしまうからだ。それではつまらん。
まあそれはともかくとして、ふと考えてみた。この「トロピコ」が持つ、というか基本仕様たる“共産主義社会的要素”をフルに活かし、より徹底した路線で突き詰めて逝けば、そこは完全なる共産主義国家(世界)ということになるのではないか。それはマルクスもレーニンも成し得なかった夢である。うむ、やってみる価値はあろうて。

そこで今回の企画。

「もし完全なる共産主義国家の構築というものを成し得た場合、そこは果たして地上の楽園となるのだろうか」


カリブ海の片隅にに突如として誕生する赤い国。それもただの赤ではない。赤よりも赤い赤である。赤の中の赤である。要するに真っ赤である。それに比べればキューバの赤さなど所詮まやかしの赤に過ぎない。単なる赤風味である。
さあ、この完全なる赤い国の構築とその経過を、この「トロピコ」でシミュレートである。前回の「圧政編」では散々だったわけだが、果たして今回はいかに。

ということで、また舞台設定をば。

島の環境は前回と同様、すべて平均仕様。島の広さ・標高ともに中規模程度、植物・水域・鉱物・人口分布も標準設定。
続いて勝利目標。今回はそうだなあ、やはり経過観察が主眼なので、特に勝利目標の設定はせず。下地となる環境(風土)情勢も特色なし。政治安定度も経済情勢もイベント発生頻度も同じく標準仕様で。
政権期間も前回同様50年。安定させればそれくらい伸びるだろう。現に、赤いキューバのヒゲ葉巻は半世紀余を経て未だ健在だ。

さて、次は赤い大統領のキャラ作り。
前回の圧政編では、恐らくは中南米諸国歴代極悪大統領十傑にエントリーされるであろう、ニカラグアのソモサ大統領をチョイスしたわけだが、今回はだな、んー政治的立ち位置上キャラは限られてしまうよなあ。最初チリのアジェンデ大統領を考えたのだが、あいにくいねえでやんの。かといってその後釜のピノチェトってわけにもいかんだろ。つーか立ち位置的に正反対じゃねえか。
となると、やはりこの男しかおるまい。その名の通り、うんこの香りも誉れ高きキューバのフィデル・スカトロ(仮名:フィデル・カストロ)議長その人である。スカトロ議長は未だ現役で赤いキューバの頂に鎮座ましまするまさに今そこにあるうんこなわけだが、まあいいでしょう。
ちなみに、かつてこの目の上のうんこをどうにかせんと、隣国アメリカ合衆国が毒入り葉巻を用意してスカトロ抹殺を目論んだ作戦(結局未遂)があったのだが、その時暗殺を託されたマイルス・コープランドなるCIA要員が、実はポリスのドラマーだったスチュアート・コープランドの父親であるというのは超余談である。

で、ご尊顔が決まったところで、この赤い大統領に命名を。
考えるまでもない。その名はもちろん“Guicho Zurdo”である。そう、前回怒れる愚民どもに大統領宮殿を破壊され、側近ポンセ(仮名)と共に手漕ぎボートでカリブ海を彷徨った私は、今度は赤い大統領として再起を賭けるのである。抜かりはないな、ポンセよ。

まあ、キャラの表層はやはりどうでもよい部分でございまして、核である素質(特性)やら属性といった重要な部分をば。
まずは出身階層。やはり政治思想的な点からして「左翼の作家」とか「住民の英雄」、「農夫」といった草の根レベル系貧乏人に目が逝ってしまいがちなのだが、ここは完全なる共産主義国家の構築が目標であるということを鑑み、理論的指導者であることが望ましいだろう。ということで、「モスクワ大学卒」を選択。そう、今甦りしトロピコの悪夢プレシデンテ・ギチョは、今度はモスクワ仕込みの筋金の共産主義者として再び権力の座に返り咲くのである。手漕ぎボートの屈辱に泣いたわが魂を報うために、地上の楽園成就のために、トロピコよ、私は帰って来た!

