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Guicho Zurdo:千年帝国の野望~「Hearts of Iron・Ⅱ」のリプレイ(その19) 

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焼け石に水のガイドブック:「千年帝国の歩き方

※伏線を 張れば張るほど 墓穴かな


スフィンクスの憂鬱~黒猫暦:1941年1月7日

“もうひとつのドイツ”のゲシュタポ長官、ハインリヒ・ミュラー。彼は今、ゲシュタポ本部最上階にある執務室の窓から、夜の帳の下りたプリンツ・アルブレヒトの街の灯りを静かに眺めているのだった。“スフィンクス”と揶揄されるその無表情から心の内を推し測ることはできなかったが、ミュラーの胸中は決して穏やかなものではなかった。彼の誇る秘密国家警察が、得体の知れぬ流れ者同然の虎に完膚なきまでにコケにされたのである。警察マンとしての長いキャリアの中で、これほどまでの失敗をミュラーは経験したことがなかった。まったく、恥晒しもいいとこではないか。いったいどうしてくれよう…。
とはいえ、ミュラーはもぬけの殻のホテルを1週間以上も監視していたふたりの部下を叱責する気にはなれなかった。失態を言うのであれば、ミュラーもまた同じなのである。彼は1週間前の夜の、feti虎教授とのやりとりの一端を振り返った。

「…お留守の間に、荷物を検めさせてもらった」
「不審な物でも出てきました?」
「不審な物は何も。…だが、不思議な物はありましたな。あれは何です?」
「それももう調査済みでなくて?」
「もちろん調べました」
「なら問題ないことはおわかりのはずです。お調べになられた通りの物で、お調べになられた通りの用途です」
「あんなに大量に?」
「あんなに大量にです」
「解せませんな」
「その方がお買い得なので…」


…漠然とした怪しさを感じた段階で手を打つべきだった。あの気持ちの悪い大量の朝鮮缶詰はすべて没収して然るべきだったのだ。そして教授はあの場で正式に身柄を拘束し、確実に自白へと導くはずの徹底的な尋問をすべきだったのだ。予防拘束である。理由付けなど後からどうとでもできたはずだ。…今さら遅いが。
ミュラーはため息を押し殺しつつ窓から向き直り、ゆっくりとデスクまで戻った。しかし椅子には座らずそのままデスクに両手をついた秘密警察の長は、その向こうで身をこわばらせるふたりのゲシュタポ捜査官を上目遣いに見やると、抑揚のない静かな声で言うのだった。
「虎が網にかからんそうだな」
ショコラとモンブラン。ゲシュタポ・ミュラーの忠実なるふたりの部下は、叱責を予期し居心地悪そうにもじもじと身体を動した。ミュラーはそれを見取ると、彼らを責める意思がないことを示すように片手を上げ、続けた。
「恐らくもうベルリンにはおるまい。われわれがこれから考えねばならんのは、奴がどこへ向かい、今どこにいるのかだ」
ミュラーはデスクに広げられた地図に目を向けると、もうひとつのベルリンを基点とした東西南北の各方面に視線を素早く巡らせ、しばし沈思した。…まさか内陸方面には向かうまい。無難に海路で脱出するが賢明というものだ。大方、一見無害な漁船にでも乗り込んでどこぞへと向かう算段なのだろう。ベルリンから一番近い港湾ならシュテティンになるが、その場合はオーデル川に沿って湾を抜け、バルト海へと出る形だ。時間的には早いが、湾を抜ける前に封鎖・包囲の危険も大きい。考えにくいな。かといって北西のキールまでは遠過ぎる…。となると、ロストク―リューベック間の港のどれかということになろう…。
ここでミュラーは、feti虎教授がアドロン、ケンピンスキーというベルリンの二大高級ホテルの高級部屋を根城にしていた事実を思い出すのだった。その趣味からするとだ…。ミュラーは彷徨わせていた視線をリューベック北部に位置する海沿いの高級保養地、トラヴェミュンデに留めた。…ここだ。
ゲシュタポ・ミュラーは地図から顔を上げると、ふたりの部下に言った。
「トラヴェミュンデを中心にリューベック一帯のホテルを徹底的に洗え。特に4つ星以上のをだ」
そのボスの命令に、ショコラとモンブランは長靴の踵をかちんと鳴らして応えた。そしてソフト帽を手に踵を返すと、慌しくゲシュタポ長官の執務室から出て行くのだった。
ふたりの部下が去った後、ミュラーはデスクの端に置かれたカール・ポテンテ総統補佐官を襲った恐怖の品、ポンテギの缶詰をいまいましげに見やった。…あの黒猫が蚕まみれになろうが臭くなろうが知ったことではない。許すまじは、素人の虎がこの私をコケにしたという事実のみなのだ…。1919年にバイエルンの州警察に入って以来、ひたすら奉仕一筋だったハインリヒ・ミュラーは、はじめて私的な理由で権力の行使を決意したのだった。
その数分後、ふたりのゲシュタポを乗せた黒塗りのメルセデスが、リューベックはトラヴェミュンデを目指し、プリンツ・アルブレヒト街8番地のゲシュタポ本部を後にした。

