スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その11) 

経過はコチラにて。


喜望峰~1943年12月20日-1944年2月13日(黒猫暦:1938年3月15日

ルアージュのパルチザンの鎮圧を見届けたぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、いまいましげに呻いた。
「この抵抗勢力どもめはどうにかならんのかな」
側近のゴルビ犬は首を横に振りつつ答えた。
「原則的に沸いては叩く以外にないようですな。しかし多少なりとも暴動発生率を軽減させる方法はありますが」
「なんだ」
「『消費財』の割り当てを増やすのです」
「ふん。バラ撒き政策で民衆どもの歓心を買えということか」
「欲満たすもの眼前にあらば、人は拳を開くものです」
「愚衆どもめ。…しかしあれだ、フランスあたりの暴動なら近辺の治安部隊でどうにでもなるが、僻地で蜂起されると対処に往生する。もう田舎者どもめはさっさと独立させて自治に預ける方がよかろうて」
「その策もひとつではありますが、国民不満度が高まりましょう」
「25%のラインを超えねば問題はない」
「は。…してどこを?」
「オマーン、イエメン、あとはキプロスだな。手配してくれんか」
「かしこまりました。…ところで閣下、アフリカ南部侵攻作戦はどうなってるのでしょう?」
「もう発動してるよ」
その言葉に呼応するかのように、ぎ印作戦参謀本部から一報が届いた。それはぎ印侵攻軍の第一波が、南アフリカ共和国の海岸都市を急襲したことを知らせるものだった。

1943年12月20日11:00 : 第9軍団がダーバンで上陸を完了


「はじまったようだな」
Guicho Zurdoはモニターに向かい、素早くカーソルをアフリカ大陸南部に向け戦況を確認すると、やがて満足げに頷いた。
「思った通り南アの兵力は乏しかったな。駐留のイギリス軍めが鬱陶しいが、わしらの北部方面からの詰めで分断されとる。あとは時間の問題だな」
「空挺の姿が見えませんが?」
「案ずるな。待機させておる。それも精鋭をな。ディートルのとこだ」
やがて総統閣下お気に入りの部隊の朗報が届いた。

1943年12月28日16:00 : 第72軍団がポートエリザベスに到着


総統閣下はそのつぶらな瞳をマップの北へと向けた。
「北部からの連中も間もなく現れよう」
駐留するイギリス軍を蹴散らし、陸路から南下した軍団が要所プレトリアに到達するのは、年が明けて1週間後のことであった。

1944年1月7日6:00 : 第9軍団がプレトリアに到着


偉大なる指導者、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは両の手の指を重ね合わせ、唇の端を歪めてにやついた。
「クックック。圧倒的じゃないかわが軍は」
空から海から、そして陸から蹂躙される南アフリカ共和国の惨状を見つめながら、ゴルビ犬は尋ねた。
「閣下、コンゴ方面の戦況は?」
「宗主国ベルギーはもはや死んだ」
冷徹に言い放った総統閣下のその言葉は、後の参謀本部からの続報で裏付けられることになった。

1944年1月12日4:00 : 第3軍団がエリザベトヴィルに到着


同日13:00、ベルギーはぎ印ドイツ帝国に併合され、地上から消滅する。

ぎ印ドイツ勢の攻撃の手はまったく緩まず、南ア侵攻第二波、三波の動向を知らせる参謀本部からの報は慌しく続いていた。

1944年1月13日12:00 : 第12軍がケープタウンで上陸を完了
1944年1月13日12:00 : 第6艦隊がケープタウンに到着
1944年1月13日12:00 : 第2軍団がケープタウンで上陸を完了
1944年1月13日12:00 : 第113軍団がケープタウンで上陸を完了
1944年1月14日2:00 : 第5軍がケープタウンで上陸を完了
1944年1月14日2:00 : 第7艦隊がケープタウンに到着
1944年1月14日2:00 : 第41軍団がケープタウンで上陸を完了
1944年1月14日2:00 : 第3艦隊がケープタウンに到着