さて、この赤い大統領ギチョの権力基盤とは。そうだな、己が政治思想が民衆の支持を得たという形よりもだ、赤い国を増やすべくクレムリンの意向に基づき、神の見えざる屁によって権力を与えられたという背景に惹かれる。よって「KGBが設置した」をチョイス。今ここに、赤い傀儡政権が誕生したのである。そう、私は寒い国から来た大統領。父はマルクス、母はレーニン。本籍はモスクワ市ジェルジンスキー通り2番地。

続いて大統領の素質(特性)。
んー、断固たる共産主義者としての素質とはなんじゃらほい。改めて考えると難しいのだが、まあイメージ的に糞真面目な官僚ってとこかなあということで「行政官」にチェック。でまあ理論型共産主義者ってキャラでもあるんで「学者肌」にもチェック。うむ、こんなとこか。
で、人格的欠点の選択。そうだなあ、前回と同じになってしまうのだが、やはり反体制分子の動向には敏感であろう。階級闘争に明け暮れた私は常に疑心暗鬼で猜疑心だらけ。よってまた「偏執的」。でもこれ選ぶと自動的にオプション効果で「警官が凶悪」なんだよな。またかよ(笑)。あとはまあ、愚民を騙し騙し「労働者諸君は天国にいるのである」とかブチ上げねばならんのだろうということで、「病的なうそつき」をチョイス。
こんなところでしょう。

さあ、赤い大統領の概観が出ましたよ↓

民主主義の期待度:非常に低い
総合的な敬意:-10%
軍国主義者の派閥:+10%
宗教的派閥:-15%
共産主義者の派閥:+20%
知識人の派閥:-15%
アメリカとの外交関係:-25%
ソ連との外交関係+60%
自由度:-30%
教育:+50%
建設費:-10%
学歴がなくとも兵士になることが許される
警官が凶悪


どうなのか。

傀儡政権だけに「民主主義の期待度:非常に低い」ってのはしょうがない。つーか共産主義にそんなものを期待するな。
「共産主義者の派閥:+20%」って何だよ。がっくりさせんな。これはもっと高くてもいいだろうに。何が気に入らんというのか。傀儡がか。そうですか。
わが国は第二のキューバというかそれ以上赤くなる所存なんで、「アメリカとの外交関係:-25%」は当然だ。ここは「ソ連との外交関係:+60%」という傀儡ならではの蜜月をフルに活用してだな、カリブ海の冬将軍として君臨していこうかと。
「自由度:-30%」といい具合に低い。当然ですね。ええ。
あとはまあそうだな、香ばしさを鑑みれば妥当な数値ってとこだろう。

さあ、カリブの赤い国の命運は。ということで、レッツ・スタート。
結果わかり次第、リプレイ報告。

「トロピコ」で圧政(兼腐敗)国家をシムしてみよう、のリプレイ。 

本企画の経緯

「もし、史上稀に見るものすごい圧政者、サダム・フセインやイディ・アミンも吹き飛ぶような香ばしい独裁者が完膚なきまでの恐怖兼腐敗政治体制を敷いて国家と民を支配した場合、その国の未来はいったいどうなってしまうのか」


ということで、以下リプレイ↓


Guicho政権樹立~地上の地獄への足固め(1950)

まずは国家の経済基盤を見出し、ある程度の経済的安定は確立させねばならない。いくら「内弁慶型ならず者国家」とはいえ、先立つモノがなければ圧政もまかりならんのである。
とりあえず手持ちの資源(環境)を見直してみた。
トウモロコシ主体の農地が点在。トウモロコシは主力輸出品目になり得るが、同時にゲームにおける国民の主食でもある。ならばここは内需用に特化させ、外貨獲得は別の品目で攻めたい。しかし、農業についてはこれ以上の農地開拓や栽培品種の拡大にはちと乗らぬ。環境・天候に左右される不安定要素が多いのである。ひとまずこのまま現状維持で逝きたい。
では何で食って逝くのか。観光地としての立ち位置は既に捨てた。わが国は風光明媚かつ牧歌的な民主国家ではない。狂気の暴政が吹き荒れる非人道国家である。ジンバブエに観光旅行に逝こうというモノ好きはあまりいない。それと同じである。
水域はそれなりであるが、漁業もまた環境に左右されやすく、またさほど高い収益が期待できない。国民の糧としての役割は十分果たそうが、奴らには既にトウモロコシがある。それで十分である。
高い収益を目論むのであれば、水産よりも陸産である。すなわち牧畜業である。モーモーが緑地を野放図に食い荒らし、国土の砂漠化を促進するというデメリットはあるのだが、まずは何を差し置いても利潤の追求だモー。余剰分は国民の口にも入るモー。これで連中のタンパク源も確保できたモー。
続いて鉱物類に目を向けてみる。豊富とは言い難いが、鉄と金鉱脈がいくつか存在する。採掘量はさほど期待はできまいが、売却(輸出)単価が非常に大きい。これは開発・投資だろう。
ここでふと、国土の40%余を占めるジャングル(森林)の存在に目を向ける。…金ヅルはすぐそこにあるではないか。今ここに、わが国の主力産業が決定した。「伐採」である。もちろん環境保護など眼中にない。ひたすら利潤の追求である。それにもうひとつ、ジャングルはいずれ増大しよう反政府勢力の拠点ともなるのである。その温床を潰していけば、必然的に奴らの穴倉も失われるのである。一粒で二度おいしい。
もちろん、上記労働の場に従事する人々の賃金は最低水準である。


