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Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その8) 

経過はコチラにて。

※同時進行の戦線が複数ありますので、時間軸が多少前後する場合があります。


バルトの失楽園~1942年2月4日-13日

イギリス海峡西部におけるアメリカ海軍との戦いの敗北がもたらしたその暗雲は、ぎ印ドイツ帝国軍全体に暗い影を落とすのであった。
海戦と直接的な因果関係はないにせよ、その2月4日、ファイユーム攻略の指揮を執っていたヴァルター・フォン・ライヘナウ死亡の報がベルリンを襲ったのである。しかもその死は戦闘によるものではなく、史実通り不慮の事故によるものであった。このライヘナウの命運を知ったぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、もし将軍たちの命運がライヘナウのように史実通りに向かうのであらば、いずれテオドール・アイケやエドアルト・ディートルもその歴史の必然に身を預けることになるのかと暗澹たる思いになるのだった。数多の戦いを経て、両将官とも今や戦闘には欠かせない人物と成長していたのだ。それを失うことになるとすれば痛い。かなり痛い。
戦線もまたどんよりとした暗雲に覆われていた。東部戦線は二度目の冬将軍を迎えており、戦いには勝てどその進軍速度は目に見えて低下した。そして雪こそないものの、アフリカ・中東戦線では悪路にその行く手を阻まれていた。各戦線のぎ印ドイツ帝国軍は結果的に前進はしているわけだが、過去の電撃侵攻に比べればそれは膠着に等しい遅々とした歩みであった。
悪いことは重なるものである。2月12日、トゥール、ノヴゴロド、ヤロスラヴリ、ソルタヴァラ、コストロマ、ノヴォウゼンスク、ヴォロネジ、スヴォボダ、サランスクでパルチザンどもが一斉蜂起。その叛乱の火の手は瞬く間に隣接プロヴィンスに拡がり、さながら反ぎ独フェスティバルの様相を呈していた。その鎮火には治安維持のために残されていたハイスマイヤーの部隊が奔走することになったが、追っては叩き、沸いては叩きのしらみつぶし作戦を展開するハメとなった。