同じ頃、feti虎教授はロストク西部に位置する海沿いの高級保養地、ハイリンゲンダムに到着した。


Heiligendamm~黒猫暦:1941年1月8日

お偉いさんたちが愛用するのもなるほどね。ふかふかベッド、ふっふ~♪。feti虎教授は満足の笑みを浮かべながら、朝陽に輝く豪華な保養施設を後にした。ロストクで一夜を明かすにあたり、一帯のホテルはゲシュタポの魔の手が及びかねないと踏んだ教授は、敵の懐に潜るが最善と判断し、あえて党幹部御用達であるハイリンゲンダムの保養施設を選んだのだった。もちろん、お手製の偽ゲシュタポ身分証を振りかざしての入館である。絵皿を改造して作ったそのインチキ身分証は、どうしようもないくらいのスペル・ミスも何のその、またもや堅気の衆に絶大なる効力を発揮した。恐怖に震え上がった保養施設の支配人は、疑念を抱く心の余裕などまるでなく、言われるままそそくさとfeti虎にバルト海に面した眺めのよい部屋を提供したのだった。
ハイリンゲンダムでの快適な一夜でリフレッシュしたfeti虎教授は今、ルンルン鼻歌混じりに自転車のギアを中速に切り替えると、ロストク空軍基地を目指し、海沿いの道路を朝陽を浴びながらのんびりと走り出すのだった。

朝を迎え、落ち着きを取り戻した保養施設の支配人は、昨夜突如現れた恐怖の訪問者についてようやくきちんと考えられるようになった。そもそもあのゲシュタポはいったい何の捜査でやってきたのだろう…。思い出せば思い出すほど、腑に落ちない点は増えていった。よくよく考えりゃあいつは何も調べてないし、張り込みも聞き込みもまるでしていない。豪華な部屋で一晩過ごして豪華な朝食を食べて金も払わず出て行った。それだけだ。…要するにあれは単なる無銭宿泊&飲食だったのである。畜生、ゲシュタポの野郎、バッジさえ振り回しゃ何でもタダだと思ってやがる。これからああいう手合いがじゃんじゃんやって来るようになるのだろうか。冗談ではない。いくら恐怖の秘密警察だからといって、無銭宿泊だの無銭飲食だのが許されていいはずがない。権力の横暴にも程がある。ここは選ばれた者のみが利用できる格調高い保養施設なのだ。下層出の棍棒野郎が寝泊りする穴倉ではないのだ。
妙な義憤に駆られた支配人は、ベルリンのゲシュタポ本部に苦情の申し立てをすることを決意した。なあに恐れることはない、こちとら党幹部連御用達の施設なんだ。ぐだぐだ言いやがったら党本部に訴えてやる…。
鼻息も荒くゲシュタポ本部にダイヤルした支配人の意気は、数分後には脆くも消沈した。「少々お待ちください」という受付嬢に代わって受話器の向こうに現れたのは、恐怖のゲシュタポ長官ハインリヒ・ミュラーその人であり、不貞のゲシュタポ捜査官の人相風袋や挙動について事細かに追及する冷ややかな抑揚のないその声は、支配人の背筋を昨夜以上に凍りつかせるに十分であった。

ゲシュタポ・ミュラーとの恐怖電話の1時間半後、ミュラー・ショックから未だ立ち直れない支配人の元に、今度は二人組のゲシュタポが直接乗り込んで来た。リューベック周辺で不眠不休の無駄な一夜を過ごす羽目になったこのふたりのゲシュタポ捜査官はすこぶる機嫌が悪く、ひどく汚れており、極めて粗暴に振る舞いながら支配人を問い質すのだった。
ミュラー長官の尋問に答えた内容を再び馬鹿丁寧に繰り返しながら支配人は、げんこつが背広を着たような男たちを前に、昨夜施設にやって来たゲシュタポが偽者であったことをその身をもって知るのであった。