政権発足~束の間の安息(1950-1955)

まずは腐敗政治の確立である。高らかに「建設許可制度」を施行。もちろん裏口での握手である。これにより、すべての建造物の建築費が20%増しとなり、内10%は私個人の懐に、残り10%はゼネコン業者及び関係各位への口止め料としてバラ撒かれる。実に手堅い。ただし、知識派閥の国民が癒着を嗅ぎつけ不平不満。いいだろう、諸君らには後で素敵なプレゼントを用意してやる。
間髪置かず、「ゴミのポイ捨て禁止令」の公布。これは環境美化への取り組みとしてプラスの要素に見受けられるが、その裏で“自由の制限”としての要素も有する。そう、軽く圧政への布石である。敏感な国民どもは直ちに反応を示し、自由度が微妙に下落。うむ、いい傾向だ。
さて、政権発足後の最初の数年は経済基盤が確立が主要テーマとなるため、国民管理については比較的緩やかなものとなる。何せ軍・警察関係を強化しようにも、採掘場や伐採場といった設備投資を先行させているので、治安関係に回すだけの資金がないのである。事実、貿易等ゼロに等しい状態のため、財政は瞬く間に赤字転落である。しかし諸君、案ずることはない。「設備投資の完了」、「労働力の確保」、「生産」の流れで各産業が軌道に乗り、物産を輸出できるだけのレベルに達すればこの財政難は解消される。見込みでは3年以内に財政の赤字解消、5年後には安定した黒字財政の確立である。言い換えれば、国民がただでさえ限られた自由を謳歌できるのはこの期間までということである。うわっはっはっは。
ここで忘れてはならないのが、入国管理局の設置である。一見後回しでもいいようではあるが、実は重要である。ここでの設定が出入国者(移民の流出入)の動向を左右するからである。ここは当然「出国禁止」をチョイスである。これにより、入国(移民)についての制限は特にないが、他国への移住は75%の確率で認められない、「来る者は拒まず、去る者は去れず」なシステムが確立された。旧ソ連以上北朝鮮未満な自由権の剥奪である。Welcome to the hell。うわっはっはっは。
ついでに外務省を設置。ララララララアメリカに背を向け、「親ソ政策」に重点。途端にアメリカとの外交関係は「険悪」に転落ですか。そうですか。対してソ連との外交関係は「友好的」。同志、われらはあなたの友人であり、第二のキューバであります。ただし反共政策ですが何か。


圧政の息吹(1955-1959)

