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きょうぎ兎は(BlogPet) 

きょうぎ兎は、ひまは決断したかった。


*このエントリは、ブログペットの「ぎ兎」が書きました。

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チャベス先生がどんどん馬鹿になって逝く件(論評抜き) 

「閉鎖はわたしの決断だ」
「閉鎖はわたしの決断だ」
「閉鎖はわたしの決断だ」

何やってんだお前(笑)

トニー・バトラーの「Dream boy」は名曲であると強く主張する。 

mixiの「BIG COUNTRY」コミュにも貼ったのだが、ひゅうううぅぅぅ風が吹き荒ぶ半ばゴースト・コミュ化した中でひとり拳を振り上げても寂しいものがある。なのでここでも叫んでやる。繰り返す、

トニー・バトラーの「Dream boy」は名曲である。

盟友、スチュアート・アダムソン亡き後に創ったゆえというのもあろうか、どこかもの悲しい旋律が私の胸を強く強く打ってやまない。途中さりげなく挟まれる、往年のビッグ・カントリーを髣髴とさせるそのギター・フレーズも、私の心を深く深く揺さぶるのである。



このクリップをうpしたのは、IDからするとどうやらトニーおじさんご本人のようだ。もう齢50になるのか。月日の経つのは早いものだな。
つーかトニーおじさんはギターも弾けたのかよ。な、な、なんでも、で、で、できるんだな。見習わねば。

件の曲はビッグ・カントリーの公式サイトでもフリーのMP3として落とせる。が、そちらはアコースティック・バージョンで、聴いた感じまだβ版というところかな。悪くないけど。
ちなみにもうひとつはブルース・ワトソン先生の曲。そのタイトルからして、多分アダムソンに捧げる曲なのだろう。RIP、アダムソン。

ということで、そんな素敵なトニーおじさんの公式サイトはコチラ
フォーラムではトニーおじさんご本人が降臨し、結構マメに返信なさっている。件の曲のコード構成を教えれという図々しい質問にも、懇切丁寧に解説している姿が微笑ましい。あとでやってみよう。
フォーラムではビッグ・カントリー復活ライブの話題もちらほら挙がっている。近いうち決行されるようだ。もちろんアダムソンを欠いている以上、多少色合いの違う形にならざるを得ないのだろうが、そこらへんはスコットランド界隈のミュージシャンどもの力で相殺されよう。ザ・フーを思い起こせ。屋台骨ふたり死してもなおザ・フーなのである。

復活となると気になるのがわれらがブルース・ワトソン先生の動向である。ジ・アラームのライブに単身乗り込み、アダムソンの魂を引っ提げて「In a big country」を弾くその姿、いと神々しき哉。



アラームとの交流はともかくとして、それ以外は先生何をなさってるのかと思えば、FourGoodMenなるスコットランドを本陣に活動するバンドのサポートが主たる業務らしい。楽しそうで何よりです。



FourGoodMenが“スコットランドの新たなるスーパー・グループ”たる存在かどうかは議論の余地があるとしても、その時々で編成を微妙に変えたりしてなかなか良質な楽曲・演奏を提供してるようだ。なので贔屓の音楽サイトから2、3曲落としてやろうと思ったのだが、隅から隅まで捜せど微塵もねえ。FourGoodMenよ、お前らはローカルに過ぎる。もうちょい奮闘してくれ。ついでにトニーおじさんも。
ところでこのFourGoodMen、そういや見たことある顔がいるなと思ったら、シンプル・マインズの脱党組がふたりもおられましたか。お久しぶりです。

で、シンプル・マインズといえば、その代表曲は「Don't you forget about me」であったり「Alive & kicking」であったりするわけだが、私にとっての確かなシンプル・マインズとは「Ghost dancing」を置いてほかにない。



シンプル・マインズというよりスティーブ・リリーホワイト名義にした方がいいんじゃねえかというような氏のプロデュース過多が目立つ曲ではあるのだが、私にとってのシンプル・マインズはどこまでも「Ghost dancing」なのである。

と、そんなこんなで今宵は気分よく'80年代中期の音楽世界を謳歌してたわけだが、最後の最後でそれをブチ壊しやがったナイスな御仁がいる。こいつだ。



それは私が大好きなバンドの私が大好きな曲だぞこの野郎。完膚なきまでに台無しにしやがっていったい何の恨みがあるんだコラ。

ま、面白かったからいいけど。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その18)  

経過はコチラ

焼け石に水のガイドブック:「千年帝国の歩き方(微妙に更新)

※リプレイはいったいどこへ逝ったのだという至極真っ当なご指摘について、今の私に答える術はないw


ゲシュタポ・feti虎~黒猫暦:1941年1月6日

もうひとつのドイツのゲシュタポ(秘密国家警察)長官、ハインリヒ・ミュラーとの対決から1週間後、feti虎教授はケンピンスキー・ホテルのプレシデンシャル・スイートに篭り、まる一日をかけて「カール・ポテンテ嫌がらせ作戦」の立案に費やした。直接攻撃は困難とわかった今、作戦はポテンテのアパートでの工作活動に絞られる。その具体的な内容はさほど時間をかけずしてまとまったが、問題はどうやってアパートに忍び込むかであった。feti虎教授はふかふか高級ベッドに寝そべりながら、長い時間熟考した。
屋上からロープを伝って降下するという方法は早々に却下された。教授は教授であって軍人はない。そんなスプリンター・セルもどきの手法を採ったところで、途中で手を滑らせて転落するか、下から発見されてパチンコ玉で尻を撃たれるかのどっちかだろう。チャーミングなお尻を危険な目に遭わすことだけは何としてでも避けねばならない。
では玄関の鍵をこじ開けての浸入はどうか。feti虎はサイドテーブルに置かれたバッグを漁り、ゴルビ犬から渡された「馬鹿でもよくわかるピッキング入門」という小冊子をパラパラとめくった。そこには先の折れ曲がったピンセットのような工具を用いての鍵の開け方が懇切馬鹿丁寧に解説されていた。なるほど、私でもできそうだ。…しかし、この支那の窃盗団的なやり方は私の性に合わん。それに侵入はともかくとして、出る時はどうやって鍵をかけ直すのか。feti虎は冊子をサイドテーブルに投げ出すと、仰向けになって天井で燦々と輝くシャンデリアをぼんやりと見つめた。

…そうだ。

アイディアは唐突に湧き上がる。feti虎教授はふかふかベッドからむくりと起きると、空き時間の暇つぶしにと持ってきた画材を広げ、銀メッキの施された金属製の絵皿を取り出し、宙に掲げ見た。大きさ的には手頃だろう。feti虎は絵皿を床に垂直に立たせて押さえると、工具箱から持ち出したハンマーでその淵をカンカンと叩きはじめた。時折ひしゃげた絵皿の裏を叩き調整しつつ、最終的にはそれをどうにか楕円形に近い形に整えることができた。その作業が終わると、今度は絵皿の底にペンで逆さ文字をていねいに書き入れ、ノミとハンマーでコツコツと書いた文字をなぞり打ちはじめるのだった。
文字の打ち出しが終わると、楕円形になった絵皿の端の部分をノミで打ち抜き、穴を開けた。そして仕上げに全体をやすりでざっとこすり、目的の品はついに完成した。それは偽のゲシュタポ身分証であった。feti虎は生まれ変わった絵皿のわれながらの出来に満足しながら、それを再び宙に掲げ見た。

“GEHAIME SHUTAATSUPORITSUAI 2627”

…何かスペルが違うような気がする。しかしまあ相手はじっくり検分する余裕などなかろうし、これでよかろう。
次にfeti虎教授は、結局使わずじまいだった自前の茶色いキュロットと、乗馬用の長靴をバッグから取り出した。ドイツ軍の規格とは色も形も程遠いが、これもまあ大丈夫だろう。feti虎はキュロットと長靴を履くと、黒いショージャケットを羽織り、ドレッサージュハットを目深にかぶった。そして姿見の前に立った彼女は、鏡に映る自身を見据えながら、先ほど作ったゲシュタポの偽身分証をスッと出し、低い威圧的な声で言ってみた。
「ゲシュタポだ」
…うん、なんとか通用するかな。いや、通用してくれなきゃ困るのだ。


その翌日、ポテンテが出勤した頃合いを見計らい、feti虎教授は官公庁街にある彼のアパートを訪れた。ゲシュタポ・半端私服バージョン風な装いでアパートの正面玄関を抜けた彼女は、まっすぐ管理人室へと向かい、その扉をドンガドンガと激しくノックするのだった。
管理人室の扉の鍵が慌しく外される音を認めると、すかさずfeti虎は扉を乱暴に引き開け、管理人を押しのけながら室内へと踏み込み、何事かとうろたえる主の鼻先に偽のゲシュタポ身分証を突きつけながら言った。
「ゲシュタポだ。ゲシュタポのユーロン捜査官」
年老いた管理人は一瞬にして顔面蒼白になり、直立不動の姿勢をカタカタさせながらその場に立ち尽くした。恐怖に震え上がる老人は、feti虎のその微妙な格好のことや、本物のゲシュタポは自ら名乗ったりしないことまでは考え及ぶことができず、また、偽身分証の致命的なまでのスペルミスにもまるで気づくことはなかった。
いやいや恐ろしいまでの効き目だこと…。feti虎教授は強力な秘密警察パワーの恩恵に感謝しつつ、続けた。
「管理人、カール・ポテンテの部屋の鍵を出せ」
「ポテンテさんですか?あの方は政府の偉いお方と…」
「いいから出せ。ポテンテ総統補佐官には重大な嫌疑がかかっている」
「しかし…」
ゲシュタポの偽者は怯える老人にぐっと顔を近づけ、冷ややかに言った。
「管理人、これは正式な捜査であり、私はゲシュタポの権限の範囲内で要請している。鍵を出せ。さもなくばお前はダッハウ逝きの片道切符だ。その非協力な姿勢はそれに十分値する」
年老いた管理人は飛び上がるようにして脇の戸棚を開き、震える手で鍵束を取り出した。内心のほくそ笑みをひた隠しながら、ゲシュタポ・feti虎は神妙な顔つきで鍵を受け取った。
「もし本人が戻ってくるようなことがあったら電話で知らせて欲しい。協力に感謝する」
感謝の意を表するゲシュタポもまたいないわけだが、もちろん老いた管理人にそこまで考える心の余裕はなかった。

まんまとポテンテの部屋への侵入に成功したfeti虎教授は、リビングに出ると、その乱雑なテーブルを見てにやりとした。まあ男のひとり暮らしはこんなものなのだろうが、それにしてもわっくも一緒だろうに、何も言わないのだろうか。
テーブルの上には、何日前のかわからない飲みかけのコーヒーやビール缶がぞんざいに置かれており、その周囲には読みかけの書類やファイルが雑然と積まれていた。その山の一番上には裏返された5枚のトランプが不揃いに重ねられている。ポーカーか何かの途中だろうか。feti虎はそっとカードを順番にめくってみた。スペードのフラッシュだ。それは作戦の幸先のよいスタートであると受け取ってもよいのだろうか。
リビングを後にしたfeti虎は寝室へと入った。想像とは裏腹に、ベッドのシーツはまるでプレスでもしたかのようにピーンと張られており、折り目正しく畳まれた毛布が足元の位置に置かれていた。枕も測ったかのような位置にしわひとつなく鎮座している。どちらがやったかやらされたかは定かではないが、そこには現役の規律というものが見て取れた。
feti虎教授はふと、乱雑なリビングのテーブルとは対照的なその光景に違和感を覚えた。しばらく両者を見比べながらその意味するところを考えていた彼女は、やがて部屋の薄明かりの中で苦笑しながらひとりごちた。
「あらら。おねいさんはまんまと引っ掛かっちゃったと。…さてどうしましょw」
…罠には罠で返してやるかね。feti虎教授は浴室の方へと向き直ると、ゆっくりと歩み出すのだった。