華麗なるユソーキ野郎~黒猫暦:1941年1月8日

早く来てくれよ。あまり長居もできんでな…。オットー・デスロッホ中将は再び機内から滑走路に降り立ち、内心の苛立ちを抑えつつ、はるか後方を見やるのだった。左エンジンの調整を終えた副操縦士の中尉が将軍の脇に立つと、その視線の先を追いながら言った。
「来ますかねえ」
「来るさ」
私が見立てた通りの者ならな…。
「賭けますか?ビールでも」
「不謹慎だぞ中尉」
若い尉官をたしなめたその時、老将は視界の端に小さな移動物体を捉えるのだった。改めてそちらを向き直り、目を細めてその正体を確認した将軍は、にやりとしながらそれを中尉にあごで示し、言った。
「私の勝ちだな。基地に戻ったら奢ってもらうぞ」
「中将殿、さっきと言ってることが違います」
「覚えとけ若いの、飛行機乗りは臨機応変が旨だ。大尉!出発の準備を」
操縦席で待機していた大尉が親指をピッと立て、ぽんこつユンカースのエンジンを始動させんと、スターターと格闘をはじめた。何度目かのトライでようやくプロペラが回転をはじめた頃、Roverの自転車に乗ったfeti虎教授が輸送機のそばまでやって来た。デスロッホ中将は両手を広げ、にこやかにfeti虎を出迎えるのだった。
「お待ちしてましたぞ教授。こちらのベルリンはいかがでしたかな?」
feti虎も自転車から降りながらにこやかに答えた。
「ええ、“よい旅”になりましたわ」
その時デスロッホ中将は、はるか遠くで金網を突き破って滑走路に侵入する黒塗りのメルセデスを見た。老将は再びにやりとしながら言った。
「おやおや、ファンもできたようで」
老将の視線を追って後ろを振り向いたfeti虎は、猛然と追ってくるメルセデスを見て眉根を寄せた。
「あらら。人気者は辛いですね。行きましょうか」
手早く自転車と荷物を積み込み、feti虎教授と輸送機隊の面々は機内へと乗り込んだ。重い扉を閉めた頃、ようやくぽんこつユンカースが動き出した。
ふたりの怒れるゲシュタポを乗せた黒いメルセデスは、緩慢にスピードを上げるぽんこつユンカースに追いつくと、ぎりぎりまで横付けして並走した。助手席からモンブラン捜査官がソフト帽を抑えながら身を乗り出し、必死に機内の様子を伺おうとした。その努力に応えてやろうと、feti虎教授はガラスに顔をべたっとくっつけ、奇妙につぶれた顔面を今度は下にずらし、奇怪に歪めるのだった。そのあからさまな侮辱にモンブランは憤怒に顔を真っ赤にすると、車内に引っ込み、運転席のショコラ捜査官に向かってもっとスピードを上げろと怒鳴った。相棒の要請に応え、ショコラは歯を食いしばりながらさらにアクセルを踏み込んだ。メルセデスはぐんぐん加速し、やがてユンカースのコックピットの位置まで辿り着いた。モンブランは再び車内から身を乗り出すと、愛用のソフト帽が脱げ飛ぶも構わずワルサー拳銃をぶんぶん振り回しながら、パイロットに向かって機を止めろと激しく怒鳴った。操縦席の大尉は視界の端で何事かわめいているゲシュタポを一瞥すると、きびきびとした敬礼でそれに応え、ぽんこつ機を一気に加速させるのだった。ショコラ捜査官の奮闘も虚しく、輸送機は次第にメルセデスを引き離し、やがてその脇を走り抜けていった。
ぽんこつユンカースの車輪が陸地から離れる頃、全力疾走のメルセデスはついにエンジンのオーバーヒートを起こし、ボンネットの隙間からプスプスと黒煙を上げながら停止した。ふたりのゲシュタポ捜査官は力なく車から降りると、熱を帯びた車体に身をもたせながら、ロストク空軍基地から飛び去ろうとするJu-52機を恨めしそうに見送るのだった。
と、その時、輸送機は奇妙な動きをはじめた。機を大きく左に逸らしたかと思うと、今度は右回りに大きく旋回し、機首を再び滑走路に向けたのである。ショコラとモンブランは不思議そうに顔を見合すと、再び輸送機の動向に注目した。よく見ると、後部の扉が開いている。ふたりのゲシュタポ捜査官は、目を凝らしてその扉を注視した。彼らの位置からはfeti虎教授のニヤニヤ顔までは確認できなかったが、扉からのぞいたその手が大きなバケツを持っていることに気付いた。
超低空飛行のぽんこつユンカースがメルセデスの上を通り過ぎる少し手前で、feti虎はバケツごと手を離した。地上で目を凝らすふたりのゲシュタポが、自分たちに向かって降り注ぐバケツの中身の正体を知った時は既に手遅れだった。

恐怖の朝鮮アイテム「沸騰ポンテギとろみ付」を大量に浴び、メルセデスの周りを転げ回るゲシュタポどもを尻目に、feti虎教授を乗せたぽんこつユンカースは何処へと飛び去って行くのであった。

つづく。
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コメント

【急募】

漫画家。


>黒猫

うわっはっはっは。

漫画化希望w

最近、閣下が絶好調な件について。
ポンセはどうしたかって?風邪引いて熱出しながら仕事してるんだよ!ブログどころではないわい。

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