財源が安定したところで、いよいよ圧政の本格始動である。
厳かに国家の暴力装置の構築である。兵器庫と監視所といった軍事施設を着々と配置。「警官が凶悪」な警察署も掘っ立て小屋を蹴散らしつつ鎮座。国民の生活は日増しに窮屈になっていく。旧宗主国の駐屯地跡は刑務所に改装。そこでの待遇は迷わず「食事制限」。この劣悪な虜囚環境により、投獄された者の死亡率が倍増する。今甦るトゥールスレーン刑務所の悪夢。
ところで、この「トロピコ」における「逮捕」効果というのは尋常ではない。誰かを逮捕拘禁すると、その家族からも大統領への敬意が失われるのである。そもそもの逮捕が犯罪云々ではなく、危険分子と見なした反体制者の摘発である。つまり囚われの人は政治犯であり、すなわち良心の囚人なのである。そりゃ家族も怒る罠。さらに、ゲームでは全住民がマップ上を蟻のようにチョロチョロ動き回って“生活”してるわけだが、そこで誰かの身柄拘束が行われた場合、周囲にいる住民もその国家権力の横暴の現場を目撃することになり、逮捕現場一帯に居合わせた住民全員の不満が増大するという仕様である。いやー(笑)。
恐怖政治の土台を強化している間、大統領補佐官兼報道官兼政策秘書兼執事のポンセ(仮名)がしきりにごにょごにょ言ってくる。
「プレシデンテ、国民を癒すために、教会を建てられてはいかがでしょうか」
「草ばかり眺めていては国民は退屈します。プレシデンテ、何か娯楽を」
「プレシデンテ、国民は医療不足に悩んでいます」
黙れポンセ。わが国に社会保障及び社会福祉の概念は存在しないし、これからも存在する予定はないのだ。助言・嘆願はことごとく黙殺する。それが圧政者クオリティ。
ポンセの嘆きには「禁酒法」の公布で返してやった。当然ながら自由度下落。それはわかるのだが、なぜ酒を禁じて犯罪が激増するのだ。普通は逆ではないのか。と思ったのだが根拠を知ると納得。一見、飲めないゆえのストレス増大かと思ってしまうがそうではない。法的に禁じられようと、人々は酒を飲みたいのである。ところがもはや合法的に酒の入手は不可能となった。そこで彼らはその入手先を裏社会、つまりは犯罪組織に頼ることになる。結果それに絡む犯罪組織の抗争等も頻発するようになり、必然的に犯罪発生率が増加するという根拠である。あれだ、合衆国の禁酒法時代の構図だな、これは。それにしても恐るべし「トロピコ」。
警察国家の必需品、秘密警察ないしはそれに準ずる諜報機関が欲しいところであるが、あいにく「トロピコ」の世界には存在しない。しかしまあ国民ひとりひとりの学歴・職種はおろか家族構成や経済状況、果ては政治思想まで把握できるゲームの監視システム自体が秘密警察である。
もちろん、軍・警察、及び政府機関関係者の賃金は高い。一般の労働者との賃金格差は2-3倍である。


汚れた大統領選挙(1959-1960)

愚民どもは大統領選挙を求めているという。
通常であれば高らかに放置してやるところだが、1期目は圧政への布石こそ敷いたものの、むしろ国家維持の基盤構築に腐心したわけで、感謝されて然るべきである。よってこれは事実上の信任投票になろうということで、受けて立つことにした。しかし貴様ら、これは二度とないものと思え。
で、対立候補の横顔↓

氏名:Roberto Tarres
年齢:45歳
職業:運送業
政治派閥:環境保護+共産主義


ふん、アカのナチュラリストが。この私に勝つ気でいるのか。馬鹿め。と鼻歌まじりに世論調査を見ると、現大統領支持が35%で対立候補支持が65%…。
100メガショーーーック!!
何だこれは。私は既に1期目にして完全に不人気大統領かよ。ふざけるな愚民ども。飢えさすぞ。などと怒ってる場合ではない。選挙のGoサインを出してしまった以上避けることはできない。しかしこのままでは私は確実に大統領の座を追われてしまう。何もしねえうちに政権崩壊じゃねえか。いくらなんでも早杉だろうがこれは。何か手を打たねばならん。かといって、今さら急ごしらえの穏健政策に転換したとこで焼け石に水である。猶予は1年しかない。…となると答えはただひとつ。

対  立  候  補  の  抹  殺  で  あ  る  。

他に手はない。直ちに暗殺命令書にサインし、刺客を解き放つ。早速軍服姿の政府のイヌがTarres氏の元に赴き、荷役運搬中の氏を銃撃。かくして、国民の支持を集める対立候補は凶弾に斃れるのである。
支持者たちは大激怒、暗殺現場に居合わせた目撃者たちの幸福度はブラック・マンデー並の驚異の下げ幅。うわあ。しかし勝つために私は手段を選ばぬ。それが圧政者クオリティ。
ひとまず当座の危機は去ったが、選挙は止まらない。すかさず新たなる候補者が擁立される↓

