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Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その15) 

経過はコチラ

※書いてる人のプレイが原状回復するまでの間、サイドストーリーでお楽しみくださいw


The Professionals~2007年5月3日(黒猫暦:1940年10月24日

―――もうひとつのベルリン

カール・ポテンテの部屋の扉が勢いよく開いたのは、三度目の呼び鈴の音が鳴り止もうかという瞬間であった。それと同時に、ルガー拳銃を握ったごつい腕がぬっと現れ、そのひんやりとした銃口は訪問者の額にぴたりと突きつけられるのだった。訪問者がその物騒な歓迎にそろそろと両手を挙げて応える前に、銃の主の怒号が響いた。
「何者か!3つ数える間に答えろ。さもなくば撃つ」
それを聞いて飛び上がったのは銃を突きつけられた訪問者ではなく、いったい何事かとうんこの途中で便所から顔を出したポテンテであった。
「何やってんだ少尉!その人は水道屋だよ水道屋!シャワー直しに来るって話したろ?堅気のもんに銃を向けるんじゃない!早くしまえってのこの!」
ヴィルヘルミーナ・アンナ・クルマン少尉、WAC、あるいは枠と呼ばれるその尉官は、背後でわめき立てるポテンテには見向きもしなかった。
「さっさとケツ拭いてパンツを上げな補佐官。それからコロコロうんこをきれいに流して消臭元をたっぷりまくこと。あたしがそこ使う時にあんたの残り香があったらただじゃおかないよ。それが終わったら便器・便座をきれいに磨き上げること。聖母マリアもうんこしたくなるくらいピカピカに。もしケツ毛一本でも落ちてたら明日という日はないと思え」
黒猫ポンセ、今は総統補佐官カール・ポテンテを名乗るその猫は再び飛び上がると、少尉殿の仰せのままに行動を開始するのであった。
背後で慌しい物音がはじまったのを確認すると、ポテンテの護衛兼当番、枠少尉は水道屋であるという訪問者に向かって言った。
「さてと、補佐官が言うように多分あんたは水道屋で、多分あんたはあんたの仕事をしにここへ来たんだろう。だけどあたしにもあたしの仕事というものがあってね、これもそうなんだ。悪いけどちょっと検めさせてもらうよ」
少尉は銃はそのままに、片方の手で訪問者の身体検査をはじめた。背後のトイレからポテンテがひょっこり顔を出し、口を挟んだ。
「だからその人は水道屋だってのに。ベルリン水道局の人だよ。なあ?」
「あんたは黙って便器を磨く!」
枠少尉の一喝にポテンテはすぐさま引っ込み、再びキュッキュと便器磨きに勤しむのであった。
やがて身体検査が終わった。少尉はここでようやく銃を降ろすと、水道屋ににっこりと微笑み、それからすまなそうに言った。
「あいにく今特別警戒中なんだよ。手間かけさせて悪かったね。入っていいよ」
水道屋は帽子のつばに手をかけ、お察ししますよというように軽く会釈し、ようやくポテンテの家へと足を踏み入れた。トイレを通り過ぎる時、ポテンテがまた顔を出した。
「電話で話した通り、シャワーの水漏れが激しいんだ。それとなんか温度調節がうまくいかない。あとバルブが固くて…」
雑巾を手にまくし立てるポテンテを、黒い大きな影が覆った。その遥かなる頂きからは静かな、しかし力強い声が降ってきた。
「 さ っ さ と 磨 け 」
…覚えてろ。忘れんぞ。俺は忘れんぞ。俺は忘れんからな。ポテンテは悲壮な決意を胸に、ひたすら便器磨きを続けるのであった。

