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Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その12) 

経過はコチラにて。


国民党的M&A~1944年2月14日-10月26日(黒猫暦:1939年8月30日-9月20日

百戦錬磨のぎ印ドイツ帝国軍にとって、中国大陸に巣食う軍閥どもなどもはや敵ではなかった。彼らに何か悩みの種があるとするならば、それは果てしなく続く道なき道の悪路であり、遥かなるお山たちの標高であった。インフラ整備度20~40%なプロヴィンスを乗り越えるは容易でないのだ。
西からぎ印ドイツ軍勢、東からは日本、満州、シャムの極東枢軸軍勢に詰められ、各軍閥は敗走に次ぐ敗走を繰り返していた。国民党や共産党こそ頭ひとつ抜けて抗戦の意思は示したものの、装備・物量いずれに勝るぎ印同盟軍を前に、それは無駄な抵抗に等しかった。
中国大陸は着実に灰色と黄色の2色に染め上げられようとしていた。

「この戦いの敵は時間と悪路だな」
モニターの向こうで繰り広げられる軍閥ども掃討作戦の動向を眺めながら、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは退屈そうにつぶやいた。その傍らで同じくモニターに目を向けていた側近のゴルビ犬は静かに頷いた。
「国民党はもっとやるかと思いましたが。杞憂だったようですな」
総統閣下は社長椅子の背もたれに身を預け、フンと鼻を鳴らした。
「こんなものか蒋介石は。こんなものか」

しかし、蒋介石はこんなものではなかった。

1944年7月18日、本陣クンミンの陥落を受けたユンナンがまさに降伏しようかというその瞬間、蒋介石率いる国民党がユンナンを合併したのである。今さらそんな貧乏軍閥を合併・吸収したところでどうなる蒋介石よと、Guicho Zurdoは冷ややかに嗤うのであったが、国民党の行動はそこに留まらなかった。
8月6日、国民党はウルムチを失ったシンチヤンを、その10日後には風前の灯の広西軍閥を合併・吸収し、残存のプロヴィンスを手中に収めたのである。モニターの先の奇怪な光景を前に、総統閣下とゴルビ犬は目を見合わせた。
「この火事場泥棒みたいな軍閥M&Aはいったい何か」
その問いに答える言が見つからないゴルビ犬は、さあと首をすくめる以外になかった。

その時、総統執務室の電話のベルがけたたましく鳴った。原則的に電話嫌いの総統閣下はゴルビ犬に代わりに出るよう、あごで指し示した。
その電話は犬宛てのものであった。ゴルビ犬は電話の主と二言三言短いやりとりを交わし電話を切り、そして総統の方を振り向き、言った。
「閣下、“薔薇”から連絡がありました」
「そんなおしゃれな花は知らねえ」
「黒猫の世界に潜り込ませたわが手の者です。あちらの世界で第二次大戦がはじまったとのことです。今ヒトラーが大演説をぶってるとか」
総統閣下は片眉をつり上げると、不愉快そうに口をへの字に曲げ、ラジオのスイッチをひねった。やがて雑音の彼方から、第三帝国総統アドルフ・ヒトラーの濁声が流れてきた。

…れた大ドイツの回復は目の前にある。しかし、そのドイツの一部を未だ悪辣な手段で占領するポーランドがダンツィヒの返還に応じない以上、我々は相手が誰であろうともドイツ人の権利と安全が保障されるまで戦い続けなければならない!
私は今から、ひとりの兵士として、ひとり国民として…


その吼えるような演説に、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoはいまいましげにラジオに向かって吐き捨てた。
「絵描き崩れの貧乏ヒゲめが偉そうに。ブルーノ・ガンツと首をすげ替えてやろうか」
ゴルビ犬は黙って腕組みし、ラジオの向こうの演説に耳を傾けていた。

…り遂げる。そして、我ら偉大な民族は、必ずや悲願を達成する!ドイツに抗う者を全て倒すだろう。同胞を!我らの同胞を助けよ!世界に冠たる我がドイツに栄光あれ!