Made in Korea~黒猫暦:1941年1月7日

誰か入ったな…。
ポテンテのリビングに足を踏み入れた枠少尉こと、ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン少尉がそう思ったのは、特に根拠があるわけではなく、単に職業軍人としての長らくの経験から来る直感に過ぎなかった。しかしその直感というのは往々にして的中するものであり、大柄な護衛は後ろを振り向くと、コートを脱ごうとしているポテンテに向かって言った。
「お留守の間にお客さんが来たようだ」
総統補佐官カール・ポテンテ、かつては黒猫ポンセと呼ばれたその猫は脱いだコートを手に、眉を上げた。
「…刺客か?」
「あるいはね。しばらくそこにいて」
枠少尉はリビングの周囲をざっと見渡した。一見異常はないが、しかし…。少尉は乱雑なテーブルに歩み寄り、そこを検めると、自分の直感が正しかったことを知った。掛かっていたか…。
一見だらしのないだけの乱雑なテーブルは、実は枠少尉の仕掛けた巧妙な罠の宝庫であった。放置された缶やコップ、それも中身がまだ微妙に残ってたりすると、人は思わず手に取って覗いてみたり、つい匂いをかいでみたくなったりする。しかしひとたび動かしてしまったら最後、テーブルやカップに意図的に付けられた染みの環の位置がずれ、何者かがこの部屋を訪れた証となるのである。あるいは雑然と積まれているように見える書類群も、実は規則的な配列になっており、確実に原状回復させない限り、手に取った痕跡が残るようになっていた。
そして侵入者の形跡は、裏返されたトランプにあった。それも人の“思わず見たくなる”心理につけ込んだ罠であり、1枚めくればすべてのカードの位置がずれるよう巧みに重ねられていたのであった。
侵入者を確信した枠少尉は、寝室の様子を確かめた。寝具一式は朝と同様に整然と置かれており、しわひとつ見られない。こちらには来てないようだ。次に少尉は浴室へと目を向けた。浴室の扉はぴたりと閉じられていた。しかし、枠少尉はいつも微妙に開放しておくのである。それもまた“開けたら閉める”の心理を衝いた罠だった。そこか…。手をホルスターに掛けながら、護衛は静かに浴室へと向かった。
おそらくもう侵入者は去っているだろうが、枠少尉は念のためルガー拳銃を取り出すと、壁に身を寄せゆっくりと浴室の扉を開けた。人の気配はない。それでも少尉は慎重に顔を覗かせ中を確認し、確実に無人と判断してからようやく浴室へと足を踏み入れるのであった。
謎の侵入者が仕掛けたであろう罠の正体はおおよそ見当がついていた。枠少尉はシャワー口を浴槽に向けると、ゆっくりとそのバルブを開いた。
浴槽に放たれた水はしばらくすると温水になり、やがてそれは茶褐色に変色しながら恐るべき沸騰コーヒーへと変貌するのだった。
「補佐官、こちらへ」
芳醇な香りともうもうたる湯気を払いながら、ポテンテは浴室前に立ち、シャワー口から溢れ出る恐怖の沸騰コーヒーを眉をしかめながら見やった。
「…ニーナの仕業か?」
「どうだろね」
ポテンテは首を振りながら浴室から顔をそむけた。
「おーやだやだ。コーヒーは飲む気にならん。ビールにしよ。枠、どうだ?」
「あとで行くよ」
シャワーのバルブを閉めながら、枠少尉はどこか釈然としないものを感じていた。「シャワーから沸騰コーヒー」、あまりにも安直過ぎる。というか稚拙だ。こうもわかりやすい手が本気で通用すると思ったのだろうか。再びプロの直感が警鐘を鳴らしはじめた。もしこっちが罠だとしたら…。
「補佐官、冷蔵庫を開けるな!」
護衛の警告も虚しく、既にその時、ポテンテは無用心に冷蔵庫を開け放ってしまったのである。その扉が開くと同時に、内側に無数に張られたピアノ線がピーンと張り、その張力は先に結ばれていた縦置きの缶詰のフタを勢いよく一斉に外すのだった。そして、冷蔵庫いっぱいに敷き詰められた缶詰のその恐るべき中身が雪崩の如くポテンテに襲い掛かった。
すべては瞬く間の出来事であり、総統補佐官カール・ポテンテが最期に捉えたのは、「パパパパッ缶缶!!」という缶詰のフタが次々と開く音と、自分めがけて降り注ぐ茶色い液体と、同じ色の小さな固体の山であった。

ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン少尉は勇猛果敢な女性兵士であった。しかし台所の凄惨な光景を前にした今、その足はすくみ、腰はすっかり引いていた。冷蔵庫の前で、カール・ポテンテ総統補佐官がどろどろした茶褐色の汁と、ぷよぷよした茶色の具にまみれてのたうち回っている。ポテンテを襲った缶詰のその中身は、ぐつぐつふつふつと沸き立ち、もうもうたる湯気を放ちながら何とも言えぬ強烈な匂いを発していた。何だこれは。何だこれは。何だこの気持ち悪いのは!
枠少尉は鼻を腕で覆い隠しながら、足元に転がっている恐怖の缶詰を手に取った。ラベルに商品名がハングル文字で記されていた。

“번데기”

多少ハングルの心得のある少尉は、その文字の意味を読み取り、愕然とするのだった。

번데기=ポンテギ

これが、ポンテギ…。枠少尉は恐怖の食品にまみれて転げ回る哀れな総統補佐官に目をやった。彼に降り注いだのは「ポンテギ」と呼ばれる、蚕(かいこ)のさなぎを醤油味に煮付けた罰ゲーム的朝鮮食品であった。しかもそれはただのポンテギではなかった。「沸騰ポンテギ・とろみ付」なのである。いくらなんでもひどすぎる。
これは、ぎ印の連中のセンスではない。…ではいったい誰が?
誰がやったにせよ、枠少尉が出し抜かれたという事実に変わりはなかった。完敗である。それは完膚なきまでの敗北だった。畜生、畜生、畜生!
激怒の護衛は手にした缶詰を床に叩きつけた。その弾みで、中に残っていた蚕のさなぎがポーンと飛び出し、天井に当たって跳ね返り、その下でもがくポテンテの口の中にポトリと落ちた。

再び長く悲しげな悲鳴が官公庁街をこだました。


向かいの建物の壁に寄り掛かりながら、そっと耳をそばだてていたfeti虎教授は、3階の窓から漏れるカール・ポテンテの悲鳴を聞き届けた。悪いねえロデニム…。feti虎はポテンテの部屋の窓に悲しげな微笑を投げかけると、夕闇の中へと静かに姿をくらました。


ショコラとモンブラン。怒れるふたりのゲシュタポ捜査官がホテル・アドロンのプレシデンシャル・スイートに踏み込んだ時、そこにあったのは「くまのプーさん」の絵本を広げたティガーのぬいぐるみであった。ここでようやく、彼らはこの1週間余、自分たちがずっと張り込んでいたのがもぬけの殻の部屋であることを知ったのだった。

つづく。

※参照:ポンテギ(成人指定・閲覧注意)

って言ってたけど…(BlogPet) 

こないだ、leftyが
泥沼化するイラクあしたに足をとられる米ブッシュ政権に、日本はどこまでおつきあいするつもりなのか――
って言ってたけど…

*このエントリは、ブログペットの「ぎ兎」が書きました。

あしたは(BlogPetの飼い主)  

月曜日なの。

*このエントリは、ブログペットの飼い主の「ぎ」が書きました。

また朝日伝聞がくだんねえことを言っている。 

まだ寝ぼけてんのか。以下、無断転載(5/16付の社説とやら)↓

イラク特措法―反省も総括もないままに

泥沼化するイラク情勢に足をとられる米ブッシュ政権に、日本はどこまでおつきあいするつもりなのか――

きのう衆院で可決されたイラク復興支援特別措置法の2年延長案について、こんな感想を抱く人は多いのではないか。
イラクで貨物輸送にあたっている航空自衛隊の任務は今年7月で期限切れとなるが、これをさらに2年間のばそうという法案である。
なぜ、延長するのか。政府は国連やイラク政府などの要請によると説明している。だが、最大の理由はブッシュ政権のイラク政策を支援する姿勢を崩したくないということだろう。
国会審議で、安倍首相らはイラク攻撃に踏み切った米国の判断を繰り返し弁護した。誤った戦争と認めてしまえば、自衛隊派遣の根拠が崩れると心配してのことに違いない。
だが、開戦判断の根拠となった情報が誤りや誇張の産物だったことは、米国や英国自身が認めている。なによりも、開戦の理由とされた大量破壊兵器がイラクに存在しなかったことは明らかだ。
にもかかわらず「正しい判断だった」とばかりに言い募るのは、知的退廃に近いのではないか。
日米同盟への配慮は分からないではない。中東に石油資源を依存する日本にとって、地域の安定は重要だし、イラクの混乱を放置できないのもその通りだ。
それでも、出発点での明白な誤りを認めずに既成事実の追認を続けるのは、責任ある政治のとるべき態度ではない。

英国ではブレア首相が世論の批判から退陣に追い込まれた。ブッシュ大統領も、米軍の期限付き撤退を条件とする予算案や決議を議会から突きつけられた。支持率は最低水準に低迷している。
そんな中で、日本では自衛隊の派遣延長がすんなりと国会を通っていく。これといった総括や反省もないままに、大義に欠ける、誤った米国の政策に参画し続ける。なんとも異様と言うよりない。
首相は、憲法9条の改正で自衛隊への制約を取り払い、あるいは現行憲法の下でも集団的自衛権の行使に道を開きたいと言っている。だが、軍事力の行使には政治の厳格な責任が伴う。
イラクの場合のように、結果に対して真摯(しんし)に向き合おうとしない政治を、国民は信用するわけにはいかないだろう。
さらに懸念すべきことがある。航空自衛隊がイラクで何を運んでいるのか、さっぱり分からないことだ。政府は飛行回数と運んだ貨物の重量以外、何も明らかにしない。どのぐらい国連の役に立っているのか。大半が米兵の輸送ではないのか。そんな疑問も指摘されている。
安全に配慮して隠すのだろうが、使われているのは日本の要員であり、資材、税金である。国会にすら詳細を報告しないのでは、文民統制が空文化していないか。政府はすみやかに自衛隊を撤収し、イラク支援を根本から練り直すべきだ。



>泥沼化するイラク情勢に足をとられる米ブッシュ政権に、日本はどこまでおつきあいするつもりなのか

どこまでも何もないだろ馬鹿。日米同盟を今後とも維持させかつ推進させるにゃ嫌でもアンクル・サムと共に行動するしかないわけだ。都合が悪くなったら「オラ知らね」を決め込むような国を誰が同盟国として認めるのか。

>政府は国連やイラク政府などの要請によると説明している。だが、最大の理由はブッシュ政権のイラク政策を支援する姿勢を崩したくないということだろう。

あたり前だ。政治家は日本の国益を考えて行動するしかない。その国益とは日米同盟であって、日本にとっての日米同盟はアメリカにとってのそれよりもはるかに重要な意味を持っている。北朝鮮の件とかも含めて。支援の姿勢を崩すわけにはいかんだろうが。

>開戦判断の根拠となった情報が誤りや誇張の産物だったことは、米国や英国自身が認めている。なによりも、開戦の理由とされた大量破壊兵器がイラクに存在しなかったことは明らかだ。

大量破壊兵器があったのかなかったのかは戦争が終わってはじめてわかることであって、たとえ「誤りや誇張の産物」だとしても、開戦に至るまでの長きに渡ってイラク側が査察への協力・努力をしなかったことは事実。その存在が確認されなければ何も行動できないのなら、イランも北朝鮮も野放し好き放題ということになる。
つーか大量破壊兵器の情報が誤りは認めたとしても、イラク戦争が誤りだとは認めていない。アメリカも。イギリスも。

>にもかかわらず「正しい判断だった」とばかりに言い募るのは、知的退廃に近いのではないか。

お前がな。

>日米同盟への配慮は分からないではない。中東に石油資源を依存する日本にとって、地域の安定は重要だし、イラクの混乱を放置できないのもその通りだ。

それをわかっているならなぜ寝言を言う。
2005年の主要各国の石油の中東依存度を改めて見よ↓

日本  :89.8%
アメリカ:20.9%
カナダ :15.3%
イギリス: 8.9%
フランス:40.6%
ドイツ: 22.8%
イタリア:62.8%

参考資料(ただしPDF)

前年と比較するにEUどもの中東依存度が跳ね上がってますが何があったのですかはまた別件なのでここでは触れん。基本的にEUの面々はロシア方面や北海油田からの石油の供給を軸としたい方向なはずなので、石油の中東依存度というのは右下がりな傾向。突如跳ね上がったけど。
ところが日本はどうか。89.8%とズバ抜けての依存具合だ。ということは、中東の混乱は同時に日本経済の混乱も意味するわけで、したがって対岸の火事みたいにのん気に構えてるわけにはいかんわけだ。どこかで何かの形で介入せざるを得ない。
では石油や経済のための戦争は正義なのかというお話は論外。日本という国が成り立ってるその理由は、突き詰めていけば交易(経済)と安定した石油の確保にほかならない。滅びたくなくば不毛な論理は振りかざすべきではない。

>これといった総括や反省もないままに、大義に欠ける、誤った米国の政策に参画し続ける。なんとも異様と言うよりない。

日本の生命線(石油・経済)を維持・保護するその最大の後ろ盾はアメリカであってEUでも国連でもましてや朝日の大好きな中国様でもない。関係維持・強化のためにも、否が応でも協力するほかないの。
ところで朝日伝聞様はサダムのクルド人やシーア派その他反体制者たちへの苛烈な弾圧についてはどのようにお考えだったのでしょうか。

>イラクの場合のように、結果に対して真摯(しんし)に向き合おうとしない政治を、国民は信用するわけにはいかないだろう。

朝日の場合のように、現実に対して真摯(しんし)に向き合おうとしない新聞を、国民は信用するわけにはいかないだろう。

だいたいがイラク戦争そのものとその後統治政策と治安対策問題をごじゃっぺにしてる段階でどうなのか。朝日に期待するもんなんか別にないからいいけど。
まあ要するに、朝日伝聞様は何が何でも政府与党を批判したいだけなんだな!