浴室の前まで来た時、枠少尉は水道屋が手にしていた工具箱を見咎めた。
「…そういややけに大きい工具箱だね。ちょっと見させてもらってもいいかしら」
水道屋は工具箱を素直に差し出した。枠少尉はそれを床に置くと留め金を外し、中身を検めはじめた。二段重ねの工具箱の最初の段には、スパナやドライバーといった工具が整然と並んでおり、二段目にはメジャーやボンド、あるいはやすりなどの小物類が所狭しと詰まっていた。…一見問題はない。しかし、そこにはどこか違和感が漂っていた。やがて少尉は、その違和感は箱の深さに対する底の浅さであることに気が付いた。枠少尉は水道屋を一瞥した。水道屋は調べたきゃどうぞと言うように肩をすくめた。
少尉は箱の底の四隅を指でなぞりはじめた。内側の最後の角を回った時、少尉の指先は目立たない小さな留め金を捉えるのだった。少尉は慎重にその金具を外すと、底がスライドできることを確認した。そのさらに下には、間違いなく隠されたスペースが存在した。
少尉は水道屋の表情を伺った。水道屋は穏やかに少尉を見つめ返した。
ホルスターに手をかけながら、枠少尉は二重底を静かにスライドさせた。かすかなムッとするような匂いと共に、隠されたもうひとつの段の中身が露になった。そこに現れたのは、ハムサラダ、たまご、ツナといった、一面に敷き詰められたサンドウィッチであった。少尉は再び水道屋を見た。水道屋はこの疑い深い護衛に向かっていたずらっぽくウィンクした。少尉は苦笑しながら二重底を静かに閉じた。
「これで弁当箱を持つ手間が省けるというわけね。ひとつの箱で二度おいしいと」
工具箱を返しながら少尉は続けた。
「いろいろ悪かったね。作業にかかっていいよ。でも扉は閉めないでね」
水道屋は無言の笑顔で応え、作業を開始すべく浴室へと入っていった。

便所掃除を終えたポテンテは、しかめ面で手を拭いつつ枠少尉のそばに来た。ポテンテは微動だにしない護衛の視線の先を追った。開け放たれた浴室の扉の向こうで、水道屋が黙々とシャワーの修理に勤しんでいた。
ポテンテは呆れ顔で少尉に言った。
「そんな監視されてたら水道屋さんも落ち着いてやれんだろうに」
「あたしはあたしの仕事をしてるだけさ」
水道屋が振り向き、お構いなくというように軽く会釈した。渋面のポテンテは続けた。
「ちょっと神経質に過ぎるぞ、少尉」
「神経質なくらいがちょうどいいんだよ」
枠少尉は作業を続ける水道屋から片時も目を離すことはなかった。

1時間後。

ポテンテの家を出た水道屋は、背後の扉を閉めると同時にスッとその穏やかな表情を消した。元の顔に戻った偽の水道屋は踵を返すと、アパートの通路を歩きながらポテンテの護衛との邂逅を振り返るのだった。銃を突きつけられたあの瞬間、振り払おうと思えばそうすることはできたろうが、自制して正解だった。近接格闘の自信がないわけではない。だが、あのタフな護衛にそれを挑むはやはり分が悪い。それに…。偽の水道屋は工具箱を一瞥した。二重底がああもたやすく見破られようとは。それなりの観察力もあるわけだ。
“薔薇”がぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoから受けた本来の命令は、「猫めの護衛の腕を確かめよ」「可能ならついでにシャワーに『沸騰コーヒー』を仕込んで来い」、というものであった。しかし慎重なこのぎ印SD要員は、ポテンテの護衛に関する手持ちの情報の少なさを鑑み、あえて任務を敵情視察に絞り、“沸騰コーヒー”というサブクエストは外したのだった。結果、その判断は正しかったことが証明された。たとえ護衛が二重底を見抜けなかったとしても、あの監視下で仕込みなんぞできるわけがない。
欲をかかずとも十分な成果じゃないか。ぎ印ドイツ帝国のスパイは満足げに微笑むと、アパートの階段を足早に下るのだった。