氏名:Pablo Jimenez
年齢:58歳
職業:港湾労働者
政治派閥:宗教重視


新たなる世論調査では、現大統領支持が30%で対立候補支持が70%…。
さらに悪化してるじゃねえか馬鹿野郎。どうすんだ。やはり暗殺は極端な処置であったか。…かといって今さらどうにもならんし、今度のコイツも早々にどうにかせねばならん。
さすがに暗殺はできないので、ここは身柄の拘束で参選できんように画策。そう、いわれなき理由での逮捕・拘禁である。さっそく逮捕執行令状を出し、警察が出動。候補者氏はつつがなく獄中の人となる。トゥールスレーンで繋がれて死ね。
しかしそれでも選挙は止まらない。3人目の命知らずが現われる↓

氏名:Moriss Odell
年齢:64歳
職業:農業
政治派閥:共産主義


前候補者の逮捕は正解だった。反体制は即摘発の憂き目に遭うことを知った各派中道層が動揺し、こちらに傾いたのである。理由はともあれ浮動票の確保は大きい。世論調査では、大統領支持が40%で対立候補支持が60%。うむ、これならどうにかなる。
そう、どうにかなってしまうのである。実はこのトロピコ、選管の“友人”に依頼すれば20%の範囲内で票操作が可能なのである。つまりゲームのシステムとして「不正選挙」が選択可能なのである。素晴らしい。
かくして、私は選管の“友人”の手を借り、2期目の当選を果たすのである。不正を嗅ぎ付けた一部国民が不満を募らすが、通ってしまえばこっちのものである。うわっはっはっは。


狂気のGuicho大統領(1960-1965)

相変わらずポンセがうるさい。国民の住環境がひどいとのたまうのである。黙れポンセ。しかし、確かに島には掘っ立て小屋が綿々と立ち並び、さながら南アあたりの貧困スラムの様相を呈している。見苦しい。まあ愚民どもはそれでいいが、私に忠義を尽くす軍・警察、及び政府関係機関者までもがそういう住環境というのはちと忍び難いものがある。ということで、マンションを2棟建築。ただし家賃設定を前者の給料に合わせ、彼らのみが入居可能になるよう仕立てる。これで新たなる社会格差が生まれた。いい傾向である。
ポンセはまだうるさい。学校のひとつくらい作れとのたまうのである。黙れポンセ。愚民に知識を与えてしまうとだな、わが国の抑圧体制に気付き民主化運動の先兵ともなりかねんのだ。ただでさえ小うるさい知識派閥連中の弾圧に手を焼いているのだ。これ以上仕事を増やす要素を作るな。というか、なんかそう考えてみると、ポル・ポト派が知識階級の絶滅に執心した理由がわかるな。そういうことかい。
さて、この頃から愚民の間でチラチラと、プチ・デモや街頭アジなどの反政府運動が見受けられるようになる。「トロピコ」ではキャラの政権に対する不満がピークに達するとジャングル(森林)へと姿をくらまし、反政府ゲリラと化す。その前段階がデモやアジである。不安分子は早めに除去せねばならない。発見次第、逮捕命令である。被疑者はつつがなく劣悪な刑務所に送られ、生きて娑婆に出られる者は限られる。後の脅威となる懸念を有する者は暗殺命令である。国家権力の横暴はもはや大っぴらに行われるようになった。半ば見せしめの公開処刑である。しかしそれでもジャングルへ姿をくらます者が後を絶たない。激しい伐採も、ジャングルの破壊までは至らない。奴らの隠れ場所は未だ豊富に存在する。
国家は徐々に由々しき事態へと傾いて逝く。経済以外はすべてが右下がりである。それとは反対に、暴動・クーデターの危険度が右上がりである。
何やら国家全体が香ばしくなりつつある。


怒れる民たち(1965-1969)