よし、寝よう。

貧乏ジャージめが「ギター貯金」なる資産運用をはじめていた件について 

貧乏貨幣が数枚入った貯金箱をカランカラン揺らして「どうだ」と得意げな顔されたところで、私には何も答えようがございません。
目下の懸案事項は、そのお家の形をした陶製の貯金箱に投入されるは明らかに100円以下の硬貨のみであるという点であり、したがって氏の目指す頂に到達するのは確実にはるか遠い未来、すなわちジジイになった頃であろうという絶望的観測にほかなりません。
私には何も貢献できることはございませんが、ただ今は神に祈りを捧げ、その悲願成就を祈念するばかりです。

ラーメン。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その17) 

経過はコチラ

焼け石に水なガイドブック:「千年帝国の歩き方

※半ばスパイ小説化してる件は触れるでないw


シャンペン・スパイ~黒猫暦:1940年12月25-29日

もうひとつのベルリンに来てからの最初の3日、feti虎教授の主な日課は、“観光”であった。カスタム・チューンを施したRoverの自転車を颯爽と駆り、名所を訪れ、美術館で目の保養をし、高級レストランで豪華な食事を摂り、河畔で読書を楽しんだ。この合理主義者の教授は、時局の変化がない限り、カール・ポテンテの平日は報告書に書かれていた通りの、9時までに出勤し18時までには帰宅するという官僚の見本のような生活、したがって襲撃はいつでも可能につき当座は鋭気を養うに専念すると主張したのだった。抜け目ない教授は、急いでは事を仕損じるゆえじっくりと機を伺うと、さらなる時間の引き延ばしも忘れなかった。こうしてfeti虎教授は3日間、もうひとつのベルリンを心ゆくまで堪能したのだった。
しかし4日目の朝、総統閣下は膨大な出費に血圧沸騰中、頼むからアクションをというゴルビ犬の懇願の電話があり、渋々折れたfeti虎教授はようやく重い腰を上げ行動を開始するのだった。

官公庁街にあるポテンテのアパートはすぐ見つかった。feti虎教授は一旦そこを通り過ぎると、少し進んだところで今度は反対側の通りへと移動した。そして街灯の脇に自転車を止め、チェーンを直すふりをしながら、目的の相手がアパートから出てくるのをじっと待った。
ほどなくして、アパートの入り口によく知る小さな黒猫と見知らぬ大きな軍人が現れた。feti虎は大柄な軍服の女性をちらり見た。あれが護衛か…。遠巻きにさりげなく様子を伺っていると、黒猫と護衛はアパートの前で何事か言い争いをはじめるのだった。その口論は最終的に護衛の鉄拳で幕を閉じ、やがて凹凸コンビはアパートに面した通りをfeti虎の位置とは反対方向に歩きはじめた。feti虎はチェーン修理の芝居をやめ、自転車を押しながら静かに後をつけはじめた。そこからやや先には、ずんずん歩く護衛と、その左後ろをちょこちょこ歩く黒猫の姿があった。まるで三歩下がって影踏まずじゃないか。ロデニムよ、その姿は忍びんな…。
やや歩く速度を上げ、凹凸コンビにいくらか近づいた時、ふとfeti虎は黒猫の前方を畏怖堂々と歩く護衛に目を留めた。その後ろ姿にはどこか覚えがあった。feti虎は猫から目を離し、護衛に注意を向けた。大柄な護衛はずっと背を向けたままであったが、feti虎教授は辛抱強く観察を続けた。しばらくすると一行は十字路に到着し、護衛は安全確認のために首を左右に向けた。ここでfeti虎はようやく護衛の横顔を捉えることができた。あれは…。feti虎の口元が緩んだ。誰かと思えばわくわくわっくじゃないか。なるほど、ロデニムは最強の番人を手に入れたというわけか。ふふ、相手に不足はない…。
「…と言いたいところだけど、参ったねこりゃ」
feti虎教授は足を止め、通りを渡って総統官邸へと向かう凹凸コンビを眺めやった。直接攻撃はちょっと無理ね。ここは一旦退いた方がお利口さんだ。早々に襲撃中止を決定したfeti虎は自転車を反転させると、乗馬が如く軽やかにサドルをまたぎ、何処へと走り去って行くのだった。

眼前に迫る黒い影に気づいて顔を上げた頃は時既に遅く、黒猫ポンセ、今は総統補佐官カール・ポテンテを名乗るその猫は、枠少尉の巨大な尻にゴンと鼻先をぶつけてよろめいた。
「急に止まるんじゃないこの!」
鋼鉄に等しい臀部による鼻パンチを食らい、ポテンテは涙目で抗議した。護衛の枠ことヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン少尉はポテンテの訴えを無言で棄却し、周囲を見渡しながら言った。
「あたしたちのこと、誰か見てたね」
ポテンテはショボ目をこすりつつキョロキョロと見回した。
「誰もいないじゃないか」
「今はね。でも誰か、見てたよ」
「事件の後だからナーバスにもなろうが、大丈夫だよ。何も起きんて」
枠少尉はそれでも納得のいかぬ様子で右へ左へと視線を走らせるが、やがて諦めると、ポテンテに促され、再び総統官邸に向かって歩きはじめるのだった。

その日の夕刻、feti虎教授は帰宅途中の凹凸コンビの背後に再び姿を現わした。しかし攻撃の意図はなく、その視線は主に護衛の動きに注がれた。作戦の成功如何はこの大柄な少尉をどう制するかにかかっていることを、賢明なる教授は悟っていたのである。
護衛は相変わらず黒猫の先、やや右前方を偉そうに歩いていた。注意深く観察していたfeti虎は、その位置関係が何を意味するのかをようやく理解した。何か異変が起きれば、護衛はすぐさま黒猫を左手で地面に引き倒し伏せさせ、右手で応戦するという形なのだ。さすが現役、考えてるな。feti虎は夕闇の中で薄く微笑んだ。つまり、狙うならわっくの手が届かない時にということか。ではいったいそれはいつなんだろう…。ま、ひとまずおいしいディナーでも食べながら考えましょうかね。feti虎教授は軽やかに自転車に乗ると、反対側の通りの凹凸コンビを追い越し、夕闇の中へと姿を消すのだった。

眼前に迫る黒い影に気づいて顔を上げた頃は時既に遅く、ポテンテは再び枠少尉の巨大な尻に鼻先をぶつけてよろめいた。
「だから急に止まるんじゃないってのこの!」
鋼鉄製の臀部を持つ枠少尉は、朝と同様にポテンテ涙目の抗議を高らかにスルーし、遠くを見ながら言った。
「今の自転車…」
ポテンテはショボ目をこすりつつ遠くに目を凝らした。
「自転車?」
「どこかで知ってるような気がする…」
「自転車なんてどれも似たようなもんだろ。行くぞほれ」
枠少尉はそれでも納得のいかぬ様子で夕闇の先へと視線を向けるが、やがて諦めると、ポテンテに促されるままに、再びアパートに向かって歩きはじめるのだった。

“最後の審判亭”、なかなか粋な料理を出すじゃないの。アレキサンダー広場の近くにある「ツァ・レツテン・インスタンツ」で豪華なひとりディナーを終えたfeti虎教授は、ルンルン鼻歌交じりにホテル・アドロンのロビーに帰ってきたのだった。
部屋の鍵を受け取りにフロントに向かった彼女は、いつもにこやかなフロント係が緊張の面持ちであることに気づいた。その目はまるで「逃げろ」とでも言いたげな様子である。とその時、横のソファーに座っていた4人の男がバラバラと立ち上がり、feti虎教授を取り囲むように立ちはだかった。男たちはソフト帽に地味な色のスーツ、あるいはコートといういでたちであったが、奇妙なことにそのいずれもが乗馬ズボンに長靴を履いていた。さしずめ私服6割、制服4割といった装いである。その姿に訝る間もなく、ひとりが右手をスッと差し出した。黒い皮手袋に覆われた掌には楕円形の銀色のプレートが握られており、そこには「GEHEIME STAATSPOLIZEI」の刻印が見て取れた。その文字の意味がfeti虎の胸に染み渡る前に、半端私服の男が言った。
「ゲシュタポ(秘密国家警察)だ。ご同行願おうか。無論、選択の余地はない」


ゲシュタポ・ミュラー~黒猫暦:1940年12月29日-30日

feti虎教授を乗せた黒塗りのメルセデスは、プリンツ・アルブレヒト街のゲシュタポ本部前で停車した。後部座席のふたりのゲシュタポと共に降り立ったfeti虎は、ここでようやく自分が手錠を掛けられたわけでなく、両脇を抱えられてるわけでもないことに気づいた。…これは逮捕ではないのか。とはいえ、ここで同行拒否の素振りを微塵でも見せようものなら、彼らは躊躇なく棍棒で殴るか、下手したら9㍉パラベラムの弾丸を首筋に撃ち込みかねない。彼らにとって暴力は些細な理由があれば充分正当化されるのだ。さらに彼女は、助手席の男がメルセデスのトランクから自分の本や自転車を運び出すのを見た。どのみちアレも取り返さなきゃならないわけだし、ここは素直に従っておくか。feti虎教授は促されるままに、恐怖の総本山の階段を昇るのだった。
ふたりのゲシュタポ捜査官に伴われて連れて来られたのは、哀れな被疑者の血や脂の染み付いたおぞましい尋問室ではなく、整理の行き届いた小奇麗な執務室であった。その奥のデスクでは、部屋の主とおぼしき黒い制服の高級将校が何かの書類に目を通している最中だった。
将校は書類から目を上げ、feti虎教授を一瞥すると軽く頷き、両脇のゲシュタポに向かってやや高めの抑揚のないトーンで言った。
「貴様たちは下がってよろしい」
ふたりの秘密警察官は長靴の踵をかちんと合わせ、部屋を去った。黒服の将校はfeti虎にデスク手前の椅子に座るよう、あごで指し示した。
feti虎は素直に腰を下ろすが、黒服は何も言わず延々と書類を読み続けていた。沈黙が部屋を支配し、時折はらりと紙をめくる音だけが流れた。沈黙で不安にさせようという魂胆か、あるいはこちらから口を開かせようとでもいうのか。…どちらにせよ乗ることはない。feti虎教授はのんびりと待つことにした。それにしてもこの男、いったい何者なのか。…ゲシュタポなんだろうけどさ。feti虎はどこかに部屋の主のヒントはないものか、書棚や壁に素早く視線を巡らせた。
その答えはすぐ近くにあった。デスクの端に積まれた決済済みの書類、その下段に記された部屋の主の署名を、教授は懸命に読み取ろうとした。ためつすがめつ眺めるうちに、崩れた文字で書かれたそのサインはようやく「H. Muller」であることがわかった。ミュラー、ミュラー、H・ミュラー、ハー、ヒー、フー、ミュラー…。feti虎教授は、かつてgoKoreaの愛すべきチョッパリ軍団どもと交わした会話の記憶を辿り、「H.Muller」に該当する人物の名を懸命に思い出そうとした。ハンス・ミュラー、フランク・ミュラー、ハインリヒ・ミュラー、ハインリヒ…、ハインリヒ・ミュラー!そうだ、ハインリヒ・ミュラーだ。…もしかして“ゲシュタポ・ミュラー”ってこいつのことか?
その時、おもむろに黒服が口を開いた。
「…feti虎教授、どこで教えられてるので?」
「ソウル大学です。文学部反日思想学科。…そのあたり、もうお調べのことではなくて?」
「確認ですよ。専門は朝鮮周辺のようですな。それがまたなぜこの国に?学術的なご用件とは思えないが」
「観光です」
「このご時勢に?」
「ええ、このご時勢に」
「しかもアドロンのプレジデンシャル・スイートにお泊まりと。大学の教授とはそんなに高給取りでしたかな」
「アフィリエイトが好調でしてね」
「話が見えないが」
「説明が面倒です。ところでミュラーさん、私が呼ばれたのはそれが理由ですか?アドロンのプレシデンシャル・スイートに泊まる教授は身分不相応につきそれだけで怪しいと」
突然名前を呼ばれたことに、ミュラーはかすかに眉を上げた。しかしすぐに表情を消すと、再び抑揚のないトーンで続けた。
「過日、総統官邸でテロ未遂事件が発生しましてね。政府高官への」
「それが私と何か関係がありまして?」
ゲシュタポ・ミュラーは意外にもあっさり認めた。
「あなたは事件には関係ないですな。犯人は兎だった」
「ではなぜ私はここに?」
ゲシュタポの長は椅子の背もたれに身を預けると、feti虎をまっすぐ見据えながら言った。
「問題のテロ未遂に遭った政府高官というのは、われわれがずっと監視下に置いている相手でね。毎日欠かさず動向を追っている。ところが今日、われわれとは別にその高官の動きとリンクしている者が確認された。…誰のことを言わんとするかはおわかりですな、教授」
(ノ∀`)アチャー、見られてたのね。
「さっぱりわかりませんね」
ゲシュタポ・ミュラーは畳み掛けるように言った。
「では今日の朝と夕方、あなたはあんな場所でいったい何を見て何をしていたのかね?まさか官公庁街を観光だなんて言うんじゃなかろうな」
こいつ、漠然とした疑いだけで何も握ってないな。そう確証したfeti虎はのらりくらりと追及をかわすことにした。
「観光ですよ。官公庁街も見る価値はあります。朝夕の都市風景、人が流れる美しさは十分観光として成り立ちますけど」
「そんなたわ言が通用すると思うかね」
「たわ言ではなく事実です。あなた方は当然私も監視下に置いたはずですよね。ではお伺いしますが、その朝夕以外の私は何をしてました?誰かとコンタクトでも?あるいは公園のベンチの下に怪しい小包でも置いてましたか?」
その問いに、ゲシュタポ長官は沈黙で答えた。ここぞとばかり、feti虎教授は攻勢に転じた。
「報告書のなぞりになりましょうが、朝の街の風景を楽しんだ後はティアガルテンでサイクリングです。それから『カンツラー・エック』でおいしいランチを頂いて、午後は植物園と動物園の二本立てツアー。夕暮れにまた官公庁街に赴いて家路に着く人の波を眺め、お夕飯は『ツァ・レツテン・インスタンツ』。いい気分でアドロンに戻ったらあなたのお下品な部下たちが待ち構えてて、有無を言わさずここへ連行。おかげで素敵なベルリン観光はパア。それが私の今日という日です。政府高官なんて知りません」
しばらくの沈黙の後、ミュラーはおもむろに話を変えた。
「自転車に乗られてるようですな。それも英国製の」
「イギリス本土はもうあなた方の手に落ちてるでしょ。問題ないはずです」
「お留守の間に、荷物を検めさせてもらった」
「不審な物でも出てきました?」
「不審な物は何も。…だが、不思議な物はありましたな。あれは何です?」
「それももう調査済みでなくて?」
「もちろん調べました」
「なら問題ないことはおわかりのはずです。お調べになられた通りの物で、お調べになられた通りの用途です」
「あんなに大量に?」
「あんなに大量にです」
「解せませんな」
「その方がお買い得なので」
「feti虎教授、あなたはこの国にいったい何をしに来られたのです?」
「観光です」
突然、ゲシュタポ・ミュラーはデスクに身を乗り出すと、feti虎に向かってぐいと顔を近づけた。高級そうなオー・デ・コロンの香りが仄かに鼻についた。能面のゲシュタポ長官は、抑えながらも凄みのあるトーンで言った。
「無理にでもしゃべってもらう方法もあるんだがね」
feti虎は動じることなく、涼しい顔で答えた。
「さぞかし実りある白状を手にできるでしょうね。拷問で意識を半ば失いながらうわ言のように『観光、観光』と。あなたの評価もまた上がる。『ゲシュタポ・ミュラー最強。“観光”容疑で外国人を逮捕』。ダッハウに着いたら皆さんによろしくお伝えします」
ミュラーの顔が心なしか紅潮したように見えた。やがて彼はfeti虎から顔をそむけると、どっかと椅子の背もたれに身を預け、黙り込むのだった。
勝利を確信したfeti虎教授は朗らかに言った。
「さて、そろそろ帰ってもよろしいかしら?」