枠少尉はカーテンの隙間から通りを見下ろし、やがて現れるであろう水道屋の姿を求めていた。少尉の後ろでは、部屋の主がキョロキョロしながら探し物の真っ最中であった。
「少尉、少尉。赤いポットはどこにあるんだろう?」
護衛兼当番はぶっきらぼうに言った。
「さっきの水道屋にあげたよ」
「(゚Д゚)ハァ?」
「数々の非礼のお詫びさ」
ポテンテはカンカンだった。
「詫びなら他に方法があるだろ。あれは私のポットだぞ!」
「知ってる」
「どうする気だ。紅茶もコーヒーも飲めないぢゃないか。私のポットを返せ!返せ!返してくれ!」
「水でも飲みな」
工具箱と赤いポットを小脇に抱えた水道屋が通りに現れた。少尉は身を乗り出し、その行く手を目で追った。そして依然わめいてるポテンテを手で制しながら言った。
「補佐官、さっきの水道屋だけどね、あいつぎ印の回し者だよ」
ポテンテは拳を振り上げたまましばし絶句した。
「…そんなバナナ」
「多分ソーダ。シャワーに沸騰コーヒーでも仕込みに来たのかと思ったけど、そうじゃなかったみたいだね。目的はわからない。あたしの存在を確認したかっただけなのかも」
ポテンテはまた腹が立ってきた。
「Guicho Zurdoの刺客と知って、なぜ確保しなかった?」
通りを歩く偽の水道屋の後姿を眺めながら、枠少尉はにやりとした。
「本性を現すチャンスはいくらでもあったろうに、徹頭徹尾水道屋を演じていたからさ。そのプロ根性に、あたしなりに敬意を表してやったんだな」
「余計な駆け引きするんじゃないよ!沸騰コーヒーを浴びるのは私なんだぞ!また奴が来たらどうすんだ」
少尉はかぶりを振った。
「もう来ないよ。仮に来るとしても、今日みたいな直接的なアプローチはないだろうね」
「なぜそう言い切れる」
「あたしのメッセージを読み取る頭くらいあろうからさ。…ああ、あんたのお気に入りのポットにそれを添えといたんだよ」
「そのメッセージってのはいったい?」
「あんたは知らなくてよろしい」
「ぐっ…」
この軽い屈辱感をいくばかでも癒すべく、ポテンテは話題を変えた。
「…それにしても少尉、なぜ奴の正体を?」
「あたしがわかっていればそれでよろしい」
「なんだケチンボ!」
少尉は遠くに消えつつあるぎ印ドイツ帝国からの回し者を眺めながら、その邂逅の瞬間を思い出していた。水道屋のフリは問題なかった。だが、銃口を前にして眉ひとつ動かさないタフな水道屋などいるものか。豪胆は時としてキャラを損なう諸刃の剣。あたしも気をつけよう…。
やがて通りの曲がり角で、偽の水道屋は姿を消した。それを見届けた枠少尉は静かに窓辺を離れた。ふとテーブルを見ると、ポテンテ補佐官が背中を丸め、水を飲んでいた。

“薔薇”はシュプレー川のほとりのベンチで昼食を摂ることにした。膝にナプキンを広げ、工具箱の隠し扉を開き、サンドウィッチを取り出した。薔薇は、ポテンテの護衛がくれた赤いポットを改めて見やった。ランチに合うよう、中身はコーヒーにしたと言っていたか。敵からの思わぬ差し入れ、ありがたくいただくとしようか。
手にした紙コップにポットのコーヒーを注ぎ始めた瞬間、薔薇は危うく飛び上がりそうになった。ポットから出てきたのは、凶悪な沸騰コーヒーだったのである。その悪意に満ちた液体は「ぐつぐつこぽこぽ」と縦横無尽に暴れ、紙コップをあっという間に溶解させ、地面に流れ拡がってなお沸騰し続けていた。
もうもうたる水蒸気をしばらく呆然と眺めていた薔薇であったが、やがてそこに込められたポテンテの護衛からのメッセージの意味を解すと、クックと静かに笑い出した。そうか。そういうことか。私の正体はバレバレだったというわけだ。あの護衛、取り柄は体格だけではなかったようだ。
枠少尉からの沸騰コーヒーにはいくつか無言のメッセージが込められていた。ひとつは偽の水道屋は見抜いていることを知らせる意図と、もうひとつは自分がいる限り沸騰コーヒーの手は通用しないという宣言と、そして、今度余計な真似をしたらただではおかないという警告の意味とであった。
自分は単に見逃されたのか、あるいは本国へのメッセンジャーとして泳がされたのか、薔薇は判じかねた。いずれにせよ、ポテンテの護衛との接触は一見成功と思われたが、実のところは失敗もいいとこだったのである。薔薇は首を振りつつ苦笑した。
さて、本国への報告はどうしたものかな。薔薇は自分の失態をそこに記すべきかしばし逡巡したが、結局正直に報告することに決めた。下手な見栄を張ってまた直接対決など命じられたらたまったものではない。
薔薇は未だふつふつ唸り、じゅうじゅうと蒸気を上げる地面を蹴り、危険なコーヒーに砂をかぶせ、沈黙させた。そして鼻歌混じりに再びベンチに腰掛けた。完膚なきまでの敗北というのは逆に清々しいものなのだな。そんなことを思いながら、ぎ印SD要員は遅めのランチを摂りはじめるのだった。