ついに反政府ゲリラが行動を開始した。伐採場へのテロ攻撃である。直ちに軍が出動してこれを駆逐する。しかしゲリラは減らない。むしろテロ攻撃の頻度がだんだん増えている。破壊される建築物も出るようになった。軍のゲリラ討伐作戦が追いつかない。ええい兵は何をしている。ってこれってもしかして内戦状態ですか。
そんな中、今度は軍部のクーデター画策の噂。おいおい勘弁してくれ。慌てて軍の近代化やら給料の引き上げでご機嫌取り。おい、お前らの暴力でGuicho政権は成り立っているのだ。頼むから謀反はやめてくれ。お前らの敵はジャングルにいるのだ。つーかいざクーデターが発生した場合、大統領派について戦う兵は果たしてどれだけいるのだろうか…。ハッ、いかいかん、私ってば超疑心暗鬼だ。おお、これが独裁者の心理というものなのか。何と虚しい。
今や島のあちこちでデモ運動や街頭アジが行われている。逮捕・拘禁も追いつかない。というか刑務所が既に政治犯で満杯である。アジテーターひとり暗殺したところで焼け石に水である。そして次々とジャングルへ消え。ゲリラと化す民…。
ポンセの懸念が目に見える形となった。

「プレシデンテ、あなたの敵は増えるばかりです」

政情不安定。事態は着実に悪化の一途を辿っている…。


踏みにじられた民意(1969)

そんな中、再び大統領選挙。ってやれるわけねえだろ馬鹿。却下だ却下。このまま私が3期目を継続だコラ。
とした結果、火がついた。


カオス(1970年1月)

突如、民の怒りが爆発した。国土を席捲する大暴動である。うわあああ民衆があああ!!!愚民どもがあああ!!!炎上してる!国が炎上してるううう!!!
戦う同胞たち。大統領支持派12%、反大統領派88%ってマジかよ。勘弁してくれ。慌てて戒厳令を発動するが、時既に遅し。効き目ねえええ!!!
見る見るうちに倒されて逝く大統領支持派。ええい兵は何をしている!っていねえじゃねえか馬鹿野郎!詰所の兵がことごとくいねえええ!!!貴様ら軍服脱いで敵前逃亡かよ。ふざけんな。発見次第銃殺に処すぞコラ。って今はそれどこじゃねえええ!!!
怒れる民はついに大統領宮殿に攻撃を仕掛けはじめた。ええい兵は何をしている!って宮殿警備の兵までもいねえええ!!!うわあああ私は親衛隊にまで見捨てられてしまったのかあああ!!!
丸裸状態の私。ボコボコと容赦なく宮殿を破壊する民たち。うわあああ宮殿があああ!!!私の宮殿があああ!!!お前らやめれ!あっちいけ!ってもう手の打ちようがねえええ!!!
うわあなんかマルコス政権やチャウシェスク政権の最期をリプレイしてるようだ…。独裁政治の末路とは結局こうなのか。わかってはいたが激しく鬱だ…。


圧政の果て(1970年5月)

Guicho Zurdo政権崩壊。
元大統領、側近のポンセと共に手漕ぎボートで国外逃亡。


- 糸冬  了 -


検証結果:恐怖兼腐敗政治は20年が限界。

狂気の大統領Guicho Zurdo:「トロピコ」で圧政(兼腐敗)国家をシムしてみよう 

さほど新しくはないのだが、「トロピコ」という地味ながらも非常に秀作な政治?シムがある。簡単に言えば「シム・シティ」の南の島版だ。群類で言えば「A列車で行こう」や「ズー・タイクーン」やらの系統にカテゴライズされよう。要するに箱庭型シミュレーション・ゲームである。私は何もFPS(First Person Shooting)馬鹿というわけでもない。たまにはこういうのもやるのである。や、実はFPS馬鹿なんですが。嘘ついてどうもすみません。
それはまあいいとして、「トロピコ」の詳細についてはこのあたりを読んでもらえば何となくおわかりいただけようかと思うが、とにかく非常によろしい出来な“政治シム”なのだ。あえてそう言う。

そこで本題。

「もし、史上稀に見るものすごい圧政者、サダム・フセインやイディ・アミンも吹き飛ぶような香ばしい独裁者が完膚なきまでの恐怖兼腐敗政治体制を敷いて国家と民を支配した場合、その国の未来はいったいどうなってしまうのか」