“スフィンクス”とあだ名されるゲシュタポ長官の顔は特に変化は見られなかった。しかしその心中は必ずしも穏やかではなく、彼は今、腰を振り振りゲシュタポ本部を後にするfeti虎教授の後ろ姿を、苦々しい思いで見送っていた。必ず尻尾は掴んでやるからな…。決意も新たにゲシュタポ・ミュラーは部下の名を呼ぶのだった。
「ショコラ、モンブラン」
それを受け、背後の柱の陰からふたりのゲシュタポ捜査官がぬっと現れた。ミュラーは部下たちを一瞥すると、闇の先に消えつつあるfeti虎を見ながら言った。
「あの虎から目を離すな」
ふたりの秘密警察官は頷くと、すぐさま本部前に停めてあった黒塗りのメルセデスへ乗り込むのだった。


金のかかるスパイ~2007年5月16日(黒猫暦:1940年12月29-30日

ホテルに帰ったfeti虎教授は、恐怖の建物から無傷で生還したことに驚くフロント係から鍵を受け取り、足早に部屋へと向かった。
部屋に戻ると、feti虎は名残惜しそうに高価な調度品で飾られた部屋を眺めやった。
「ここはもう撤収しなきゃね…」
仕方あるまい。feti虎はフロントにダイヤルすると、ボーイを部屋によこすよう連絡した。
連絡を受けてやって来たあどけない顔のボーイは、山のように握らされたチップに目を輝かせ、何でも仰せのままにと言うようにfeti虎教授を見た。
feti虎はボーイに手短に依頼内容を伝えた。ボーイは瞬間躊躇いの表情を見せたものの、さらに積まれたチップの誘惑には勝てず、依頼を受けることにした。
数分後、件のボーイが紙袋を手に再びfeti虎教授の部屋に入った。さらにその数分後、廊下の安全を確かめ先に出たボーイの手招きを受け、feti虎がそっと部屋から荷物を手に現れた。そして、誘導されるままに従業員専用エレベーターへと向かった。
ボーイの手引きで無事に従業員専用口から外に抜け出したfeti虎教授は、3度目のチップをボーイにはずむと、幸運を祈る声に手を振り応えながら、闇夜の中へと姿をくらますのだった。

その30分後、ケンピンスキー・ホテルのフロント係は、目の前の客を不思議そうに見やった。ホテル・アドロン従業員の制服に身を包んだfeti虎教授は、フロント係ににこやかに微笑みかけた。
「お部屋、空いてますかしら?」

原則的に電話嫌いであるぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoの声は極めて不機嫌だった。
「どこの馬の骨だ」
feti虎教授はその失礼千万な挨拶を華麗にスルーした。
「あいにく虎の骨です閣下。おはようございます」
「…教授か。こんな時間にいったい何の用じゃ」
「危急の依頼です。自転車を1台ご用意ください。Roverでお願いします。カスタム化済みのを」
総統閣下はすぐに異変を察知した。
「何があった」
「実は今夜、こちらのゲシュタポに呼び出されました」
「しくじったのか?」
「いえ。しかし疑われてます。向こうも黒猫さんを監視してたようで。私も監視下に置かれるのは間違いないので、遺憾ながらアドロンを放棄しました」
これで高額な宿泊代を払わずに済むと思ったのか、総統閣下の声はうれしそうだった。
「それは災難だったのう。残念じゃ。実に残念じゃ。しかしそれとおニューの自転車と何の関係があるんじゃ?」
「カモフラージュが必要です。支払いもそうですが、私の自転車がアドロンに置いてあれば、連中はまだ滞在中と思うでしょう」
「…ちょっと待て。すると何か、お前はわしにもぬけの殻のホテル代を払い続けろと言うのか?」
「そういうことです。こちらのホテル代もお忘れなく」
「(゚Д゚)ハァ? お前は今どこにおるんじゃ?」
「ケンピンスキー・ホテルですが」
「…シングルだろうな?」
「プレジンデンシャル・スイートです」
電話の向こうで、偉大なる総統閣下は大爆発を起こした。
「お前はいったい何を考えとるんじゃ!!そのプレなんとかは1泊いくらすると思っとるんじゃ!しかもひとつは誰もいないホテルの宿泊代じゃ!!お前はわしの…」
feti虎教授は怒れる総統閣下を穏やかに遮った。
「ゲシュタポの盗聴の恐れがありますので今夜はこの辺で。おやすみなさい。よい夢を♪」
「悪夢じゃ!起きながらにして悪夢じゃコラ!!お前はわしのりそな銀行の口座をいったいど…」

ガチャ。

長い一日だった…。feti虎教授は偽従業員の格好もそのままに、ふかふか高級ベッドに横になると、すぐに眠りに落ちた。


翌日、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、アドロン、ケンピンスキーの両ホテルからの請求書を前に、少量ながらも失禁して果てたという。

つづく。

こないだ(BlogPet) 

こないだ、leftyが
応じないでしょうな」
「お前を差し向けてもよいが、お前が言うには、兎めは多羅尾伴内よりも豊富かつ完璧な変装術を持っとるそうだな。
って言ってたよ。

*このエントリは、ブログペットの「ぎ兎」が書きました。

お前らの恥ずかしい写真をいっぱい撮ってやったぜぐわーっはっはっは。 

大変失礼いたしました。

さて、本日は夕刻より町田の何とかまではるばる遠征して撮影の儀

奴らも久々だろうが私だって久々なのだ。捕捉が甘い点は触れるな。バックライトの活かしが中途半端なのは言うな。ノイズ処理設定を間違えてデフォじゃ見れたもんじゃないのをモノトーンにしてごまかした件は持ち出すな。ブランク埋めんと浮き足立ったのはお互いさまなのである。

やはりあちこち振り子揺らすのは、それぞれの質が緩慢に衰えてよろしくないようだ。ひとつのことにもうちょい集中した方がいいのやも知れぬ。

…リプレイでも書くか(笑)

【ガイドブック】 千年帝国の歩き方 

【はじめに】

超局地的に好評連載中の「Guicho Zurdo:千年帝国の野望」シリーズ。
当初は「Hearts of Iron・Ⅱ」というゲームの単なるリプレイの予定だったのですが、勝った負けた獲った取られたで済ますのもなんか味気ないので、途中から気分転換のつもりで物語風に変えました。
ところがいつの間にかそのスタイルが定着してしまい、加えて後からゲームをはじめた「黒猫の巣」の中の人までもが同じような形式でリプレイをはじめたため、双方のゲーム記は今やザッピング形式の大河リプレイの様相を呈するようになりました。
ただザッピング形式とはいえ、それぞれのゲーム進行は異なり、最終的な目標も違います。また書く内容は特にお互い打ち合わせをしてるわけでもありません。どちらかが不定期に上梓される相手のエントリーを読み、ゲームの経過に沿いつつも相手の展開を元にまた新たな(サイド)ストーリーを構築するという、なんとも逝きあたりばったりな手法を採っていますw
したがって、物語がこの先どうなってしまうのかは書いてる本人たちすらわかっておりませんうわっはっはっは。ひとつ確かなのは、このリプレイの本筋から外れたどうでもいいはずのストーリーは今後ともひたすら膨らみ続け、書けば書くほど泥沼化し収拾が付かなくなるであろうという明るい未来のみです。
私も苦しいですが、黒猫氏めも苦しんでおります。しかしもはや後戻りはできません。お互いヒイヒイ言いつつ築き上げる仮想世界です。なんとすばらしいことでしょうか。ね♪ね♪ね♪
さて、書き手どもの苦労はともかくとして、ログを改めてパラパラと読み返すに、読み手の皆さまにおかれましてはちょいとわかりにくい部分、要するに書き手の不親切なところも過分にあったかなあと反省している次第であります。史実・フィクション入り乱れ、実在・架空の人物ごった煮状態、あるいはドイツ軍のことなどある程度知識がないと理解し得ない箇所もかなりあることに気づきました。
そこで今回、物語は新たなる局面を迎え、新キャラもポツポツ増えてきたここいらで、多少なりともストーリーを解しやすくなるようなガイドブック的なものでも作ってみようということに相成りました。
ガイドブックとは言っても、歴史的な背景まで含めてしまうと膨大な量になってしまいますので、人物関係だけに絞っています。そのあたりはご了承ください。
いずれにせよ、下記のリスト群を通して今まで謎だった部分、わかりにくかった箇所の氷解、あるいはこれから読まれる上で多少なりとも参考になれば幸いです。
では↓


【主な登場人物ども】

unknown.jpgGuicho Zurdo
元トロピコ共和国大統領・現ぎ印ドイツ帝国総統
中の人は「神の見えざる屁」主宰

トロピコ悪党党、トロピコ共産党、超福音同盟を経て、ぎ印党党首となる。
トロピコ時代より常に極端な政治姿勢で臨み、その過酷な統治は当然ながら民どもの不興を買い、結果いずれも暴動やクーデターなどで政権崩壊、三度に及ぶ亡命生活を余儀なくされる。
己が政治力のなさを「カリブの水は合わん」に転嫁し見切りをつけたこの元大統領は、時空を超え、1936年のドイツに突如降臨。持ち前の図々しさと腹黒さを如何なく発揮し、時の権力者アドルフ・ヒトラーから有無を言わさず強引に政権を奪取。無断で総統の座に収まる。
当初はドイツの不幸の歴史を塗り替えんとする崇高な理念を掲げるも、それはいつしか世界征服という悪しき野心へと変貌し、ヒトラーとは別の形で世界を不幸にしている。
“もうひとつのドイツ”に出奔した元側近・黒猫ポンセを敵視し、嫌がらせや迷惑電話を繰り返し、またそこに幸福を見出している。

kuroneko.jpgカール・ポテンテ(黒猫ポンセ)
“もうひとつのドイツ”総統補佐官
中の人は「黒猫の巣」主宰

トロピコ時代より黒猫ポンセとしてGuicho Zurdoに仕え、側近・執事・政策秘書・作戦参謀を兼任する。
失脚してなおその傍を離れることなく、長らく側近中の側近として信義も厚かったが、HoI2の世界においてはその大義なき戦争方針、定見なき戦略を巡って度々衝突。やがてGuicho Zurdoの偏狭な視野にとことん愛想を尽かし、ついに出奔。
その後“もうひとつのドイツ”にスカウトされ、以降は総統補佐官カール・ポテンテを名乗り、己が手で新たなる世界秩序を構築せんと日々奔走する。
バランス感覚に富んだ戦略眼を持ち、人格的にも誠実なるもなぜか敵多し。特にぎ独の偉い人からは度々嫌がらせを受け、また今後も受ける予定。