―――ベルリン、総統官邸

「閣下、“薔薇”からの報告です。『とりあえず目的は達成された』とのことです」
側近ゴルビ犬は要点だけ抜き出し、ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoに伝えるのだった。総統閣下はにやりとした。
「どうだ。うまくいったろ?猫めはヒイヒイ言っておったか?」
犬は怪訝な顔をした。
「『シャワーから沸騰コーヒー大作戦』のことですか?それははじめから実行の予定にはありません」
「なんでやらんのじゃ」
ゴルビ犬は憤怒の総統閣下をなだめた。
「黒猫の護衛の正体がはっきりしてない段階、フル装備で破壊工作は無謀に過ぎると判断したのです。薔薇の判断は賢明でしたよ、実際、彼奴の護衛は秘密ボックスの二重底を見抜いて中を調べたそうです」
総統閣下は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「ふん、薔薇め。それは慎重ではなく臆病というのじゃ。…まあよい。して、猫めの守護神とはいったい何者なのだ?」
犬は再びメモを目にした。
「要約すると、『力押しで挑むは愚の骨頂、知恵もそれなりに回る』相手だそうです。国防軍の少尉で、女性であると。残念ながら名前までは不明です」
「女だと?ぬう、猫め。世界中に隠し女を作りおってからにうらやましい奴だ」
「そういう問題ではないかと…」
「まあよい。で、その護衛の女は厄介な存在になろうというわけだな?」
「はい。かなりの脅威になるかと」
「ぬぅ…」
ゴルビ犬は恐る恐る付け加えた。
「…閣下、ひとつ悪い知らせもございます」
「なんだ」
「今回の潜入調査において、“薔薇”は件の護衛に恐らく自分の正体を見抜かれたろうとのことです」
Guicho Zurdoは眉をしかめた。
「なんじゃその失態は。身元が割れてはもう隠密作戦はパアではないか。犬よ、奴のこの失点はでかいぞ」
犬は自分が送り込んだ部下の擁護に徹した。
「薔薇は優秀なエージェントです。今回は向こうがさらに上手だったと考えるべきでしょう。いずれにせよ黒猫にあの護衛が付いている以上、直接的な作戦は困難です」
「ふん。…薔薇はどうする。こちらへ呼び戻すか?」
「その必要はないでしょう。奴の変装術は多羅尾伴内よりも豊富かつ完璧です。直接的な作戦遂行はもう無理ですが、後方支援で活躍の場は十分に残ってます」
「ではこれからどうするんじゃ」
犬はピッと指を立てた。
「閣下、直球で仕留められぬなら変化球で臨めばよいまで。力には知で制するが吉です」
総統閣下は身を乗り出した。
「妙案でもあるのかね」
「あるいは猫にはネコ科、それも格上のネコ科で制する、というのもありましょうか。閣下、既に白羽の矢は立てております。…教授、入りたまえ」
ゴルビ犬が振り返り合図を出すと、執務室の扉が開き、ひとりの虎が入ってきた。虎は静かに歩み出ると、偉大なる総統閣下の前で威儀を正した。やがてゴルビ犬が紹介した。
「私は彼女なら何かよい手が打てるものと確信しております。ご紹介しましょう、feti虎(こ)教授です」


