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Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その5) 

今回より趣向を変えて物語調へ。

経過はコチラにて。


Guicho Zurdoはかく語りき~1940年12月4日

黒猫ポンセは、自分がぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoに呼び出された理由が何なのか、おおよそ察知していた。目下の懸案は対ソ戦である。恐れていた冬を迎えてしまった東部戦線をこれからどう凌ぐか、閣下はまだ決めかねているのだろう。ええい、閣下は何を迷っておられるのだ。普通に考えれば、過酷な冬将軍の真っ只中で侵攻をかけようなど愚の骨頂だ。もちろん赤軍どもの反攻はあろうが冬季はあくまで防戦に徹し、雪解けの日までじっと待つのだ。そして満を持しての春季大攻勢でモスクワを落とし、あのグルジアの筆髭オヤジをウラル山脈の向こう側に追っ払うのだ。これ以外に何があるというのか。
閣下が何をお考えなのかは知らないが、この己が論だけは譲るわけにはいかぬと、ポンセは固く心に誓うのだった。そうして彼は意を決し、かのアドルフ・ヒトラーをも傀儡として操るGuicho Zurdoの執務室に足を踏み入れたのだった。

謎の総統閣下は窓外の雪を眺めていた。ポンセの入室に彼は頷き、ソファーを指し示した。ポンセが座るのを見届けた総統は窓際から離れ、乱雑なデスクの周りをウロウロしつつ話を切り出した。
「バルトの楽園はどうだったね?」
「は。寝坊とキノコと発熱の忘れ難い旅になりました」
「何か旅の思ひ出は残したかね?」
「ええ。メーメル川のほとりでぎ印ドイツ帝国歌を斉唱してやりましたぜ。ウェーハッハッハ」
「今度その笑い方をしたら処刑する」
「は…」
「さて、君をここに呼んだ理由はほかでもない。冬を迎えた東部戦線の件だ。君がかねてから主張しているように、冬季は防戦に徹し、春季大攻勢をもって決着をつけよというその論、わしもそれは正しいと思っている」
黒猫ポンセは安堵のため息を押し殺した。緊張が解け、深々とソファーに沈む自分を感じた。
「…しかしだ、これまでわがぎ印帝国軍は常に先手必勝を旨としてきたことを思い起こすがいい。ポーランド、デンマーク、オランダ、ベルギー…。われわれは常に相手に先ずることで勝利を重ねてきたのだ」
ポンセの安堵が凍りついた。
「ちょっとお待ちください。この時期にロシアの奥深くに攻め入ることがどれだけ無謀なことか、閣下もよくおわかりのはずです。かつてあの冬将軍を前にナポレオンが敗れ、ヒトラーも屈した歴史というものを閣下も知らぬわけではありますまい。よもや同じ轍を踏もうなどと…」
「ポンセよ、わしは心配なのだ」
「もちろん赤軍の反攻はありましょう。しかし、わが軍はそれを堪えるだけの底力は有しているはずです。敵とてT-34はまだ投入できますまい。われわれは急ぐことはないのです。春の訪れまでお待ちください」
総統は歩みを止め、ポンセを正面から見据えた。
「違うのだ。わしが言ってるのは軍事のことではない」
「は?」
「君の言う冬季防戦&春季大攻勢論には私も賛成なのだ。しかしわしは迷信深い男でな。ゴッドファーザーよりも迷信深い男なのだ。だからわしは朝起きて首が痛いのはイギリスのせいだと思っているし、ポッケに入れたタバコが折れているのは南アフリカの陰謀だと考えておる。階段で足の小指を強打して涙目になったのは自由フランスの策略と信じて疑わないし、夕飯の焼き鮭の塩気がきつかったのはオマーンの仕業に違いないと決めてかかってる。わしがそう考えてしまうのは、それもこれもわしが迷信深い男だからだ」
「…はあ」
「こんな迷信深いわしだから、日付についても非常にこだわっておる。わしはカレンダーの赤口だの大安だの、そういうことはわからん。しかし迷信深いわしとしてはクリスマス前にモスクワが落ちてないのは何とも落ち着かないし、お正月前にレニングラードが陥落しないのは悪い前兆のような気がしてならん。節分前にスターリングラードが確保されないのは非常に縁起が悪いことと考えるし、ひな祭りまでにバクーが占領されないのはきっと不吉な知らせがあるに違いないと夜も眠れなくなるのだ。だからポンセよ、お前の主張は非常によくわかるのだが、ドン・コルレオーネ以上に迷信深いわしとしては、ここで前進命令を出さぬわけにはいかんのだよ」
ポンセは頭がぐらぐらしてきた。なんだこの根拠は。星占いよりタチが悪いではないか。そして追い討ちをかけるように、総統閣下は言い放った。
「ついでに言うとだなポンセよ、お前は戦争経済というものを知らんようだ」

黒猫ポンセは総統閣下の背後に、手漕ぎボートの影を見るのだった。


雪原の狐~1940年12月5日

テントの外に出たエルヴィン・ロンメルは、ハリコフの雪原を踏みしめながら考えていた。なぜ私はここにいるのだろう。本来であらば、私は“砂漠の狐”として灼熱のアフリカ戦線で英軍を震え上がらすはずなのに。それがこの極寒の地で冬を迎えようとは…。
思案顔のロンメルを、共闘する“火消し屋”ヴァルター・モーデルが見咎めた。
「浮かぬ顔してどうした。史実と違う布陣が気になるかね。しかしそれを言い出したらキリがないぞ。ルントシュテット元帥が今どこに配置されてるか知ってるか。スペインのマジョルカ島だぞ。マジョルカ島。そんな歴史があるかね。ん?」
「それはそうなのだが…」
「いずれにせよ、こうして冬が訪れた以上はしばらくのんびりできる。少なくともぎ印の閣下はチョビ髭の駄目伍長よりは定見ある方だ。よもやこの冬将軍の中を進めなどとは言うまいて。赤軍の突っつきはあろうが大したことはない。ゆっくり構えて、このハリコフでクリスマスと新年を迎え、春まで長らくの休養だ。元気出せ」
「まあな…」
その時、伝令がベルリンからの電文をロンメルに手渡した。短い電文を読んだロンメルがみるみる硬直した。その異変に気づいたモーデルが尋ねた。
「何と?」
ロンメルは引きつった笑顔で振り向いた。
「誰が定見あるお方だって?」
電文にはこうあった。

「我、『雪原ノ狐』ノ奮闘ニ期待セリ。進撃セヨ」



同日、極寒の中、東部戦線のぎ印ドイツ帝国軍は一斉に進撃を開始した。その兵士たちの悲鳴は、ベルリンのGuicho Zurdoの耳には一向に届かないのであった。

そして黒猫ポンセは、忘れかけていたボート漕ぎの勘を取り戻すべく、シュプレー川に繰り出していた。

つづく。
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