ゴルビ犬(いぬ)
ぎ印ドイツ帝国国家保安本部長
元野良犬兼科学犬

放浪の旅の途中、Guicho Zurdoに拾われる。
犬ならではの嗅覚を活かした諜報能力によってめきめきと頭角を現し、汚れ仕事も厭わず請けることで信を得る。やがて、黒猫ポンセの説諭を疎ましく思いはじめた総統より側近として登用され、黒猫の出奔後は側近・執事・政策秘書・作戦参謀を兼任するようになる。
諜報関係ではズバ抜けた能力を発揮するも、軍事的才覚には乏しく、過去、ぎ印ドイツ海軍を壊滅的な打撃に至らしめた迂闊な進言をしたことがある。
原則的に総統閣下の忠実なる犬。しかし主人の悪党ぶりを前に、心揺らぐ場面も見られつつある。
中央アジアに「ゴルビスタン帝国」の建設という見果てぬ夢を抱く。

nina.jpgニナ兎(うさぎ)
虚:“もうひとつのドイツ”総統秘書官 実:ぎ印ドイツ帝国保安防諜局員
本名:ニーナ・兎・ゲーレン 別名:薔薇

多羅尾伴内よりも豊富かつ完璧な変装術を持つ兎。
もうひとつのドイツの黎明期より、ゴルビ犬の命を受け総統秘書官という隠れ蓑で潜伏。その後カール・ポテンテ補佐官の台頭により、諜報活動を開始する。
ポテンテと懇意になる一方で、そのポテンテに対して沸騰コーヒーを用いたテロ活動を繰り返すという二重生活を長らく続ける。
その立ち位置に迷いもあったのか、スパイ活動は徐々に精彩を欠き、やがてポテンテの護衛に正体を見抜かれたと知るや、その年のクリスマスに無謀な直接攻撃を仕掛け、すべてが露見する。
襲撃の失敗により、敵のみならず本国からも追われる身となり、逃亡を決意。ヴァンゼー湖畔の森に消息を絶つ。
モンテネグロ出身。

fetia.jpgfeti虎(こ)教授
ソウル大学文学部反日思想学科教授
中の人は「月見櫓」主宰

本来は軍とも諜報とも無縁の学者。ぎ印党員でもなく、またGuicho Zurdoに対する敬意もない。しかしその優れた知力と慧眼、さらに黒猫ポンセと旧知である点をゴルビ犬に買われ、黒猫への嫌がらせ作戦遂行のために高いギャラで雇われる。
きらり光る知性と魅力の裏に、貪欲さとしたたかさを併せ持った危険な虎。
現在、任務遂行のため“もうひとつのベルリン”の高級ホテル、アドロンやケンピンスキーのプレジンデンシャル・スイートを渡り歩き、総統閣下の銀行口座を逼迫させている。
本と自転車をこよなく愛し、それらは余暇時間の娯楽にも関わらず、必要経費として総統閣下に要求、閣下の口座の逼迫に拍車をかけている。
何もせずして、既に「金のかかるスパイ」の通り名を不動のものにしつつある。
色白。

wac.jpgヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン
“もうひとつのドイツ”国防軍少尉
通称:枠少尉、WAC

元衛生兵。現在はカール・ポテンテ補佐官の護衛兼当番。
女性。身長185cm。柏葉付鉄十字勲章授章者。格闘技と口論の名手。
豪腕、辣腕、タフ、武骨。ただし力馬鹿だけではない側面も時折垣間見せる。
ルガー拳銃を愛用しているが、拳も同等、もしくはそれ以上の殺傷能力を持つ。
炎と戦う婚約者がいる。
口癖は「コーヒー買って来い」。


【愛すべき脇役ども(含端役)】

Desloch.jpgオットー・デスロッホ
ぎ印ドイツ空軍中将


Guicho Zurdoが放った新たなる刺客feti虎教授を、もうひとつのロストクに送り届けた輸送機隊(ぽんこつJu-52)の長。
端的に名前が出るくらいの予定が、書いてるうちにお茶目な好々爺に変貌。個人的にも好きなキャラなので再登場の予定。
史実のデスロッホは上級大将であり航空艦隊司令官。ホントは偉い人。

haupt.jpg名無しの大尉
ぎ印ドイツ空軍大尉
ぽんこつJu-52の操縦士

leut.jpg名無しの中尉
ぎ印ドイツ空軍中尉
ぽんこつJu-52の副操縦士

volf.jpgヴォルフ少将
グリーンランド守備隊隊長


スキルは低いが良識の将。御前会議にて戦争継続を高らかに宣言したGuicho Zurdoに異議を唱え、意見する。
その指摘は至極真っ当かつ理に適ったものであったが、総統閣下が耳を傾けるわけがなく、島送りの刑に処される。

mohnke.jpgヴィルヘルム・モーンケ
ぎ印ドイツ帝国武装親衛隊(SS)少将


総統官邸の映写係。史実の彼は知る人ぞ知るアノ人。


【今後登場予定の者ども(多分)】

Muller.jpgハインリヒ・ミュラー
ゲシュタポ(秘密国家警察)長官
通称、ゲシュタポ・ミュラー

chocola.jpgショコラ
ゲシュタポ捜査官
ミュラーの部下その1

montblanc.jpgモンブラン
ゲシュタポ捜査官
ミュラーの部下その2


【リプレイを彩る将軍どもの肖像(抜粋)】

rundstetd.jpgゲルト・フォン・ルントシュテット
ぎ印ドイツ帝国陸軍元帥


1936年1月のルクセンブルグ進攻作戦以来、ぎ印ドイツ軍将官の中でも最も長く戦い続けている将官。
ルクセンブルク以降もパリ、マジョルカ島、アレキサンドリア、カイロ、そしてナイロビと、大陸をまたぎ各戦線の指揮を執る。
御前会議でアフリカ大陸掌握を報告するために8年ぶりに故国に戻るが、その日のうちにダルエスサラーム行きを命じられた流浪の将。

guderian.jpgハインツ・グデーリアン
ぎ印ドイツ帝国陸軍元帥


「韋駄天ハインツ」の通り名ゆえに、東へ西へと飛ばされまくる多忙な将軍。
対ポーランド戦以降、西部戦線、大英帝国本土、東部戦線、インド・パキスタン戦線を経て現在香港のあたり。

model.jpgヴァルター・モーデル
ぎ印ドイツ帝国陸軍元帥


「火消し屋モーデル」の異名を持つ名将であるが、ぎ印ドイツ軍では「火付け屋モーデル」にされ、斬り込み役の任を負わされている。

rommel.jpgエルヴィン・ロンメル
ぎ印ドイツ帝国陸軍元帥


史実ではアフリカ戦線において「砂漠の狐」と畏れられた名将。しかしぎ印ドイツ軍では「雪原の狐」として嫌々東部戦線に駆り出される。

dietle.jpgエドゥアルト・ディートル
ぎ印ドイツ帝国陸軍大将


ぎ印ドイツ空挺隊の長。常に後方支援のない状況で敵の拠点に放り込まれ、死守を命じられる。そのため損耗率は尋常ではないが、負け知らずの最強説。
実在のディートルはお空ではなくお山の大将。

shelner.jpgフェルディナント・シェルナー
ぎ印ドイツ帝国陸軍中将


ぎ印ドイツ海兵隊の長。海岸沿いの拠点確保には欠かせない存在。強襲揚陸作戦で常に先陣を切り、そのため損耗率は高さはディートル軍団に次ぐ。

Steiner.jpgフェリックス・シュタイナー
ぎ印ドイツ帝国武装SS中将


3倍以上の敵もピンで撥ね返す猛者。なぜそこまで強いのかはわからない。ぎ印ドイツ帝国軍・年間最優秀将軍賞(MVG)を3年連続で受賞。Guicho Zurdoお気に入りの将官のひとり。
史実のシュタイナーもかなりの暴れん坊将軍。SSでありながらイデオロギー的な規律をとことん馬鹿にし、ことごとく無視。実力あってのその反骨の姿勢はSSのボス、ハインリヒ・ヒムラーからも畏れられる。反骨どころか、ヒトラーをキチガイ認定して逮捕しちゃおうというクーデターまがいの計画まで立てかけたことすらある。
「SS師団長シュタイナーをコントロールするのは容易ではない。彼はやりたいことをやり、人の話に耳を貸さない」(ヒムラーの側近談)
しかし単なる反骨馬鹿ではなく、むしろ智将。より近代的な戦術を編み出し、多国籍軍の源流までもを築き上げている。

Dietrich.jpgヨゼフ・ディートリヒ
ぎ印ドイツ帝国武装SS中将


伝え聞く将官としての力量とは裏腹に、やけに強い。何だろう。カリスマ値みたいので補ってるのだろうか。
実際のディートリヒも「ゼップ親父」と兵どもから慕われるナイスガイ。ただし地図は読めない。彼は師団の指揮官であるが、それでも地図は読めない。戦争中であるが、やはり地図は読めない。

hauser.jpgパウル・ハウサー
ぎ印ドイツ帝国武装SS大将


これまた負け知らず。シュタイナーとの黄金タッグでモスクワに篭った大量のソ連軍を蹴散らし、意気揚々と一番乗り。
中国戦線では侵攻軍の中核を成す。
史実でも名将。隻眼の猛者。


とりあえず以上です。

黒猫側の登場人物(軍人、政治家など)につきましては、黒猫氏のそれぞれへの思い入れというのもまた別にあろうかと思いますので、ここでは割愛しました。
また向こうは向こうで「黒猫ポンセの野望」ガイドブックをいずれ作ると思いますので、いや、はずですので、そちらも併せてご参照ください。
では引き続き、「Guicho Zurdo:千年帝国の野望」をお楽しみください。

まだ書いてないけど。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その16) 

経過はコチラ

※本編よりサイドストーリーの展開の方が秀逸という評価は喜んでいいのだろうかw


Sister Moon~2007年5月8日(黒猫暦:1940年12月24-25日

ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、feti虎教授が書き記した膨大な「欲しいものリスト」を前に、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「なんでわしが産経新聞の購読料まで払わねばならんのじゃ…」
渋面の総統閣下はふと、目の前で電話を受けている側近ゴルビ犬の顔が自分以上に苦々しい顔をしていることに気がついた。犬はひそめた声で電話の先の相手に短く何事か言伝ると、深いため息をつきながら受話器を戻した。
総統Guicho Zurdoは、ただならぬ事態を察知した。
「どうした?」
ゴルビ犬はぼんやりと顔を上げたが、すぐに威儀を正すと、偉大なる総統閣下に報告した。
「閣下、“薔薇”が、…薔薇が突出しました」


―――もうひとつのベルリン

ニーナ・兎・ゲーレン、この世界では総統秘書官ニナ兎として知られていたその兎の本当の姿は、“薔薇”のコードネームで畏れられた、ぎ印ドイツ帝国保安防諜局(ぎ印SD)の諜報員であった。今、ニナ兎は月明かりの下、ヴァンゼー湖の畔をひとりとぼとぼと歩いていた。冷たい夜風に吹かれ、いくばか平静を取り戻した彼女は、今さらながら己が暴走に後悔の臍を噛むのであった。
その晩、彼女が独断で敢行したカール・ポテンテ補佐官への直接攻撃、すなわち沸騰コーヒー・テロは、以前の失態に対する意趣返しという大義名分の下に計画・実行されたものではあった。しかし本当のところは、それは抑えられぬ女の情念を昇華させたいがゆえの、短絡的かつ直情的な訴えに過ぎなかったのである。
計画を思い立ったその瞬間から、薔薇はもはや薔薇ではなく、どこまでもニナ兎であった。結果、普段の冷静沈着さや抜け目のなさはどこへやら、およそプロらしからぬ素人臭いやり方で行動を開始し、感情を先行させ判断力を失い、そして失敗したのだ。
凍てつくような風に震えながら、ニナ兎は思った。すべてあのロシア女のせいだ。すべてはあのロシア女のせいだ。すべてはあのロシア女のせいなのだ…。
が、誰のせいであれ、失敗は失敗である。正体が完全に割れてしまった以上、もう総統官邸に戻ることはできない。それどころか、本国にも帰れるかどうか怪しいのだ。今夜のことはもうぎ印の総統の耳にも入っているだろう。猫と女性にやさしく蚊に厳しいと噂される総統閣下ではあるが、勝手な行動に走り、しかも失敗に終わった自分に寛大な沙汰が下されるというのは甘い幻想というものだ。近いうちに、本国への召還命令が下るだろう。そして戻った自分は裁きの身に付されるのだ。これまでの貢献を鑑みれば最悪の処断はなかろうが、それでも過酷な運命が待ち受けていることには変わりない。ニナ兎は立ち止まると、恐怖に震えた。冗談ではない。そうとわかって帰る糞度胸などあるものか…。
だがもし、召還命令に応じなかったとしたらどうなるのか。…恐らく本国から追っ手が差し向けられ、制裁と口封じと見せしめを兼ねた、帰った場合よりなお悪い結末を迎えることになるのだろう。そう思い至った時、兎は改めて自分が置かれている状況が実にのっぴきならないものであることを知るのだった。今やこの世界の官憲はおろか、本国からも追われる身となったのだ。
「逃げよう…」
唐突にニナ兎は思った。図らずも口に出たその考えは、すぐに明確な形となって兎の心を支配した。そうだ、逃げるのだ。逃げて逃げて逃げまくって、どこまでも逃げ延びてやるのだ。逃走の意志が固くなるにつれ、ニナ兎は活力がみなぎってくるのを感じた。そうだ、自分には多羅尾伴内よりも豊富かつ完璧な変装術があるじゃないか。それを駆使して追及の手をとことんかわしてやるのだ。見知らぬ誰かに成りすまし、何食わぬ顔でぬくぬくとこの世界で生き抜いてやるのだ。正体を見破れる者などいようものか。…あのロシア女以外は。
兎は既に薔薇の顔に戻っていた。「逃亡生活」という選択に光明を見出したその“元”スパイは、そそくさと着ていたサンタクロースの衣装を脱ぎ捨てると、湖の反対側に拡がる、月明かりを拒む漆黒の森へと脱兎そのままに駆け込み、姿をくらますのだった。