本を愛でる教授~2007年5月3日

ぎ印ドイツ帝国総統Guicho Zurdoは、値踏みするようにその虎を上から下まで眺めやり、やがて口を開いた。
「…ふん。見たところ、軍関係とも諜報関係とも思えんが。ぎ印党のバッジもしとらんわい」
feti虎(こ)はにやりとした。
「はい。私の本職はソウル大学文学部反日思想学科の教授です。普段は月の見える櫓にて教鞭を執っておりますが」
偉大なる総統閣下は見る見るうちに不機嫌になった。
「なんじゃそれは。まるで畑違いではないか。おい犬よ、ミスキャストにもほどがある。文民に何ができるんじゃ。連れてけ」
ゴルビ犬はあわてて総統閣下を制した。
「お待ちください閣下、彼女は黒猫をよく知っているのです」
総統閣下は目を細めた。
「そうなのか?」
feti虎は薄く微笑んだ。
「腐れ縁、とでも申しましょうかね。閣下よりは長い付き合いになります」
「それに…」
犬が割って入ってきた。
「今や力押しでどうにかなる状況ではないのです。知で臨むなら彼女ほどの適任者はほかにおりません。さらに、彼女はザッパの発見・摘発に定評があります。もちろんケースは違いますが、この慧眼は今後何かと役に立つのではないかと」
「ザッパ?フランクかね?」
「そっちのザッパではありません。世の中には悪いザッパが存在するのです」
総統閣下は腕組みし、社長椅子の背もたれに身体を預けた。
「よくわからんが、…むう、feti虎といったか。やれるのか?」
教授は薄く微笑みながら言った。
「私のやり方でやらせてもらえるのなら」
しばしの沈黙の後、やがて総統閣下は言った。
「よし、いいだろう。方法はお前に任す。差しあたって必要なものはあるかね?」
「移動の手段が要ります。自転車をご用意ください」
「裏庭のママチャリは自由に乗ってよい」
「論外です。Roverでお願いします。ただしデフォでは駄目です。カスタム化が必要なので、こちらの品を揃えてください」
feti虎は自転車のカスタムパーツのカタログと見積書を総統閣下に差し出した。閣下の眉間に深い一本皺が刻まれた。
「なんじゃこれは。たかが自転車になんでこんなに金がかかるんじゃ」
「より快適に乗るためです。快適な自転車の旅は快適な作戦行動を意味します。さらに快適な作戦行動環境はその成功の可能性をより高くするのです。ついでに言えば、自転車は馬よりははるかにお買い得です」
Guicho Zurdoはしばらく渋い顔で見積書の額を睨んでいたが、やがてため息と共に頷いた。
「………よかろう。で、他には何が要るんじゃ?」
「浅田次郎の書籍を数冊」
「それは何に使うのだ?」
「空いてる時間の読書に充てます」

ひゅうううぅぅぅ………。

総統閣下と虎との間に、冷ややかな風が流れた。ゴルビ犬は所在なげに両者の間をそわそわした。
「…それは、任務とは関係ないようだが?」
「はい、まったく関係ありません。ただ今、私の中で浅田次郎読みまくりキャンペーンが実施中なので」

ひゅうううぅぅぅ………。

ふたりの間に再び冷ややかな風が流れた。この微妙な空気を打破せんと、ゴルビ犬は必死になって言葉を探した。犬が言葉を見つける前に、総統閣下が沈黙を破った。
「…そのキャンペーンは間接的にせよ、任務の遂行に何か役に立ちそうかね?」
「まったくないでしょうね。私が読みたいというだけです。ついでに申せば、書籍費が家計を圧迫しておりまして」

ひゅうううぅぅぅ………。

三者の長い長い沈黙の後、feti虎教授は小さく肩をすくめると穏やかに言った。
「ご用意できないのなら私の出る幕はありませんね。ケチンボなおふたりがどうにかこの難局を凌げることを切に願ってやみません。それではごきげんようさようなら」
教授はくるりと踵を返した。背後から総統閣下の声が飛んだ。
「待たんか教授」
ちらりと振り向いた教授の目に、紙とペンが差し出された。総統閣下は大きく息をつくと、諦観の口調で言った。
「必要なものをリストにしてそこに記せ。ただしなるべく安上がりにな。今月はわしも苦しいのだ」

feti虎教授は総統閣下に嫣然と微笑みかけると、紙とペンを受け取り、膨大な「欲しいものリスト」の作成に取りかかるのであった。

つづく。

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コメント

書いてる私からしても驚きの成長にございますw

なんか俺かませ犬だったのに結構いいキャラに成長してる気がするw

ほう、姐さんというポジションなのけ。ほうほう。

うわっはっはっは。
黒猫サイドで思わぬ急展開になってしまったが、そんな些事などどうということ、…あるんじゃ!わしの筋書きがパアじゃ!どうしてくれるんじゃ!


>虎

領収書、忘れるでない。

げげっ 姐サンの登場ですかい・・・

何ということを・・・

Guicho Zurdo、神を畏れぬバチ当たりな奴め。

ワロタw

あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃwwwwww


ふぅ…。

リストはメールで送りますに。

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これまでの経過はこちら。GWだっつーのに、笹やぶの中を歩き回る羽目になって機嫌悪し・・・。◆裏切りのクリスマス・キャロル - 1940年12月24日~25日(ぎ印ドイツ帝国暦2007年5月3日)Guicho Zurdoの元を飛び出し、自らの手

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