今やぎ印ドイツ帝国のすべての動きが鈍化したのである。

そんな中、ベルリンの総統官邸の執務室では、黒猫ポンセが総統Guicho Zurdoと向き合っていた。総統の傍らにはポンセと同じく参謀のゴルビ犬が控えている。
ポンセは先ほどの総統閣下の命令の意味を問うた。
「閣下、私にはエストニアとリトアニアを独立させる理由が解せません。今なぜそれが必要なんです?目的はいったい何です?」
総統Guicho Zurdoはその問いに淀みなく答えた。
「わしらの領土は確かに拡大してるが、あまり肥大化しすぎても手に余るでな。国土の膨張はすなわち統制の低下を意味する。統制の低下はレジスタンスの活発化を誘発する。現にそれは起きているではないか。しかも新たな敵が増え戦線が拡大の一途を辿る中、さして戦略的に重要でもない地域に兵を割いて駐屯させておくのは実にもったいない話じゃ。自治さえ与えればおとなしくするというならわしはそうする。属国に甘んじるとはいえ、独立は独立だしな。それで満足するなら奴らの好きにさせてやろうということじゃ」
「もっともらしい説明ですが、何か腑に落ちませんね。なぜそれをエストニアとリトアニアという微妙な国に与えるんです?ポーランドには?デンマークは?」
総統閣下は慈しみの微笑をポンセに向けた。
「お前もわからん男だなポンセよ。もちろん国力を鑑みればポーランドあたりを独立させた方がはるかにお得なのはわしも知っている。だがお前はかねてからリトアニアは心の故郷と公言してはばからないではないか。だからわしはあえてリトアニアを選んだ。お前のためにわしはリトアニアを選択したのだよ。ついでにエストニアも独立させてやれば、これでバルト三国が甦るではないか。お前の大好きなバルトの楽園再びじゃ。すべてはわしの親心じゃ。わしは部下思いのやさしい独裁者なんじゃ」
ポンセは総統閣下の優しい微笑を無表情で撥ね返した。
「失礼ですが閣下、あなたにそんな侠気はないはずだ」
総統閣下はそれでも微笑みを絶やさなかった。
「これはちょっと早めのクリスマス・プレゼントなんだな、うん」
「閣下、本当の理由を」
総統閣下の微笑が消えた。
「よく聞けポンセ。すべてはグルジアの筆髭親父がいけないんじゃ。レニングラード、スターリングラード、果てはモスクワが陥落してなお万歳しないグルジア野郎がいけないんじゃ。わしらの兵がまたもや冬将軍に悩まされているのは奴のせいじゃ。ソ連が無駄に広いのも奴のせいじゃ。戦線がのびのびになったのも奴のせいじゃ。ここにきてパルチザンどもがポコポコ出てきたのもすべては奴のせいなんじゃ。だからわしは個人的にスターリンめに嫌がらせをしてやることにした。もはや戦略云々ではない。わしは超個人的に筆髭親父に嫌がらせをしてやるんじゃ。奴が手にした領土をわしが奪ってわしが独立させてわしの手下にしてしまうんじゃ。奴が一番恐れる連邦解体をわしの手で実行してやるんじゃ。その手はじめがリトアニアとエストニアじゃ。民族自決権なんぞ知らんわい。わしはわしが満足するためにバルトを独立させるんじゃ。そしてスターリンめはその崩壊のプロセスを遠巻きに見ながらなーんも手が出せんというわけじゃ。うわーっはっはっは」
ポンセは激昂した。
「つまらぬ私情で一国の命運を弄ぶとはいったい何事ですか!」
「何を言うか。これは私情ではない。私怨じゃ。わしはわしの恨みを晴らすためにそうする。スターリンめを困らせたいんじゃ。ヒイヒイ言わせてやりたいんじゃ」
「帝国千年の計を成さんとする人間がそんな狭い了見とは情けない!」
「ふん、わしは既に6年余を統治しているわい」
「1%にも達してないでしょうが!」
総統閣下はふかふかソファーの背もたれに身を預け、傍らのゴルビ犬の方を振り向き、尋ねた。
「さてゴルビ犬よ、お前はわしの処断をどう思うか」
ゴルビ犬は恭しく総統閣下に頭を垂れ、言った。
「閣下が愛読されている『ゴッドファーザー』において、マイケル・コルレオーネはこのような趣旨のことを言っています。『すべての営みは私的なものであり、すべての行為は私的な動機に基づく』と。閣下はそのコルレオーネ・ドクトリンを見事実践されたのです。頂点に立つ者が頂点に立つ者の言を実現化されたのです。これを偉大と言わずしてなんとしましょうか」
ゴルビ犬の賞賛の言葉に、総統閣下はいたく感動するのだった。
「うむ。犬はわしのことをよくわかっとる。やはり犬は人間の最良の友じゃ。猫とは大違いじゃ」
黒猫ポンセがゴルビ犬を睨みつけながら言った。
「閣下、いい加減目を覚まされたらどうです?その犬の甘言に弄され、われわれはひとつの艦隊を失い、ひとつの潜水艦隊に致命的な打撃を受けたのですぞ」
総統閣下は聞く耳を持たなかった。
「黙れ。それと引き換えに敵の重巡を3隻も轟沈せしめたではないか」
「代償が大き過ぎるでしょうが!」
「いいからさっさとリトアニアとエストニアと独立させんか。わしはこれから犬の散歩じゃ」

その日の午後、シュプレー川で手漕ぎボートの訓練に勤しむ黒猫ポンセのオールを漕ぐ手は、いつになく力が入っていたという。

2月13日、リトアニアとエストニアは独立と同時にぎ印軍事同盟の軍門に下り、その旗の下、連合をはじめとする数多の国々に宣戦を布告するのだった。


World War~1942年4月30日-5月8日

ぎ印ドイツ帝国のポーランド侵攻から端を発したこの戦争は、今や全世界を巻き込んだ一大カオスと化していた。

ぎ印枢軸国:ぎ印ドイツ、スペイン、ハンガリー、ルーマニア、アイスランド、ノルウェー、アイルランド、エストニア、リトアニア
連合国:イギリス、フランス、オランダ、ベルギー、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、リベリア、ペルシャ、イラク、イエメン、オマーン、ネパール、ブータン、フィリピン
共産国:ソビエト連邦、モンゴル、タンヌ・トゥヴァ
その他交戦国:メキシコ、パナマ