今夜は月が明るいのだな…。
ニナ兎が突き破った窓の前で、黒猫ポンセ、今は総統補佐官カール・ポテンテを名乗るその猫はぼんやりと夜空を見上げた。その後ろでは護衛兼当番のヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン少尉、通称・枠少尉が刑事警察(クリポ)からやって来た捜査官たちを相手に、発砲時の状況・経緯を身振り手振りで説明していた。
刑事からの質問が一段落ついた時、枠少尉はポテンテの後姿をちらり見た。その背中からは、ショボンヌのオーラが悲しげに漂っていた。ちょいと荒療治に過ぎたか。しかし、ああでもしないとな…。そんな少尉の意識に誰かの声が割り込んだ。ふと気づけば、刑事のひとりが何か質問している。それはさっきも聞いたろ馬鹿…。枠少尉はため息を押し殺しつつ、再び身振り手振りで説明をはじめるのだった。
やがて、この大柄な護衛から実のある話はもうないだろうと判断した刑事たちは、今度は窓辺で佇むポテンテに事情を聞くべくぞろぞろと歩き出した。その時、背後から枠少尉の逞しい腕が伸び、ひとりの刑事の襟首をむんずと掴むと、そのまま高らかに引き上げた。超人ハルクが如き怪力に呆然とする刑事たちを一瞥すると、少尉はぐるんと手首を捻り、吊り上げられた刑事を自分の方に向かせ、一言づつ染み渡るように言った。
「補佐官はひとりハートブレイクホテルだ。今はそっとしておけ」
ハンガー状態の哀れな刑事はウンウンと頷いた。少尉は居並ぶ刑事たちをじろりと見渡した。刑事たちはハンガー刑事と同じく、一斉にウンウンと頷きマーチを奏でるのだった。
クリポの面々が現場を去ってしばらくすると、ポテンテもまた冷たい夜風が吹き込む窓から背を向け、そっとそこを離れた。失意の補佐官を気遣い、枠少尉は壁にもたれたまま黙って黒猫を見送るのだった。今はひとりがいいだろう。それにこの厳重な警戒網の中、襲ってくる馬鹿もおるまいて…。
ポテンテも去り、部屋に誰もいなくなったのを見て取ると、大柄な少尉は壁からゆっくり身を起こし、件の窓へと歩み寄った。冷たい夜風に揺れるカーテンを振り払い、砕けた窓枠に残ったガラスの割れ目を仔細に検めはじめた少尉は、ほどなくして割れ目の先に引っかかった、赤い布の切れ端を認めるのだった。それは刺客が着ていたサンタクロースの衣装の一部分であった。枠少尉はふと、そこから仄かな香りが漂っているのに気づいた。少尉は風に揺れる布切れを慎重に手に取り、そっと匂いをかいだ。ポテンテがいつも気に留めながらも、結局最後までわからなかったそのニナ兎の香りの正体を、少尉はすぐに突き止めた。
「…どこぞのオード・ト・ワレ、『ローズの香り』。なるほど、“薔薇”とはよく言ったものだ」
過去数年来、常に噂されながらも一向にその正体が掴めなかったぎ印ドイツ帝国の謎のスパイ、“薔薇”。その名の由来を知った少尉は、ひとり得心したように頷いた。
「単純明快。とはいえ、男どもにこれはなかなかわからんやね」
少尉は手にした布の切れ端を弄びながら、薔薇が水道屋に変装した時の対峙のことを思い返した。あの時は薔薇の香りはしなかった…。ふん、使いどころは一応心得てるというわけだ。まあそれはよしとしても、スパイ稼業に色気は禁物だよ、兎さん…。
枠少尉はこの布切れをどうしたものかと思案した。貴重な証拠ではあろうが、クリポのぼんくらどもがあの兎を捕まえられるとも思えん。
結局、短気な少尉殿は布切れを窓から投げ捨てるという方法で問題を解決することにした。また聴取だ何だで呼び出されるのも面倒だしな…。
窓から放り出された赤い布の切れ端は、ひらひらと虚空を踊りながら落下し、中庭の池へとその身を横たえた。池の水は不意の訪問者を静かな波紋で迎え入れた。揺れる水面が、そこに照らされた月の分身をゆらりと歪めた。


運び屋たちのクリスマス~黒猫暦:1940年12月24日

どこからともなく現れた一機のくたびれたJu-52輸送機が、眩し過ぎるくらいに明るく輝く月を背に、左へ右へと怪しく揺れながらワッデン海の上空を飛行していた。

ドルン、スポポポ…。

またか…。左エンジンの明らかな異音に、オットー・デスロッホ中将はいまいましげに背後を振り返り、頼りなげな片翼のエンジンを睨みつけた。ええいぽんこつめ。頼むから“積み荷”を届けるまでは持ちこたえてくれよ。
老将の鋭い眼光に応えたか、やがてエンジンは復調した。デスロッホ中将は安堵の表情で視線を戻した。この下手したら墜落しかねない心胆寒からしめるトラブルにも関わらず、向かいに座る“積み荷”は泰然自若の様子で本のページをめくっている。よくよくの豪の者か、さもなくば何もわからぬ素人か…。輸送機隊の長はまだ測りかねていた。
立場をわきまえている将軍は、この奇妙な任務を命じられた時も何も聞かなかったし、その“積み荷”の正体が自転車と本を抱えた平凡な虎と知った時も何も言わなかった。オットー・デスロッホ中将は紳士らしくゲストを丁重に出迎え、機内へとエスコートしたのだった。自分に課せられた任務は命じられた“積み荷”を命じられた先に届けること、それだけだ。余計な詮索はすまい。
…が、好奇心はまた別ものだ。将軍は客人の脇に固定されたRoverの自転車に目をやった。いったいこの虎は何の任務を帯びているのだろう…。

本をぱたんと閉じたfeti虎(こ)教授は、向かいに座る将軍の控えめな好奇の視線に気づいた。それに微笑で応えた教授は、窓から差し込む月明かりに目を細めながら尋ねた。
「あとどれくらいですか?」
デスロッホ中将は時計をちらりと見た。
「15分ほどですかな」
「この機はどこへ降りる予定で?」
「ロストクですよ。北部の港湾都市です」
そしてしばしの逡巡の後、付け加えた。
「…ベルリンからはちょっと距離はありますがね」
老将のそのさりげない誘導を、虎は華麗にスルーするのだった。
「あら、誰かベルリンに用事でもありまして?」
将軍は苦笑すると、月明かりに照らし出された自転車を見やった。
「いやなに、ヴァンゼー湖あたりでサイクリングでも楽しまれるのかと思いましてね。…それにしても、いいのに乗っておられるようだ。いや、これから乗るのかな」
feti虎教授は自転車のサドルを愛しそうに撫でながら言った。
「ええ、初乗りはこれからです」
その時、再び左エンジンが不調をきたし、機体がガクンと大きく揺れた。ええいぽんこつめ、しっかり飛ばんか!心の舌打ちとは裏腹に、デスロッホ中将は平然とした様子で言った。
「おやおや気流が乱れてるようで。ちょっとばかり揺れることもありましょうが、なあに大丈夫ですよ。操縦士の腕がそれを補って余りある。なあ大尉?」
操縦席の若い尉官が汗まみれのこわばった笑顔で振り向き、震える親指をピッと立てて応えた。うろたえおって馬鹿者。こっちまで不安になるわ。…呼ぶんじゃなかった。そんな軽い後悔の念を打ち消さんと、将軍は努めて明るく言った。
「まあ揺れるのは機体の古さというのもありますか。もっと最新鋭の機でお送りしたいのですが、あいにく輸送機は改良が著しく遅れてましてな。…いや、輸送機のみならず空軍全般が、と言った方が正しいですかな。どうやらわれらが偉大なる総統閣下は、飛ぶモノより走るモノにご執心のようだ。いずれ急降下爆撃自転車でも開発されるんでしょう」
その皮肉に、feti虎は思わず吹き出した。将軍は物珍しそうに、再びRoverの自転車を見やった。
「自転車のことはよくわからんのですが、見たところ、よいパーツを使ってるようだ。下司な話だが、…高いのでしょうな?」
「それなりでしょうね。ただ、払ったのは私じゃないので」
「ほう、よいスポンサーが付いておられるようですな」
「ええ、これ以上ないスポンサーでしょうね」
ということは総統閣下直々の命令で動いているわけか。興味深い。ますます興味深い…。
将軍の好奇心をよそに、feti虎教授は窓外に目をやりながら尋ねた。
「ところで、どこへ降りるにせよ、問題はないのですか?」
「その点はご心配なく。この機はロストク空軍基地へのクリスマス・プレゼントを届けるということで着陸許可を取ってます。実際、プレゼントを積んでるんですよ。シャンペンをね。ですから、迎撃機や対空砲の歓迎はまずありませんよ。彼らとてせっかくのシャンペンを台無しにはしたくはないでしょうからな」

それから数分後、ぽんこつユンカースはふらふらと降下しながらロストク空軍基地に姿を現した。操縦桿を握る若い大尉は機を必死になだめつつコントロールし、着陸の瞬間に備えた。ボインボインと何度か跳ねながらも、ぽんこつ機の車輪はどうにか滑走路を捉え、やがて完全に接地した。汗だくの大尉は減速に全精力を注ぎ、副操縦士の中尉はすべての神に祈った。機体はガクガク揺れながらも着実にスピードを落とし、最後にブルンと大きく震え、停止した。
feti虎教授を除く全員がその恐怖の着陸ショーに安堵するのも束の間、周囲には既にシャンペンに飢えた兵どもが待ち構えており、ぽんこつ機の扉が開くや否や一斉に機内になだれ込み、へたり込む老将を尻目に、シャンペンの木箱を次々と運びはじめた。
敵国のサンタクロースからのプレゼントとは露知らず、歓喜の兵どもが遠くに去ったのを確認すると、デスロッホ中将は向かいの座席の下の収納スペースを開き、そこに隠れていたfeti虎に合図した。
「さあ、今なら大丈夫。降りて」
feti虎は隠れ場から抜け出るとそそくさと荷物をまとめ、機外へと降り立った。その後から副操縦士の中尉が、慎重な手つきでRoverの自転車を運び出した。
「お忘れ物はございませんな?」
「ええ、大丈夫です」

“積み荷”を無事に送り届け、任務を果たし終えたオットー・デスロッホ中将は晴れやかな表情だった。…そろそろお別れの時間だな。輸送機隊の長は威儀を正し敬礼すると、にやりとしながら言った。
「あなたの場合、『ご武運を』という言い方は適当ではないのでしょうな」
feti虎教授は「あは」と声に出して笑った。
「『よい旅を』と言っていただければ」
「そうですか。では、…よい旅を」
feti虎は深い一礼で応じた。
「将軍も道中お気をつけて。…エンジンが心配です」
今度は将軍が笑う番だった。知っていたのか。ではこの虎はよくよくの豪の者というわけだ。
「お心遣い、感謝します。ま、私も心中相手は選びたいのでね。無事帰りますよ」
傍らの中尉が割り込んだ。
「それは自分とて同じであります中将閣下。心中相手は選びたいものです」
老将はいたずらっぽい笑みを若い部下に向けた。
「そうだな。お前の相手は麗しのフラウ・ユンカースがお似合いだ。…さて、同じドイツとはいえここは敵地。早めに姿を消した方がいいでしょう。われわれも行きます。では」
運び屋たちはくるりと背を向け、ぽんこつユンカースへと向かった。機内に入りかけた将軍を、feti虎は呼び止めた。
「ああ将軍、ひとつだけお聞きしたいことが」
デスロッホ中将はその呼びかけに応え振り向くと、何でしょうと言うように首を傾いだ。feti虎教授はにっこりと微笑みかけると、朗らかに尋ねた。
「ベルリンで一番いいホテルってどこかしら?」