聴衆の大喝采が沸き起こり、やがてその歓声はラジオのノイズと共鳴し、スピーカーのハウリングを引き起こした。その耳を突く不快な音に、ふたりは顔をしかめた。
「聞くに値せぬわい」
渋面の総統閣下がラジオを切ろうとしたその時、ぎ印ドイツ帝国総統とその側近の耳は、歓声と雑音にまぎれて聞き覚えのある声が上がるのを捉えた。

「ドイツ人が生き残るための戦争が、いよいよ始まった。我々がドイツを救うのだ!」


ラジオの前のふたりは再び顔を見合わせた。
「閣下、今のはもしや…」
「うむ。猫めの声だな。貧乏ヒゲをたぶらかしおったのはあやつめか」
Guicho Zurdoは握り締めた拳でラジオのスイッチを叩き消した。その衝撃でプラスチック製のつまみが折れ飛び、デスクに転がり大きく弧を描いた後、端から床に落ちて刹那の旅を終えた。


―――もうひとつのベルリン(黒猫ドイツ)

「モロトフ=リッベントロップ協定」遵守の確認のために訪れていた駐独ソ連大使を見送った後、総統官邸の長い廊下を歩きながら、黒猫ポンセ、今はカール・ポテンテを名乗るその猫は静かに考えた。
開戦緒戦の勝利は予定調和に過ぎん。イギリスとて陥落させるはそうそう難しいことではなかろうて。…となると鍵はやはり対ソ戦をどう凌ぐかにかかってくるわけだ。
ポーランドの分割でソ連との平穏は手にしたものの、そんなものは束の間の休息に過ぎず、いずれは対峙する日が来ようことを彼は肌で感じていたのだった。
先手必勝で臨むべきか、あるいは向こうから仕掛けてくるのを待って大義名分の下に戦う方が得策なのか…。スターリンの大粛清で有能な将官が多数消されたはずだ。叩くなら後釜の台頭前の早い段階の方がよいだろう。しかし今は西の敵も相手にしなければならないのだ。二正面作戦など愚の骨頂だ。とはいえ、ソ連の先手まで待つとすれば、それは彼らが完全に息を吹き返して満を持しての侵攻を受けることを意味する。それを撥ね返す力がないわけではないが、苦しい戦いは避けられまい…。ポテンテはまだ答えを見出せないでいた。
ソ連はあまりにも広大に過ぎる。それに、冬将軍という厄介な自然の脅威もあるのだ。赤い巨人との対決はやはり一筋縄では逝くまい。楽に勝てせてはもらえんのだろうな…。
ポテンテは立ち止まり、深いため息をついた。そしてふと、大国のエゴで国家消滅の憂き目に遭ったポーランドのことを思い出し、一抹の同情を覚えた。しかし彼はその感情を打ち消すかのように首を振った。新世界秩序構築の夢のためだ。恨むなよ。ポテンテはひとり静かにつぶやき、再び歩き出した。
執務室につながる廊下の曲がり角で、衛兵がポテンテに声をかけた。
「補佐官、このたびはおめでとうございます」
ポテンテはその若い兵士を一瞥すると、静かに首を振り、悲しげに微笑んだ。
「一寸先は闇。私たちだっていつああなるか…」
怪訝な表情の兵士を後に残し、ポテンテは執務室へと向かうのだった。

執務室の扉を開けたポテンテは突如視界を奪われた。もうもうたる白煙が彼を襲ったのである。すわ火事か?いや違う。いったいなんだこの煙は?
やがてポテンテはその白煙の正体が水蒸気であることを知った。ふう、火事ではなかったか。こみ上げる安堵感と共に、ポテンテの敏感な耳と鼻は捉えるのだった。芳醇なるコーヒーの香りと、わずかに漂う何かのオード・ト・ワレの香りと。そして「ぐつぐつこぽこぽ」という怪しい音とを。まさか…。
ポテンテは白煙を払いながら部屋に入り、危険極まりない沸騰コーヒーを手にたたずんでいるであろう総統秘書官ニナ兎の姿を求めた。しかし、そこにニナ兎の姿はなかった。彼女の代わりに手紙が一通、デスクに置かれていた。その脇では沸騰コーヒーがぐつぐつと恐怖の滴をまき散らしながら鎮座ましましていた。
はねた滴でところどころ茶色く染まり、水分を吸ってよれよれになった手紙をポテンテはつまみ上げた。表紙には滲んだ文字で「詫び状・総統補佐官カール・ポテンテ様」とあった。ポテンテは苦笑した。沸騰コーヒーの詫びかい。彼女、わかっていたのだな。ポテンテはニナ兎の健気さに満足しながら便箋を開いた。
そこには一文だけ記されてあった。