そしてそのカオスは時として思わぬ国の思わぬ行動を誘発する。4月30日、失った領土を取り戻さんとしたのか、あるいは冬戦争の復讐か、はたまたぎ印ドイツ帝国に蹂躙されたソ連に明日はなしと踏んだのか、フィンランドが突如ソ連に宣戦を布告するのである。それをフィンランドのぎ印軍事同盟加入の意思表示と考えたGuicho Zurdoは満面の笑みで北欧からの使者を待つのだが、それは一向に現れることはなかった。業を煮やした総統閣下はならばと逆に使者を派遣し、ぎ印同盟への加入を持ちかけるのだが、それはあえなく断られてしまう。フィンランドはこの冬戦争ならぬ春戦争を、自分たちの戦争と見なしていたのだった。負けが込んでいるとはいえ、大国ソ連に噛み付くその根性、さらには火事場泥棒的な図々しさ、中堅以下ながらフィンランド侮り難しとGuicho Zurdoは考えた。いずれどうにかせねばならぬ日が来るのかも知れない、と。
侮り難いのはフィンランドだけではなかった。今やぎ印同盟軍のみならずフィンランドも相手にしなければならなくなったはずのソ連が、5月8日、なんと日本に宣戦布告するのである。
これだけ圧されてなお新たな敵と戦う余力を残すソ連、Guicho Zurdoはその底力に驚愕すると同時に、東部戦線の終わりはまだまだ遠いことを悟るのであった。しかもその終幕を勝利で飾れる保障はどこにもないのだ。


Forword, go! go! go!~1942年4月12日-6月2日

アフリカ、中東方面に展開するぎ印軍団は、悪路に悩まされながらも、なんだかんだで進撃を続けていた。イラクはバクーからの侵攻軍とテルアビブからの侵攻軍の挟撃作戦の前に、首都バグダッドをはじめ次々と拠点を失い、4月12日、クウェートの護りに就いていたイギリス軍の全滅を受け、ついに降伏する。そして密かに立案されていたアラビア半島制圧作戦(ただしサウジアラビアを除く)が実行に移され、空挺部隊がマスカットを急襲、これを制圧する。さらにテルアビブ攻略作戦から切り離された別働隊がスエズ運河から紅海を縫ってアラビア海に抜け、海沿いに面したプロヴィンスを次々と確保して逝くのだった。
5月10日、戦争状態にありながらも実態として軍など皆無に等しいオマーンが降伏。6月2日には辛抱強く山岳地帯をクリアしたペルシャ侵攻軍が、ついに同国を陥落させたのだった。
ペルシャの降伏を見届けた侵攻軍はその後二手に分かれ、一方は南方からソ連領の中央アジア地域を詰め、一方はカラチに落ち延びたイギリス政府を叩くべくそのまま東方への進軍を続けた。それは事実上の「インド・パキスタン攻略作戦」の幕開けであった。

この果てしなく拡大の一途を辿る戦線に危惧し、黒猫ポンセは総統閣下に進言するのであった。後でも成せることを今急ぐことはない、戦線の延びに対しての防衛力が脆弱であり、これ以上の東進は敵の侵入を容易にさせる危険を孕む、と。しかしGuicho Zurdoはたゆまぬ攻撃こそ最大の防御、今叩かぬは後の敵の回復を意味する、インドがわしを呼んでいる、と言って聞かなかった。黒猫ポンセは、そんな総統閣下の主張の影に犬の存在を敏感に嗅ぎ取るのであった。ゴルビ犬が総統閣下にまた余計な進言をしたのは間違いなかった。
もはや自分の話を何ひとつとして聞かなくなってしまった総統閣下にポンセは失望していた。しかしその失望の一方で、ある考えがポンセの脳裏をよぎった。それは途方もない考えであり、大胆極まりない発想であった。一瞬でもそんなことを考えた自分自身にポンセは驚き、すぐに打ち消そうとするのだが、それはいつまでもポンセの頭にこびりついて離れないのだった。


陽はまた昇る~1942年7月18日-8月13日

7月18日、戦闘行為は結局ひとつもないまま、「元の状態への復帰」を条件にメキシコがぎ印ドイツ帝国に和平を打診した。断る理由はないとしてGuicho Zurdoはそれを承認。ぎ印ドイツ帝国はメキシコとの和平合意に至った。
その後を追うように8月8日、パナマもまたぎ印ドイツ帝国との和平を望み、今度もGuicho Zurdoはそれを受諾した。
5日後の13日にはイギリス政府の遷都先であるカラチを総力戦で陥落させ、チャーチルは再び遷都を余儀なくされた。さらに同日、イエメンが降伏した。