薔薇の名前~2007年5月8日(黒猫暦:1940年12月25日

総統執務室は漂う紫煙と重苦しい空気に包まれていた。ゴルビ犬は今すぐにでも飛び出したい心境であったが、己が部下の不始末という手前、そういうわけにもいかなかった。
申し訳なさそうにうつむく犬に、総統Guicho Zurdoは質した。
「…つまり話を総合すると、その、…ニナ兎といったか、わしに無断で黒猫成敗を目論み単独で行動を起こし、護衛の返り討ちに遭って失敗、逃走したと。ついでに正体が完全に割れて二度と使えぬ役立たずになったと」
「は…」
「しかしお前の見立てでは、ニナ兎とやらはそんな無茶をするようなタマではないということだな?」
「はい閣下、私も未だ信じられないのです。彼女は私の最も信頼のおける優秀な部下であり、勝手な暴走をするような無頼の者ではありません。黒猫の出奔よりスリーパー“薔薇”として向こうの世界に渡り、目覚めて以降、これまで長らくわが国のために忠義を尽くしてきました。課された任務の失敗はありましたが、自ら炎上するような挙に出るなど、到底考えられないのです」
「だが、実際そういう行動をしたわけだ」
「は…」
「なぜだと思う?」
「わかりません」
「お前の見立てでよい。なぜだ?なぜあの兎めは暴走したのだ」
ゴルビ犬はしばし沈思し、やがて自信なげに答えた。
「…考えられるとすれば、前回の任務で黒猫の護衛にしてやられた失点を取り返さんと、功を急いだのではないかと。そうでなくば、諜報員としての誇りを傷付けられたことに対する、個人的な復讐…」
「どちらにせよ、それは慎重かつ冷静沈着という評価とはおよそかけ離れとると思うがの。その兎めはそんな勲功に飢えておったのかね。あるいはそんなに感傷的でスパイ稼業は務まるのかね」
「………いえ」
「結局、動機はわからんということか」
総統閣下はふんと鼻を鳴らすと、新たな煙草に火をつけた。再び沈黙が部屋を支配した。その重苦しい空気に耐えられなくなった犬が尋ねた。
「…して、閣下、ニナ兎の処罰は如何に?」
「ん?…ああ、ほっとけ」
「は?」
「好きにさせいと言っておる。放置プレイじゃ」
「………よろしいので?」
「召還命令出したら素直に帰ってくるかね?」
「…応じないでしょうな」
「追っ手を差し向けてもよいが、お前が言うには、兎めは多羅尾伴内よりも豊富かつ完璧な変装術を持っとるそうだな。もし兎めが誰かに変装してたとしたら、わしの刺客はそれを見破ることはできそうかね?」
「…無理ですな」
「無理なのは向こうの官憲も同じじゃ。誰にも見つけられん。時間の無駄だし、下手に刺客を送り込んで迂闊に嗅ぎ回らせてたらそいつらが割られかねん。薮蛇じゃ。それに…」
ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは腹黒い笑みを浮かべた。
「お前の見立てが正しいとすれば、兎めは勲功なり復讐を成就させんとまた行動を起こすかも知れん。それはそれで結構。ヒイヒイ言う猫めをエンジョイできるのは変わらんからの。またコケても構わん。わしは何も関知しとらんからな。堂々としてればいいんじゃ。失敗の果てに向こうの官憲にとっ捕まってもok。もうぎ印とは関係ない者が勝手にやったことじゃからの。知らんぷりしてればいいんじゃ。それに、そうなった場合は向こうの司法がわしの代わりに罰を与えてくれる。つまり、どう転んでもおいしいわけじゃ。ということでな、兎めはほっといて好きにさせるが一番なんじゃ」
「…は」
ゴルビ犬は、それでも気がかりなことを尋ねた。
「閣下、もし、もしニナ兎が帰ってきたとして、その場合はどのような処断を下されるのでしょう?」
総統閣下はくるんと社長椅子を回転させ、背を向けた。そして、遠くを見つめるように言った。
「グリーンランドに逝った、ヴォルフ少将だったか。元気にしとるかのう…」
…つまり、島送りというわけか。やはり厳しい沙汰は避けられないようだ。犬は希望の光が急速に衰えていくのを感じた。総統閣下は背を向けたまま続けた。
「わしは猫と女性にやさしく蚊に厳しいという男で通ってるでな、イメージ・ダウンは困るんじゃ。万が一兎めが帰ってきた場合は、沙汰はお前が伝えい」
「わかりました。…失礼します」
ゴルビ犬は総統執務室を後にした。そっと扉を閉め廊下に出た犬は、首を振り振り大きなため息をついた。泣いて馬謖を斬れと申されるか。しかし、私にそれはできそうもない…。何といっても、ニナ兎はゴルビ犬がその才覚に目を付け、手塩にかけて育てた部下なのだ。その信じ難いような失敗を知った今とて、そうやすやすと斬り捨てる気分にはなれないのだった。
いったい何があったのだ、ニナ兎よ。ゴルビ犬は長い廊下の途中で立ち尽くした。そしてしばしの沈思の後、とある決意を固めるのだった。昔取った何とやら、今でも通用することを祈ろう…。ゴルビ犬は再び歩きはじめた。やがて総統官邸を後にした犬は、ぎ印国家保安本部の置かれた通りへと急ぎ足で向かうのであった。


クリスマスの朝、脱ぎ捨てられたサンタクロースの衣装が、ニーナ・兎・ゲーレン、あるいは“薔薇”として知られるぎ印ドイツ帝国のスパイが着ていたものであると断定した刑事警察は、捜査員を動員しヴァンゼー湖畔一帯をくまなく捜索した。しかし、ニナ兎の足跡は深い森の半ばで途絶え、以降、その行方は杳として知れなかった。

同じ頃、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、feti虎教授が泊まったベルリンのホテル・アドロンから送られた高額の請求書に、鼻血を噴き上げ卒倒していた。

つづく。

きのう(BlogPet) 

きのう、leftyは水占領したの?


*このエントリは、ブログペットの「ぎ兎」が書きました。

おお、そうだそうだ。 

←無断リンク2件追加。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その15) 

経過はコチラ

※書いてる人のプレイが原状回復するまでの間、サイドストーリーでお楽しみくださいw


The Professionals~2007年5月3日(黒猫暦:1940年10月24日

―――もうひとつのベルリン

カール・ポテンテの部屋の扉が勢いよく開いたのは、三度目の呼び鈴の音が鳴り止もうかという瞬間であった。それと同時に、ルガー拳銃を握ったごつい腕がぬっと現れ、そのひんやりとした銃口は訪問者の額にぴたりと突きつけられるのだった。訪問者がその物騒な歓迎にそろそろと両手を挙げて応える前に、銃の主の怒号が響いた。
「何者か!3つ数える間に答えろ。さもなくば撃つ」
それを聞いて飛び上がったのは銃を突きつけられた訪問者ではなく、いったい何事かとうんこの途中で便所から顔を出したポテンテであった。
「何やってんだ少尉!その人は水道屋だよ水道屋!シャワー直しに来るって話したろ?堅気のもんに銃を向けるんじゃない!早くしまえってのこの!」
ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン少尉、WAC、あるいは枠と呼ばれるその尉官は、背後でわめき立てるポテンテには見向きもしなかった。
「さっさとケツ拭いてパンツを上げな補佐官。それからコロコロうんこをきれいに流して消臭元をたっぷりまくこと。あたしがそこ使う時にあんたの残り香があったらただじゃおかないよ。それが終わったら便器・便座をきれいに磨き上げること。聖母マリアもうんこしたくなるくらいピカピカに。もしケツ毛一本でも落ちてたら明日という日はないと思え」
黒猫ポンセ、今は総統補佐官カール・ポテンテを名乗るその猫は再び飛び上がると、少尉殿の仰せのままに行動を開始するのであった。
背後で慌しい物音がはじまったのを確認すると、ポテンテの護衛兼当番、枠少尉は水道屋であるという訪問者に向かって言った。
「さてと、補佐官が言うように多分あんたは水道屋で、多分あんたはあんたの仕事をしにここへ来たんだろう。だけどあたしにもあたしの仕事というものがあってね、これもそうなんだ。悪いけどちょっと検めさせてもらうよ」
少尉は銃はそのままに、片方の手で訪問者の身体検査をはじめた。背後のトイレからポテンテがひょっこり顔を出し、口を挟んだ。
「だからその人は水道屋だってのに。ベルリン水道局の人だよ。なあ?」
「あんたは黙って便器を磨く!」
枠少尉の一喝にポテンテはすぐさま引っ込み、再びキュッキュと便器磨きに勤しむのであった。
やがて身体検査が終わった。少尉はここでようやく銃を降ろすと、水道屋ににっこりと微笑み、それからすまなそうに言った。
「あいにく今特別警戒中なんだよ。手間かけさせて悪かったね。入っていいよ」
水道屋は帽子のつばに手をかけ、お察ししますよというように軽く会釈し、ようやくポテンテの家へと足を踏み入れた。トイレを通り過ぎる時、ポテンテがまた顔を出した。
「電話で話した通り、シャワーの水漏れが激しいんだ。それとなんか温度調節がうまくいかない。あとバルブが固くて…」
雑巾を手にまくし立てるポテンテを、黒い大きな影が覆った。その遥かなる頂きからは静かな、しかし力強い声が降ってきた。
「 さ っ さ と 磨 け 」
…覚えてろ。忘れんぞ。俺は忘れんぞ。俺は忘れんからな。ポテンテは悲壮な決意を胸に、ひたすら便器磨きを続けるのであった。

浴室の前まで来た時、枠少尉は水道屋が手にしていた工具箱を見咎めた。
「…そういややけに大きい工具箱だね。ちょっと見させてもらってもいいかしら」
水道屋は工具箱を素直に差し出した。枠少尉はそれを床に置くと留め金を外し、中身を検めはじめた。二段重ねの工具箱の最初の段には、スパナやドライバーといった工具が整然と並んでおり、二段目にはメジャーやボンド、あるいはやすりなどの小物類が所狭しと詰まっていた。…一見問題はない。しかし、そこにはどこか違和感が漂っていた。やがて少尉は、その違和感は箱の深さに対する底の浅さであることに気が付いた。枠少尉は水道屋を一瞥した。水道屋は調べたきゃどうぞと言うように肩をすくめた。
少尉は箱の底の四隅を指でなぞりはじめた。内側の最後の角を回った時、少尉の指先は目立たない小さな留め金を捉えるのだった。少尉は慎重にその金具を外すと、底がスライドできることを確認した。そのさらに下には、間違いなく隠されたスペースが存在した。
少尉は水道屋の表情を伺った。水道屋は穏やかに少尉を見つめ返した。
ホルスターに手をかけながら、枠少尉は二重底を静かにスライドさせた。かすかなムッとするような匂いと共に、隠されたもうひとつの段の中身が露になった。そこに現れたのは、ハムサラダ、たまご、ツナといった、一面に敷き詰められたサンドウィッチであった。少尉は再び水道屋を見た。水道屋はこの疑い深い護衛に向かっていたずらっぽくウィンクした。少尉は苦笑しながら二重底を静かに閉じた。
「これで弁当箱を持つ手間が省けるというわけね。ひとつの箱で二度おいしいと」
工具箱を返しながら少尉は続けた。
「いろいろ悪かったね。作業にかかっていいよ。でも扉は閉めないでね」
水道屋は無言の笑顔で応え、作業を開始すべく浴室へと入っていった。

便所掃除を終えたポテンテは、しかめ面で手を拭いつつ枠少尉のそばに来た。ポテンテは微動だにしない護衛の視線の先を追った。開け放たれた浴室の扉の向こうで、水道屋が黙々とシャワーの修理に勤しんでいた。
ポテンテは呆れ顔で少尉に言った。
「そんな監視されてたら水道屋さんも落ち着いてやれんだろうに」
「あたしはあたしの仕事をしてるだけさ」
水道屋が振り向き、お構いなくというように軽く会釈した。渋面のポテンテは続けた。
「ちょっと神経質に過ぎるぞ、少尉」
「神経質なくらいがちょうどいいんだよ」
枠少尉は作業を続ける水道屋から片時も目を離すことはなかった。

1時間後。

ポテンテの家を出た水道屋は、背後の扉を閉めると同時にスッとその穏やかな表情を消した。元の顔に戻った偽の水道屋は踵を返すと、アパートの通路を歩きながらポテンテの護衛との邂逅を振り返るのだった。銃を突きつけられたあの瞬間、振り払おうと思えばそうすることはできたろうが、自制して正解だった。近接格闘の自信がないわけではない。だが、あのタフな護衛にそれを挑むはやはり分が悪い。それに…。偽の水道屋は工具箱を一瞥した。二重底がああもたやすく見破られようとは。それなりの観察力もあるわけだ。
“薔薇”がぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoから受けた本来の命令は、「猫めの護衛の腕を確かめよ」「可能ならついでにシャワーに『沸騰コーヒー』を仕込んで来い」、というものであった。しかし慎重なこのぎ印SD要員は、ポテンテの護衛に関する手持ちの情報の少なさを鑑み、あえて任務を敵情視察に絞り、“沸騰コーヒー”というサブクエストは外したのだった。結果、その判断は正しかったことが証明された。たとえ護衛が二重底を見抜けなかったとしても、あの監視下で仕込みなんぞできるわけがない。
欲をかかずとも十分な成果じゃないか。ぎ印ドイツ帝国のスパイは満足げに微笑むと、アパートの階段を足早に下るのだった。