カップが韓国製であることをお許しください。

              ニーナ・兎・ゲーレン


…論点が違う。論点が違う!論点が違うのだ!!
怒りとも悲しみともつかぬ微妙な感情がポテンテを襲った時、電話が鳴った。
こういうタイミングで電話をかけてくる者はひとりしかいないことを彼は忘れていた。受話器の先のがなり声を聞いた瞬間、彼は電話を取ったことを激しく後悔した。
「ワンワン!おいらゴルビ犬だワン!」
カール・ポテンテは今やはっきりと悟った。自分がこの世で最も嫌いなものは、犬の名を騙るぎ印ドイツ帝国総統にほかならないと。
「…」
「ワンワン!おいら本物のゴルビ犬だワン!」
「…」
「ワンワン!誰もいないの蟹?答えてお栗。何か返事してクレヨン♪」
「…何の用です、閣下」
「よくわかったな」
ポテンテはともすればキレそうになる自身を押し殺しながら言った。
「こういうことやるのはあなたしかいないでしょ。いったい何の用です?『パパは何でも知っている』は結構です。預言も無用です。というか別に用事はないんでしょ。要するにあなたの目的は私への嫌がらせだ」
Guicho Zurdoは小心者の葬儀屋ボナッセラを諌めるドン・コルレオーネのように言った。
「ポンセ…、ポンセ…。わしはそんなに情けない男か?」
かつての雇い主のその言葉にポテンテは一瞬揺らいだが、これまでの仕打ちを思い起こし、己を戒めた。
「ほかに何があるんです」
受話器の向こうでため息が漏れるのをポテンテは聞いた。…今日はいつもと何か違うようだ。ポテンテは受話器の向こうの様子に神経を集中した。やがてかつての雇い主が口を開いた。
「…わしは今日な、お前にヒントを与えるために電話をしたんじゃよ。ゲームの進行に係る、極めて重要なヒントじゃ。それを知るか知らぬかで大きく命運が分かれるんじゃ。国家の行く末を左右するやも知れぬ重大なヒントじゃ」
「…なんです?」
「知りたいか?」
「ええ」
「教えてもらいたいか?」
「…はい」
「無礼な言い草でわしを貶めた者が何食わぬ顔してわしに教えを請わんとするのは猫としてどうなのかの。何か言うべき言葉があるとは思わんかな?ん?どうだねポンセ君」
ポテンテは軽い屈辱感を覚えつつも、どうしても“ヒント”の誘い言葉に抗することができなかった。やむを得まい。ポテンテは仕方なしに言った。
「…閣下、先ほどの非礼をお赦しください。どうか私にヒントをお与えください」
受話器の向こうでGuicho Zurdoの馬鹿笑いが弾けた。
「うわっはっはっは。なんでわしがお前にヒントを与えにゃならんのじゃ。つーかそんなものありゃせんわ。うわっはっはっは。わしはお前が食らいついてくるだろう餌がわかるんじゃ。なぜわしにそれがわかるのか教えてやろう。それはだな、わしが何でも知ってるからじゃ。わしは『パパは何でも知っている』のパパよりも何でも知っ…」
死ね!
ポテンテは荒々しく受話器を叩きつけた。その衝撃で韓国製のカップの中で激しく沸騰するコーヒーが大きく跳ね踊り、液体の凶器と化してポテンテの頭上から降り注いだ。

総統官邸の中庭にポテンテの悲鳴がこだまし、それに驚いたカラスがバサバサと飛び立って逝った。


10月26日、蒋介石の国民党はシーベイサンマを併合した。

つづく。
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コメント

ママも何でも知っていることを知っているパパは何でも知っているのパパよりもわしは何でも知っている。

何でも知っている(*´з`)

ママも何でも知っている(*´з`)

コンゴ物語、残り35年。うわっはっはっは。

アンクル・サムはじっくり時間をかけて煮込む所存。

むむむーっ!

コンゴ問題で身動きがとれないのをいいことに、私にこのような仕打ちをするとは!
しかし、中国に進出とはこれいかに?アメリカちゃんは放置ですか。

はじめまして^^

私のブログで
こちらの記事を紹介させて頂きましたので
ご連絡させて頂きました。

紹介記事は
http://polandlife.blog81.fc2.com/blog-entry-25.html
です。

これからもよろしくお願いいたします^^

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