ここにきてぎ印ドイツ帝国はにわかに活気付いていた。Guicho Zurdoは脇にゴルビ犬を従え、並み居る将軍たちを前に戦略とは何か、政治力とは何かをとうとうと語るのである。ゴルビ犬は総統閣下の言葉を一言も聞き漏らすまいと熱心に耳を傾け、将軍たちもこの明るい兆しは本物かも知れぬと、いつになくGuicho Zurdoの辻説法に聞き入っていた。ただひとり、黒猫ポンセだけが心ここにあらずといった感じでぼんやりと窓外の風景を眺めていた。2月ほど前に頭に浮かんだあの考えが、ずっとポンセの心の片隅を支配していたのだった。
果たして私にそれが可能なのだろうか…。ポンセがその考えを実現化することを躊躇するのはそこにあった。彼はまだ自信がないのだった。
どっと笑い声が沸き起こり、黒猫ポンセは現実に引き戻された。どうやら総統閣下がお得意の独裁ジョークを言ったらしい。いつもはお追従で無理に笑う将軍連も、朗報が続く今日ばかりは本気で笑っているようだ。総統ジョークを笑いそびれるという失態を犯したのは黒猫ポンセただひとりであった。そんなポンセを抜け目ないゴルビ犬が見逃すわけがなく、ポンセはゴルビ犬が総統閣下に何やらそっと耳打ちするのを見た。それを受けて総統閣下がじろりとポンセを睨んだ。糞犬め、心の中でポンセは毒づいた。
…もしいつの日か、私が行動に移さねばならない時が来るのなら、その時必要なものとはいったい何なのだろう。ポンセは再び沈思した。…それはいくらかの勇気と、いくらかのPCスペックと、いくらかのお小遣いだ。ポンセはそう結論付けた。内ふたつの条件は既にクリアしている。私に必要なのは、そう、勇気なのだ…。

再び将軍たちの笑い声が沸き起こった。黒猫ポンセはまたもや総統ジョークを笑いそびれるのだった。


寒い国から来た特使~1942年11月5日-6日

11月5日、Guicho Zurdoとぎ印ドイツ帝国に、戦争がはじまって以来最大の朗報がもたらされた。
ぎ印ドイツ帝国のみならず、フィンランド、大日本帝国、果てはルーマニアにまで国土を蹂躙されたソ連が、残された領土だけでも守るべく、ついに条件付きでの和平を求めたのである。それはスターリンとソ連にとっては、事実上の降伏に等しい選択であった。
三度目の冬将軍を迎えることになるのかと頭を抱えていたGuicho Zurdoにとってそれは願ってもない話であり、スターリン直筆の親書を携えた使者をニコニコ顔で出迎えるのだった。総統閣下は完全征服の選択など目もくれず、講和条件を受諾する旨をスターリンの使者に伝えたのである。そしてその報は全世界を駆け巡り、大日本帝国をはじめとする他の交戦国もそれに倣い、一斉にソ連に向けた銃を下ろすのだった。
長らくの対ソ戦はここに終結した。ぎ印ドイツ帝国はソ連領の西側を、大日本帝国は東側を獲得し、ソ連本国は領土を1/3に縮小した上に、強大な両帝国に挟まれて細々と共産主義国家の運営を続けていくことになる。
Guicho Zurdoが心から憎んだ宿敵、グルジアの筆髭親父ことヨシフ・スターリンは失脚してどこぞへと消えたか、消されていた。その行方を知る者は誰もいなかった。新生ソビエト連邦の政府首班には外相のヴャチェスラフ・モロトフが収まった。