それが今回の企画である。

一駄目国家の栄華と衰退を、この「トロピコ」を使って経過を観察しようということである。要するに、いかに国家を繁栄させ民をに幸福をもたらすかが主眼のゲームで、その正反対の立ち位置から徹底した暴政を繰り広げ、圧政国家の逝く末をシミュレートしてみましょうというお話である。ま、やる前から何となく結果の仮説は立てられてしまうわけだが。まあいいや。

ということで、舞台設定をば。

まずは島の環境である。
どんなもんかと思案したのだが、ひとまずすべてが平均的な環境という設定の下で経過を測った方がよかろうということで、島の広さ・標高ともに中規模程度にした。植物・水域・鉱物・人口分布も標準設定にて。
続いて勝利目標。今回は極端な国家の命運を測ることが目的なので、特に勝利目標の設定はせず。下地となる環境(風土)情勢も、排他的だとか定期的に選挙実施せにゃならんとかあるのだが、ここも特には設定せず。政治安定度も経済情勢もイベント発生頻度もひとまず標準仕様で。
極悪政権は恐らく10年から20年の間の任期中途で崩壊濃厚なのではあるが、まあまかり間違って長期政権を維持できるということも想定し(心理学上、人は完全に諦めた場合は抵抗を放棄するのである。まあシステム的にそこまで要素が組み入れられているかどうかはわからんが)、とりあえず50年にしてみた。いや、われながらあり得ねえと思った。もう既に敗戦処理な心境の私。しかしそれでも私は逝く。

さて、悲劇の舞台が整ったところで、今度はその狂気の圧政者のキャラ作りをせねばならん。
プロフにはパパ・ドクことデュバリエ大統領からペロン夫人からピノチェト将軍から果てはチェ・ゲバラまでと、かつて中南米諸国の香ばしさを彩った層々たる顔ぶれが用意されているのだが、ここは徹底した悪党で逝くのがよかろうということで、ニカラグアのアナスタシオ・ソモサ大統領をチョイス。ソモサは親子二代でニカラグアを支配していたのだが、そのあまりの香ばしさに民衆から総スカンを食らい、最終的にはFSLN(サンディニスタ民族解放戦線)に詰められて国を追われた挙げ句に、亡命先のパラグアイで暗殺されたおっさんだ。余談であるが。
あるいはキャラ的にはパナマのノリエガ将軍でもよかったのだが、実を言うと顔は素質には影響ないので、これは超オマケ要素に過ぎない。本当は。ただまあそこは気分の問題だ。私はとことん悪党で逝きたいのである。
で、仕上げに命名。偉大なるわれらが大統領の名は、創意工夫なく“Guicho Zurdo”に決定。秒殺決議。どうでもいいとこはとことん手抜きな私。

さて、どうでもいい表層が決まったところで、今度は素質(特性)やら属性を決めねばらない。こちらの方が遥かに重要である。これは各パラメーターに多大なる影響を及ぼすし、政権発足後の舵取りの鍵ともなる部分だ。ここは慎重に逝きたい。
まずは出身階層である。成り上がりの強欲守銭奴という設定も捨て難いのだが、腐敗兼恐怖政治という形が恐らくは最悪の政治形態と思われるので、ここは軍や警察も統制できるタイプがよかろう。ということで、「大元帥」を選択。そう、プレシデンテ・ギチョは盲信の軍国主義者たちの偉大なる最高指導者として権力を握ったのである。
当然ながら右派からの支持は+30%、兵隊らの練度は+15%と、統治するにはいい傾向となった。そして当然ながら愛する国民の自由度指数は-20%、いやのっけから香ばしいな。
そしてその偉大なるギチョ大元帥の権力基盤とは何か。うーん、ここは迷いどころである。「クーデターを首謀」に自然と手が逝ってしまうところなのだが、「ファシスト党を広めた」にも心は揺れる。あるいは「CIAが設置」というのも何とも甘美な響きである。かつて「独裁者で構わん。共産主義者よりはマシだ」の論理の下、野放図にキチガイを増長させてしまったあの時代を彷彿とさせるものがある。
しかしまあ軍部といえばな安直さも気になるところではあるが、ここは素直に「クーデターを首謀」を選んでみた。そう、私は正当でない政権奪取によって大統領の座を得たのである。
そんならキャラ的には「大佐」あたりがよかろうとも思うのだが、それやりだしたらきりがないのでこれでヨシ。