枠少尉はカーテンの隙間から通りを見下ろし、やがて現れるであろう水道屋の姿を求めていた。少尉の後ろでは、部屋の主がキョロキョロしながら探し物の真っ最中であった。
「少尉、少尉。赤いポットはどこにあるんだろう?」
護衛兼当番はぶっきらぼうに言った。
「さっきの水道屋にあげたよ」
「(゚Д゚)ハァ?」
「数々の非礼のお詫びさ」
ポテンテはカンカンだった。
「詫びなら他に方法があるだろ。あれは私のポットだぞ!」
「知ってる」
「どうする気だ。紅茶もコーヒーも飲めないぢゃないか。私のポットを返せ!返せ!返してくれ!」
「水でも飲みな」
工具箱と赤いポットを小脇に抱えた水道屋が通りに現れた。少尉は身を乗り出し、その行く手を目で追った。そして依然わめいてるポテンテを手で制しながら言った。
「補佐官、さっきの水道屋だけどね、あいつぎ印の回し者だよ」
ポテンテは拳を振り上げたまましばし絶句した。
「…そんなバナナ」
「多分ソーダ。シャワーに沸騰コーヒーでも仕込みに来たのかと思ったけど、そうじゃなかったみたいだね。目的はわからない。あたしの存在を確認したかっただけなのかも」
ポテンテはまた腹が立ってきた。
「Guicho Zurdoの刺客と知って、なぜ確保しなかった?」
通りを歩く偽の水道屋の後姿を眺めながら、枠少尉はにやりとした。
「本性を現すチャンスはいくらでもあったろうに、徹頭徹尾水道屋を演じていたからさ。そのプロ根性に、あたしなりに敬意を表してやったんだな」
「余計な駆け引きするんじゃないよ!沸騰コーヒーを浴びるのは私なんだぞ!また奴が来たらどうすんだ」
少尉はかぶりを振った。
「もう来ないよ。仮に来るとしても、今日みたいな直接的なアプローチはないだろうね」
「なぜそう言い切れる」
「あたしのメッセージを読み取る頭くらいあろうからさ。…ああ、あんたのお気に入りのポットにそれを添えといたんだよ」
「そのメッセージってのはいったい?」
「あんたは知らなくてよろしい」
「ぐっ…」
この軽い屈辱感をいくばかでも癒すべく、ポテンテは話題を変えた。
「…それにしても少尉、なぜ奴の正体を?」
「あたしがわかっていればそれでよろしい」
「なんだケチンボ!」
少尉は遠くに消えつつあるぎ印ドイツ帝国からの回し者を眺めながら、その邂逅の瞬間を思い出していた。水道屋のフリは問題なかった。だが、銃口を前にして眉ひとつ動かさないタフな水道屋などいるものか。豪胆は時としてキャラを損なう諸刃の剣。あたしも気をつけよう…。
やがて通りの曲がり角で、偽の水道屋は姿を消した。それを見届けた枠少尉は静かに窓辺を離れた。ふとテーブルを見ると、ポテンテ補佐官が背中を丸め、水を飲んでいた。

“薔薇”はシュプレー川のほとりのベンチで昼食を摂ることにした。膝にナプキンを広げ、工具箱の隠し扉を開き、サンドウィッチを取り出した。薔薇は、ポテンテの護衛がくれた赤いポットを改めて見やった。ランチに合うよう、中身はコーヒーにしたと言っていたか。敵からの思わぬ差し入れ、ありがたくいただくとしようか。
手にした紙コップにポットのコーヒーを注ぎ始めた瞬間、薔薇は危うく飛び上がりそうになった。ポットから出てきたのは、凶悪な沸騰コーヒーだったのである。その悪意に満ちた液体は「ぐつぐつこぽこぽ」と縦横無尽に暴れ、紙コップをあっという間に溶解させ、地面に流れ拡がってなお沸騰し続けていた。
もうもうたる水蒸気をしばらく呆然と眺めていた薔薇であったが、やがてそこに込められたポテンテの護衛からのメッセージの意味を解すと、クックと静かに笑い出した。そうか。そういうことか。私の正体はバレバレだったというわけだ。あの護衛、取り柄は体格だけではなかったようだ。
枠少尉からの沸騰コーヒーにはいくつか無言のメッセージが込められていた。ひとつは偽の水道屋は見抜いていることを知らせる意図と、もうひとつは自分がいる限り沸騰コーヒーの手は通用しないという宣言と、そして、今度余計な真似をしたらただではおかないという警告の意味とであった。
自分は単に見逃されたのか、あるいは本国へのメッセンジャーとして泳がされたのか、薔薇は判じかねた。いずれにせよ、ポテンテの護衛との接触は一見成功と思われたが、実のところは失敗もいいとこだったのである。薔薇は首を振りつつ苦笑した。
さて、本国への報告はどうしたものかな。薔薇は自分の失態をそこに記すべきかしばし逡巡したが、結局正直に報告することに決めた。下手な見栄を張ってまた直接対決など命じられたらたまったものではない。
薔薇は未だふつふつ唸り、じゅうじゅうと蒸気を上げる地面を蹴り、危険なコーヒーに砂をかぶせ、沈黙させた。そして鼻歌混じりに再びベンチに腰掛けた。完膚なきまでの敗北というのは逆に清々しいものなのだな。そんなことを思いながら、ぎ印SD要員は遅めのランチを摂りはじめるのだった。


―――ベルリン、総統官邸

「閣下、“薔薇”からの報告です。『とりあえず目的は達成された』とのことです」
側近ゴルビ犬は要点だけ抜き出し、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoに伝えるのだった。総統閣下はにやりとした。
「どうだ。うまくいったろ?猫めはヒイヒイ言っておったか?」
犬は怪訝な顔をした。
「『シャワーから沸騰コーヒー大作戦』のことですか?それははじめから実行の予定にはありません」
「なんでやらんのじゃ」
ゴルビ犬は憤怒の総統閣下をなだめた。
「黒猫の護衛の正体がはっきりしてない段階、フル装備で破壊工作は無謀に過ぎると判断したのです。薔薇の判断は賢明でしたよ、実際、彼奴の護衛は秘密ボックスの二重底を見抜いて中を調べたそうです」
総統閣下は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「ふん、薔薇め。それは慎重ではなく臆病というのじゃ。…まあよい。して、猫めの守護神とはいったい何者なのだ?」
犬は再びメモを目にした。
「要約すると、『力押しで挑むは愚の骨頂、知恵もそれなりに回る』相手だそうです。国防軍の少尉で、女性であると。残念ながら名前までは不明です」
「女だと?ぬう、猫め。世界中に隠し女を作りおってからにうらやましい奴だ」
「そういう問題ではないかと…」
「まあよい。で、その護衛の女は厄介な存在になろうというわけだな?」
「はい。かなりの脅威になるかと」
「ぬぅ…」
ゴルビ犬は恐る恐る付け加えた。
「…閣下、ひとつ悪い知らせもございます」
「なんだ」
「今回の潜入調査において、“薔薇”は件の護衛に恐らく自分の正体を見抜かれたろうとのことです」
Guicho Zurdoは眉をしかめた。
「なんじゃその失態は。身元が割れてはもう隠密作戦はパアではないか。犬よ、奴のこの失点はでかいぞ」
犬は自分が送り込んだ部下の擁護に徹した。
「薔薇は優秀なエージェントです。今回は向こうがさらに上手だったと考えるべきでしょう。いずれにせよ黒猫にあの護衛が付いている以上、直接的な作戦は困難です」
「ふん。…薔薇はどうする。こちらへ呼び戻すか?」
「その必要はないでしょう。奴の変装術は多羅尾伴内よりも豊富かつ完璧です。直接的な作戦遂行はもう無理ですが、後方支援で活躍の場は十分に残ってます」
「ではこれからどうするんじゃ」
犬はピッと指を立てた。
「閣下、直球で仕留められぬなら変化球で臨めばよいまで。力には知で制するが吉です」
総統閣下は身を乗り出した。
「妙案でもあるのかね」
「あるいは猫にはネコ科、それも格上のネコ科で制する、というのもありましょうか。閣下、既に白羽の矢は立てております。…教授、入りたまえ」
ゴルビ犬が振り返り合図を出すと、執務室の扉が開き、ひとりの虎が入ってきた。虎は静かに歩み出ると、偉大なる総統閣下の前で威儀を正した。やがてゴルビ犬が紹介した。
「私は彼女なら何かよい手が打てるものと確信しております。ご紹介しましょう、feti虎(こ)教授です」


本を愛でる教授~2007年5月3日

ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、値踏みするようにその虎を上から下まで眺めやり、やがて口を開いた。
「…ふん。見たところ、軍関係とも諜報関係とも思えんが。ぎ印党のバッジもしとらんわい」
feti虎(こ)はにやりとした。
「はい。私の本職はソウル大学文学部反日思想学科の教授です。普段は月の見える櫓にて教鞭を執っておりますが」
偉大なる総統閣下は見る見るうちに不機嫌になった。
「なんじゃそれは。まるで畑違いではないか。おい犬よ、ミスキャストにもほどがある。文民に何ができるんじゃ。連れてけ」
ゴルビ犬はあわてて総統閣下を制した。
「お待ちください閣下、彼女は黒猫をよく知っているのです」
総統閣下は目を細めた。
「そうなのか?」
feti虎は薄く微笑んだ。
「腐れ縁、とでも申しましょうかね。閣下よりは長い付き合いになります」
「それに…」
犬が割って入ってきた。
「今や力押しでどうにかなる状況ではないのです。知で臨むなら彼女ほどの適任者はほかにおりません。さらに、彼女はザッパの発見・摘発に定評があります。もちろんケースは違いますが、この慧眼は今後何かと役に立つのではないかと」
「ザッパ?フランクかね?」
「そっちのザッパではありません。世の中には悪いザッパが存在するのです」
総統閣下は腕組みし、社長椅子の背もたれに身体を預けた。
「よくわからんが、…むう、feti虎といったか。やれるのか?」
教授は薄く微笑みながら言った。
「私のやり方でやらせてもらえるのなら」
しばしの沈黙の後、やがて総統閣下は言った。
「よし、いいだろう。方法はお前に任す。差しあたって必要なものはあるかね?」
「移動の手段が要ります。自転車をご用意ください」
「裏庭のママチャリは自由に乗ってよい」
「論外です。Roverでお願いします。ただしデフォでは駄目です。カスタム化が必要なので、こちらの品を揃えてください」
feti虎は自転車のカスタムパーツのカタログと見積書を総統閣下に差し出した。閣下の眉間に深い一本皺が刻まれた。
「なんじゃこれは。たかが自転車になんでこんなに金がかかるんじゃ」
「より快適に乗るためです。快適な自転車の旅は快適な作戦行動を意味します。さらに快適な作戦行動環境はその成功の可能性をより高くするのです。ついでに言えば、自転車は馬よりははるかにお買い得です」
Guicho Zurdoはしばらく渋い顔で見積書の額を睨んでいたが、やがてため息と共に頷いた。
「………よかろう。で、他には何が要るんじゃ?」
「浅田次郎の書籍を数冊」
「それは何に使うのだ?」
「空いてる時間の読書に充てます」

ひゅうううぅぅぅ………。

総統閣下と虎との間に、冷ややかな風が流れた。ゴルビ犬は所在なげに両者の間をそわそわした。
「…それは、任務とは関係ないようだが?」
「はい、まったく関係ありません。ただ今、私の中で浅田次郎読みまくりキャンペーンが実施中なので」

ひゅうううぅぅぅ………。

ふたりの間に再び冷ややかな風が流れた。この微妙な空気を打破せんと、ゴルビ犬は必死になって言葉を探した。犬が言葉を見つける前に、総統閣下が沈黙を破った。
「…そのキャンペーンは間接的にせよ、任務の遂行に何か役に立ちそうかね?」
「まったくないでしょうね。私が読みたいというだけです。ついでに申せば、書籍費が家計を圧迫しておりまして」

ひゅうううぅぅぅ………。

三者の長い長い沈黙の後、feti虎教授は小さく肩をすくめると穏やかに言った。
「ご用意できないのなら私の出る幕はありませんね。ケチンボなおふたりがどうにかこの難局を凌げることを切に願ってやみません。それではごきげんようさようなら」
教授はくるりと踵を返した。背後から総統閣下の声が飛んだ。
「待たんか教授」
ちらりと振り向いた教授の目に、紙とペンが差し出された。総統閣下は大きく息をつくと、諦観の口調で言った。
「必要なものをリストにしてそこに記せ。ただしなるべく安上がりにな。今月はわしも苦しいのだ」

feti虎教授は総統閣下に嫣然と微笑みかけると、紙とペンを受け取り、膨大な「欲しいものリスト」の作成に取りかかるのであった。

つづく。

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