いずれにせよ、泥沼の東部戦線、悪夢の対ソ戦はぎ印ドイツ帝国の勝利をもって終結したのである。

ベルリンの総統官邸は歓喜に包まれていた。テーブルにはシャンペンとキャビアが並べられ、Guicho Zurdoはこの偉大な勝利についてフィデル・スカトロもといカストロに負けずとも劣らずな長演説をぶった。その後の祝賀会も紫煙と熱気と将軍たちの談笑で溢れ、遅れてやってきたフォン・パウルスにゲーリングが事の次第を満面の笑みで説明し、ヒムラーがハイドリヒを相手に占領地における「飴と鞭」論を冗談交じりに語っていた。そんな将軍たちの間を縫って、黒猫ポンセはようやく総統閣下の元にたどり着いた。
「おめでとうございます、閣下」
総統閣下は振り向き、頷いた。
「長く苦しい戦いだった。正直、わしは勝つ自信を失いかけておった」
「予想以上に頑強でしたからな」
「すべてはスターリンめのせいじゃ。わしはこの恨みを忘れん。なのでわしはこれから奴に壮大な復讐劇を見せつけようと考えている。そこでポンセよ、お前の出番じゃ。直ちにポーランド、ロシア、ベラルーシ、グルジアを独立させよ。ウクライナもそうしたいところなのだが、あいにくルーマニアがウクライナの独立に要するプロヴィンスをいくつか抑えてるので叶わん。無念じゃ」
ポンセは爆発しそうな思いを抑えて反撥した。
「そういう意味のない政治はもうやめませんか?あなたがソ連解体の意味を持たせて独立させたところで、ゲームのAIはそこまで解しませんよ。それにスターリンはもう失脚して表舞台から消えてるんです。いったい誰に復讐しようというんですか」
「AIがわからんでもわしがわかってればいいんじゃ。それにスターリンは消えたというだけで死んだという話は聞かん。仮に粛清されたとしても奴はわしの心の中でまだ元気に生きておる。それが我慢ならんのじゃ。わしはわしをひどい目に遭わせたスターリンめに復讐しないと気が済まんのじゃ。奴の元ソ連をバラバラにしてやりたいんじゃ」
それでもポンセは堪え、説得を試みた。
「閣下、現実的な側面からお話しましょう。どこにせよ、独立を承認する場合、必ず国民不満度が増加するんです。血と引き換えに手にした領土を手放すことを国民は歓迎しないのです。それに他の占領地におけるパルチザン濃度が飛躍的に増加します。さらにはICも労働力も資源の備蓄も低下します。それまではわれわれが占有できた財産も、独立すればその国家のものになりますから。これらの低下は軍需関係にモロに影響しますよ。あまりいいことないんですよ、独立という選択は」
「それでも構わん。やれ」
ついにポンセが爆発した。
「あなたはとことんまでわからない人だ!」
総統閣下は答える代わりに後方を振り向いた。
「ゴルビ犬、こちらに」
すぐさまゴルビ犬が総統閣下の下に駆け寄り、額づいた。
「閣下、ご命令を」
「どうやらこの黒猫君はわしの命令を聞きたくないらしい。なのでお前がやってくれんかな?さっき話した国家どもの独立の件だが」
「御意」
総統閣下は大喜びだった。
「やはり犬はいい。そうじゃ、いつかお前に中央アジアの好きなところをやろう。そこで夢の『ゴルビスタン帝国』を建設するがよい」
ゴルビ犬は感動に打ち震えた。
「は。この上なきありがたき幸せ」
総統閣下はポンセの方に向き直り、言った。
「お前にはそうだな、セントヘレナ島でもくれてやろう」
「いりませんよ!閣下、あなたの選択はすべて間違っている!!」
ポンセは荒々しく踵を返し、いったい何事かと振り向く将軍たちの視線を背に浴びながら祝賀会を後にした。

自宅へと向かう道すがら、黒猫ポンセは固く決意した。総統閣下の定見のなさにはもう我慢ならん、もう迷いはない、今こそ行動を起こす時なのだ。
自室に戻った彼は直ちにPCを起動させ、Googleの検索欄に文字を打ち込んだ。目的の品はすぐ見つかった。長らく価格を比較検討したポンセは目的の品を購入する店をようやく決定し、注文のボタンを厳かに押すのだった。
ブツの到着までは数日かかろうが…。それまでの間に、黒猫ポンセは己が手による新たな歴史の構築をいかな形で成すか、心の中でシミュレートすることに決めた。

数日後、黒猫ポンセの元に注文の品が密かに届けられた。それはスウェーデンのパラドックス・インタラクティブという会社が開発した、「Hearts of Iron・Ⅱ」という第二次世界大戦を舞台にした戦略シミュレーション・ゲームだった。

そしてその日以来、黒猫ポンセはシュプレー川に姿を現さなくなったという。

つづく。
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