「他愛ないものですな」
灰色に染められていく南アフリカを眺めながら、ゴルビ犬は静かに言った。総統閣下は腕組みしたまま無言で頷いた。
それからしばらくの間、ふたりはモニターの向こうで展開する作戦行動に注視していたが、やがて総統閣下が尋ねるともなく言った。
「猫めは今どのあたりなのか」
「…アンシュルス(オーストリア併合)のイベントは終わりましたな。それと前段に彼奴は満州の日本軍関係者と協議してます。同地へユダヤ人を受け入れさせるための交渉のようですが、詳細結果は確認されておりません。恐らく今後、彼奴の課題の中心はズデーテンラントの件にシフトしていくと思われます」
ゴルビ犬のその淀みない答えに、Guicho Zurdoは片眉を吊り上げ、モニターから犬へと視線を移した。
「やけに詳しいな」
ゴルビ犬はモニターに目を向けたままにやりとした。
「閣下、われらのスリーパーは今や完全に目覚めて情報収集に勤しんでおります。保険は打って然るべきですな。こんなこともあろうかと、わが手の者を早い段階であちらの世界に送り込んでおいたのです」
「ほほ、犬は賢い。で、その者はゲシュタポかね?」
「所属はSDです。…どうされます?閣下直々に指揮ないし命令されますか?」
「いや、しばらくはお前がやってくれ。ただしわしには些細な情報も回せ。得たものすべてをだ」
「かしこまりました」
総統閣下は再びモニターに視線を戻し、身体を社長椅子の背もたれに預けた。油気の抜けた椅子のパイプがそれに応えてギイと鳴った。
「ふん、猫め。思ったより上手く立ち回っとるわい」
総統閣下が腹立たしげにつぶやいたその時、参謀本部から新たなる報が届いた。

1944年2月8日3:00 : 我が軍がヨハネスブルクで敵軍と交戦


南ア最終決戦だ。総統閣下とその忠実なる側近は、身を乗り出してモニターを食い入るように見つめるのだった。


―――もうひとつのベルリン

ハイドリヒ、伊達に長い顔はしてなかったのだな。
スターリンを陥れ、赤軍将校の大粛清の暴挙に走らせる元になったラインハルト・ハイドリヒ謹製の偽文書を読み終えた黒猫ポンセ、今は総統補佐官カール・ポテンテを名乗るその猫は静かにファイルを閉じた。腰が疲れてるな。ポテンテは貧乏椅子から立ち上がると大きく伸びをし、タバコに火をつけ、窓辺へと向かった。そこからは夜の帳の降りた総統官邸の中庭が見下ろせた。ふたつの照明がクロスし、庭の中心にある噴水を照らし出している。アルベルト・シュペーアの小洒落た演出にポテンテはにやりとした。
春になったとはいえ、外はまだ寒いのだろうな。夜風に踊らされる噴水の波打ちを眺めながら、ポテンテはいつしか常夏のトロピコ島に思いを馳せていた。青い空、白い雲、ラテンのリズム…。かつての日々を思い浮かべながら、ポテンテは自然と微笑んでいた。パイナップルとラム酒、砂浜と椰子の実…。不正選挙にクーデター、暴徒化した民衆に焼き討ちされるマラカニアン宮殿、そして手漕ぎボート…。ハッ、いかんいかん。ポテンテは首をぶるぶると振った。中空を漂う紫煙が大きく揺らめき、数多の渦を描いた。

窓から離れたポテンテはデスクの灰皿にタバコの灰を落とした。ふと脇を見ると、空のコーヒーカップがそのまま置かれ、乾いた茶色い環がカップの底を汚していた。当番め、俺のコーヒー・タイムはもう覚えてもよかろうに…。眉をしかめながらポテンテは受話器を取り上げ、ダイヤルした。
「当番、コーヒーを私の元へ」
ポテンテはデスクに戻るとモニターに向かい、軍事の研究・開発画面と格闘をはじめた。政治もそうだが、軍事もおろそかにはできん。世界に戦雲が立ち込めつつあるのだ。ポテンテはすぐに没頭した。