続いて決めねばならんのは大統領の素質(特性)。
諸君、私は偉大なる支配者であり、諸君らはこの偉大なる私に統治・支配されてはじめて永遠の未来を手にするのである。ということで、当然ここは「カリスマ的」にチェックだ。そして国家と国民は己が富をもたらすための道具と手段に過ぎぬという断固たる観点から逝きたいので、「財テクの天才」にチェック。諸君、偉大なる私は力の限り腐敗する所存なのである。
で、「トロピコ」の偉いのは要素として人格的欠点も用意している点にある。そう、人間誰しも欠点はあるのだ。しかし欠点だらけの私はどうしたらいいでしょう、はいいとして欠点の選択。ここも迷い箸で、どの欠点も頂きたいところなのだが、キャラ設定考慮しつつ選択。まず独裁者たるもの敵だらけである。常に疑心暗鬼、猜疑心に満ち溢れねばならん。ということで「偏執的」を高らかにチョイス。これチェック入れた途端、オプション効果で「警官が凶悪」ときたもんだ。何だそれは(笑)。あとはそうだなあ、「病的なうそつき」も惹かれるし、「うぬぼれ屋」というのも権力の頂点にそびえ立つ者として必須な条件な気もするし、「短気」もなかなかよろしいかと思われるし、「尊大」というのも見逃し難い要素だ。うーん。まあ己が神であるな困った性分がよかろうということで、「尊大」をチョイス。

さあ、これで面倒な初期設定がすべて終わりました。
ということで以下、極悪大統領の概観↓

民主主義の期待度:ほぼゼロ
総合的な敬意:-5%
軍国主義者の派閥:+60%
資本主義者の派閥:+10%
アメリカとの外交関係:-20%
自由度:-40%
工場の生産性:+20%
犯罪発生率:-20%
兵士の練度:+15%
軍事施設の建設費:-25%
ラジオとテレビの独断的主張:+50%
布告を出す費用:+30%
銀行と店舗の建設費:-25%
警官が凶悪


いやはじまる前からいい具合に炎上だ。
「民主主義の期待度:ほぼゼロ」ってなんだ悲しそうに言いやがって。あたり前だろうがコラ。私の統治下でそんな期待なんぞあるとでも思ってんのか。
「総合的な敬意:-5%」はちと許し難い。私の何が気に入らないというのか。反政権謳うような輩は発見次第即再教育キャンプ逝きだ。よく覚えておけ。
「軍国主義者の派閥:+60%」、「資本主義者の派閥:+10%」、「工場の生産性:+20%」、「兵士の練度:+15%」、「軍事施設の建設費:-25%」はまあ妥当な線としてだな、「アメリカとの外交関係:-20%」って何だよ。アメリカめはそんなに私をソ連にすり寄らせたいのか。いいだろう、アメリカよ。私は第二のキューバ(ただし反共)として理不尽に君臨してやる所存だ。カリブ海の果てから煽ってやるからそう思え。
「自由度:-40%」。-40%で済んだことをありがたいと思え。その数値はギチョ政権発足後の暁にはさらに激しく低下させる予定だ。
「犯罪発生率:-20%」って私ってばただそこにいるだけで怖いですか。そうですか。
「ラジオとテレビの独断的主張:+50%」、「布告を出す費用:+30%」ってまあカリスマも良し悪しってとこですかね。
「銀行と店舗の建設費:-25%」にはなってはおりますが、どうせ土建関係は費用上乗せの根回し談合で国庫から民の汗と涙の結晶を搾取して私腹を肥やす段取りなので、結局マイナス分も相殺されてしまうかと思われます。ハイ。
「警官が凶悪」、まあ警察国家は恐怖政治の象徴でもあり、ってことでこれでいいでしょう。

実に素晴らしい限りだ。ということで、レッツ・スタート。
政権の経過は遂次報告の予定。

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