しばらくするとノックと共に背後の扉が開き、誰かが入ってくるのがわかった。当番め、遅いじゃないか。心の中で毒づいたポテンテは、室温が急に上昇したことにふと違和感を覚えた。さらにポテンテの鋭い嗅覚は芳醇なコーヒーの香りと共に、仄かな色香を嗅ぎ取った。そしてその敏感な耳は、「ぐつぐつこぽこぽ」という怪しい音を捉えるのだった。
何事かと振り向いたポテンテの目に、ぐつぐつ激しく煮立つコーヒーが飛び込んだ。そのもうもうたる湯気の向こうに現れたのは、総統官邸付秘書官ニナ兎の姿だった。
「君は…」
ニナ兎はにっこりと微笑んだ。
「覚えていらっしゃいますか?ニナ兎です。ニーナ・兎・ゲーレン」
ポテンテは驚きつつうんうん頷いた。
「覚えてるよ。ニュルンベルクの私の就任演説の後だったか。確かラインラントの出と」
「モンテネグロですわ、補佐官」
「そうだったか。だがあの時のコーヒーはよく覚えてるよ」
熱くてな。
ニナ兎の微笑みはさらに広がった。
「ええ、補佐官に喜んでいただけたのがうれしくて。ですからいつかまたコーヒーをお運びしようとずっと…」
ポテンテは地獄の池さながらにぐつぐつと煮え立つコーヒーを改めて見やった。
「…それはどうも。ところで私には当番がいてね…」
当番!当番!!早く来てくれ。適温のコーヒーを早く!
ニナ兎は無邪気に微笑みながらポテンテの望みを打ち砕いた。
「詰所の大柄なSSですよね。側頭部への一撃で昏倒していますわ。あたし、肘には自信がありますの」
当番!当…。ポテンテの魂の叫びは灰燼に帰した。
その時、電話が鳴った。おお、救いの神とはこのことだ。ポテンテは電光石火で受話器を取り、いかに時間稼ぎして今そこにある危機、今そこにあるコーヒーを冷ますかを素早く巡らせた。
「カール・ポテンテ」
その電話の主はポテンテの救いの神ではなかった。
「オレだよ!オレオレ!!」
カール・ポテンテは思った。この世に沸騰コーヒーより悪質なものが存在するとすれば、それはオレオレ詐欺を騙るGuicho Zurdoにほかならないと。
「オレだよ!オレオレ!!」
「…」
「オレだよ!オレオレ!!」
「…閣下、何の用です?」
電話の主はあっさりと認めた。
「よくわかったな」
「わかりますよ!」
「クックック。お前は言いたいんだろ?私は『パパは何でも知っている』のパパよりも何でも知っているから電話の主の正体がわしだとわかったのだと。な?そう言いたいんだろ?え?どうだ?ん?」
ニナ兎のコーヒーと同様、ポテンテの体内も沸騰状態であった。
「用件はなんです!」
ポテンテの怒りなどまるで意に介さず、総統閣下はのんびり続けた。
「お前はわしが今世紀最後の預言者と呼ばれてることを知ってるかな?」
「知りませんよ」
「その偉大なる預言者が今ここでお前の未来を教えてやろうとういうのじゃ。ありがたいと思え。おーわしには見える。わしには見えるぞ。よく聞け、お前はこれからズデーテンラント、ひいてはチェコの命運を定めるべく欧州列強が集う会議に出席することになるのじゃ。その会議はミュンヘンで開かれよう。おーわしには見える。わしにはそれが見えるのじゃ。ポンセよ、なぜわしがそこまで預言できるのか教えてやろう。それはだな、わしが何でも知ってるからじゃ。わしは『パパは何でも知っている』のパパよりも何でも知って…」
ガチャ。
ポテンテの選択はGuicho Zurdoのたわ言ではなく、沸騰コーヒーであった。
総統補佐官カール・ポテンテは意を決してニナ兎の方に向き直った。ニナ兎は婉然たる微笑と共に、未だぐつぐつ鳴り止まぬ沸騰コーヒーをポテンテに捧げた。ニナ兎の仄かなオー・ド・トワレの香りについて、それを考える心の余裕は今のポテンテにはなかった。

そのカール・ポテンテの押し殺したような悲鳴は、詰所でのびるSS隊員の耳には届かなかったという。


1944年2月13日、南アフリカ共和国が降伏した。

つづく。
スポンサーサイト

コメント

長らくの迷走スマヌ。ようやく約束に地に辿りついたようだ。

ところでし、し、cssって、う、う、うめえのか?

祝 復活おめでとう

また楽しみに待ってますぞぉー

祝 新装開店

復旧作業お疲れ様でした。
fc2の使い心地はいかがでしょうか?cssをいじって自由自在にカスタマイズできるので、色々と試してくださいまし。

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://poorsox.blog84.fc2.com/tb.php/17-45faf453

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。